専門家インタビュー
熟年看護師による死の語りについて
更新日:2024.09.08 公開日:2024.09.06
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研究内容について
Q1.「熟年看護師による死の語り」の研究を始めたきっかけは何ですか?
もともと、東京の山谷地区、世田谷区、大阪釜ヶ崎における孤独死とその支援者に対するフィールドワークを行い、研究成果を『孤独死の看取り』(新評論)という本にまとめていました。
それを教科書として読んだ看護大学院生たちから、「看護師による死の語りを、社会学者である先生と看護学を学ぶ私たちとで研究したら、どんな成果が得られるのか知りたいです」と、共同研究についての相談と申し出を受けたことがきっかけです。
Q2.研究対象である、死の語りとは何ですか?
死を迎える患者と家族、そして看護師同士を互いにケアする、看護師たちによるケアリングの語りです。
それはまた、がんサバイバーである私自身も向き合っている死への準備です。
共同研究を申し出た大学院生は手術室、脳神経外科病棟の看護師長、救命救急センターの看護師、助産師と、まさに生と死の臨床現場で「ベテラン」と呼ばれる看護師たちでした。
インタビューでは、看護師として出逢った印象的な患者や家族へのケアばかりではなく、看護師であっても家族の生と死に直面して戸惑う生身の姿が涙ながらに語られました。
論文執筆後、年代や経験年数で看護師による死の語りにどのような成熟が見られるのかについて研究を進めました。
私自身ががんで死を語ることになるとは、青天の霹靂でしたが。
Q3.本研究の研究成果を教えてください。
研究成果は、現在まで続けている「看護師が語る『よいケア』とは何か」という研究テーマを得たことです。
また、人の生を考えることにつながり、虐待サバイバーの研究もしています(『虐待被害者という勿れ』新評論)。
これまで、多くの看護師たちにインタビューをしてきました。
看護師として落ち着いて職務に取り組む30歳代前半までの看護師、定年退職をした看護師、山谷地区の孤独な死の現場に長年携わるNPO法人の理事長(保健師・看護師)、訪問看護師、外来化学療法センターの看護師長、看護大学教授の語りに耳を傾けてきました。
一人ひとりの看護師の看護観が醸成されることになった「死の語り」と「よいケアとは何か」。
看護師たちの語りを現象学的に質的分析し、現在も研究を重ねています。
Q4.嶋守様が考える本研究の意義を教えてください。
生きる限り、家族があり、一人ひとりの人が過ごした時間は歴史になります。
生と死は、その人のものであると同時に、その人にとっての唯一無二の家族のものです。
だからこその苦悩があるのだと、私は自分自身の研究と経験から考えています。
エンドオブライフ・ケアという考えがあります。
そこで大事にされているのは、死を一瞬ととらえず、始まれば続いていく、その人とその家族との時間です。
それをいかに支援するか。
その人が生ききるための「よいケア」とは何か。
誰にとって「よい」のかではなく、人が旅立つために、そして旅立った後にも、人が「生ききった」生を労(ねぎら)える時間をその人とその家族が過ごせるように、「よいケア」とは何かを考え続ける。
ケアを受けるその人、その家族、その支援者が共働して考え続けていく。
それが何よりも重要になってきます。
生ききる生と死の大切さを、生死に戸惑いをもって考える瞬間にいる人すべてに伝えられる。
それが、私の研究の意義だと考えています。
Q5.嶋守様の研究における最終的な目標を教えてください。
生ききる人が旅立つそのときまで、そして旅立ったあとも、生ききるための支えをその当人と家族、支援者とで共につくりあげていく。
こうした「ケアリング」の考え方が、これからの生き方のスタンダードとなるように、研究で貢献していくことが私の最終的な目標です。
人の死に対する後悔や悲しみとともに、「生ききったのだ」という実感が持てるように。
そうした実感を、その人も家族も、そして支援者が少しでも持ってよいのだと思うことができれば、人としての優しさが、「考え続ける」ということで実現できる。
そう信じて研究を重ね、人を支え、私自身も生ききっていきたいと考えています。
先生の経歴について
Q1.先生の略歴を教えてください。(5つまで)
2002年:金城学院大学大学院文学研究科社会学専攻博士後期課程修了、博士(社会学)取得
東海女子大学助手(2002年から2004年)、2004年より桜花学園大学助手、講師、准教授を経て、2017年より桜花学園大学保育学部教授、桜花学園大学大学院教授。
Q2.先生の資格・学会・役職を教えてください。(5つまで)
学位:博士(社会学)
学会:日本社会学会、日本社会福祉学会、臨床実践の現象学会
役職:桜花学園大学大学院研究科長補佐
先生の所属先
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