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専門家インタビュー

人々が幸福に暮らせる社会をどう形作ってゆくか

更新日:2022.12.13

京都先端科学大学 有馬 淑子先生

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  1. 研究内容について
  2. 今後の目標について
  3. みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
  4. 今回取材に協力してくださった先生
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研究内容について

Q1.「極端化する社会―共有知識構造で読み解く集団の心理」についての研究内容とその研究成果について教えてください。



集団は、ややもすると極端になることがあります。

例えば、ネットでは炎上と呼ばれる集団いじめのような事態が観察されます。どうすれば防ぐことができるのでしょうか。

この本では、集団の態度が極端になる原因を、社会心理学で知られている集団極化現象(Moscovici & Zavalloni,1969)から検討しました。

誤解されやすいのですが、極端になると言っても、両極端に分かれるのではなく、全体として元から持っていた傾向がより明確になります。

この本では、集団は、みんなが理解しやすい文脈を共有した結果、極端になるのだと主張しています。

何について話しているのかわからないと話し合いはできませんよね。

より多くの人々に伝えようとするほど、共有可能な意味は単純にならざるを得ないでしょう。

現在のネットで起きていることは、その結果かもしれません。



Q2.その研究を行った経緯を教えてください。



集団極化現象は、話し合っている集団の平均ではなく、その集団が属している社会の平均を極端にする方向に動いていきます。

しかし私たちには、社会の平均値など知りようがありません。

なのに、なぜ集団で話し合うと、あたかも社会の平均値を知っているかのような現象が現れるのでしょうか。

そこが面白くて研究を始めました。

修士の頃はリーダーシップ研究をしていたのですが、リーダーに力を与える源は、人々の認知です。

リーダーが神格化されると怖いことになったりもします。

良きにつけあしきにつけ社会を動かす原動力は、人々が共有する認知や感情なのです。

そのような、個人の力では抗い難い、しかし、個人が社会の流れを作り出す一端を集団極化現象の中に捉えることができたのは、この研究を行う上での、大きな喜びとなりました。



Q3.「集団と集合知の心理学」についての研究内容とその研究成果について教えてください。



『集団と集合知の心理学』は、自分自身の授業の教科書として使うことを意図して執筆しました。そのため、扱われている範囲が、個人の認知から集団、集合現象、組織、インターネットと幅広い研究領域を扱っています。その中に、話題としていくつか、自分自身の研究成果も紹介させていただきました。

集団極化現象は小集団を対象とした実験研究でしたが、より厳密な実験手続きを用いる集団記憶研究、ネットワークRPGにおけるチームの観察研究、そして、本のタイトルにもなった集合知研究が紹介されています。これらの研究を通じて、私たちが知識を共有し、暗黙のうちに協力しあい、そして、社会全体の知識の流れに参加している過程を描こうと試みました。



Q4.有馬様が考える本研究の意義を教えてください。



集合知は、インターネットの領域で発見された現象と言って良いでしょう。例えば、Googleの検索は、専門家やプログラムよりも、みんなの投票(リンク)を使う方が、正しい結果が得られることを示しました。

「みんなの意見は案外正しい」(Surowiecki,2004)という著名な本のタイトルが示すように、衆愚をもたらすと考えられてきた群衆は、案外賢かったのです。

しかし、社会心理学は、愚かな行動や思考をしてしまう集団や群衆を繰り返し示してきました。その「愚かな群衆」と「賢い群衆」の整合性をつける試みをしたところがこの研究の意義になります。

結局のところ、それを決めるのは私たち自身です。一人一人が正解のない問題に自律して考える力を養うこと、それが私たちの社会を賢くすると考えています。

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今後の目標について



Q1.有馬様の研究における最終的な目標を教えてください。



やはり、持続可能で平和な世界の中で、人々が幸せに暮らせる社会をつくることです。それを、何やらお題目やら努力目標を押し付けるようなことなく、達成できたら良いなと。

自由に生きる人々が、自然に幸せな社会を作るのが理想です。人々を教化し同調させようとするイデオロギーはロクな結果をもたらしていません。

実は、集合知を生み出すためには、一斉に同じ方向を向いてはならないのです。

カリスマリーダーも規制もいらない、多様で自律した個人こそが鍵です。

しかし、その個人一人一人が、賢くならなければならない。

「お勉強」を強制することなく、楽しみながら、常に新しい知識に更新し、多様で複雑な知識構造を持つ個人と社会システムをつくる。

それが最終目標でしょうか。

Q2.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?



現在進行形で取り組んでいるのは、機械学習、いわゆるAIです。

集合知の実態は、人々から得たデータを原料にした機械学習です。

それに気がついて、60代になってからプログラミングと機械学習の勉強を始めました。

最初は何がなんだか。。という状態から徐々に成果も上がってきました。自分自身がどこまで伸びるのか楽しみ、という研究の幸せな時期にあります。

 今年から、同僚とメタバース研究を始めました。

取り組んでいるのはVR(ヴァーチャル・リアリティ)空間中の社会的相互作用に関する基礎的な実験です。

しかし、メタバースという概念は、単にVRを指すのではなく、中央のない組織、自立分散型組織をも指す言葉です。

それこそ、自律する個人がつくる幸せな社会が、メタバースで実現されるかもしれませんね。

メタバースの展開を、とても楽しみにしています。

みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言

Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。

ここまでの研究で分かったことは、自分で考える力を持つ人々が幸せな社会をつくること、多様な人々全ての考えが等価に貴重なのだという事でした。

もちろん、年齢は関係しません

おそらく、年を取るほど、多くの経験と知識を得て、何事も一言で切って捨てる事などできないなあ、と言う境地にいらっしゃる事でしょう。

そのような知識こそが、複雑な知識構造です。

上述したメタバース研究は、うまく運べば来年4月ごろに、大学にメタバース研究所を作っていただけるかもしれません。と言っても、メタバースですから、バーチャルで、リーダーのいない、全員が平社員(?)の組織になります。

最初は同僚と、徐々に、大学を引退された研究者を呼び込み、最終的には、研究をしたい方なら誰でも入れる組織にできれば良いなと夢想しています。

いつになるやらわかりませんが、そのような機会を目にされましたら、ぜひ、ご参加ください。

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今回取材に協力してくださった先生

有馬 淑子さん

京都先端科学大学 人文学部 心理学科 教授

略歴

 2013年4月 – 現在
京都先端科学大学 人文学部 教授 
  2000年4月 – 2013年3月
京都学園大学 人間文化学部 准教授 
  1996年4月 – 2000年3月
プール学院短大・プール学院大学 国際文化学科 助教授 
  1988年5月 – 1996年3月
大阪大学 人間科学部 技官・助手 

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