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公正証書となる遺言書とは?公正証書遺言の作り方や費用を紹介
更新日:2022.04.23
遺言書には主に、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。
3つの遺言書のうち、公正証書となる「公正証書遺言」はどのような遺言書かをご存知でしょうか?
そこで、この記事では公正証書遺言の作り方や費用について詳しく解説します。
この機会に、公正証書遺言のメリット・デメリットを知っておきましょう。
自筆証書遺言と秘密証書遺言との違いについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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遺言書とは
遺言書とは、遺言者が死後の財産の分配方法について指定する書面です。
遺言者の最後の意思表示であり、遺される方へ自分の想いを伝える手段でもあります。
遺言書を作成することによって、親族間の争いを防ぐ役割も兼ねています。
「誰に、どの財産を、どの割合で」と指定するのが基本ですが、「相続させない」指定も可能です。
遺言書には、主に以下の3つの種類があります。
- 自筆証明遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
基本的に自筆証明遺言と秘密証明遺言は、被相続人が自分で作成する遺言書です。
公正証書遺言のみ、公証役場の公証人が関与して作成される遺言書となります。
公正証書の遺言書とは
公正証書遺言について詳しく解説していきます。
どんなメリット・デメリットがあるのかもお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
公正証書とは
まず「公正証書」とはどのような証書を指すのでしょうか?
公正証書とは、公証人に依頼して作成してもらう書類のことです。
裁判を行うことと同等の効力がある書類が公正証書となります。
公証人とは公証役場に勤めている公務員で、裁判所や検事など専門職の経験者です。
公証人は法務大臣に任命される公務員となります。
公証人を通して作成した公正証書があれば、裁判を回避することも可能です。
たとえば、知人に多額のお金を貸したのに返してもらえなかった場合、強制執行するには裁判を起こさなければなりません。
しかし、知人と借金の契約をする際に公正証書を作成しておくと、証書だけで強制執行が可能です。
公正証書があれば、裁判にかかる金銭的負担・精神的負担を回避できるのです。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットには主に以下の5つがあります。
公証人が関与して作成するため、遺言書の不備を回避できる
公正証書を作成するには、公証役場の担当者と公証人2名の立会いのもとに作成されます。
遺言書は民法の規定に沿って作成されるため、不備が見つかると無効となってしまいます。
公正証書遺言は公証役場の担当者と確認しながら作成できるため、有効性の高い遺言書といえます。
家庭裁判所の検認が不要
公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要です。
検認とは、簡単にいうと私文書を公文書にする手続きのことです。
遺言書における検認とは、相続人にあたる人達へ遺言書の存在と内容を知らせることと、開封時に立ち会うことを指します。
公正証書遺言は作成時に公証人が関与しており、遺言書の存在も記録されています。
そのため、遺言者が亡くなったあとに遺族だけで遺言書を開封しても問題ありません。
ちなみに自筆証書遺言と秘密証書遺言は、どちらも家庭裁判所の検認が必要です。
相続の手続きがスムーズに行える
公正証書遺言の内容に不服の親族がいなければ、相続手続きがスムーズです。
基本的には法定相続よりも遺言の内容が優先されますので、遺言書の内容通りに手続きを進めていく形となります。
改ざんのリスクが回避できる
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されているため、勝手に開封されたり改ざんされたりする心配がありません。
紛失の心配がない
公正証書遺言は公証役場が原本を保管し、遺言者には謄本が渡されます。
万が一、謄本を紛失しても原本は公証役場にあるので安心です。
公正証書遺言の保管料は無料ですが、閲覧には費用が発生する点は覚えておきましょう。
公正証書遺言のデメリット
つづいて公正証書遺言のデメリットを4つお伝えします。
作成するのに手間がかかる
自筆証書遺言と秘密証書遺言は自身で手軽に作成できますが、公正証書遺言には第三者の介入が必要です。
後ほど作り方について詳しく解説しますが、最低でも公証役場には2度足を運ばなければなりません。
公証役場の担当者と親族以外の証人2名を選出し、内容についての打ち合わせと日程調整をします。
改めて公証役場へ赴き、担当者・証人2名と共に遺言書を作成します。
作成費用が発生する
公正証書遺言を作成するには、公証役場へ手数料を支払う必要があります。
手数料は相続する財産の価額によって異なります。
例えば100万円以下なら5,000円、5,000万円以下なら2万9,000円の手数料が必要です。
財産価額ごとの手数料については、後ほど一覧でお伝えします。
証人2名の選出と立ち合いが必要
公正証書遺言の作成の際、公証役場の担当者のほかに2名の証人を選出し、立ち会ってもらわなければなりません。
証人の選出には、以下のような条件があります。
- 20歳以上の成人であること
- 相続人にあたる親族(推定相続人)ではないこと
- 遺言で遺産を受け継ぐことになっている人(受遺者)ではないこと
- 推定相続人と受遺者の配偶者・四親等内の親族ではないこと
- 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人ではないこと
証人には被相続人の友人・知人のほか、弁護士などに依頼することも可能です。
遺言書の存在・内容を秘密にできない
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言書の存在自体を隠すことが可能です。
しかし、公正証書遺言は公正証書となるため、その存在や内容を内密にしておくことはできません。
公正証書遺言の作り方
公正証書遺言の作り方について、詳しくご説明します。
事前準備
公正証書遺言は公証役場で作成されますが、事前準備は以下の流れとなります。
原案を用意する
遺言者は、財産のピックアップをしたあとに相続内容を考えます。
原案はきちんとした書面ではなくメモ書きでも構いません。
原案ができたら公証役場へ連絡しましょう。
必要な書類・証人を用意する
公証役場の担当者から、必要書類の説明がありますので準備します。
また、証人2名も選出して、2人の住所や氏名・職業を控えておきます。
必要書類とは主に以下の5つです。
- 遺言者の本人確認書類
運転免許証や住基カードなど、顔写真のついた証明書を1部用意します。
- 遺言者と相続人の関係性が分かる戸籍謄本
- 相続人以外の受遺者がいる場合、その人の住民票
- 不動産相続がある場合、登記事項証明書や固定資産評価証明書、もしくは固定資産税・都市計画税納税通知書の課税証明書
- 証人2名の氏名・住所・生年月日・職業を記載したメモ
公証役場によっては、ほかの書類を提出するよう求められる場合もあります。
公証人との打ち合わせ
公証人と証人2名、遺言者の3名で、公証役場へ行く日程調整をします。
遺言書の内容についても不備がないかを確認します。
当日の流れ
公証役場で、公正証書遺言を作成する当日の流れについてご説明します。
公証人による確認
遺言内容に間違いがないかを最終確認します。
遺言書の作成
遺言者は公証人へ相続内容を口授し、公証人が作成します。
遺言者が聴覚や発語に障害のある場合は、筆談などが認められています。
各人による署名押印
公証人・証人2名・遺言者が署名・押印して終了です。
スポンサーリンク公正証書遺言に必要な費用
公正証書遺言を作成するには、公証役場へ手数料を支払わなければなりません。
相続財産の価額によって手数料が異なるため、財産額別にご説明します。
相続価格 | 手数料 |
100万円以下 | 5,000円 |
100~200万円 | 7,000円 |
200~500万円 | 1万円 |
500~1,000万円 | 1万7,000円 |
1,000~3,000万円 | 2万3,000円 |
3,000~5,000万円 | 2万9,000円 |
5,000万~1億円 | 4万3,000円 |
1~3億円 | 4万3,000円(5,000万円超過毎に+3,000円) |
3~10億円 | 9万5,000円(5,000万円超過毎に+1万1,000円) |
10億円以上 | 24万9,000円(5,000万円超過毎に+8,000) |
これらの手数料は、相続人の人数分が必要な点も覚えておきましょう。
たとえば、財産価額2000万円を配偶者と子供2人で分ける場合は、以下のような配分と手数料になります。
- 配偶者 1,000万円(遺産の1/2 )手数料2万9,000円
- 長男 500万円(遺産の4分の1)手数料1万円
- 次男 500万円(遺産の4分の1)手数料1万円
弁護士から作成の手続きをサポートしてもらった場合は、別途料金が発生します。
公正証書遺言が無効となるケース
公正証書遺言は公証人が関与して作成するため、無効となるケースの少ない遺言書です。
しかし、遺言書の内容や作成の仕方に不備があると、無効となってしまう場合もあります。
公正証書遺言が無効となるケースにはどのようなものがあるのでしょうか?
代表的な5つのケースについてお伝えします。
遺言能力に問題がある
遺言者が作成時、遺言能力に問題があったのではないかと疑問視されるケースです。
遺言能力とは、遺言の意味や効力を理解する能力のことを指します。
遺言者が認知症や精神病を患っていた場合などは無効となる場合があります。
遺言能力に問題があったかどうかを見極めるには、病院のカルテなどの資料をあたるのが一般的です。
介護事業者のサービス記録なども参考になるでしょう。
カルテは、遺言者の配偶者や子供であれば開示請求ができます。
口授ができない
公正証書遺言は民法の規定に沿って作成されます。
民法第969条2項では「遺言の趣旨を公証人に口授すること」と定められています。
口授するというのは「口頭で伝える」ことを意味します。
つまり、遺言者が公証人へ口頭で相続内容を伝えなければ、無効になってしまうのです。
たとえば、遺言者に聴覚障害や発音障害があった場合、口頭で伝えるのは無理だったとみなされます。
ただし、障害のある場合は筆談や通訳を通していれば有効と判断されることも民法で定められています。
公証人が遺言書の内容を読み上げて、遺言者がうなずいただけでは無効になる可能性が高いでしょう。
証人に問題がある
公正証書遺言を作成する際には、遺言者が証人を2名選出します。
遺言者が証人になる条件をクリアしていないと、遺言書自体が無効となります。
「公正証書遺言のデメリット」でもご説明しましたが、証人にする条件は決まっています。
20歳以上であること、推定相続人や受遺者ではないなどの条件を満たしていないと、遺言書は無効となります。
内容に錯誤がある
遺言書の内容の錯誤は、主に2種類に分けられます。
表示上の錯誤
公証人に内容を口授する際の聞き間違いや、財産の物件名や価額が異なっていたため無効になるケースです。
「不動産価額が1,000万円のところを100万円と記載してしまった」などの例が該当します。
表示行為の要素・動機の錯誤
遺言者の意図と、遺言書の内容がずれた場合に無効となるケースです。
相続人が、他の相続対象の人に遺言書の存在を知らせずに同意させた場合なども、動機の錯誤にあたります。
動機の錯誤については、実際に裁判をしてみないとわからないケースが多いようです。
遺言者の記した内容が明らかにおかしいと感じた場合は、弁護士などに相談しましょう。
公序良俗に違反する
社会通念上や道徳的に反する場合も、無効となる場合があります。
たとえば、戸籍上の妻がいるのに愛人に全財産を渡すケースなどです。
公の秩序に反している内容の遺言書は、無効となるケースが多くなります。
公正証書遺言の開封方法
遺言者が故人となった場合の、公正証書遺言の開封方法についてお伝えします。
公正証書遺言の探し方
相続人が遺言書の有無が分からない場合、そもそも存在するのかどうかを調べる必要があります。
公正証書遺言の場合、謄本は遺言者が保管していますが、原本は公証役場に保管されています。
遺言書を紛失していても、相続人は照会請求が可能です。
1989年(昭和64年)の1月1日以降の遺言書であれば、遺言検索システムで確認できます。
遺言者が生存中は照会不可となります。
誰が照会請求するかによって、必要書類が異なりますので説明します。
相続人が照会する
- 除籍謄本(遺言者の死亡が分かる書類)
- 遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本
- 検索依頼者(相続人)の本人確認書類と印鑑
代襲(だいしゅう)相続人が照会する
代襲相続人とは、遺言者が指定していた相続人が死亡していた際、かわりに相続人となる人物です。
相続人が遺言者の子供だった場合、相続人の子供(遺言者から見て孫にあたる)が代襲相続人となります。
- 除籍謄本
- 代襲相続人の証明ができる戸籍謄本
- 検索依頼者(代襲相続人)の本人確認書類と印鑑
受遺者が照会する
受遺者とは、相続人以外で遺贈(遺言書の財産分与)をされる人のことです。
- 除籍謄本
- 検索依頼者(受遺者)の本人確認書類
- 受遺者であることが証明できる書面(受遺者が親族なら戸籍謄本など)
委任された人が照会する
- 除籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の委任状
- 遺言者との関係が分かる戸籍謄本
- 委任者の印鑑登録証明(3カ月以内に発行されたもの)
- 司法書士の本人確認書類と印鑑
相続財産管理人が照会する
相続財産管理人とは、遺言者に相続する家族がいない場合や、相続放棄された場合に選任される人を指します。
- 除籍謄本
- 相続財産管理人であることが確認された、家庭裁判所の決定書類
- 検索依頼者(相続財産管理人)の本人確認書類と印鑑
公正証書遺言の開封方法
遺言者が亡くなった際に公正証書遺言が見つかった場合は、開封しても問題ありません。
公正証書遺言以外の、自筆証書遺言と秘密証書遺言については、家庭裁判所の検認が必要なため勝手に開封するのは厳禁です。
開封しないとどうなる?
遺言書を開封しなかったり、ほかの相続人に存在を知らせなかった場合は、相続人の資格を喪失することもあります。
ただし、公正証書遺言の場合は公証役場に原本があるため、基本的に隠匿はないものと考えられます。
一般的には、自筆証書遺言の隠匿が「相続欠落」に問われることになります。
隠匿といっても遺言書の存在を隠すだけではなく、検認手続きを怠ることも含まれます。
しかし、自分に有利な遺言書の検認手続きを怠っているケースは、相続欠落になりません。
遺言書の内容を他の相続人に知られると、自分の不利益になるため隠匿する場合は相続欠落となります。
つまり、隠匿したい方にとって有利なのかどうかで判断が変わるということです。
特殊な事例として、自分が不利益になるのに兄弟で平等に相続するため、公正証書遺言を隠匿したケースがあったようです。
公正証書遺言以外の遺言書
公正証書遺言以外に、自筆で作成する遺言書があります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、どちらも自分で手軽に作成できる遺言です。
それぞれのメリット・デメリットと共に解説します。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言書の中で最も手軽に作成できるタイプです。
自身のタイミングで作成でき、費用もかかりません。
書き方も自由ですし、修正したいときにも自由に手を加えられる点がメリットといえるでしょう。
自筆証書遺言は遺言者が自筆で書くことが条件で、署名と捺印が必要となります。
デメリットは、書き方に不備があると無効になる場合があることです。
開封の時に家庭裁判所の検認が必要な点も覚えておいてください。
勝手に開封すると5万円の過料を請求されることがあります。
自筆証書遺言は遺言者が管理する必要がありましたが、2020年の法改正後は法務局で保管が可能になりました。
秘密証書遺言
秘密証書遺言も、自筆で書く遺言書の一種です。
自身で作成した遺言書を公証役場へ持参し、遺言書の存在を記録できます。
公証役場の担当者と証人に確認してもらうのは、遺言内容ではなく遺言書の存在だけです。
メリットとデメリットは自筆証書遺言とほぼ変わりません。
書き方に不備があると無効になりますし、開封時は検認が必要です。
遺言内容を他人に知られたくない方には向いていますが、年間100件ほどしか作成されていないようです。
遺言書の公正証書まとめ
ここまで、公正証書遺言の情報を中心にお伝えしました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りになります。
- 公正証書遺言は、公証役場で担当者と自身・証人2名で作成する
- 公正証書遺言は検認なしで開封できる
- 公正証書遺言でも無効になるケースがある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。