相続
遺産相続に期限はあるの?期限を過ぎてしまった場合はどうなる?
更新日:2022.04.14
家族が亡くなってしまった場合の遺産相続について、どこまでご存知でしょうか。
期限などがないのか、気になっている方もいると思います。
そこでこの記事では、遺産相続には期限があるのかについて解説していきます。
この機会に、期限を過ぎてしまった場合にどうするべきかも覚えておきましょう。
後半には期限が迫っている場合の対処法についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 遺産相続とは
- 遺産相続の手続きは期限があるもの・ないもの
- 相続手続きが期限内に終わらなかった場合
- 遺産相続の手続きを期限内に終わらせるには
- 各種手続きの期限が迫っている場合の対処法
- 遺産相続の期限についてのまとめ
遺産相続とは
遺産相続とは、故人が生前に所有していた遺産を遺族が受け継ぐことです。
遺産はさまざまなものをさし、現金や貯金だけではありません。
有価証券や持ち家などの不動産、車や家電といった家庭財産、貴金属などが該当します。
基本的に、価値が認められるものはすべて遺産であると思って良いでしょう。
注意点として、価値を認める要件としてプラス・マイナスを問わないという点です。
借金やローンの返済義務、継続的な契約金についても遺産相続の対象になります。
また、遺産相続は一部のみ受け継げないため、プラスの財産を受け継ぐ場合は、借金などのマイナスの財産も受け継がなければいけないのです。
遺産相続の際は、故人の遺産をしっかり把握したうえでしっかり考える必要があるでしょう。
遺産相続の手続きは期限があるもの・ないもの
遺産相続では、相続の可否を判断したり相続税に対する申告をしたりといった手続きがあります。
これらの手続きの多くは期限が設けられており、期限を過ぎてしまうと勝手に確定されたり過料が発生したりするので注意しましょう。
期限のある手続きとそうでない手続きについて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
期限のある相続手続き
期限のある相続手続きは、基本的に相続権の発生を知った日を起点に期限が定められます。
多くの場合は故人の命日が起点となるので、期限を過ぎないように優先順位を決めて手続きしていきましょう。
相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
遺産相続における相続権には、3種類の選択肢があります。
遺産相続することを認める単純承認、相続しないことを表明する相続放棄、マイナスの財産をプラスの財産でのみ相殺する限定承認の3種類です。
この中でも相続放棄や限定承認にしたい場合は手続き期間が設けられており、権利の発生を知った日から3ヶ月以内に手続きする必要があります。
もし期限を過ぎてしまった場合は、単純承認を認めたと判断され、相続放棄や限定承認の手続きが行えなくなるので注意しましょう。
準確定申告(4ヶ月以内)
準確定申告とは、故人の所得に対する確定申告を遺族が行う作業です。
一般的な確定申告の期限は2月〜3月に掛けて設けられていますが、この準確定申告に関しては故人の命日を起点に考えられます。
準確定申告は故人の命日から4ヶ月以内とされており、期限を過ぎてしまえば延滞税などが発生してしまいます。
忘れないよう、故人が最後に住んでいた地域の税務署に足を運び、申告と納税を済ませるようにしてください。
相続税の申告・還付(10ヵ月以内)
相続税とは、遺産相続した際に相続額が一定金額を超えた場合に発生する税金です。
相続される財産が「3,000万円+(相続人の数×600万円)」を超えていた場合に、その超えている金額にのみ相続税が発生します。
相続税もまた、故人が最後に住んでいた地域の税務署にて申告と納税をしてください。
相続税の期限は相続権利を知ってから10ヶ月となっており、期限を過ぎてしまうと延滞税などの罰則もあるので注意しましょう。
また、相続税に対する一部特例が適用できなくなる点も注意が必要です。
遺留分侵害額請求(1年以内)
遺留分とは、相続人の数によって法律で定められている最低限の相続額です。
これは兄弟姉妹には適用されず、兄弟姉妹以外の相続人のみ遺留分という制度があります。
遺書などによってこの遺留分以上の金額を相続できなかった場合、遺留分侵害額請求という手続きが可能になるのです。
自分が受け取る相続額が遺留分を下回っていたうえで納得ができない場合は、遺留分侵害額請求するのも良いでしょう。
ただし、この遺留分侵害額請求にも期限が設けられています。
財産相続の権利を知った日または遺留分侵害の事実を知った日から1年以内が期限です。
また、遺留分侵害の事実を知らないままだったとしても、相続権利が発生してから10年で時効となるため注意してください。
遺留分審議額請求の申立ては裁判所等で可能です。
生命保険の受け取り(3年以内)
故人が生前に生命保険に加入していた場合、受取人に生命保険の受給資格が発生します。
この生命保険にも期限があり、故人の命日から3年が期限となるので注意しましょう。
生命保険は受取人のみが受け取れるものであり、基本的には遺産とは異なった認識になります。
しかし、みなし財産と呼ばれる「遺産ではないけれど遺産のようなもの」として認識されるのが生命保険です。
このみなし財産では「法定相続人×500万円」が控除額とされているため、それ以上の生命保険額だった場合は課税対象となるので注意してください。
相続税の還付請求(5年10ヵ月)
相続税に不備があった場合、余分に支払った相続税の返還を請求することが可能です。
相続額に誤りがあった場合や不動産などの金額評価を見誤っていた場合など、相続税支払い後に不備が発覚した際に請求できます。
これらの期限は相続税納付期限である10ヶ月を過ぎてから5年で時効となっているため、相続権発覚から5年と10ヶ月が期限です。
また一部事由に関しては、その事由が発生してから4ヶ月が期限と定められています。
一部事由にあたる要件は以下の通りです。
- 分割されていなかった遺産が分割された場合
- 上記の際に特例などが適用された場合
- 遺留分侵害請求による返還が生じた場合
- 相続人の死去などによる相続人の変化があった場合
- 後から遺言書が見つかった場合
- 後から遺産の廃棄などが発覚した場合
また、これらの手続きは明確な証明なども必要になるため、専門の税理士などに依頼することをおすすめします。
特に期限のない相続手続き
相続に関する手続きでは、一部期限が設けられていないものもあります。
以下でそれぞれ解説しますが、いずれにせよ早期の手続きが推奨されるため、期限がないからといって後回しにしないようにしましょう。
金融口座等の解約・各種名義変更
預貯金の口座は、契約者の死去を知った段階で口座凍結処理をします。
その後は名義変更手続きなどを終えるまでは凍結されたままです。
凍結されたままではありますが、仮に後回しにしておいても期限などはないので安心していいでしょう
しかし、解約にせよ凍結解除にせよ、遺産分割を終えて名義変更が完了するまでは操作できません。
財産の把握や実際に分配するためにも、早期に手続きしておくことでより安心できるでしょう。
遺産分割協議・調停・審判
遺産分割協議とは、遺産相続における分配内容を相続人全員で話し合い決めることです。
また、遺産分割調停・遺産分割審判とは、裁判所を介して分配内容を定め、内容を公正に判断して確定することをさします。
前者はあくまで相続人同士の話し合い、後者は法的処置として強制力を持った遺産分割です。
いずれにせよ、明確な期限は設けられてはいないので、いつまでにやらなければいけないといった決まりはありません。
ただし、相続税の納付や相続放棄などの手続きには期限があるため、結果としてそれらに合わせて協議を進める必要があるでしょう。
遺産分割協議が遅れ、手続き期限に間に合わないことがあれば罰則が生じます。
相続放棄や限定承認の可能性がある場合は、早急に遺産分割協議を進めるようにしましょう。
これらは法的処置が行われるため強制力があり、遺産分割協議同様に期限が定められていません。
不動産の相続登記
故人の所有していた家や土地といった不動産に関しても、引き継ぎ手続きの期限などはありません。
即座に判断できない場合は後回しでもいいのです。
しかし、相続していなければ売却などの手続きもできず、そのまま長引けばさらにややこしい手続きが必要になります。
期限がないとはいえ、早めに手続きを終えておく方がいいでしょう。
相続手続きが期限内に終わらなかった場合
相続手続きが遅れたことで期限を過ぎてしまえば、罰則や制限などによるデメリットが生じます。
どのようなデメリットがあるのか紹介しますので、手続きは期限以内に済ませるようにしましょう。
税金の軽減制度などが受けられない
相続税には、一部特例として軽減制度が設けられています。
この特例により相続税を抑えられますが、期限を過ぎた手続きに関してこの軽減制度は利用できないのです。
もし特例に該当する場合は、必ず期限内の手続きを終えるようにしましょう。
「延滞税」や「無申告加算税」が課される
納税などの手続きが期限を過ぎた場合、延滞税や無申告加算税などの課税義務が課せられます。
延滞税はいわゆる利息のようなもので、延滞日時を基準に月単位や年単位で定められた利率に沿った加算税が発生するのです。
無申告加算税は、法的義務を怠ったことへの罰則的なもので、定められた利率の加算税が発生します。
自己申告で5%、税務署からの申告があった場合は、50万円を基準に低い場合は15%、高い場合は20%の加算税が必要です。
新たな相続が発生する可能性がある
相続に関する手続きが遅れた場合や、手続きを終える前に相続人が死去するなどの問題が発生した場合、相続手続きが新たに発生します。
死去した相続人の相続にくわえて、相続人の変化による元の相続の手続きもあるため、手続きがさらに複雑なものとなるのです。
また、どうしても期限内に手続きが終わらないと判断した場合は、やむを得ない事由に限って延納という手続きも行えます。
延納は一括で支払いきれない税金を分割して支払う方法ですが、認められる保証がないうえに利子税などもかかるので、可能であれば避ける方が良いでしょう。
不動産などの金銭的価値のあるものを税金の代わりに納める物納という手段もありますが、相続税に限った特殊な方法になります。
いずれにせよ、これらの手続きにも期限が設けられているため、可能であればそもそも手続きに遅れないように対処するのがおすすめです。
遺産相続の手続きを期限内に終わらせるには
遺産相続における手続きの多くは期限が定められているため、可能な限り早急に作業を始める必要があります。
そのうえで、手続きを期限内に終わらせるための方法を、遺言書がある場合とない場合で紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
遺言書のある場合
遺言書が見つかった場合、勝手に開封してしまうと無効となるケースがあります。
遺言書の確認には検認という公的手続きが必要なため、遺言書を見つけたらすぐに検認依頼しましょう。
検認には1ヶ月ほど要する場合もあるため、可能な限り早く取り掛かることが大切です。
遺言書の検認が終わったら、あとは遺言書に沿って遺産分割を進め、早期に手続きを進めていきましょう。
もし遺族だけで手続きをするのが困難な場合は、専門の税理士などに相談して手続きを進めていくことをおすすめします。
遺言書がない場合
遺言書がない場合は、早期の遺産分割協議が必要です。
そのため、まずは相続人にあたる遺族へ連絡しましょう。遺産分割協議を進めるために予定を合わせる必要があります。
遺産分割協議を終えたあとは早急に手続きを進めていき、遺族間で協力しながら各手続きを進めると良いでしょう。
こちらの場合でも、遺族のみでの手続きが困難と判断した場合は、専門の税理士などに依頼することをおすすめします。
各種手続きの期限が迫っている場合の対処法
遺産相続の手続きはそれぞれ期限が定められていますが、期限を過ぎてしまいそうな場合の対処法も知っておくと安心できるでしょう。
期限が迫っている場合に取るべき行動について解説します。
相続放棄・限定承認の申告期限が迫っている場合
相続放棄・限定承認の期限は、その権利の発生を知ってから3ヶ月です。
もしこの期限内に申告が間に合わなければ、自動的に単純承認としてすべての遺産を相続することとなります。
やむを得ない事情やどうしても間に合わない場合には、申立書に事由などを記述したうえで故人の最終住居の家庭裁判所に申述することで期間の延長が可能です。
期限の延長を望む方は、申立書にくわえて故人と自分の関係ごとに定められた書類などを用意して、期限を迎える前に提出しましょう。
1つ注意点として、この申述は必ず承認されるものではないことは覚えておいてください。
相続財産の量や複雑さ、相続人の人数や複雑さ、あるいは相続人が国内にいないなどの例外的状況に限り認められる可能性のある申述です。
もし申述内容が認められた場合は、3ヶ月〜6ヶ月程度の期限延長が考えられます。
申述して承認され続ければ何度でも延長可能ですが、やむを得ない事由がない限りは期限以内に提出するように努めるようにしましょう。
遺留分の期限が迫っている場合
遺留分侵害額請求が可能なのは、故人の命日あるいは遺留分侵害の事実を知った時点から1年です。
この期限か故人の命日から10年が経過した場合は遺留分侵害額請求ができなくなります。
遺留分侵害額請求の手続きは定まった手続きがないため、互いに信用が築けているのであれば口頭でも問題ありません。
口頭であればすぐに連絡することもできると思いますが、遺留分の問題が生じる場合は基本的に関係があまり良くない場合が多いでしょう。
遺留分侵害額請求をした事実が残っていれば、期限内に申述したこととなりその内容が認められます。
そのため、期限が迫っている事実を知った段階で、内容証明郵便を利用して請求通知を相手に送っておきましょう。
内容証明郵便であれば、仮に相手が事実を抹消しようとしても郵便局などに同じ写しが残るため申述の事実が証明可能です。
もし自分で通知書を作成する自信がない場合などは、弁護士に相談することで早急に対応してくれるので、すぐに相談するようにしましょう。
相続税の申告期限が迫っている場合
相続税の申告期限は、その権利の発生を知ってから10ヶ月です。
もし期限を過ぎてしまえば、過ぎた期間に応じた罰則と特例の適用が禁じられます。
相続税を算出するためには遺産分割を終えて自分の分配内容を知る必要があります。
そのため、遺産分割などが遅れていたり、そもそも財産の総額が特定できていない場合などでは、相続税を明確に判断することはできません。
しかし、相続税の申告期限を罰則なしに延長することは不可能なため、期限は必ず守る必要があります。
どうしても相続税を期限までに支払えない場合「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を提出するようにしましょう。
この書類は、あくまで現時点での相続税を特定して支払うという書類であり、3年以内に本来の相続税を特定することで相続税額の変更が可能になります。
こうして相続税を支払っておくことで、多く支払った分の返還、足りない分の追加納税を後から実施できるのです。
期限の延滞は余分な罰則がかかるうえ、仮に延納などの手続きをしても利子税などの税金が必要になります。
少なくとも、前述の見込書については提出するようにしておきましょう。
遺産相続の期限についてのまとめ
ここまで遺産相続の期限についての情報や、手続きにおける注意点を中心に解説してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 遺産相続は故人の遺産を法的に受け継ぐ制度
- 相続手続きには期限が設けられている場合がある
- 期限を過ぎると罰則や制限がある
- 期限が迫っている場合は期限延長の申立てなどが可能なケースもある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。