専門家インタビュー
介護や福祉を「子供たちの憧れの職業」に
更新日:2022.12.15 公開日:2022.12.15
東大阪大学短期大学部 介護福祉学科 准教授 伊藤美加子様
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研究内容について
Q1.高齢者介護の研究を始めたきっかけは何ですか?
大学を卒業して約25年にわたり高齢者の介護と専門的な相談支援の仕事に従事してきました。
高齢者介護福祉施設では管理者として新人介護福祉職員を育成するにあたり、未経験者でも技術習得ができるようなさまざまな介護技術のスキルチェックシートや業務マニュアル、指導スケジュールを作成し、指導を担当する介護福祉職員がマンツーマンで約3か月をかけて独り立ちができるようにと実践してきました。
ただこの方法では指導を担当する職員それぞれの特徴がコピーされて新人に伝わり、技術面に個体差が生じてくることがわかりました。
また言葉ですべてを表現して伝える介後技術は,伝える側と受ける側の「感覚」にずれが生じ、「教えたつもり」「わかったつもり」の介助方法になっており、要介護者(高齢者)に負担のかかる介助を行っていることが懸念されました。
そこで熟練の介護福祉職員のもつ「介護のコツ」がより具現化・可視化できることでもっと短期間により簡単に確実な介護技術習得につながる教育支援ツールが作れないかと考、働きながら大学院の博士課程に入学して介護技術の動作研究を始めることになりました。
Q2.これまでに行った高齢者介護の研究で最も社会に役だったと思う研究は何ですか?
私は常々、介護技術の中で事故を予防する最大のポイントは「見る」事だと考えてきました。
これまでの実験の中でも「食事介助時に見ている箇所が経験値によって違うのか」を検証する研究があり、新人介護福祉職員と熟練の介護福祉職員では同じように「見ている」つもりが実際は経験の浅い介護福祉職員は視線が外れている度合いが大きいという結果があり、少しの過信が事故を引き起こす要因にもなり得ることがわかりました。
今年度から科学研究費助成事業を使用して新しい食事介助中の「見ている箇所」を検証する研究もはじまっています。
この研究をより深く進めていくことで、より安全にスマートに食事介助の技術と見るべきコツを提唱できると思います。
Q3.ため込み症候群とは何ですか?読者の人にもわかりやすいように教えて下さい。
「ためこみ症」とはいわゆる「ごみ屋敷」と呼ばれるような、特定の物や他人から見れば不要な物にしか見えない物を抱え込んで、自宅などにため込んでいる状態のことを言います。
現代はさまざまな研究がなされており、その原因は認知症や精神疾患、脳疾患により脳の一部を損傷した方や学習障害の1つである多動障害とされる方にその症状が多く見られると言われています。
今では悪臭や火災への心配など地域社会を巻き込んで大きな社会問題にもなっています。
先日の報道でも環境省が各自治体へのごみ屋敷の実態数把握を行うとあるなど,関心の高いテーマではないでしょうか。
Q4.両親など身近なひとにため込み症候群の兆候がみられた場合、周りの人が改善のためにできることは何ですか?
今までと違う様子があるなら、認知症などの病気を発症している可能性も高いと考えられますので、専門医の受診をお勧めいたします。
また認知症だけでなく老人性うつ病など別の病気が隠れていることもありますので、65歳以上の高齢者であればお近くの地域包括支援センターや社会福祉協議会など身近な相談窓口に気軽にご相談され、専門の医療機関などをできるだけ早期に受診されることをおすすめいたします。
今後の目標について
Q1.伊藤様の研究における最終的な目標を教えてください。
現在の研究内容からは大きく飛躍しますが、私が教員を目指した目標は、小さな子どもたちが「憧れる職業」として「介護や福祉の人になりたい!」といってもらえるような社会をつくることです。
そのためには、介護や福祉の面白さや奥深さをもっと広く発信し、10代の方に興味を持ってもらう研究活動と取り組みを進めるとともに、より専門性の高い知識と技術を身に着けることを必須とし「有資格者のみ従事できる仕事」にしていきたいです。
Q2.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?
今年度と次年度は食事介助を行う際の介護福祉職員の「目線」に関する研究を進めていきます。
その後は「ため込み症」という症状を抱える当事者の脳内変化や心理について、ため込み症の方と対局に位置する強迫性障害の方、異様な潔癖症の方の脳の反応との違いなど、新しい研究分野を開発していきそれぞれの発症のメカニズムの違いを解明していく研究を行いたいと考えています。
みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。
ご自身の体の変化、高齢になる親の動きの変化や反応の変化にどうしても理解が追い付かず、「なんで、こんなこともできなくなったのか…」と否定的にとらえてしまう方も多いのではないでしょうか。
私はよくご相談をいただいた時に「できないことを数えるのではなく、今できていることや少し工夫すればできそうなことを一緒に考えましょう」とお伝えしています。
何事もプラスに変えて考える習慣をおすすめします。
そして、迷わずに専門家に相談することです。
介護のことや暮らしのことを身近に相談ができる地域包括支援センターなどを上手に利用してください。
取材に協力してくださった先生
所属先url
東大阪大学・東大阪大学短期大学部 (higashiosaka.ac.jp)
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