相続
公正証書遺言がある場合、遺産分割協議書は必要?効力の面から解説
更新日:2022.04.14
遺言書にはいくつか種類がありますが、公正証書遺言がある場合、遺産分割協議書は必要でない場合が多いと言えます。
しかし、遺産相続の手続きは慣れないことも多く、何から手を付けたら良いのかわからない方も少なくありません。
そこでこの記事では、公正証書遺言がある場合、遺産分割協議書は必要か否かについて解説します。
この機会に、公正証書遺言や遺産分割協議書の意味合いを知っておきましょう。
後半では、遺言書を無効にする方法について触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 公正証書遺言とは
- 公正証書遺言がある場合の相続手続き
- 遺産分割協議書とは
- 遺産分割協議が必要な相続手続きの流れ
- 公正証書遺言がある場合遺産分割協議書は必要か
- 遺言書を無効にする方法
- 公正証書遺言がある場合遺産分割協議書は必要かまとめ
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人の関与の元で作成される遺言のことを指します。
公証人とは法律の専門家であり、国の公証事務を担っている公務員です。
公証人は公証人法に基づき、長年法律に携わる職務に就いている弁護士や検察官などから法務大臣より任命されます。
公証事務を行う国家機関の公務員として、法律に関する知識はもとより、高い中立性、公正性が求められます。
そのため公正証書遺言は、法的有効性もチェックされていますから、証明力・執行力が最も優れていると言えるでしょう。
また、遺言の作成後原則20年間、原本を公正役場にて保管しますので紛失の心配もありません。
公証人が在籍する公証役場は全都道府県にあり、全国で約280箇所設置されています。
病気などの理由により、公証役場に出向くことが出来ない場合は自宅や病院等に来てもらうことも可能です。
公正証書遺言がある場合の相続手続き
公正証書遺言がある場合は家庭裁判所の検認を必要とせず、すぐに相続手続きを開始することができます。
公正証書遺言の執行には、遺言の通り相続手続きを行う代表者、または遺言執行者の選任が必要です。
公正証書遺言がある場合、公証人の関与もあるので遺言執行者の記載がある場合が多いです。
遺言執行者は公正証書遺言の内容に沿って遺言執行者が手続きの一切を執り行いましょう。
遺言執行者が指定されていない場合は、相続人の代表者を決めて手続きを進めるか、弁護士や行政書士に依頼するケースが多いです。
ただし、相続人の代表者が手続きを行う場合、手続きの一切をスムーズに行うのが難しい場合もあります。
例えば、預金の相続手続きの際、金融機関から相続人全員の戸籍謄本や実印、印鑑証明などを求められるなど、かえって煩雑になってしまうこともあります。
そのため、遺言執行者を選任しておく方が後の手続きが円滑に進みやすいと言えるでしょう。
選任は家庭裁判所に申し立てを行い、事後的に遺言執行者を決定することも可能です。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、相続人が遺産分割協議を行い、合意した内容をまとめた書類を指します。
遺産分割協議書の作成においては、相続人全員参加のもと、遺産分割の割合や相続の方法を取り決めます。
全員の合意が得られたら話し合いの内容を遺産分割協議書として取り纏め、相続人全員が実印を押印し、一通ずつ保持します。
書式に決まりはなくひな型を紹介しているサイトも多いため、これらを利用して作成するのも良いでしょう。
遺産分割協議が必要な相続手続きの流れ
相続手続きにおいて、遺産分割協議が必要となる場合の流れを詳しく解説します。
遺言書の有無を確認する
遺言書がある場合は遺言書の内容に沿って相続手続きを進めますが、遺言書がなければ遺産分割協議が必要です。
そのため、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
自筆の遺言書が見つかった場合は家庭裁判所による検認が必要ですので、安易に開けてしまわない様注意してください。
遺言書がない場合、相続人による遺産分割協議が必要となります。
相続人を調査をする
遺産分割協議は相続人全員で行わなければならないため、誰が相続人であるか調査、確定する必要があります。
相続人が全員揃っていない段階で遺産分割協議を行っても、それらは全て無効となってしまいます。
調査を進めるうえで意外なところから相続人の存在が出てくる可能性もあります。
存命中の戸籍謄本や除籍謄本を全て確認しておくと安心でしょう。
相続財産を把握する
相続人の確認・確定と並行して相続財産の調査を行います。
土地や建物といった不動産、預貯金などを全て確認し、どのような相続財産があるか把握しましょう。
これらを確認しないことには、遺産分割を行う、または相続放棄するなどの判断も出来ません。
相続財産には上記のほか、車や貴金属、株などの有価証券、借金やローンなどの夫妻も含まれます。
遺産分割協議をする
法定相続人及び相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。
遠方に住んでいるなどで全員が同じ場所に集まれない場合は、メールや電話、オンライン会議システムなどを利用しても問題ありません。
相続人の中に未成年者がいる場合は代理人を立てる必要がありますが、通常は親が務めることが多いでしょう。
ただし、親も子と同様に相続人に含まれる場合、親が代理人になれない場合があります。
そのときは家庭裁判所に申し立て、特別代理人を選任することになります。
また、認知症などで判断能力がない人が相続人に含まれる場合も代理人が必要となります。
この場合は成年後見人を立てることが一般的です。
遺産分割協議書を作成する
話し合いの内容をもとに、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名、実印の押印を行います。
遺産分割協議書には、誰がどの遺産を相続するのかを明確に記します。
万が一、後から財産が発見された場合についても取り決めをし、記載しておくと良いでしょう。
また、相続税の申告が必要な場合は、このタイミングで申告を行います。
相続財産の名義変更・登記手続きをする
遺産分割協議書を元に、不動産の名義変更や登記手続き、預貯金の払い戻し等を行います。
法務局や銀行等、手続きに不安がある場合は司法書士に依頼するのも良いでしょう。
公正証書遺言がある場合遺産分割協議書は必要か
公正証書遺言があるときは、遺産分割協議書は必要でない場合が多いと言えます。
公正証書遺言は公証人の関与のもと作成されていますので、証明力・執行力が高い遺言となります。
しかし、公正証書遺言に記載がない相続財産を発見したり、相続人全員の同意があれば遺産分割協議を行い、遺言の内容を変更することも可能です。
その場合は相続人全員の参加の上で遺産分割協議を行いましょう。
ただし、協議のなかで合意に至らなかった場合は協議不成立となり、公正証書遺言の内容が優先されることになります。
遺言書を無効にする方法
前項では、公正証書遺言がある場合でも、相続人全員の同意があれば遺産分割協議を行い、遺言の内容を変更出来る旨に触れました。
本項では遺言書を無効にする方法にも触れて解説します。
有効性を確認する
まずは、遺言に有効性があるかを確認しましょう。
ポイントは大きく分けて以下の二つです。
- 曖昧な表現が用いられていたり、日付、署名、押印など書き方に不備のあるもの
- 認知症など、遺言の日に意思表示が難しい状態であったと証明されるもの
公正証書遺言がある場合、公証人の関与があるので書式の不備はほぼないと言えますが、自筆遺言の場合は可能性があります。
また、認知症などの場合は医師の診断書など、意思能力がなかったことを医学的に証明が出来る書類が必要になります。
遺留分の制度を利用する
遺言があっても、相続人には最低限の遺産を取得できる権利があります。
最低限保証されている財産を遺留分といい、遺留分は遺言書よりも優先されますので、遺言に侵害されることもありません。
遺言で、相続分が遺留分を下回っている場合は、遺留分で受け取れる範囲まで引き上げて受け取ることもできます。
ただし、兄弟姉妹には遺留分は認められておらず、遺言に従わなければなりません。
また遺留分請求には期限があり、相続開始から10年を経過すると請求する権利が消滅してしまいます。
遺留分を請求する場合は意志を明確にし、専門家への相談も含め計画的に進めると良いでしょう。
裁判所に調停を申し立てる
遺言書を発見したけれど筆跡に疑問が残る場合などは、自分たちだけで解決するのは難しくなります。
そこで遺言が有効か無効かを確認する手段として、遺言無効確認訴訟という方法があります。
相続の問題は家族、家庭に関する事件となりますので、家庭裁判所が管轄となります。
無効と判断される場合は遺言が無かったものとされますので、相続人で遺産分割協議を行うか、通常の法定相続を行う流れになります。
公序良俗に反していないか確認する
遺言で自由に財産の分割、処分を行うことができますが、公序良俗に反している場合は無効となる場合があります。
具体的には、不倫関係にある愛人に遺産を全て残すとする遺言は、無効となる可能性が高いと言えるでしょう。
ただし、不倫であっても一定期間以上の継続があり、内縁関係を立証できる場合はこの限りでない場合もあります。
公正証書遺言がある場合遺産分割協議書は必要かまとめ
ここまで、公正証書遺言がある場合、遺産分割協議書は必要か否かについて解説してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 公正証書遺言は、公証人の関与のもと作成される遺言を指す
- 公正証書遺言がある場合、遺産分割協議書は必要ない場合が多い
- ただし、公正証書遺言がある場合でも遺産分割協議を行うことは可能
- 遺産分割協議で最終的な合意に至らない場合は、公正証書遺言の内容が優先
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。