死亡後の手続き
死亡届を出したのに実は生きていた?失踪宣告・認定死亡について解説
更新日:2022.04.29 公開日:2022.05.15

記事のポイントを先取り!
- 死亡届を出した後に生きていることはありえない
- 失踪宣告後に生存が分かった場合は手続きが必要
- 認定死亡と失踪宣告は似ているが異なる
家族が死亡した際に提出する、死亡届についてはご存知でしょうか。
死亡届の提出後、亡くなったと思っていた家族が生きていた場合の対応も知っておくことは大切です。
そこでこの記事では、死亡届を出した後に生きていた場合について解説します。
この機会に、失踪宣告や認定死亡についても覚えておきましょう。
後半には、失踪宣告の手続き期間の計算方法についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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死亡届とは

死亡届とは、ひとりの人間の死を公的に認めるための届出です。
死亡届が受理されたということは、公的にその方が死亡したことを証明しています。
死亡届を提出することで戸籍にある故人の名前を除名する手続きが可能です。
他にも、故人の死を証明しなければならない手続きにおいて、死亡届が必要な場合もあります。
死亡届は任意のものではなく、死亡を知ってから7日以内の提出が義務化されているので注意しましょう。
死亡届の提出資格は、同居またはアパートなどの大家にあたる人で、より故人と親しい人が優先的に義務を課せられます。
期限を過ぎた場合には罰則などもあるので、故人の死が分かったら、早急に死亡届提出の手続きに取り掛かりましょう。
死亡届の提出後に生きていることはありえない
死亡届には、故人の死について詳細に記載する義務があります。
その内容は没年月日から死亡場所、死亡した時間などに加えてさまざまな情報が必要となるのです。
上記のような内容については、死の事実が確定できていないと不可能と言えるでしょう。
また、死亡届の提出時には特定書類の添付が必須となっています。
死亡届に添付する書類は、死体検案書あるいは死亡診断書です。
故人が入院などをしていた場合には、担当していた医師によって作成される死亡診断書、事故や事件などによる死亡の場合は死体検案書を警察医などが作成します。
これらは故人の死が認められて初めて作成可能となる書類であることから、死亡届を提出できる状況では故人の死が医学的に認められているのです。
記載内容や添付書類から考えても「死亡届が提出された後に故人が実は生きていた」などということはありえません。
失踪宣告後に生きてたというケースはある
死亡届は故人の死が断定できている場合のみ提出可能なものですが、失踪後に一定期間を過ぎた場合にも、法律的に故人が死んだことをみなす制度があります。
この場合は、死の事実を判明できていない間に死亡が認められるため、後になってから故人が生きていたというケースも発生するのです。
失踪宣告とは
失踪宣告とは、ひとりの人間の行方がわからなくなった後に、一定期間の経過を理由に法律上の死を認める制度です。
決められた期間を経過したのち、故人と利害関係にある人物が申し立てることで失踪人の名前が戸籍から除名されます。
上記における利害関係にある人物とは、相続人や財産管理者、配偶者など、故人の死を要因として法律上で利益を得ている人物です。
この失踪宣告には2種類のケースがあるので、以下で説明します。
普通失踪
普通失踪とは、行方不明となった人物について7年間経過しても生存を認められなかった場合に、その人物は死んでいると法律的に認めるものです。
行方不明となってから7年が経過した時点から、利害関係にある人物が家庭裁判所に申し立てることで普通失踪の手続きが行われます。
特別失踪
特別失踪とは、戦争や大地震などの災害に遭遇し行方不明となった人物が、その災害の危機が去ってから1年後に、法律上でその人物の死を認めるものです。
この場合の危機が去ってからというのは、戦争であれば終戦、大地震や津波などであれば揺れが収まったり水が引いたりした日からとなります。
災害の危機が去ってから1年が経過した時点から、利害関係のある人物が家庭裁判所に申し立てることで特別失踪の手続きが行えるのです。
失踪宣告を取り消すことはできる?
普通失踪・特別失踪のいずれの場合でも、失踪人の死が判明できていない以上、後から生存が認められることもあります。
こうした場合は「失踪宣告取消の申立書」を家庭裁判所に提出して申し立てることで、法律上の死を取り消して戸籍に失踪人の名前を戻すことが可能です。
生存者が本人であることを証明できれば、基本的には失踪宣告取消の申し立てが拒否されることはありません。
生きていた場合財産はどうなる?
失踪宣告では故人が戸籍から除名されることもあり、相続なども可能となり手続きが進められているケースがほとんどです。
失踪者の生存が申し立てられた場合には、死を起因として発生する権利の移動や手続きのすべてがなかったものと扱われます。
そのため、相続した財産については返還義務が発生します。
基本的な相続財産については返還義務が発生するものの、財産の用途や状況によって返還義務が発生しないものもあるので注意しましょう。
返還義務の生じない財産は大きく分けて2種類あり「現に利益を受けている限度以外の利益」と「善意で為された行為における利益」が該当します。
現に利益を受けている限度以外の利益
現に利益を受けている限度とは、相続人が本来自分の資金を使う予定だったものを、失踪人の財産を用いることで使わなかった場合です。
生活費や借金返済などに相続財産を用いた場合には、その財産分も返還しなくてはなりません。
逆に、娯楽用品や新調不要であった家具家電などの購入に使った場合などにおいては、その財産に関する返還義務は発生しません。
善意で為された行為
善意で為された行為というのは、失踪者が生きている事実を知らなかった場合に行われた財産の移動をさします。
この場合、財産の移動に関わった全員が失踪者の生存を知らない必要があるので注意してください。
例えば、相続した土地を売却した場合に相続人と購入者の両方が失踪者の生存を知らない場合は、購入者には返還義務が発生しません。
しかし、相続人または購入者のいずれかが失踪人の生存を知っていた場合は、両者に返還義務が発生してしまいます。
上記のいずれのケースについても、詳細を知りたい場合は専門家に相談することをおすすめします。
残された配偶者が再婚していた場合は?
失踪宣告が行われた失踪者は戸籍から除名されるため、婚姻関係も取り消されます。
もし失踪者に配偶者がいた場合は、失踪宣告が行われた時点で再婚も可能となるのです。
再婚していなかった場合については、失踪者が生存の事実を申し立てて戸籍に復活した場合、婚姻関係も復活します。
しかし、失踪宣告後に失踪者の配偶者が再婚していた場合、失踪者の生存をいつ知っていたかで対応が異なります。
■失踪者の配偶者およびその再婚相手の両者が、再婚時点で失踪者の生存を知らなかった場合
失踪者の婚姻関係は復活しません。
再婚後の婚姻関係のみが戸籍に残り、失踪者の婚姻はなかったものとなります。
■失踪者の配偶者またはその再婚相手のいずれかが、再婚時点で失踪者の生存を知っていた場合
失踪者の婚姻関係が復活します。
この場合は失踪者の配偶者は重婚状態となるため、失踪者との離婚か再婚相手との婚姻関係の取消手続きが必要です。
場合によっては罪に問われる可能性もあるため、不安な場合は専門家への相談も考慮すると良いでしょう。
失踪宣告と認定死亡の違い

認定死亡とは、多くの場合が災害時などにおける行方不明者に対し、死亡していると確定するものです。
その内容は失踪宣告に良く似ていますが、詳細部分において違いが生じています。
失踪宣告と認定死亡について、内容の違いを解説します。
根拠となる法律が異なる
死亡宣告は民法、認定死亡は戸籍法に基づきます。
いずれの場合も失踪者は戸籍から除名されますが、死亡宣告は死亡とみなし、認定死亡は死亡と推定しているのです。
それぞれの根本的な違いとして、死亡宣告は失踪者の生存が不明な場合に行われ、認定死亡は失踪者の生存が限りなく低い場合に行われるものと思っておけば良いでしょう。
手続き方法が異なる
死亡宣告は利害関係にある人物が家庭裁判所に申し立てることで、失踪者を戸籍から除名します。
対して認定死亡は、災害の状況などを把握したうえで官公庁が死の可能性を判断し、各自治体に報告することで失踪者が戸籍から除名されるのです。
死亡認定までの期間が異なる
死亡宣告と認定死亡では、死亡したと判断されるまでの期間が異なります。
死亡宣告は普通失踪で7年、特別失踪で1年の経過を基準に申し立てできます。
対して認定死亡に明確な期限はなく、多くの場合は3ヶ月程度で失踪者の死亡を認めて手続きを進めていくのです。
生存が認められたときの手続きが異なる
生存が判明した際も、それぞれ異なった手続きが行われます。
死亡宣告の場合、生存が認められた後に利害関係にある人物または本人が家庭裁判所に申し立てなければなりません。
対して認定死亡は、失踪者の生存が認定されて関係者に伝わることで、本人などの申し立てもなく自動で戸籍が復活します。
失踪宣告の場合の各種手続き期間の計算方法

相続ではさまざまな手続きがありますが、多くの手続きで期限が定められています。
失踪宣告による相続権が発生した場合であっても、その手続きや期限に大きな違いはありません。
ただし、失踪者の死を直接知ったわけではないので、相続の開始日などに不安を覚える方もいるでしょう。
相続開始日や相続税の期限について解説します。
相続開始日
一般的な相続開始日は、故人の死を知った時点です。
多くの場合は故人の命日が相続開始日となりますが、正確な命日がわからない失踪宣告では別の基準があります。
また、失踪宣告の中でも普通失踪と特殊失踪のそれぞれで期限が異なるので注意しましょう。
普通失踪の相続開始日
普通失踪は、行方不明になってから7年後が相続開始日となります。
普通失踪の場合は、失踪宣告が可能となった日が相続開始日になると思って良いでしょう。
特殊疾走の相続開始日
特殊失踪は、危機が去った日が相続開始日です。
特殊失踪において死亡したのであれば危機が死因となるため、死亡しているのであれば危機が去った時点ですでに死亡していると判断されると思っておきましょう。
あくまで危機が去ってから1年後が特殊失踪の際の失踪宣告が可能となる日であるため、手続きの際は間違えないようにしてください。
相続税の申告期日
相続税の申告期日は、自分に相続権があることを知ってから10ヶ月です。
一般的な相続では、多くの場合が故人の命日より10ヶ月となります。
ただし、失踪宣告の場合は若干異なるので注意しましょう。
上記の要件に従うのであれば、失踪宣告が可能となった日から10ヶ月が相続税の期限となります。
しかし失踪宣告の場合は「失踪宣告の審判が確定し、その事実を知った日から10ヶ月」です。
失踪宣告が申し立てられ受理されたのち、その失踪宣告が認められることで相続税の期限を数えます。
いずれにせよ相続前の延納は罰則や過料の対象となるため、期日内に納税するようにしてください。
死亡届を出した後に生きてた場合まとめ

ここまで失踪宣告についての情報や、後になって失踪者の生存が特定できた場合について解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 死亡届を提出した後に生きていることはありえない
- 失踪宣告後に生存が認められた場合は、基本的な権利が復活する
- 認定死亡と違い、失踪宣告の場合は能動的に手続きしなければならない
- 失踪宣告後の相続税は審判の確定を知った日から10ヶ月
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。
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