専門家インタビュー
地方寺院の僧侶による葬儀実践の模索―法話に注目して―について
更新日:2024.11.13 公開日:2024.11.13
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研究内容について
Q1.「地方寺院の僧侶による葬儀実践の模索―法話に注目して―」の研究を始めたきっかけは何ですか?
日本においては、イエや地域共同体が解体されつつあり個人化が進む中で、1990年代以降、従来の葬儀のあり方が批判的に検討され、様々な形態の葬儀が展開されています。その中で僧侶の関与しない葬儀も増加しており、葬儀における僧侶の位置づけも刻々と変化しています。
しかし従来の葬儀研究では、僧侶は伝統的な儀礼において固定的な役割を担う一構成員として扱われ、時代状況に応じて自らのあり方を模索する僧侶の姿を捉え切れていません。そこで本研究では、葬儀において能動的に変化し続ける僧侶の姿に焦点を当て、僧侶の語りである「法話」に注目することで、葬儀に僧侶が関与する意味を宗教社会学的な観点から明らかにすることを試みています。
Q2.研究対象である、「地方寺院の僧侶」とはどのような内容ですか?
本研究では「地方寺院の僧侶」、なかでも浄土真宗の僧侶による葬儀実践を事例に検討を進めています。本研究においては特に、「地方寺院の僧侶」の有する一特徴として、門徒と緊密な関係を築いてきた点に着目しています。
調査対象地域である新潟県新潟市と岐阜県西濃地域周辺ではこれまで、菩提寺(手次寺)の僧侶と門徒の全人格的な付き合いをベースにして葬儀が営まれてきました。僧侶と故人・遺族が葬儀の時だけでなく日頃から時空間を共有し、個人対個人としてお互いへの理解を深めてきたのです。
こうした葬儀以前の関係のほか、枕経における遺族との会話に基づき、故人にまつわるエピソードを法話に盛り込む僧侶も見受けられます。
Q3.本研究の研究成果を教えてください。
浄土真宗の葬儀では、多くの宗派の葬儀で重んじられる授戒や引導が行われません。そのため、僧侶の位置づけを示すことは他宗派よりも困難です。しかしこの困難さは却って、浄土真宗の僧侶が言葉を尽くすことを通して人々に自らの存在意義を示そうとする契機となり、法話の活用を促してきたと考えられます。
通夜で行われた法話の内容を分析すると、故人の生き様を反映させた個別化された要素と、仏教儀礼として定型化された要素が確認できました。両要素は相反するものではなく、相互補完的な関係にあることが指摘できます。法話実践の分析により、僧侶が個性的な葬儀を称賛する現代的なニーズに対応しつつ、同時に死別に際して必要とされる仏法に基づく物ナラティブを提供している様相が明らかになったと言えます。
Q4.磯部様が考える本研究の意義を教えてください。
本研究では、参与観察や聞き取り調査の手法を用いて、現実の葬儀に関与する僧侶の行為の意図や宗教実践について筆者が直接見聞きすることにより、現代日本の葬儀に僧侶が関与する意味を考察しました。なかでも検討にあたり焦点化したのは葬儀における法話です。
従来の葬儀研究においては、読経など教義上重視される実践への注目が中心であり、法話に着目した研究はほぼ存在しません。法話に言及するのは伝統仏教教団や僧侶自身に限られていました。このように法話を主題化する学術研究は稀であるため、本研究から得られた結果は貴重であると考えられます。
本研究では法話の分析を通して、時代状況に合わせて僧侶が自らの行為や意識を反省的に見直しながら、「より良い」葬儀実践のあり方を模索している姿を描きました。
このことは一見、現代日本の特質に従属する形で自己変革する僧侶の営為をあらわにしたように思われますが、僧侶が介在する葬儀に元来内包されていた特徴が、現代日本という文脈から解釈されることで、より重要な意味を認識されるようになったと捉えられます。
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今後の目標について
Q5.磯部様の研究における最終的な目標を教えてください。
これまで私は非都市部(岐阜・新潟)のほかにも都市部(東京・千葉)の葬儀研究に取り組み、葬儀において遺族は、僧侶など諸アクターと交流しながら死別悲嘆に向き合っていることを明らかにしてきてきました。こうした葬儀研究から得た知見をもとに、今後は死別研究に着手したいと考えています。
具体的には、死別悲嘆を抱える遺族が死者との関係を再構築していく過程に、宗教者や医師、葬祭業者などの専門職がいかに参与するのかを、宗教社会学的観点から解明していきたいと考えています。
日本のみならず他の先進諸国でも死別悲嘆は個人化し、遺族をとりまくネットワークが機能不全を起こしつつある中で、死者を起点にして遺族をめぐるネットワークを結び直す視点を提示することを目指したいと思います。
磯部様の経歴について
Q1.磯部様の略歴を教えてください。
京都府立大学公共政策学部福祉社会学科 卒業
国立歴史民俗博物館・特別共同利用研究員(2020年3月まで)
大谷大学大学院文学研究科社会学専攻修士課程 修了
大谷大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程 修了
大谷大学真宗総合研究所東京分室PD研究員(2022年4月から現在まで)
Q2.磯部様の資格・学会・役職を教えてください。(5つまで)
学位:博士(文学)
学会:「宗教と社会」学会、日本宗教学会、日本社会学会
資格:教員免許(中学社会1種・高校地歴1種・高校公民1種)
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磯部様の所属先
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