専門家インタビュー
中世墓の変遷と火葬の需要について
更新日:2024.10.03 公開日:2024.10.03
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研究内容について
Q1.「中世墓の変遷と火葬の需要」の研究をはじめたきっかけは何ですか?
意外に難しい質問です。昔から石塔や石仏に興味があって、時間があれば見学に出かけていました。その多くは死の世界に何らかの形で関係しているもので、死後に行われる埋葬や供養などの行為も気になるところでした。大学に入り、考古学を専攻するようになり、その対象を墓に求めるのに時間はかかりませんでした。
その中で火葬にテーマを絞ったのは、火葬後に骨を拾い容器に納めることや分骨して一部を霊場に奉納するなど、今でも行っている行為の源流を知りたくなったことかと思います。
またその背景には、火葬があると気が付いたことも大きな要因だと思います。さらに、それが日本特有のものであることが多いことも研究の対象とした理由に入ると思います。
Q2.「中世に顕著となる火葬の受容」とはどんなものですか?
火葬の特徴として、急速な骨化とその骨の小片化を挙げることができます。
この現象は、骨を容器に移す、骨を簡易に運ぶ、骨を撒く、骨を分けるなど土葬では考えられない行為へと発展します。その特性を利用した宗教的な行為や物質文化が展開する、それが日本の中世における葬送文化の特色の一つに挙げることができます。
つまり納骨霊場の成立・拡大・拡散、納骨可能な石塔(仏塔)の登場、墓地の小型化と量産化などの現象が指摘でき、それに伴って大規模な納骨霊場の成立、少量の納骨を行う石塔(仏塔)の成立と拡散、分骨を受け入れる霊場寺院の拡大、同一容器への追葬や合同埋葬など、火葬を基盤とした特有の文化を生み出し、社会に浸透し、それをベースに寺院の整備や僧侶の移動、専用施設の成立等の現象がみられるようになります。
それが中世における日本固有の文化を醸成することとなり、しかもその多くは江戸時代で一度土葬の文化に回帰するも、都市部を中心に火葬は残り、霊場も形をかえた納骨の姿を生み出します。そしてそれらは現代の葬送墓制にも深く根付いていると言えます。
Q3.「中世墓の変遷と火葬の需要」の研究成果を教えてください。
納骨霊場研究では、高野山奥之院における納骨霊場成立の背景や時期を明らかにし、それが地方へと拡散して各地で納骨霊場寺院の成立がみられました。
また農山村では中世に入ると墓地の整備に伴ってその墓地の中心となる総供養塔が成立し、その多くは地下に多数の火葬骨を随時埋葬できる構造になっていることが注目されます。しかもその石塔が奈良県を中心とした近畿地方に今も多く残存し、中世の風景を伝えていることも研究に深みを増す重要な要素と言えます。
また、高僧の墓所では弟子も同様に火葬され、自分自身の遺骨を師匠の遺骨と同一容器に埋納することを懇願したり、骨に真言や陀羅尼を書写したりする事例が確認され、当時の人々の思想に触れることが出来る点も重要です。
さらに石塔内に納骨を可能としたことで、大形石塔の造営と遺骨埋納をセットして武士の一族墓の形成が始まることなどが明らかになり、これに石塔の変遷研究を加えることで石塔の小型化・量産化・簡素化の傾向を見出すことが出来ました。
それは宗教的な側面だけでなく、石塔の商品化や石材の流通問題にも言及できるようになった点も成果の一つに加えられるでしょう。
Q4.「中世墓の変遷と火葬の需要」の研究の意義について教えてください。
Q3で説明したような事象の多くは、現代の墓制にもつながるものがあり、あるいは歴史の中で一旦消滅した行為もその背景に火葬があることで現代的な課題と共通し、現代にまた同じような行為が復活しようとしていることなど、火葬の受容から現在に至る長い時間を一連の流れで説明できるようになったことに大きな意義があると考えています。
そしてさらに、その延長上にある未来の墓所の在り方についても推測を可能とし、社会の縮図である墓地の在り方から将来の家族像をも見据えられるようになったことは大きいと評価しています。
埋葬や墓の歴史ではありますが、現代さらに未来を考える術を得られたことは重要であり、これこそが歴史を学ぶ意義であると強調することができるようになりました。
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今後の目標について
Q5.最終的な目標は何ですか?
日本における埋葬の歴史をできるだけ長い時期にわたって解明し、連続するものやしないもの、新しく登場する葬送墓制の背景の探索、異なる宗教間における墓制の違いや共通性とその意味など、主に考古学的な手法を駆使して幅広く解明することを目指したいと思っています。
さらに、形として残る墓や墓石の研究だけでなく、形が残りにくい葬送行為を残存している遺構や遺物の分析を通じて、可能な限り復元を試みることにも挑戦したいと考えています。
葬送という人の動きを復元できればそこに残存する遺構や遺物を再配置して、より具体的な古代や中世の葬送墓制像を明らかにし、それらのどの部分が現代まで連続し、継続しているのかを解き明かし、未来像についてもさらに深めて論及できたらと考えています。
先生の経歴について
Q1.先生の経歴を教えてください。
・奈良大学文学部文化財学科卒業(1983年3月)
・博士学位取得(2008年/奈良大学)
・太宰府市教育委員会技師(文化財専門職/1983年4月~1999年3月)
・財団法人(のち公益財団法人)元興寺文化財研究所研究員(1999年4月~2020年3月/最終役職は副所長)
・大阪大谷大学文学部歴史文化学科教授(2020年4月~現在に至る)
Q2.先生の資格・学会・役職を教えてください。
・学芸員資格
・日本考古学協会、日本考古学会、仏教芸術学会ほか
・独立行政法人奈良文化財研究所客員研究員
・公益財団法人大阪府文化財センター理事
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先生の所属先
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