相続
親の遺産を独り占めされたらどうする?対処方法を紹介
更新日:2024.08.19 公開日:2022.05.13

記事のポイントを先取り!
- 親の遺産の独り占めは同居家族内で起きやすい
- 成年後見人制度が悪用されるケースが多い
- 遺産の独り占めには返還請求が可能
親の遺産を独り占めされた場合の対処方法についてはご存じでしょうか。
実際の事例を通して対処方法を考えることは大切です。
そこでこの記事では、親の遺産を独り占めされたらどうすれば良いかについて詳しく説明していきます。
この機会に、預金・不動産・株を独り占めされないための方法を覚えておきましょう。
遺産分割で揉めないためのポイントについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 遺産の独り占めが生じやすい例
- 遺産の独り占めを未然に防ぐ方法
- 預金・不動産・株を独り占めされないために
- 銀行預金
- 不動産
- 株
- 独り占めされた際は不当利得返還請求する
- 不動産を独り占めされたときの対処法
- 遺産分割で揉めないためのポイント
- 親の遺産を独り占めまとめ
遺産の独り占めが生じやすい例
まずは、遺産の独り占めが生じやすい場合について、事例ごとに詳しく紹介していきます。
相続人が被相続人と同居している場合
相続人が故人と同居していたケースでは、故人の遺産がどの程度あるのか把握しやすくなります。
相続人が金銭的に困っている場合、故人の遺産を自分のものにしたいと考える人もいるでしょう。
例えば、他の相続人が知らないところで故人のタンス貯金に手を出していたり、故人の預金を引き出していたりなどのケースが実際にあるようです。
このようなことを繰り返しているうちに、故人の遺産を独り占めしている状況になるケースが大いにあると考えられます。
親が認知症などで正常な判断ができない状態の場合
親が認知症や脳疾患を患い、認知機能や判断能力が低下していた場合には注意が必要です。
例えば相続人が複数人いた場合には、そのうちの1人に遺産が集中するように故人を説得して遺言書を書くように促すようなケースがあります。
この結果、親の残した遺言書の通りに遺産相続が行われた場合には、1人の相続人が親の遺産を独り占めする形になってしまいます。
特定の相続人が介護をしていた場合
特定の相続人が親の介護をしていたケースでは、トラブルになることが多いようです。
例えば、親の遺産を兄弟3人で分ける場合に、長男が長年親の介護をしていたとします。
このようなケースだと法定相続では、原則として遺産を兄弟で平等に分けることになります。
しかし長年お世話をしてきた長男からしてみれば、平等に分けるとなると納得がいかない場合もあるでしょう。
これを他の相続人である兄弟に訴えた際に、他の兄弟は親の介護を任せっきりにしていた手前、肩身が狭くて何も言えない状態になります。
結果として、そのまま長男が遺産を独り占めしてしまうようなケースはあるようです。
古い考え方に囚われている場合
地域によっては、遺産は一家の家長となる長男に全て譲るといった考え方を古くからもっているところもあります。
現代では、法定相続分に沿って遺産を相続分割していくケースが多いのですが、中には未だに長男が遺産を相続することが自然であると考える人もいます。
地域によっても異なりますが、古くからの風習を大切にしている地域などでは、長男による遺産の独り占めの状態が生じやすいといえるでしょう。
成年被後見人の権利を悪用された場合
成年後見人とは、認知症や知的障害などの何らかの理由で十分な判断能力がない人をサポートする立場の人のことです。
成年後見人になるためには、家庭裁判所に申し立てをする必要があります。
成年後見人の役割として、成年被後見人の財産の管理などもサポート内容に含まれています。
そのため、故人に成年後見人がついていた場合には、遺産の独り占めをされてしまう場合もあるようです。
近年では遺産の独り占めを目的に、成年後見人制度が悪用されるようなケースも増加しています。
本来は、成年後見人は収支状況を定期的に報告する義務があり、財産を好き勝手には使用できません。
しかし実際には、成年後見人による横領などが多発しており、問題となっています。
遺産の独り占めを未然に防ぐ方法

遺産の独り占めを未然に防ぐには、どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、事例ごとに対策を説明していきます。
相続人が被相続人と同居している場合
相続人と被相続人が同居している場合は、独り占めしようとしている相続人が簡単に財産に手を出せないようにすることが大切です。
例えば、他の相続人が被相続人の自宅を頻繁に訪問して十分なコミュニケーションを図り、良好な関係性を築くことが必要です。
同居する相続人に、他の相続人の目があることを意識させれば、財産隠しや独り占めの予防につながります。
親が認知症などで正常な判断ができない状態の場合
遺言書自体を不正に書かせることを予防するのは、実際問題難しいかもしれません。
しかし、遺産を独り占めされないように対策することは可能です。
もし不正に書かせた遺言書があったとしても、遺留分侵害額請求権を使えば遺産の独り占めの対策ができます。
遺留分とは、相続人が必要最低限もらえる遺産の相続権のことです。
遺言書などで必要最低限の金額も分割されなかった場合は、遺留分を請求して取り返しましょう。
特定の相続人が介護をしていた場合
特定の相続人が介護していたケースでは、その相続人には寄与分を請求する資格があります。
長年の介護などで献身的に介護していた場合に、他の相続人よりも多めに遺産を相続できる制度です。
ただし、この寄与分には条件があり、認められるケースは少ないのが現状です。
特定の相続人が介護をしていた場合は、寄与分請求の判定結果を伝えて、納得してもらうことも1つの方法です。
もしくは遺産相続の以前の問題として、1人に介護を任せきりにする状態が起きないように相続人同士で協力体勢を整えておくことが大切です。
日頃から協力して関係性を良好に保っていれば、このようなトラブル自体が発生しません。
古い考え方に囚われている場合
古い考え方にとらわれている人には、何を言っても聞く耳を持ってもらえない場合もあるでしょう。
いくら周りが説得しても内輪揉めになってしまい、丸く納めることは難しいかもしれません。
説得しても解決しない場合は、最終手段として第三者である弁護士に依頼する方法があります。
弁護士は専門的な知識のもと、冷静に判断して対応してくれます。
相続人間でどうしても解決できない場合は、依頼を検討してみましょう。
成年被後見人の権利を悪用された場合
成年後見人の権利や制度を悪用されるのを防ぐためには、後見監督人をつけるのがおすすめです。
この後見監督人には、成年後見人が不正を起こさないように監視する役割があります。
後見監督人をつけるべきか判断するのは、家庭裁判所になります。
法的な知識をもとに事情を十分に説明しなければならず、難しい取引きが必要なこともあります。
そのため、このようなケースでは専門家である弁護士に申し立てを依頼するのがおすすめです。
成年後見人が成年被後見人を代理して売買契約などを行う際には、後見監督人が調査をしたり、成年後見人に状況を報告をするように求めたりする権利があります。
また、成年後見人が利益を生じるようなケースでは、成年後見人の代わりに後見監督人が契約を行うことも可能です。
後見監督人をつければ、成年後見人が不当な利益を得ることを防げます。
預金・不動産・株を独り占めされないために

次に、預金や不動産、株を独り占めされないようにするための対策を紹介していきます。
項目ごとに紹介していくので、参考にしてください。
銀行預金
銀行預金を独り占めされないようにするには、被相続人の死亡後、できるだけ早く銀行に死亡したことを伝える必要があります。
死亡したことを伝えると口座が凍結されるので、勝手に預金を引き出すことはできなくなります。
不動産
不動産の所有権を移すためには、権利証や実印が必要になります。
被相続人名義の不動産がある場合は、勝手に所有権移転登記されるのを防ぐために、権利証や実印を確保しておきましょう。
万が一権利証や実印が見つからない時は、独り占めしようとしていた相続人がすでに確保していることも考えられるため注意が必要です。
独り占めが疑われる場合には、法務局に「不正登記防止申出」をすれば最悪の事態が防げます。
この申出から3カ月以内にもしも登記申請があった場合には、法務局から連絡が入るようになるので安心です。
株
被相続人が生前に株取引をしていた場合は、資産状況の確認のため、亡くなったらできるだけ早めに証券会社に連絡しましょう。
なぜなら、相続人が株式を利用するためには、名義書換の手続きが必要になるためです。
名義書換をするためには相続人全員の印鑑証明が必要であるため、一般的には株を独り占めすることは難しいでしょう。
ただし、印鑑証明書や実印を偽装して勝手に名義書換されてしまうこともあり得ます。
被相続人の株取引の内容や資産状況をまずは把握しておくことが大切です。
勝手に名義書換され、使い込みが起こった場合には横領の証拠として使えます。
独り占めされた際は不当利得返還請求する
ここからは、遺産を独り占めされた場合の対応について紹介していきます。
不当利得返還請求について以下で詳しく説明していくので、ぜひ参考にしてください。
不当利得返還請求とは
親の遺産を独り占めされた場合、本来は相続できるはずであった遺産の相続権利を侵害されたことになります。
相続権利を侵害された時は、遺産を独り占めした人に対して「不当利得返還請求」と呼ばれる請求が可能です。
不当利得返還請求をすれば、侵害された分の遺産が返還されます。
遺産を独り占めされた場合の最も一般的な対処方法です。
参考:共有不動産を独り占めされたら不当利得返還請求で賃料を請求!やめたほうがいいケースも紹介 | 訳あり物件買取プロ
不当利得返還請求で取り戻せる金額
不当利得返還請求で請求できる金額としては、残っている利益の範囲内になります。
この利益を現存利益といいますが、これには注意点があります。
例えば、ギャンブルや趣味などで散財してしまったケースでは、利益が残っていないと考えられます。
一方で家賃や光熱費などの生活費のために使用した場合には、自分の財産から支払わずに済んでいるので利益が残っていると考えられます。
ただし、独り占めした相続人が悪意を持って本来受け取れない遺産を手に入れたケースなら、残存利益だけでなく、利益全部に利息を加えて請求できます。
不当利得返還請求を行える要件
不当利得返還請求には要件があり、以下を満たしていなければいけません。
「他人の財産または労務によって利益を受け、損失が生じていて、その利益と損失の間に因果関係があり、利益に法律上の原因がない場合」に請求できます。
以下に、具体例を挙げて紹介しましょう。
例)預金の使込み
例えば、親の残した遺産である預金を3人兄弟である次男が勝手に使い込んでいたとします。
このようなケースでは、次男は親の遺産により利益を受け、他の相続人である兄弟に損失が生じています。
次男は勝手に預金を使い込んでいるため、兄弟間で利益と損失の間に因果関係があることは明らかです。
これは、贈与などの法律上の原因により得られた遺産ではないことになります。
親が亡くなる前であれば、預金を使われた親自身が不当利得返還請求を行うことになります。
親が亡くなった後には、他の相続人である兄弟が不当利得返還請求を行えます。
不動産を独り占めされたときの対処法
ここからは、事例を挙げながら不動産を独り占めされたときの対処方法について紹介していきます。
例えば、母親、長女、次女の3人家族のケースを例に挙げます。
母親と次女が同居していたケースで母親が亡くなり、次女が実家である不動産を独り占めしていたとします。
このような場合、次女を実家から出て行かせることは、必ずしもできるわけではありません。
まずは、遺産分割協議や遺産分割調停にて実家の分割の方法を話し合います。
話し合いの結果、次女が実家を遺産として取得することになった時には、次女は長女に対して代償金を支払う必要があります。
もし次女が代償金を長女へ支払うことを拒んだ場合は、家庭裁判所で調停や審判を申し立ててください。
しかし、次女に金銭的余裕がなく、長女への代償金を支払う能力がないようなケースも実際にはあるでしょう。
このような場合には実家を売却し、法定相続分に従って相続人が売却したお金をそれぞれ受け取ることになります。
次女が実家の売却に応じなかったとしても、審判になれば実家の競売命令が出るので安心してください。
遺産分割で揉めないためのポイント

最後に、遺産分割で揉めないためのポイントについて紹介していきます。
対策を知っておけばトラブルを防ぐことにもつながるので、参考にしてください。
相続財産の全容を相続人全員が把握する
まずは、相続財産がどのくらいあるのかを相続人全員で把握しておく必要があります。
他の相続人が知らない財産があったとすれば、余計な疑いを持たせてしまい、相続トラブルにつながってしまう可能性があるためです。
たとえトラブルまでいかなくても、疑惑を持ちながら相続についての話し合いを進めてしまうと、良好な話し合いができません。
また、スムーズに進めることも難しくなってしまうでしょう。
相続分割する際には、事前に財産の調査を行うことが大切です。
しっかりと名寄帳や残高証明書などの証拠となるものを集めた上で、財産目録を作成することがポイントになります。
法定相続分をベースに分割する
相続分割については、相続人の中でもさまざまな思いや希望があるでしょう。
お互いの言い分があるのは理解できますが、まずは法定相続分に従って話し合いを進めるのが大切です。
法定相続分にて最低限の相続分が確保されていれば、納得しやすい状況になり、円滑に話し合いを進めることにつながります。
また、遺産分割調停でも法定相続分が配慮されます。
まずは法定相続分をベースに、遺産の分割を考えていきましょう。
不動産等から分け方を決める
故人の遺産に不動産が含まれていたケースでは、どのように分割すれば良いのか迷ってしまうことも多いかもしれません。
一般的に不動産は遺産全体に占める割合が大きいのですが、簡単に分割できないためトラブルにつながることが多いといえます。
遺産を分割する場合はまず、分割することが難しい不動産の相続について先に決めることをおすすめします。
不動産の分割さえ先に決めてしまえば、後々他の預貯金などの遺産で利益を調整しやすくなるからです。
どうしても取得したい財産がある場合その他の財産はあきらめる
相続人の中には、特定の財産に対してどうしても譲れないなどの思いを持っている人もいるでしょう。
個人的な思い入れや現在の環境、利便性を考慮しているケースが多いようですが、こういった意見は必ず他の相続人に先に伝えておくようにしましょう。
相続分割の話し合いが進んでいたところに後から言われても、他の相続人は困ってしまいます。
また、1から話し合いをし直すことも非常に大変です。
たとえ言い出しにくかったとしても特定の財産の取得を希望しているのであれば、できるだけ早めに主張することが大切です。
また、特定の財産の取得を優先するのであれば、その代わりに自分が相続する割合を減らしたり、代償金を支払ったりするなどして譲歩する必要があります。
譲れるところはお互いに譲ることで、今後の良好な関係性を保つことにもつながります。
自分の主張ばかりせず相手の意見にも耳を傾ける
法定相続分が基本にはなりますが、実際には他の相続人よりも多くの遺産を手に入れたいばかりにトラブルになるケースがほとんどです。
これには生前に故人の介護をしていたケースなど、さまざまな理由が関係しています。
自分の言い分が必ずしも他の相続人にとっても同じであるとは限らないのが実情です。
例えば、同居して故人の介護をしていたとしても、その分同居中の家賃や生活費は援助してもらっていたのではないかと、とらえられるケースもあります。
介護していた本人からすれば納得のいかない意見かもしれませんが、自分の主張ばかりしていては話し合いは一向にまとまりません。
相手の意見にも耳を傾けて、妥協できるところはお互いに妥協案を見つけていくことも必要になります。
合意内容を遺産分割協議書に記載しておく
遺産分割協議にて決定した相続の内容については、遺産分割協議書にてしっかりと記録を残しておくことが大切です。
遺産分割協議書があれば遺産分割内容の証明になるため、後々のトラブル防止にもつながります。
また、金融機関の解約・払い戻しや不動産の名義変更などの手続きにおいては、遺産分割協議書の提出が必要なケースも多く見られます。
遺産分割の話し合いがまとまり次第、できるだけ早めに遺産分割協議書を作成しておきましょう。
親の遺産を独り占めまとめ

ここまで親の遺産を独り占めされた場合の対処法を中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 相続人が故人と同居していたケースでは遺産の独り占めが起きやすい
- 遺産の独り占めを目的に成年後見人制度が悪用されるようなケースが増加している
- 被相続人の死亡を伝えることで口座が凍結され勝手に預金を引き出すことを防げる
- 遺産を独り占めした人に対しては「不当利得返還請求」が可能である
- 遺産分割では妥協できるところはお互いに妥協案を見つけていくことも必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。
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