専門家インタビュー
地域相互協力を通じて高齢者防災システムの構築をしたい
更新日:2022.12.16 公開日:2022.12.16

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研究内容について
Q1.「高齢者および災害時要援護者に配慮した避難所運営のための地域防災対策支援方法の構築」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
研究の目的は、高齢者および要配慮者に配慮した避難所運営を地域住民ができるようになるための支援方法を構築することです。
支援方法には、支援プログラムの開発と住民らの活動を支えるサポート体制の構築が含まれています。
研究内容としては、まず、対象地域の要配慮者に関する実態調査を行い、防災上の課題を明らかにしました。
次に、実態調査の結果を踏まえ、住民と共に避難所運営マニュアル(以下、マニュアル)を作成しました。
最後に、完成したマニュアルを用いて避難所運営訓練を実施してマニュアルの実用性を評価しました。
マニュアル作成は、ワークショップ形式で行なうことにより、住民同士が話し合いながら進められるようにしました。これにより、地域の実情を踏まえた実用性の高いマニュアルを作成することができます。
本研究の成果として、要配慮者に配慮したマニュアル作りのためのワークショッププログラムが作成されたこと、それにより地域の実情に応じた実用性のあるマニュアルが作成されたこと、また、ワークショップを通じて避難所運営における住民の自己効力感および自信が高まりました。
Q2.その研究を行った経緯を教えてください。
国は、高齢者、障がい者、乳幼児その他の特に配慮を要する者を「要配慮者」として、災害発生時に特に被害を受けやすい対象として日頃から必要な対策を講じるよう定めています。
研究対象地域は過疎高齢化が進んでおり、高齢化率は40%~50%でした。
また、この地域は、南海トラフ地震に伴う大津波が予測されており、被害予測も深刻です。
過去の大規模災害による災害関連死の8割~9割は高齢者や要配慮者であり、これらの人々は、避難後の避難所生活において早期に健康障害を引き起こしやすく、災害関連死に発展しやすいです。
災害関連死は、「防ぎえた死」と言われており、健康を害する要因と発生しうる問題を想定した対策を講じておくことで防ぐことができます。
大規模災害時の避難所運営は、住民が行なうことになっていますので、高齢者や要配慮者に配慮した避難所運営を行うためには、平時から避難所運営を行う住民同士がこのことについて話し合い、対策を講じておく必要があります。
しかし、高齢者や要配慮者への支援については、専門的な知識も必要であること、要配慮者の視点を入れ込んだマニュアルの作成を住民だけで進めることは困難であることから、研究の一環として実施することにしました。
Q3.「地域互助力強化を基盤とした持続可能な高齢者防災システムの構築」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
研究の目的は、地域の若い世代から中高年までの多世代を巻き込んだ地域互助力(住民同士の助け合いの力)の強化を基盤とした持続可能な高齢者防災システムを構築することです。
研究では、防災対策の中でも災害リスクが高い高齢者防災に焦点を当てています。
中高生から中高年までの多世代で構成された高齢者防災サポーターを育成し、地域に根付いた防災活動を平時から継続的に展開できるようにすることで、将来の大規模災害によるリスク低減につながることを期待しています。
研究内容としては、中高生および中高年を含む住民を対象に、高齢者防災に関する研修会を開催し、高齢者防災における平時の準備、避難支援、避難所支援に関する知識や技術が習得できるようにします。
その際、地域の高齢者防災のあり方や方法について多世代がディスカッションしながら合意形成していけるようワークショップ形式で進めます。
その後、育成した高齢者防災サポーターにより、地域において防災活動を実施し、防災活動による効果を評価する予定です。
なお、本研究は現在進行中であるため、まだ成果は出ておりません。
Q4.磯和様が考える本研究の意義を教えてください。
地域における防災の仕組みは、地域の実情を知り、地域コミュニティに属する住民自身が担っていかなければ、持続性と実効性が担保できないと考えています。
しかし、現在の地域防災システムは、自治会などに属する中高年を中心とした一部の住民が構成員を担っています。
特に、核家族化により高齢者と接する機会が少なくなった現在、今後の地域防災を担う若い世代の高齢者や高齢者支援への関心は低くなっています。
そのため、本研究では、新たな地域防災システムを構築する手続きの中に、若い世代を対象とした「高齢者および高齢者防災に関する教育」と「多世代が集まり高齢者防災対策について話し合う機会」を取り入れました。
このことによって、地域住民の互助力が強化され、住民が自らのこととして高齢者防災に取り組むことができるようになります。
また、この取組を通じて、地域コミュニティの育成につながると考えています。
今後の目標について
Q1.磯和様の研究における最終的な目標を教えてください。
我が国の高齢化率は増加の一途をたどっており、将来的に4人に一人が75歳以上になります。
また、高齢化率の進展に伴い要介護認定高齢者の割合も増加し、75歳以上では約4人に一人が認定を受けています。
介護が必要になった原因の第一位は認知症であって、2025年には高齢者の5人に一人が認知症になると推計されています。
そして、要介護者の約8割は地域で暮らしています。
これらのことを踏まえると、日本の防災対策において、地域高齢者や要配慮者の視点を欠くことはできません。
しかしながら、住民が運営する地域防災において高齢者や要配慮者への具体的な支援を取り入れることは難しく、専門者や行政等によるサポートおよび連携が必要になります。
また、地域防災を担う住民の多くは中高年であり、地域防災における次世代育成が進んでいません。
今後は、これまで構築してきた地域高齢者防災システムを拡充すると共に、その運用を通して地域の防災コミュニティの育成につなげたいと考えています。
Q2.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?
現在の研究「地域互助力強化を基盤とした持続可能な高齢者防災システムの構築」を進めると共に、高齢者および要配慮者の防災支援に特化した防災コーディネーター育成プログラムの開発に取り組みたいと考えています。
みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。
自分の人生は最後まで自分のものです。
最期をどう迎えたいか、どうありたいかについて考え、整理しておくことは、自分らしい人生を全うできることにつながると思います。
また、これまでの人生や自分らしさを改めて振り返る機会になり、その過程で人はさらに成熟すると思います。
一方、家族にとっても、親の思いや希望にそって決めることができるため、安心して悔いの無い関わりができると思います。
「終活」に似た言葉として、「人生会議」という言葉があります。
これは、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:ACP)とも言い、「もしものとき」に備えて、将来どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分自身で考え、また、あなたの信頼する人達と話し合うことを言います。
病気や事故などによって自分の意思が伝えられなくなった時に、あなたの大切にしている思いや価値観を踏まえて、家族や医療チームがあなたへの治療方針について話し合ってくれます。
例えば、延命治療を受けるかどうか、最後をどこでどのように過ごしたいのかなど、あなたが大切にしている思いや価値観について、十分に話し合っておくのも良いと思います。
ただ、人の意思は変化しますので、終活もACPも一度決めたら変えられないものではなく、繰り返し考えたり話し合ったりすることが大切だと思います。
取材に協力してくださった先生

資格・学会・役職
【資格】
看護師免許
保健師免許
【学会・役職】
日本災害看護学会 代議員
三重県避難所運営マニュアル策定指針策定委員
三重県避難所アセスメント事業感染対策担当
略歴
中京大学大学院文学研究科修士課程心理学専攻修了(心理学修士)
名古屋大学大学院環境学研究科博士課程後期課程社会環境学専攻 修了(心理学博士)
三重県立看護大学看護学部看護学科 助教
三重大学大学院医学系研究科看護学専攻 准教授
三重大学大学院医学系研究科看護学専攻 教授
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