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専門家インタビュー

人口減少社会に向けて意義のある研究を行いたい

更新日:2022.12.27

福知山公立大学 川島典子様

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  1. 研究内容について
  2. 今後の目標について
  3. みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
  4. 今回取材に協力してくださった教授
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研究内容について


Q1.「ソーシャル・キャピタルに着目した介護予防」についての研究内容とその研究成果について教えてください。


 ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)とは、地域に蓄積されたつながりのことをさし
ます。

ソーシャル・キャピタルには、幾つかの下位概念(類型)がありますが、代表的なものが地縁等の結合型ソーシャル・キャピタルと、NPO等の橋渡し型ソーシャル・キャピタルです。


海外の先行研究では、橋渡し型ソーシャル・キャピタルの方がより健康と関連していると
いう文献が多いです。

しかし、丹後半島で京大のチームが行った調査によれば、結合型ソーシャル・キャピタルと健康の関連も否めないという研究結果があります。

そこで、私は、その双方(町内会自治会の活動等とNPOの活動等)をつなぎながら介護医予防を行えば効果的なのではないか?という仮説を実証的に検証する研究をしています。

その結果、やはり仮説通りの成果が得られました。


Q2.人と人が協力する環境が減ってきている印象がありますが、実際には今と昔ではどちらがソーシャル・キャピタルに着目した介護予防が栄えていますか?


 ソーシャル・キャピタルという言葉が脚光を浴び始めたのは、2000年代初頭にアメリカの政治学者パットナムの著書が「哲学する民主主義」というタイトルで邦訳されてからです。

パットナムは、ソーシャル・キャピタルを「ネットワーク・規範・信頼」と定義しました。そして、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域では政治が安定し人々の健康度も高く、犯罪や少年非行が少なくて、子どもたちの学力も高く、経済的にも発展することを人々に知らしめたのです。

以後、各国の様々な分野でソーシャル・キャピタル研究が進化しました。


確かに、昔に比べ、今は地域における人々のつながりは希薄になり、町内会自治会などへの参加率も減っている傾向にあるのかもしれません。

しかし、こうしたソーシャル・キャピタル研究によって、地域のつながりを深めることが介護予防に大きな効果をあげることが学術的に立証された今、厚生労働省も「つながり」を深めたり「社会参加」を促すことによっ
て要介護状態を予防することを推奨しています。

Q3.「人口減少社会に対応する中山間地域研究」についての具体的な研究内容とその研究成果について教えてください。


 日本地域政策学会で一昨年度より3年間にわたり「中山間地域政策研究プロジェクト」を立ち上げ毎年シンポジウムを開催したり、今年度の日本NPO学会で「中山間地域活性化におけるNPOの役割」というシンポジウムを企画したりしました。

さらに、今年、福知山で開催された第26回日本ジェンダー学会で「人口減少社会におけるジェンダー政策―中山間地域のジェンダー問題―」という公開シンポジウムを企画し、シンポジストを務めたりしています。


中山間地域を持続可能なものにするためには、①地域経済の活性化、②保健医療福祉サービス、③教育政策、等が必要です。

①に関しては、A級グルメ構想で大成功した島根県邑南町の事例研究等を行いました。

邑南町は子育て支援策も充実していて5年連続合計特殊出生率が2を超えています。

また、②に関しては、島根県雲南市が発祥の地であるコミュニティナースの活動を分析したりしました。

③に関しても、同じく島根県の隠岐島前高校から始まった高校魅力化コーディネーターの事例研究等を行っています。

Q4.川島様が考える人口減少社会に少しでも活力をつける方法とは?


 人口減少社会の最大の課題は、地域や社会保障制度を持続可能なものにすることにありま
す。

そのためには、何より合計特殊出生率を向上させる必要があるでしょう。


内閣府が行ったソーシャル・キャピタルに関する全国調査によると、実は、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域は、合計特殊出生率も高いという結果が得られています。

中山間地域では、既に地縁、つまり結合型ソーシャル・キャピタルは豊かなはずです。

ですから、むしろ橋渡し型ソーシャル・キャピタルを豊かにする努力をした方が良いと思います。

実際、私の勤務する大学がある京都府福知山市は、合計特殊出生率が2.02で京都府一高く本州でも3位なのですが、その背景には、子育て支援のNPOが果たす役割があるといわれています。


また、今住んでいる女性が流出しないようにするためにジェンダー・ギャップをなくす政策も必要です。

さらに、父親の育児休暇取得率の高い国は合計特殊出生率も高いため、先進国中最下位(約13%)に甘んじているパパの育休取得率向上にも努めるべきです。


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今後の目標について


Q1.川島様の研究における最終的な目標を教えてください。



 私の専門は、社会福祉ですから、人口減少社会における福祉政策を極め、少しでも皆さんや日本社会に貢献できる研究を行いたいと考えています。


研究は研究のためにあらず、社会のためにあり、というのが私もモットーです。老いも若きも笑顔で暮らせるような研究を行うことを最終目標にしたいと思っています。


Q2.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?


 人口減少社会が進むと、行政の職員や福祉専門職が枯渇するだけでなく、地域のボランティアさえ高齢化して担い手がいなくなることが危惧されています。

そこで、現在、地域の高齢者サロンや通いの場で行われている転倒骨折予防教室および認知症予防教室などの介護予防教室における専門職やボランティアの役割を代行するAIやロボットの開発を国の学術振興財団の助成の下に進めています。


今後は、AIを搭載した独居高齢者の見守りロボットを開発したいと思っているところです。

双方向性で会話ができることにより孤独を癒したり、孤独死の予防ができると同時に、健康管理や服薬指導、介護予防機能も持たせたいと考えています。


さらに、被災時の避難誘導を行う防災機能も持たせる文理融合の研究を進めていく予定です。

みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言


Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。


私の出身地である島根県は、私が研究を始めた頃、高齢化率が日本一でした。ちょうど介護保険制度が施行された39歳の頃の話です。


でも、みんな幸せそうで、最期の時まで生き生きと暮らしていました。

一方で、とても健康でまだ仕事もしていた私の父は74歳で脳梗塞に倒れ、6年半も在宅介護をした後、不自由
な体をかかえたまま、昇天。

これからの時代、要介護状態を予防することがいかに大切かを感じ、介護予防の研究を始めました。

そして何より、言葉も喋れないままにいってしまった父をみて、終活の大切さを痛感したのです。


父がなくなった後、母はひとり暮らしをしています。

毎日、電話をかけてはいますが、離れていますから、とても心配です。

だから、独居高齢者の見守りロボットの開発を行いたいと思いました。

今後も、終活を考える皆様のためになる研究に精進したいと思っています。

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今回取材に協力してくださった教授

福知山公立大学 地域経営学部教授

川島 典子 様

略歴

1986年同志社大学文学部社会学科社会福祉学専攻卒・2003年同大学院文学研究科社会福祉
学専攻博士前期課程修了・2007年同博士後期課程単位取得満期退学・2018年同大学院総合
政策科学研究科公共政策コース博士課程後期退学(政策科学博士)
元産経新聞大阪本社社会部記者
元同志社大学ソーシャルウェルネス研究センター研究員
2020年より福知山公立大学地域経営学部医療福祉経営学科教授
日本ペンクラブ会員

資格・学会・役職

日本社会福祉学会会員、日本地域福祉学会会員、日本地域政策学会会員、日本NPO学会会
員(2022年度企画委員)、日本ジェンダー学会会員(2022年度学会実行委員長)
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