相続
おひとりさまの相続問題とは?生前にしておくべき対策は?
更新日:2024.06.18 公開日:2022.06.07

記事のポイントを先取り!
- おひとりさまの遺産は兄弟姉妹へ
- 相続人不在時は相続財産管理人へ
- 生前の対策は法定相続人の確認等
おひとりさまの相続とはどういうことなのでしょうか。
また、おひとりさまの相続問題にはどのようなものがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、おひとりさまの相続について解説します。
この機会に、おひとりさまの相続問題について理解を深めましょう。
後半では、遺贈寄付についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- おひとりさまとは?
- おひとりさまの遺産を相続するのは?
- 誰も相続する人がいない場合
- 生前にしておくべき対策
- おひとりさまの相続でよくあるトラブルとは
- おひとりさまの選択肢「遺贈寄付」とは
- おひとりさまの相続についてのまとめ
おひとりさまとは?
おひとりさまとは、同居者がおらず生涯独身の人のことで、配偶者との離婚などが原因で一人暮らしになってしまった方々もこれに該当します。
近年では、65歳以上のおひとりさまも増えており、2015年の国勢調査では、50歳までに結婚経験がない人の割合は男性23パーセント、女性14パーセントです。
おひとりさまは、これからもますます増えてくると想定されています。
生きている間は、生活費や子供の学費などもかからず、時間もお金も比較的自由に使えるでしょう。
一方で、病気や介護が必要になった際に身の回りの世話をしてくれる人がいなかったり、万が一のことがあったりした場合は、葬儀をおこなってくれる人もいないという不安もあります。
高齢になるほど、男性も女性も経済的不安があり、さらに男性は社会からの孤立、生活能力がないなどといった悩みを持っているのです。
仮に、子供など頼れる身内が近くにいてお互いに交流があれば、本人の終活についてもあまり気にする必要はありません。
しかし、おひとりさまの中には身内とほとんど交流がなくなってしまっている人もいます。
本人が死亡したあとや要介護の状態になったときのために、対策を考えておかなければならないでしょう。
こちらの記事では子供と祖父母が過ごせる時間について紹介しているので、ご参考ください。
おひとりさまの遺産を相続するのは?
おひとりさまの遺産を相続できるのはどのような人でしょうか。
法定相続人
法定相続人は、民法で定められた被相続人の遺産を相続する人のことです。
相続の順番としては、まず配偶者が相続人になります。
配偶者以外の法定相続人(血族相続人)は、以下の順位になります。
- 子供(直系卑属)
- 親(直系尊属)
- 兄弟姉妹
さらに、法定相続分が定められています。
具体的な相続の例を見てみましょう。
- 両親が生きている場合
配偶者および子供がいない場合は、親が全財産を相続し、父母ともに健在なら、お互いに半分ずつ相続します。 - 両親が死亡している場合
両親が死亡しており、配偶者や子供もいない場合、財産は第3順位である兄弟姉妹のものになります。
兄弟姉妹が複数の場合は、法定相続分を人数で割ったものが法定相続分です。
五人兄弟なら、被相続人以外の4人で分けます。
兄弟姉妹も死亡している場合で、兄弟姉妹の子である甥や姪がいる場合は、甥・姪が代襲相続されることになるのです。
遺言がある場合
遺言書を書けば、本人の望む形で遺産を相続できます。
しかし、最低限の遺産取得分である遺留分は侵害しないよう法律で定められています。
たとえば、両親や子供が生きているのに、両親や子供以外の人に全財産を渡すという遺言は、両親や子供の遺留分を侵害していることになるので法律違反です。
ちなみに、遺留分の請求は兄弟姉妹が行うことができません。
誰も相続する人がいない場合
誰も相続する人がいない場合、財産はどうなるのでしょうか。
相続財産管理人の選任
法定相続人や財産を相続させたい人、つまり受遺者がいない場合は、検察官または利害関係人の請求により、家庭裁判所に相続財産管理人の選定を依頼します。
役割としては、相続財産の管理や、被相続人の債権者などへの清算、清算後残った財産を国庫に帰属させる手続きを行うことです。
相続財産管理人選定のケースが増えてきている理由として、おひとりさまの被相続人や相続放棄をする人が増えてきていることがあげられます。
なお、利害関係者とは以下の人です。
- 債権者
- 特定受遺者
- 特別縁故者
また、相続財産管理人の選任に必要な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申立人と被相続人との利害関係がわかる資料
- 相続財産の内訳がわかる資料
- 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手
- 官報公告料3,775円
相続債権者特別縁故者への財産分与
相続財産管理人が決まれば、以下の手順で相続債権者や特別縁故者への財産分与が行われます。
相続債権者・受遺者への弁済
被相続人の債権者から申し出があった場合は、財産は債権者へ弁済することになります。
あるいは、法定相続人や財産を相続させたい相手である受遺者に弁済します。
相続人不存在を確定する
相続人不存在を確定させるためには、管理人または検察官は、家庭裁判所に請求して半年以上の期間を定めて相続人捜索の公告をおこなわなければなりません。
特別縁故者への財産分与
被相続人と一緒に生活をしていた人や、被相続人の介護などに尽力した人が「特別縁故者」です。
過去の判例では、内縁の妻、事実上の親子、介護に努めた看護師などが特別縁故者に該当するとされています。
特別縁故者の申請が裁判所に認められると、財産の一部または全部が申請者に与えられるのです。
特別縁故者のデメリットとしては、特別縁故者の申し出の期間が限られていることと、手続きに時間がかかるためすぐに遺産を受け取ることができないことがあります。
よって、遺言書により財産を相続するほうが安心でしょう。
国庫に帰属
相続人、受遺者、債権者、特別縁故者といった財産を受け取る人がいない場合は、国庫に遺産が帰属されることになります。
国庫に帰属することを避けるためにも、誰に財産を引き継いでもらいたいのかを生きているうちに決めておくべきでしょう。
生前にしておくべき対策

おひとりさまが生きている間に行っておくべき対策には、どのようなものがあるのでしょうか。
法定相続人の確認
最初に、本人にとって法定相続人となる人が本当にいるのか、確認することが大切です。
しかし、生きているうちに戸籍を調べてみても、直系親族までしかたどれません。
したがって、本人の兄弟姉妹、あるいは甥姪まで確認することは困難でしょう。
遺言書の作成
遺言書は、「公正証書遺言」によるものの方が間違いないでしょう。
公証役場で公証人に作ってもらうことになりますので確実です。
自筆証書遺言ですと、偽造される恐れや記載の不備で無効にされることがあるかもしれません。
また、作成する費用や手間がかかります。
周りの人には、遺言書を作成した旨を知らせておきましょう。
財産目録の作成
有価証券、不動産、預貯金、保険契約等を財産目録としてエンディングノートなどに記載しておくとよいでしょう。
エンディングノートは、本屋等で購入できます。
預貯金の生前整理については以下の記事もご参考ください。
終活/預貯金の整理
任意後見契約
おひとりさまの場合、本人が認知症になった場合のことも想定しておかなければなりません。
判断能力が低下してしまったら、施設に入るための契約や財産管理をすることもできなくなってしまいます。
任意後見契約は、親族などが申立てをすることによって成年後見人を選任することができる制度です。
本人が信用する人を選定できるという点が成年後見人と異なります。
おひとりさまの判断能力があるうちに任意後見人と任意後見契約を締結します。
そうすれば、おひとりさまが認知症になったときに、療養看護や財産管理をしてもらうことが可能です。
任意後見人は、弁護士などの専門家に依頼することもありますし、親戚や知人に依頼してもかまいません。
とは言え、全てのことを他人にまかせるのは不安でしょう。
そのような場合は、本人や親族等が請求すれば、裁判所が任意後見監督人を選任してくれます。
任意後見監督人は、任意後見人の行動を監視してくれますので安心です。
死後事務委任契約
本人の死後の葬儀などの手続きの代理権をあたえて事務処理を代行してもらう契約のことを死後事務委任契約といいます。
おひとりさまの場合には、親族がいないことが多く、いても遠方に住んでいることが多いため、身近で信頼できる人に依頼しなければなりません。
さらに、任意後見契約だけでは、本人が亡くなったあとの事務処理をするのは不可能です。
事前に死後事務委任契約を結んでおけば、死後にまわりの人に迷惑をかけないですむでしょう。
おひとりさまの相続でよくあるトラブルとは

おひとりさまの相続時によく見られるトラブルにはどのようなものがあるでしょうか。
財産の把握ができない
相続人が確定しても、おひとりさまの相続の際に、相続財産を把握できないことがあります。
おひとりさまの場合、親族や近所の人とも付き合いが希薄になっていたことが多いからです。
したがって、不動産や預貯金などの財産目録を作っておくといった準備をしておくことが必要でしょう。
また、パスワードが分からず、スマホやパソコンなどに保管されたデータの閲覧ができないといった問題も発生しています。
特に、モバイルバンキングなどをおこなっている場合は、パスワードを残しておくことが大切です。
相続人の特定が難しい
配偶者がおらず、両親や兄弟姉妹もすでに死亡している場合は、甥や姪に代襲相続される場合があります。
甥や姪が何人かいる場合、お互いに面識がなかったり、お互いに交流がなかったりすることもあるでしょう。
そのため、遺産分割協議がうまくいかず、不動産がそのままの状態で放置され、甥や姪に不動産税の請求が届くなどのトラブルが発生します。
疎遠になった親戚が相続人になる
交流のあった叔父や叔母が亡くなると、従妹との交流も薄れてくるものです。
年が経つにつれて、ますます疎遠になっていくでしょう。
このような状況の中で、遺産相続の協議をするのは困難なことです。
おひとりさまの選択肢「遺贈寄付」とは
遺贈寄付には、遺言による寄付・相続財産による寄付・信託財産による寄付があります。
それぞれどのような内容で、寄付する方法はどうすればいいのでしょうか。
遺言による寄付
遺言などにより、自分の意思による自分の財産の処分方法として「遺贈寄付」という選択肢があります。
遺言による寄付とは、本人の死後、遺産を寄付する旨を遺言にすることです。
最近はおひとりさまが増えたため、財産の一部を非営利団体等へ寄付するケースが多くなってきたことが背景にあります。
寄付により財産がなくなったとしても、死んだ後なので、自分の生活を心配する必要はありません。
遺言による寄付の手続きとしては、遺言書に非営利団体等へ遺贈することを明記することです。
被相続人が亡くなったら、遺言書に従って執行されるものの一つとして寄付の手続きがされます。
相続財産による寄付
相続財産を寄付することも可能です。
相続開始から10カ月以内に寄付すれば、相続税はかかりません。
不動産や有価証券など現金以外の寄付は売却価値がなく、換金や扱いに困るので、避けた方がいいでしょう。
相続人が自らの意思で行うこともあれば、被相続人が残したエンディングノートや手紙などによって、家族へ遺産を寄付したいと伝える場合もあります。
後者の場合は、遺族が、非営利団体等へ寄付すべきかどうかを決めます。
信託契約による寄付
信託財産や生命保険金などを寄付することを「信託契約による寄付」と言います。
信託財産や生命保険金の受取人を寄付先に指定すれば遺贈寄付が可能です。
信託による寄付は、確実に遺贈寄付が行われます。
財産は受託者のものとなり、受託者が財産を管理することになるのです。
しかし、寄付をしたい旨を遺言書に書いたとしても、寄付する財産を使ってしまったり、遺言を書き換えたり、遺言書をなくしてしまうといった懸念点もあります。
また、信託による寄付の場合、商品化された金融サービスとなっているため契約書のひな型や申込用紙などに記入するだけです。
しかし、遺言の場合は、専門家でないと正式な遺言書を作成することは困難でしょう。
おひとりさまの相続についてのまとめ

ここまで、おひとりさまの相続問題について解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- おひとりさまの遺産は兄弟姉妹が人数分に分割して相続する
- 法定相続人や受遺者がいない場合は相続財産管理人が選定される
- おひとりさまが生前にしておくべき対策として法定相続人の確認などがある
- おひとりさまの財産処分の選択肢として遺贈寄付がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。