相続
遺産の配分割合はどうなる?法定相続分について解説
更新日:2022.04.18 公開日:2022.05.06

記事のポイントを先取り!
- 法定相続人が遺産を相続する
- 順位によって遺産配分の割合が変わる
- 遺産を配分する方法は3つある
- 遺産分割協議自体に期限はない
故人が亡くなると遺産を分けることになりますが、その配分割合についてご存知でしょうか。
故人の残した遺産は誰が相続人になり、どのぐらいの配分で分配されるのかを知っておきましょう。
そこでこの記事では、遺産の配分割合について詳しく説明していきます。
この機会に、法定相続分とはなにかを覚えておきましょう。
遺産分割協議をするタイミングについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 遺言書がある場合の遺産配分の方法
- 遺言書がない場合の遺産配分の方法
- 遺産相続ができる法定相続人は誰?
- 法定相続人の優先順位
- 法定相続分を基本に遺産の分配を決める
- 生前贈与を受けていた相続人がいる場合は?
- 介護・手伝い等をした相続人がいる場合は?
- 遺産の分配方法は3通り
- 遺産分割協議がまとまらないときの対応策
- 相続税が発生した場合の負担割合は?
- 遺産分割協議はいつまでにすべき?
- 遺産の配分割合まとめ
遺言書がある場合の遺産配分の方法
まず、遺言書がある場合の遺産配分の方法から説明します。
遺言書があって、そこに遺産をどう分けるかが指定されている場合、原則その遺言書の通りに遺産を分けます。
遺言書は法的な効力を持った文書になるため、法律で定められた配分割合よりも、遺言書に書かれている配分割合のほうが優先されます。
遺言書に不備があるとその遺言書は無効となり、法律で定められた配分割合で分けることになるため注意してください。
しかし、相続人全員が合意して、遺言書以外の配分割合で遺産を分けようと決めた場合は、その配分割合に沿って遺産を分けられます。
必ず相続人全員で話し合って、遺言状の通りに遺産を分けるか、自分たちで配分割合を決めて遺産を分けるかを決めましょう。
遺言書がない場合の遺産配分の方法
遺言書が残されていない場合は、法定相続人の取り分を話し合って決めます。
この話し合いのことを、遺産分割協議といいます。
相続人が1人しかいない場合は、その人がすべての遺産を相続することになります。
相続人が複数いれば、話し合って配分割合を決めます。
遺産の配分割合は、基本的に民法で定められている法定相続分に従います。
法定相続分とは、それぞれの法定相続人に決められた、遺産分割割合のことです。
法定相続人は故人との続柄によって順位がついており、法定相続人の順位によって、法定相続分は異なります。
同じ順位の法定相続人が何人かいる場合は、その人数で均等に分けることになります。
しかし遺産の分割は、必ず法定相続分に従わないといけないわけではありません。
遺産分割協議をして相続人が全員同意すれば、自由に遺産分割の割合を決めることが可能です。
法定相続分は、遺産分割協議での一つの目安として定められているため、法定相続分を参考にして、遺産の割合を決めましょう。
遺産相続ができる法定相続人は誰?

遺産相続ができる人のことを法定相続人といいます。
法定相続人になれる人は民法で定められており、主に故人の家族が法定相続人の対象です。
配偶者・故人の子ども・故人の父母や祖父母などの直系尊属・故人の兄弟姉妹がそれにあたります。
故人の子どもは実子のほかにも、養子や認知した子も法定相続人になります。
また相続を開始した際に故人の子どもや兄弟姉妹が胎児だった場合でも、法定相続人です。
遺産相続では、配偶者と子どもが相続人になることがほとんどです。
しかし子どもがいなければ配偶者と父母や祖父母、父母や祖父母がいなければ配偶者と兄弟姉妹が相続人になります。
法定相続人になるのかよくわからない立場の人もいます。
内縁の妻や夫は、一見法定相続人になれそうに思えるかもしれません。
しかし事実婚などで故人と内縁関係にあっても、配偶者として法定相続人にはなることはできず、相続権もありません。
そのため、もし内縁の妻や夫に遺産を分けたい場合は、遺産を包括遺贈する旨を遺言書に書いておきます。
そうすれば包括受遺者として、遺産分割協議に参加することができます。
また、離婚した妻や夫は、離婚した時点で相続権がなくなります。
離婚して、事実婚の状態で一緒に暮らしていても、相続権はありません。
ただし故人が離婚した場合でも、故人の子どもには相続権があります。
しかし再婚相手の連れ子は、法定相続人にはなれません。
再婚相手は、配偶者として法定相続人になれますが、再婚相手の連れ子は、故人と養子縁組をしないと法定相続人にはなれません。
孫は故人の血縁者ではありますが、法定相続人ではありません。
故人が孫に包括遺贈をしたり、故人の子どもである孫の親に相続権がなかったりする場合には、孫も包括受遺者や代襲相続人として、遺産分割協議に参加できます。
法定相続人の優先順位

法定相続人は、全員が同じランクにいるわけではありません。
続柄によって順位が違い、順位によって分けられる遺産の割合が違ってきます。
配偶者
故人の配偶者は常に相続人となるうえ、遺産の分割割合は一番多くなります。
配偶者以外の相続人がいない場合は、配偶者が遺産を全てもらうことになります。
配偶者のもつ法定相続分は、結婚している期間による差はありません。
結婚している期間が極端に短くても、決まった割合で相続することが可能です。
また、法定相続人となれるのは、法律上の配偶者に限られています。
法律上で配偶者になっていない、事実婚などの状態では相続人にはなれません。
第1順位:子ども
配偶者と同じように、相続順位が第1順位となっているのは、故人の子どもです。
子どもがまだ胎児の場合、生きて生まれてくることができなければ、相続権はなくなってしまいます。
故人の子どもは亡くなっているが、孫はまだ生きているという場合は、代襲相続として孫が相続することになります。
第2順位:父母、祖父母
故人に子どもがいない場合は、配偶者と父母が相続人となります。
また、故人に配偶者も子どももいない場合は、故人の父母、祖父母が全遺産を相続することになります。
故人が養子だという場合、養親だけではなく実の親も相続人となり、最大で4人が法定相続人になります。
父母、祖父母どちらもまだ生きているという場合は、故人に一番近い、父母だけが相続人になります。
父母がすでに亡くなっていて祖父母が生きているという場合は、祖父母が相続人になります。
第3順位:兄弟姉妹、代襲相続人
第3順位の法定相続人は、故人の兄弟姉妹です。
第3順位の人は、第1順位・第2順位の相続人がいないときに相続人になれます。
兄弟姉妹の中にすでに亡くなっている人がいる場合、亡くなった兄弟姉妹の子が代襲相続人として相続することになります。
しかし、代襲相続ができるのは、兄弟姉妹の子どもまでです。
兄弟姉妹の子どもも亡くなっている場合、兄弟姉妹の孫へは代襲相続はできません。
兄弟姉妹と同様、代襲相続人である兄弟姉妹の子も第3順位になります。
法定相続分を基本に遺産の分配を決める
遺産は、法定相続分を基本として決められます。
法定相続分は、相続人が何人もいる場合の原則的な分配割合として定められているものです。
基本的に、配偶者とその他の相続人という組み合わせになっています。
その他の相続人が2人以上いる場合は、全員で均等に分けます。
配偶者がすでに亡くなっていて相続権を持たない場合は、その他の相続人が全ての遺産を均等に分けることになります。
一般的なケースでの法定相続分を見てみましょう。
配偶者と子どもが相続人になると、配偶者は1/2、子どもは1/2の法定相続分で遺産を分けます。
配偶者と子ども2人が相続人となる場合、配偶者は遺産の1/2、子どもは2人で均等に分けるため、1/4ずつ分けることになります。
配偶者と故人の父母が相続人になると、配偶者は2/3、父母は1/3の法定相続分で遺産を分けます。
父母がどちらも存命で相続人となる場合、父母は均等に1/6ずつ遺産を分けます。
配偶者と、故人の兄弟姉妹が相続人になると、配偶者は3/4、兄弟姉妹は1/4の法定相続分で遺産を分けます。
故人の兄弟姉妹が3人相続人になった場合は、1/4を均等に分けて1人あたり1/12です。
もし相続人が相続放棄した場合は、その人を含めずに考えます。
配偶者と子ども2人が相続人になり、子どものうち1人が相続放棄した場合は、子どもの法定相続分は1人で計算するので、取り分は1/2になります。
生前贈与を受けていた相続人がいる場合は?
故人が相続人へ、生前贈与をしていることがあります。
生前贈与とは、生きている人から別の人へ、その人の財産を無償で渡すことです。
故人が亡くなる前に財産を渡すため、相続税の節税の一つとして行われています。
相続人の中に、故人から多額の生前贈与を受けていた人がいる場合は、贈与された分を特別受益として遺産の中に加えてから、相続人同士で分配することになります。
特別受益として遺産に加えることで、相続人の間で不公平にならずに遺産を分けることが可能です。
他にも特別受益として加えるものは、遺贈、持参金や支度金などの結納や養子縁組での贈与、独立開業資金、住宅資金などの生計の資本として故人から受けた贈与です。
教育費は、金額の大きさによっては特別受益にあたる可能性があります。
特別受益を含んだ遺産の算出は、少し計算するのが難しいため、専門家に相談しましょう。
介護・手伝い等をした相続人がいる場合は?
故人が亡くなるまで、介護や事業の手伝いなど、世話をした相続人がいる場合は、遺産分割協議で寄与分の主張ができます。
寄与分は、故人に特別の貢献をした相続人や親族がいる場合、相続分以上の財産がもらえる制度のことです。
故人の世話をしたのに、他の人と同じ取り分になるのは不公平となるため、本来もらえる分にプラスして分けることができます。
相続人がたくさんいる中で、故人を手厚く介護した人と、他の人に押し付けて全く介護しなかった人が、同じ取り分で遺産をもらうのは不公平です。
そのため、介護を全くしなかった人の遺産を減らして、その分を手厚く介護してくれた人への上乗せが認められています。
ただし故人への特別の貢献は、無償か無償に近く、一定期間以上行っているものでないと、寄与分をもらえる行為だとは認められません。
お金をもらって介護をしていたり、継続して行っていなかったりすると、寄与分がもらえない可能性があります。
また、寄与分は法定相続人にのみ認められ、法定相続人でない親族には認められていません。
長男の妻など、法定相続人でない人が寄与分を主張することはできません。
ただし法定相続人でない人が故人を介護していた場合、一定の条件で他の相続人に対して金銭を請求できます。
当然ながら、相続放棄した人は寄与分を主張することはできません。
遺産の分配方法は3通り
遺産分割には3つの方法があります。
現物分割
現物分割は、文字通り遺産をそのままの状態で分割することをいいます。
残されている現金は現金のまま、不動産は売却したりせずそのまま分配します。
換金などの手続きが必要ないため、相続人が納得すれば、簡単に素早く遺産の分配ができます。
一番分かりやすい方法のため、遺産分割する原則的な方法とされています。
複数の相続財産がある場合は相続財産ごとに分割せず、2つの土地を2人の相続人にそれぞれ分けるといったように、財産そのものを個別に分割する場合もあります。
それぞれの遺産の価値が一定であればスムーズに分配できますが、価値の差によっては、相続人へうまく分配できないこともあります。
換価分割
換価分割は、財産を売却して換金してから分割することをいいます。
全て換金するため遺産の価値に左右されず、公平な分割ができます。
しかし売却してしまうため、財産の現物が残らず、売却する手間や費用がかかり、売却した利益に様々な税金がかかることは認識しておきましょう。
遺産をそのまま分割できない場合や、相続人全員が希望する場合などに、換価分割が使われますが、現物分割と組み合わせて使うのもよいでしょう。
代償分割
代償分割は、現物で遺産を相続した人が、他の相続人へ現金を払って分配する方法のことをいいます。
その特徴から、「債務を負担させる方法による遺産分割」という呼び方もあります。
代償分割では、一部の相続人が相続分以上の額の財産をもらう代わりに、他の相続人に対して、増えた分の遺産に相当する額の代償金を支払うことになります。
例にそって見ていきましょう。
子どもが2人で遺産を相続することになり、相続財産として1000万円の価値を持つ土地があったとします。
現物分割では、土地を2人で1/2ずつ分けることになります。
片方が土地を全てもらいたいという場合、現物分割で相続するわけにはいきません。
しかし土地を2人で共有すると、換価することができません。
こういったときに使えるのが代償分割です。
土地を全てもらいたい相続人が相手に対して、代償金として相手が相続する分にあたる500万円を払います。
そうすれば土地を全てもらいたい相続人は、500万円を払うのと引き換えに、土地の所有権を全部もらえるのです。
また、遺産分割審判でも代償分割が選択される場合があります。
遺産分割審判で代償分割をする場合は、以下のような条件を満たしていないと行えません。
・現物分割を行うのが不可能である場合
・現物分割だと、分割した後に財産の経済的価値が著しく損なわれるため、現物分割が適当でない場合
・特定の遺産に対する、特定の相続人が占有して使っている状態を、特に保護する必要がある場合
・共同相続人の間に、代償金での支払いで遺産分割することについて争いがない場合
・代償金を払う方の相続人に、代償金を支払うだけの支払能力があること
遺産分割協議がまとまらないときの対応策
遺産分割協議では、相続人が話し合って遺産の分け方を決めます。
遺産分割協議がまとまらず、相続人同士で遺産について解決できない場合、家庭裁判所で解決することになります。
まず家庭裁判所で、遺産分割調停を申し立てます。
遺産分割調停は、1人や複数人の相続人が、他の相続人全員を相手に申し立てるものです。
調停では第三者である調停委員が間に入って仲裁してくれますが、遺産分割協議と同じように、相続人同士が話し合って遺産分割方法を決定します。
そのため調停を申し立てたとしても、相続人の全員が分割内容に納得できないと成立しません。
すぐに解決することもあれば、話し合いがもつれてそのまま遺産分割審判に突入することもあります。
遺産分割審判では、裁判官が遺産の中身や性質、家庭などの事情を考慮して、どのように遺産を分けるかを決めます。
審判に参加する相続人が自分の主張を出し合って、裁判官はその主張などから遺産分割の方法を審判で決めます。
相続人が納得せずとも、審判で決められた方法は絶対です。
審判が始まって遺産を分割する方法が確定するまでの期間は、だいたい3カ月から8カ月程度です。
しかし、審判が始まるまでの期間も含めると、確定するのにたいてい1年以上、長い場合は3年以上かかる場合もあります。
相続税が発生した場合の負担割合は?
遺産を相続するときには、相続税が発生します。
相続税は、相続する金額によって税率が決まる累進課税です。
法定相続人の数によって決まる基礎控除を超えると課税され、超えないと課税されません。
3000万円に、相続人の人数×600万円を足したものが基礎控除の金額です。
基礎控除を超えた額に、相続税の税率をかけて、支払う相続税額を出します。
相続税を納めることになった場合は、払うことになった税金の総額に、実際に遺産を分配した割合をかけて、それぞれの払うべき税金の額を出します。
そのため、相続人全員が同じ割合で税額を負担するわけではありません。
遺産を分配した割合で、一人ひとりが払う税金が決まります。
もらった遺産の割合が多い人は相続税も多く、もらった遺産の割合が少ない人は相続税も少なくなります。
遺産分割協議はいつまでにすべき?
遺産分割協議は相続人全員で行わないといけないため、全員がそろうまでには時間がかかります。
しかし、遺産分割協議自体に期限はありません。
相続人全員の予定がなかなか合わなくても、遺産分割協議には期限がないため、集まるのが少し遅くなっても大丈夫でしょう。
全員が集まらず、一部の相続人だけで話をまとめてしまったり、協議後に隠し子が発覚して新しい相続人が増えたりする場合が時々あります。
そのような事態になってしまったら、遺産分割協議をやり直さないといけません。
そのため遺産分割協議を行う場合は、相続人が全員集まり、新しい相続人が現れないことを確認してから行うのがよいでしょう。
とはいえ、気をつけないといけない点があります。
遺産分割協議をする期限はなくても、相続放棄と、相続税の申告と納付には期限があります。
相続が発生したときから数えて、相続を放棄する期限は3か月後、相続税の申告と納付の期限は10か月後になります。
協議自体に期限はありませんが、その他の期限に遅れないよう、遺産分割協議はなるべく早めに始めるのがおすすめです。
遺産の配分割合まとめ

ここまで遺産をどのような割合で配分すればよいのかや、様々なケースでの分割方法などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
・故人の家族である法定相続人が遺産を相続できる
・民法で定められている法定相続人の順位によって、遺産配分の割合が変わる
・遺産の分割には、現物分割・換価分割・代償分割の3つの方法がある
・話がまとまらなかったら、家庭裁判所で決めてもらうことが可能
・遺産分割協議自体に期限はないが、相続放棄と相続税の申告には期限がある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

鎌田 真紀子(かまた まきこ)
国家資格 キャリアコンサルタント ・CSスペシャリスト(協会認定)
経歴
終活関連の業界経歴12年以上。20年以上の大手生命保険会社のコンタクトセンターのマネジメントにおいて、コンタクトセンターに寄せられるお客様の声に寄り添い、様々なサポートを行う。自身の喪主経験、お墓探しの体験をはじめ、終活のこと全般に知見を持ち、お客様のお困りごとの解決をサポートするなど、活躍の場を広げる。