相続
遺族年金が非課税である理由と節税方法・確定申告について紹介
更新日:2022.06.11 公開日:2022.04.29
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遺族年金の非課税について
遺族年金は収入とみなされず、非課税扱いとなることをご存知でしょうか?
将来、遺族年金を受給した場合の節税方法や、確定申告についても学んでおきましょう。
この記事では、遺族年金の非課税制度について解説します。
労働収入がある場合に遺族年金は満額もらえるのか、についても知っておきましょう。
記事の後半では、遺族年金だけで生活できるのかシミュレーションも行っているので、ぜひ最後までご覧ください。
遺族年金が非課税の理由
なぜ遺族年金は収入としてカウントされず、非課税扱いとなるのでしょうか。
遺族年金は「国民年金法」及び「厚生年金保険法」がベースとなっています。
この法律では「租税・その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として課することができない」とされています。
つまり、国から給付される年金や給付金には課税しないと定められているのです。
「ただし老齢遺族年金や老齢厚生年金においてはこの限りではない」とある通り、年金の中でも「老齢年金」は課税対象となるため注意が必要です。
遺族年金が非課税となる理由として、所得税法が導入された1887年当時の事情も挙げられるといえます。
所得税法が導入された当時、年金や恩給は課税対象でした。
非課税対象だったのは、戦争で負傷した傷痍疾病者(しょういしっぺいしゃ)の恩給や孤児寡婦の扶助料です。
これらの恩給・扶助料はもともとの金額が極めて少なかったため(夫の恩給の3割以下)非課税になったとされています。
当時の流れが、現在の遺族年金非課税制度に影響を及ぼしていると考えられます。
遺族年金は確定申告をする必要がない
遺族年金は収入とみなされないため、基本的に確定申告の必要がありません。
ただし、遺族年金以外に所得がある場合は申告が必要です。
確定申告する際は、遺族年金分は非課税なので申告は不要となります。
確定申告についての詳しい解説は後ほどお伝えします。
非課税の対象となるもの
非課税対象となる年金には以下の種類があります。
- 遺族基礎年金
国民年金の加入者が死亡した場合、加入者に生活を維持されていた妻と子に支払われる年金です。
子どもの年齢は18歳となる年度の3月31日までが対象ですが、障害等級が1級と2級の子どもに関しては20歳まで支給されます。
受給額は一律78万900円で、子ども2人目まで1人当たり22万4700円を加算します。
3人目以降は、1人当たり7万4900円が加算されます。
- 寡婦年金
寡婦年金とは、ある一定の条件を満たした妻が60~65歳まで受給できる年金です。
以下のすべての条件に当てはまる人しか受給できません。
・夫が死亡前日まで国民年金の第一号被保険者として10年以上保険料を納付していた
・夫と10年以上婚姻関係を結んでいて生活維持されていた
・夫の死亡年齢が65歳未満
・夫が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していない
受給できる金額は、夫が第一号被保険者の期間のみで計算された、老齢基礎年金額の4分の3相当となります。
寡婦年金は夫の死後、5年以内に申請しないと無効となりますので注意してください。
- 死亡一時金
故人が第一号被保険者として、保険料を36月以上納付した場合に受給できる年金です。
故人と生計を共にしていた、配偶者・子・孫・父母・祖父母が受給対象となります。
ただし、遺族が遺族基礎年金を受給できる場合は支給されません。
寡婦年金の条件にも当てはまり受給対象となる場合は、いずれかを選択します。
受給金額は保険料納付の期間によって異なりますが、12万円~32万円の範囲内で支給されます。
36~180月未満で12万円、420月以上で32万円の受給が可能です。
また、死亡一時金は故人が亡くなってから2年以内に申請しないと無効となります。
- 遺族厚生年金(中高齢寡婦加算等の加算を含む)
厚生年金に加入していた会社員や公務員が亡くなった際、生活を共に維持していた遺族が受給できる年金です。
受給できる遺族は幅広いのですが、優先順位が決まっています。
優先順位は以下の通りです。
- 妻
- 子
- 夫
- 父母
- 孫
- 祖父母
妻の年齢は問いませんが、30歳未満で子がいない場合は5年間のみの支給となります。
子と孫については、18歳となる年度の3月31日までで、障害等級が1級と2級の子の場合は20歳まで支給されます。
55歳以上の夫・父母・祖父母が遺族厚生年金を受給できるのは、60歳を過ぎてからです。
遺族厚生年金は、亡くなった方の老齢厚生年金の内、報酬比例部分にあたる額の4分の3となります。
遺族厚生年金の受給額は、故人が生前納めていた保険料の金額と期間により個人差があります。
高額の保険料を長い期間納めていれば、年金額も高くなる傾向です。
また、妻が40歳以上で子がない、もしくは18歳未満の子がいない場合は、中高齢寡婦加算が適用となり58万円ほど加算されます。
毎年金額が変動しますが、58万円前後となることが多いようです。
中高齢寡婦加算は妻が65歳になるまで支給されます。
ちなみに遺族厚生年金を受給している妻が65歳となり、自身の老齢厚生年金がある場合はどうなるのでしょうか。
以下の式で、65歳まで受給していた夫の老齢厚生年金と比較して、多い方の額が支給されることになります。
- 夫の老齢厚生年金額の4分の3(今まで受給していた金額)
- 夫の老齢厚生年金の2分の1+妻の老齢厚生年金の2分の1
より多い方の額で受給できるため、妻の年金額の方が多かった場合も掛け捨てとならない仕組みになっています。
相続税はかかるが所得税がかからないもの
年金には、企業や共済団体から支払われるものもあります。
この場合、所得税はかかりませんが相続税は発生します。
- 確定給付企業年金
確定企業給付年金には「規約型」と「基金型」の2種類があります。
「規約型」とは、事業主と労働者の間で給付の内容をあらかじめ決定しておき、高齢期に受給できるようにするものです。
事業主と信託会社・生命保険会社で契約を結び、自社企業外で年金資金を運用管理して年金給付を行います。
「基金型」とは、自社企業とは別に企業年金基金を設立して、年金資金を運用管理するものです。
設立するためには、300人以上の加入者がいることが要件となります。
規約型と基金型、いずれも労使合意の上で厚生労働大臣の認可を受けて運用されます。
- 特定退職金共済
個人事業主、もしくは法人が商工会や商工会議所、商工会連合会と退職金共済契約を締結するものです。
退職したときに出る退職金のほか、労働者が死亡した場合に「遺族一時金」が支払われます。
もしものときは加入事業主に代わって、特定退職金共済団体から直接退職金や年金が支払われます。
受給できる金額は、加入口数と納めた期間によって異なります。
遺族年金の税に関するQ&A
遺族年金に関して、よくある質問をまとめてみました。
ぜひ参考にしてください。
非課税となる金額の上限
遺族年金において、非課税となる金額に上限はありません。
受給額すべてが非課税対象となります。
ほかの年金を受けている場合
例えば、遺族厚生年金を受給している妻が老齢年金を受給する年齢(65歳)になるとします。
この場合、妻は遺族厚生年金と自身の老齢年金を合わせて受給することになります。
今まで受給していた遺族厚生年金は非課税のままですが、妻の老齢年金は所得税の課税対象となります。
労働収入がある場合
遺族年金を受給しながら働いて収入があった場合も、非課税に変わりはありません。
ただし、遺族年金以外に所得がある場合は確定申告が必要になります。
遺族年金受給者ができる節税方法
遺族年金の受給者が行える、節税方法についてご紹介します。
扶養親族に入る
家族と同居していた場合は、扶養親族に入ることで世帯全体の節税になります。
例えば、70歳未満の人が扶養親族となった場合、所得税は38万、住民税は33万円が控除されます。
70歳以上の人が扶養親族となった場合は、所得税が58万、住民税は45万円が控除されます。
別居の場合は所得税が48万、住民税が38万円の控除となるため、扶養親族に入るだけで10万円近くの節税となります。
扶養親族へは、年間の所得が48万円以内(給与だけなら103万円)以下で入れます。
遺族年金以外の収入がなければ、条件はクリアしやすいでしょう。
家族の健康保険の被扶養者になる
自身の生活維持のために家族と同居していた場合、その家族の入っている健康保険や共済組合の被扶養者になれます。
国民健康保険は75歳まで納めなければならないため、受給者が75歳未満であればお得でしょう。
ただし、遺族年金を含めた年間収入が130万円(60歳以上は180万円)未満であることが要件です。
健康保険の場合は、被保険者の収入の2分の1以下でなければなりません。
ちなみに、同居家族が国民健康保険に加入している場合は、遺族年金受給者も個別で入るためメリットはありません。
マル優・特別マル優を利用する
マル優とは、遺族年金や寡婦年金を受給している人の預貯金が350万円までは、利子が非課税となる制度です。
特別マル優とは、マル優と同様に遺族年金等を受給している人の持つ国債・地方債の額面金額350万円までの利子が非課税となる制度です。
遺族年金は確定申告が必要?
遺族年金の受給者は確定申告が必要なのでしょうか?
基本的には不要
遺族年金は非課税となるため、基本的に確定申告は必要ありません。
しかし、保険会社から下りる保険金や年金は収入扱いとなるため、申告が必要なケースもあります。
確定申告が必要なケース
確定申告が必要なのは遺族年金以外に所得があった場合です。
例えば、アパート経営をしていて家賃収入がある場合などは、所得として申告しなければなりません。
給与以外の所得が年間48万円以上ある
給与以外の所得とは、不動産収入や自営業で得た利益である事業所得などを指します。
これらの所得が年間48万円以上ある場合は、確定申告が必要です。
ほかにも、保険会社からの保険金・年金を受け取った際も所得とみなされるため注意しましょう。
給与所得があり年末調整を受けていない
例えば年度の途中まで会社勤めをしていた場合は、年末調整が済んでいないため確定申告が必要となります。
通常、会社員やパート・アルバイトなどの確定申告は勤め先が代行して行っています。
年度の途中で会社を辞めてしまうと、年末調整を行っていないことになるため自身で申告しなければなりません。
また、2か所以上から給与所得がある場合も同様に申告が必要です。
遺族年金だけで生活できる?
実際に遺族年金だけの収入で生活はできるのでしょうか?
夫に先立たれた妻(65歳)が遺族年金のみで生活する場合をシミュレーションしてみましょう。
年金の平均給付額
厚生労働省によると、令和元年度の各種年金給付額は、1か月13万9334円です。
老齢基礎年金が約5万6千円、遺族厚生年金が約8万3千円となっています。
日本の年金制度は2段階で受給できる仕組みとなっています。
亡くなった夫が会社員だった場合、妻が受給できる遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」です。
遺族基礎年金は、国民年金から支給されます。
国民年金は、日本に住んでいる20歳~60歳未満のすべての人が加入しなくてはならない皆年金です。
「会社員のときは納めていない」と思う方が多いようですが、実は厚生年金の保険料に含まれており、自動的に引かれています。
一方の遺族厚生年金は、夫が会社員や公務員であれば加入する厚生年金から支給されます。
65歳以上女性の単身世帯の毎月の消費支出額
総務省による「令和2年家計調査(家計収支編)」の単身世帯の調査では、65歳女性の1か月の消費支出は13万9417円となっています。
結論
各種年金の平均給付額が13万9334円で、65歳女性の月平均支出額が13万9417円ということでした。
老齢基礎年金と遺族厚生年金があれば、ギリギリ生活費は賄えそうです。
何回も述べてきたように、遺族年金は非課税となります。
そのため、所得税や住民税・介護保険料など社会保障に関しての支払いは激減します。
病院にかかる場合も、負担額が低所得者の水準で適用されるためかなり下がるでしょう。
公的年金が年額153万円以下であれば、所得税・住民税・国民健康保険税などは4万円ほどとなります。
税金で生活費が圧迫されるようなことは、ほとんどないといえるでしょう。
遺族年金の非課税のまとめ
ここまで、遺族年金の非課税制度について解説してきました。
まとめると以下の通りになります。
遺族年金は収入とみなされず非課税だが、老齢年金は課税対象となる
遺族年金以外に年間所得がなければ確定申告は不要
同居世帯の扶養親族になることで世帯の税金控除額が増える
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
鎌田 真紀子(かまた まきこ)
国家資格 キャリアコンサルタント ・CSスペシャリスト(協会認定)
経歴
終活関連の業界経歴12年以上。20年以上の大手生命保険会社のコンタクトセンターのマネジメントにおいて、コンタクトセンターに寄せられるお客様の声に寄り添い、様々なサポートを行う。自身の喪主経験、お墓探しの体験をはじめ、終活のこと全般に知見を持ち、お客様のお困りごとの解決をサポートするなど、活躍の場を広げる。