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専門家インタビュー

終活の考現学 : 失われた「つながり」の帰趨について

更新日:2024.09.18 公開日:2024.09.18

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  1. 研究内容について
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研究内容について

Q1.「終活の考現学 : 失われた「つながり」の帰趨」の研究を始めたきっかけは何ですか?

もともとは僕の担当しているゼミ生が終活の研究をしたいと言い出したのがきっかけでした。面白そうなので『終活読本ソナエ』の編集長にお話をうかがってみようという話になり、ポケットマネーで学生の新幹線代を出してあげて一緒に編集部までお邪魔しました。

 その後、学生は無事卒業したのですが、もともと僕自身が団塊の少し上ぐらいの世代(いわゆる集団就職世代)に人気があった音楽鑑賞運動を研究していたこともあり、「もしかして同じ世代が若いころに音楽鑑賞運動にひかれていったのと同じ理由で老年期に入ってから終活にひかれているんじゃないか?」と考えて論考の形にまとめてみた次第です。

Q2.研究対象である、終活における失われた「つながり」とはどのような内容ですか?

本論考で言う失われた「つながり」とは、端的に言って「死者とのつながり」です。「死者とのつながり」とはすでに亡くなった祖先などとの精神的なつながりを意味します。

 前述の通り、この論考を書いた当初(7,8年前)、終活の中心は集団就職世代でした。彼らは若いころに田舎から都会に流入した人が多く、それゆえに伝統的な地縁から切り離された人々でした。これにともなって起こったことが死者との精神的なつながりの喪失です。

 これまでの社会学の知見で明らかになっているのは、こうした「死者とのつながり」が死を受け入れるために重要な役割を果たしていたということです。後述しますが、終活の内容を見れば、それが決して死の受容の結果ではなく、むしろ死を受け入れられない人々の間でブームになっている傾向が強いようです。したがって、本論考は「死者とのつながりの喪失」→「死の受容の困難」→「終活の流行」という論理構成になっています。

Q3.本研究の研究成果を教えてください。

本論考の大筋についてはQ2で記しましたので、以下、得られた知見を箇条書きにしておきます。
・『終活読本ソナエ』の売り上げが都市部に集中していること
 →終活ブームは基本的に都会で起こっている現象であることがわかる
・若いころに都会に来たことで、寺の檀家ではなくなり、墓も持っていない状況に不安を抱いている層が多いこと(これは編集長へのインタビューなどから明らかになりました)
・①現代において最も多い病院死が終活ではほとんど言及されないこと
 ②読者投稿欄において最も多いのが自己の生き方に関する投稿であること
 →死を直視した活動ではないことがわかる
・ただし、年齢が上がるにつれて供養や死後の処置といった話題をシリアスに語る投稿が増える。

Q4.長﨑様が考える本研究の意義を教えてください。

本研究の第一の意義は、個人の選択によって後から獲得するのが難しい「死者とのつながり」の問題を指摘したことにあります。人間が移動した先で人間関係を築き、つながりを作っていくのはある程度可能ですが、それでは解決できない問題もあるということです。

 このことは第二の意義につながります。本研究には、生まれ育った土地で生きることの意味を再考させるというインプリケーションがあるのです。グローバリゼーションや地方の過疎化といった問題はすべて人の流動性と関連しています。もちろん、どこで生きるかは自由ですし、便利で賃金の高い都会に住みたいと考えるのは人の性だとは思いますが、人間にとって本当に幸せな生き方とはなんなのかは、もう少し多角的に考えてもいいのではないかと思います。この研究はその一助になれば、という感じでしょうか。

Q5.長﨑様の研究における最終的な目標を教えてください。

最終目標といったものはないです。この研究も面白そうだからやってみたというだけで。

娯楽でゲームをしたり、スポーツをしたりするときに最終目標なんてありませんよね(笑)。それと同じです。

ただ、自分の関心でいうと、人の分かり合えなさみたいなところに興味があるのかもしれません。その意味で、普遍的な価値観などには1ミリも興味がないです。他人から見れば特殊でわけがわからないとか、圧倒的に無駄だとか、そういう風に見える人の価値観を理解し、それらが存在する理由を考えること、そしてそれらが共存する方法を考えることに人生を費やしたいと思います。

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先生の経歴について

Q1.先生の略歴を教えてください。

京都大学教育学部卒
同大学院教育学研究科博士課程修了:博士(教育学)
京都文教大学総合社会学部特任講師を経て桃山学院大学社会学部准教授へ就任
専門はコミュニケーション論、メディア史、音楽社会学など。

著作に『つながりの戦後文化誌—宝塚、労音、そして万博』『偏愛的ポピュラー音楽の知識社会学—愉しい音楽の語り方』『ラジオが夢見た市民社会—アメリカン・デモクラシーの栄光と挫折』(翻訳)などがある。

Q2.先生の資格・学会・役職を教えてください。

日本メディア学会(理事)
日本社会学会
日本ポピュラー音楽学会
日本社会教育学会

先生の所属先

桃山学院大学

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