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専門家インタビュー

福祉工学の力で人々の幸福を実現し課題解決をしたい

更新日:2023.01.10

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  1. 研究内容について
  2. 今後の目標について
  3. みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
  4. 取材に協力してくださった先生の紹介
  5. 先生の所属先
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研究内容について

Q1.「安定な歩行を支援するロボット杖の開発」についての研究内容とその研究成果について教えてください。


 一般に広く使われている一本脚の杖は、一点で体重を支えるために地面に上手くつかないとバランスが取れずに転倒する危険があります。

特に、屋外の不整地(砂利道や段差などの凹凸のある地形)ではその危険性が増すため、訪問介護や福祉施設でも特に注意を払っています。

一方で脚の数を増やした杖も存在しますが、屋内など平地での使用を前提としているために、脚が石や段差などに乗ってしまうとグラグラして杖の役目を果たしません。


そこで、ロボット技術を応用して、杖の脚が伸縮して自動的に地面の凹凸や段差を吸収する「ロボット杖」を開発しました。

地面への杖の接地状態をセンサで判定して自動的にバランスを取る機能や、体重を支える時に杖の傾きを直立に保つように制御する機能も内蔵していますので、安心して屋外で用いることができます。

現在は、杖の使用状態をモニターして、歩き方や歩行時のバランスに問題が無いかどうかを見守る機能の開発を行っています。

高齢の方や体の不自由な方が安心して外出できるように性能や使いやすさを高めていきたいと思っています。


Q2.その研究を行った経緯を教えてください。


 浜松医科大学の先生方と共同で高齢者の転倒予防に関する研究を続けてきて、実際に福祉施設で多くの方と交流する中で杖を使用されている方から危険性を伺ったのがきっかけです。

様々な施設のスタッフにお話しを伺ってみると、実際に杖を使っていて転倒された事例も伺うことができ、ある施設では訪問時に自宅から車までの案内時には杖を使わせないようにし、寄り添って体を支えるなどの安全対策をしているとのことでした。


このお話を伺って、屋外で安心して使用できる杖を考案しようと思い立ちました。

最初の段階では、地面の段差や凹凸を柔軟に吸収する杖の脚の構造と、体重を支える時には脚が固くなってしっかりバランスを保持する機構の両立に苦労しましたが、磁石の力で硬さが変化する流体を応用することで課題をクリアすることができました。


Q3.「高齢者のための見守りと転倒予防トレーニングを統合した包括的歩行ケアシステムの開発」についての研究内容とその研究成果について教えてください。


 転倒は高齢者が寝たきりになる大きな原因の一つで、実際に転倒が高齢者の救急搬送の主要因であるというデータも示されています。

転倒は加齢による筋力やバランス能力の低下などが原因で起こりますが、一度転倒をするとその後の療養期間に筋力やバランス能力がさらに低下するため、再び転倒をするリスクが高まると考えられます。

そのため、歩行の状態を適切に診断し、最初の転倒を引き起こす前に意識づけや改善をすることが重要になります。


そこで、浜松医科大学の先生方と共同で高齢者の歩行診断システムや転倒予防のためのトレーニング装置などの開発を行ってきました。

歩行診断システムは、多くの高齢者の歩き方(歩行中の脚の動かし方)を計測し、ロボット工学や情報工学の分野で用いられる機械学習の技術を使って分析することで、高齢者の歩き方のタイプを分類して明確化しタイプ別の転倒リスクを分析することができるシステムです。

健康診断のように歩き方を計測することで、歩き方のタイプや特徴、注意点などを診断して結果をフィードバックすることができます。


また、その結果をふまえて、トレーニング装置によって自分自身の歩き方やバランス状態を目に見える形で理解することができます。

歩き方やバランス状態は自分では気づきにくいものですが、それを客観的に見られるようにすることで転倒予防の意識づけに繋がり普段の歩行時に意識することができるようになります。

簡単な装置で普段の歩行状態も見守ることができるような新しいデバイスも開発していきたいと考えています。


Q4.伊藤様が考える本研究の意義を教えてください。


 転倒は、生活の質(QOL)を低下させる大きな要因の一つです。

いつまでも健康で元気に外出できることはすべての人の共通の願いであり、それが運動機能や認知機能を維持するための秘訣でもあります。

近年、福祉工学の研究や福祉機器の開発が活発になっています。一つの研究室でできることは限られていますが、多くの人の知恵が結集することで様々な新しい支援技術や支援機器が生まれてくるものと思います。


近い将来、生活の中での様々な不自由が解決される日が来ることを願っています。


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今後の目標について


Q1.伊藤様の研究における最終的な目標を教えてください


 「福祉」の語源は「幸福」で、対象は高齢者や体の不自由な方だけでなく「すべての人」です。

そのため、福祉工学の果たすべき役割や対象となる課題はとても多く存在します。


生活の中での困りごとを解決できるような様々な技術の開発に取り組みたいと思っています。

同じ支援機器でも人によって支援の程度や好みが異なるため、機能や形態などをカスタマイズできることも重要な要素の一つであると考えています。

実際に使って頂ける方のことを思い浮かべながら、研究室の学生と一緒に開発を行っていきたいと思います。


Q2.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?


 現在は、ペットボトルのふたを開ける、ドアノブをひねるといった日常生活に必要な運動機能を維持しながら、認知機能の低下も予防することができるトレーニング装置の開発に取り組んでいます。

上肢や下肢の大きな動きを対象にしたリハビリテーション機器は多く開発されていますが、手先の細かい動作と腕の動作を組み合わせて複合的にトレーニングできる機器はほどんどありません。


今は試作機が完成した段階ですが、ゲームのように楽しみながら指先の感覚や認知機能を訓練できる状態に仕上がってきています。

今後、実際に高齢者に体験して頂いて、運動機能や認知機能に対する訓練効果の確認と装置の改良を行っていきたいと思います。


みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言


Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。


 近年、医療工学や福祉工学の研究がとても活発化して様々な研究開発が行われていますが、生活の中の困りごとはとてもたくさん存在します。

これらの支援工学は、病気や怪我の治療法やリハビリテーション法の研究から発展してきましたので、ロボット杖の例のように、まだまだ普段の生活の中での支援機器の需要は把握しきれていない部分もたくさんございます。


福祉機器の展示会などもございますので、ご要望やお困りごとを研究者にお寄せいただくことで新しい機器の開発につながっていけば良いなと考えています。


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取材に協力してくださった先生の紹介

静岡大学 工学部 機械工学科 准教授

伊藤 友孝 様

資格・学会・役職

博士(工学)
所属学会 日本ロボット学会,日本機械学会,日本生体医工学会,日本早期認知症学会など

略歴

現職 静岡大学学術院工学領域 准教授
   (静岡大学大学院 総合科学技術研究科 工学専攻機械工学コース)
   (静岡大学工学部機械工学科)
出身大学 名古屋大学 博士(工学)
研究分野 ロボット工学,制御工学,福祉工学

先生の所属先

https://ars.eng.shizuoka.ac.jp/~arslab/

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監修者

評価員(はかまだ)

袴田 勝則(はかまだ かつのり)

厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター

経歴

業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。

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