相続
遺産を相続放棄したい場合はどうする?必要書類や手続きについて紹介
更新日:2022.04.18
相続放棄ということばを耳にしたことがある方は多いかもしれませんが、相続放棄の詳しい手続きについてはご存知でしょうか。
相続放棄する際の必要書類や手続き方法を知ることは大切です。
そこでこの記事では、遺産を相続放棄した場合の対応について詳しく解説します。
この機会に、相続放棄をした方が良いケースや実際の手続き方法を知っておきましょう。
後半には遺産の相続放棄が受理されないケースについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 相続放棄とは
- 遺産を相続放棄した方が良いケース
- 遺産の相続放棄の手続きには期限がある
- 遺産の相続放棄の手続き方法
- 遺産の相続放棄をする際に必要な費用
- 遺産の相続放棄をする場合の注意点
- 相続放棄しても受け取れるお金がある
- 相続放棄の期間が過ぎても認められるケース
- 遺産の相続放棄が受理されないケース
- 遺産の相続放棄まとめ
相続放棄とは
相続放棄とは、故人の残した全ての財産を一切相続しないということです。
この財産の中には、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。
相続放棄をする際には、裁判所にて手続きをする必要があります。
遺産を相続放棄した方が良いケース
遺産を相続放棄するケースにはどのようなパターンがあるのでしょうか。
考えられるケースごとに説明していきますので、以下を参考にしてください。
資産よりも負債の方が多い場合
プラスの財産とマイナスの財産を比べたときに、明らかにマイナスの財産の方が多いケースでは相続放棄をした方がいいでしょう。
例えば、故人が借金を返済できずに亡くなったケースなどは多額な借金が残っており、遺族だけでは返済しきれないこともあります。
このようなケースで財産を相続してしまうと借金返済義務が課せられてしまうので、今後の生活に多大な負担がかかることになるのです。
相続トラブルに巻き込まれたくない場合
遺族間での相続トラブルに巻き込まれたくないケースでも、相続放棄をするケースが多いです。
相続のことで揉めてしまうと、後々の関係性にも影響するためストレスに感じる方も多いので、このようなケースでは相続放棄をすることがあります。
また、自営業者などは事業のために後継者に遺産を多く継がせたいようなケースがあるでしょう。
そのような場合には、遺産相続を利用して事業の安定化を測ることもあります。
遺産の相続放棄の手続きには期限がある
遺産相続の手続きには期限があるため注意が必要です。
相続放棄は、相続の権利があることを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申請する必要があります。
一般的には、故人の死亡した日から3カ月以内とされることが多いので、期限内に申し出を行えるように準備しましょう。
遺産の相続放棄の手続き方法
実際に相続放棄する際の手続き方法について紹介していきます。
手続きの流れを知ることでスムーズに進めることができますので、以下を参考にしてください。
必要書類を揃える
まずは、相続放棄の手続きに必要な書類をそろえましょう。
共通書類と相続人ごとに必要な個別の書類と2種類あるので、以下で詳しく紹介していきます。
共通書類
相続放棄をする人が誰であるかに関係なく必要になる書類は以下の通りです。
- 相続放棄の申述書
→家庭裁判所のホームページからダウンロード可能です。
- 被相続人の住民票除票か戸籍附票
→被相続人の最後の住所が載っている書類のことです。
- 申請者の戸籍謄本
→相続放棄をしたい申述人が相続人であることを証明するために必要です。
続柄別で必要な書類
個人との関係性によって必要な書類は異なってきますので、以下にまとめます。
【配偶者の場合】
- ・被相続人の死亡を証明できる戸籍謄本
戸籍に配偶者も入っていれば、申請者の戸籍謄本の代わりにもできます。
【子どもや孫の場合】
- 被相続人の死亡を証明できる戸籍謄本
- 孫の場合には、配偶者または子どもの死亡の記載がある戸籍謄本になります。
【親または祖父母の場合】
- ・故人の出生から死亡までの全てが記載された戸籍謄本
第1順位の相続人がいないことを証明するために必要になります。
- ・配偶者または子どもの出生から死亡までの全てが記載された戸籍謄本
代襲相続人がいないことを証明するために必要になります。
- 祖父母の場合には被相続人の親の死亡を証明できる戸籍謄本が必要です。
【兄弟姉妹や甥・姪の場合】
- ・被相続人の出生から死亡までの全てが記載された戸籍謄本
- ・配偶者または子の出生から死亡までの全てが記載された戸籍謄本
- ・被相続人の親の死亡を証明できる戸籍謄本
第2順位の相続人がいないことを証明するために必要となります。
- 甥や姪の場合は、兄弟姉妹の死亡を証明できる戸籍謄本です。
相続放棄申述書を記入する
次に、相続放棄申述書に必要事項を記入していきます。
この際に申述の理由の欄を正確に記載することが重要です。
理由が正確でない場合、追加で家庭裁判所に説明資料を提出しなければいけないこともあるので注意してください。
相続放棄の手続きは受理期間があるため、相続が可能であることを知った日を正確に記載することも大切です。
相続財産の概略は大体の金額でいいので、わかる範囲で記載しましょう。
必要書類を家庭裁判所に提出する
相続放棄申述書の記述が終了したら、必要な書類をすべて家庭裁判所に提出します。
提出先は故人の暮らしていた地域を管轄している家庭裁判所です。
提出方法としては、直接家庭裁判所に持参してもいいですし、郵送で送っても問題ありません。
家庭裁判所から届く照会書に回答し返送する
相続放棄の申立て後1〜2週間程度で、相続放棄の申述をしたかどうかの照会書が家庭裁判所から送られてきます。
申立書と照会書に不正確な点があると、裁判所から事情を説明するよう求められることもあります。
正確に回答して裁判所へ返送するようにしましょう。
相続放棄申述受理通知書が届く
照会書の返送後は、特に問題がなければ相続放棄申述受理通知書が届き、手続き自体は終了となります。
相続放棄申述受理証明書を取得する
相続放棄申述受理通知書には相続放棄の証明書としての役割はなく、相続放棄の申述を受理したことを伝える通知書になります。
そのため、必要に応じて相続放棄申述受理証明書を取得する必要があります。
遺産の相続放棄をする際に必要な費用
遺産の相続を放棄する際には、どの程度の費用が必要かを知っておきましょう。
自分で手続きする場合の費用は以下の通りです。
- 収入印紙800円分 ※申述人1人あたりの費用です
- 郵便切手代
- 戸籍取得代450円程度
専門家に依頼するケースでは、この他にも専門家に対する報酬が必要になります。
弁護士の場合には10万円〜20万円程度必要で、司法書士に依頼する場合には3万円~5万円程度の費用が必要になります。
遺産の相続放棄をする場合の注意点
相続放棄をする場合の注意点も覚えておきましょう。
以下で詳しく紹介しますので、参考にしてください。
生前に相続放棄はできない
借金を抱えていることを生前から知っていた場合には、前もって相続放棄することを考えていると思います。
しかし原則として、生前に相続放棄をすることはできないのが事実です。
例えば、生前に相続を放棄する内容の契約書や念書を書いていた場合でも、これには法的な効力はないので注意しましょう。
資産に手を付けている場合は相続放棄できない
相続放棄することを家庭裁判所に申し出る前に資産に手を付けている場合は、相続放棄できなくなります。
例えば、遺産である預金を使用したり不動産の名義変更をしたりすると相続放棄できません。
相続放棄は撤回できない
一度相続放棄の手続きを行うと、基本的には撤回することができません。
例えば、相続放棄をしたあとにプラスの財産が発見されて相続したいと思ったとしても、手続きを再度やり直すことはできないのです。
このことをしっかりと理解した上で、相続放棄の手続きを進めることが大切になります。
相続放棄した場合、代襲相続できない
元々遺産を相続するはずの人が先に死亡した場合や、相続欠格や相続廃除などの理由で相続権を失ったケースでは、その人の子どもが代わりに遺産を相続することになります。
ただし、相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになるため、その人の子が代襲相続することはできなくなります。
相続税の計算では「相続放棄はなかった」とされる
相続税の計算では法定相続人の数を使って計算することになります。
この計算には相続放棄をした相続人も人数に含まれます。
この理由として、相続放棄の有無だけで税額が変わると公平ではなくなるので、相続税の計算上では相続放棄はなかったことにするのです。
相続税の計算方法は以下の通りです。
- 相続税の基礎控除額:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
- 死亡保険金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数
- 死亡退職金の非課税限度額:500万円×法定相続人の数
- 各相続人の相続税:各相続人の課税遺産総額×税率−控除額
- 相続税の総額:各相続人の相続税の合計
各相続人の課税遺産総額を求める際は、課税相続遺産の総額を法定相続分で分割する必要があります。
法定相続分は相続人間での分配率をさし、その内容は以下の通りです。
配偶者:子供=1/2:1/2
配偶者:両親=2/3:1/3
配偶者:兄弟=3/4:1/4
兄弟や子供が多くなる場合は、割り当てられている分配率を人数分で分けてください。
相続放棄しても受け取れるお金がある
基本的には、相続放棄をしたら遺産を一切受け取ることができませんが、受け取ることができるお金もあります。
それは、死亡保険金や死亡退職金、遺族年金になります。
これらは故人の遺産ではないので、相続の対象になりません。
ただし、死亡保険金、死亡退職金は相続税の課税対象になるので、税金を納めることを忘れないようにしましょう。
相続放棄の期間が過ぎても認められるケース
相続放棄の手続きは前述したように、故人の死亡日から3カ月以内と定められています。
ただし、期間が過ぎても認められるケースがあります。
例えば、個人が借金をしていたことを全く知らなかったケースや相続人が故人との関わりがなかったケースなどが挙げられます。
期限後でも相続手続きができなかった明確な事情がある場合には、申述書を作成して家庭裁判所に提出します。
これを家庭裁判所が確認し受理されれば、期間を過ぎても相続放棄が可能になります。
上記はあくまで、認められる可能性があるだけなので、必ずしも期間を過ぎた相続放棄が認められるわけではないので注意しましょう。
遺産の相続放棄が受理されないケース
遺産相続放棄が受理されないケースについて紹介していきます。
受理されなかったケースを知ることで自分が当てはまらないように動けるので、以下を参考にしてください。
書類の不備があった場合
相続放棄する際には、事前に必要な書類を集めたり相続放棄申述書に必要事項を記載したりする必要があります。
提出した書類に不備があった場合には、相続放棄することを受理されないケースがありますので注意が必要です。
熟慮期間を過ぎた場合
相続放棄には期限があり、故人が亡くなられてから3カ月間のことを熟慮期間といいます。
この期間を過ぎてしまい、その理由が明確な事情ではない場合には、相続放棄が受理されませんので注意してください。
ただし、場合によっては熟慮期間の延長を家庭裁判に申立てすることも可能です。
詳しくは家庭裁判所や専門家に相談することをおすすめします。
第三者が申述書を提出した場合
相続放棄は相続人である本人が手続きを行うことが基本のため、本人の意思とは関係なく第三者が勝手に行うことはできません。
相続人である本人からの委任状がない場合には、第三者が申述書を提出したとしても受理されることはありません。
利益相反が認められる場合
親と子どもの両方が相続人であったケースでは、両者は自分の遺産の取り分が増加すれば相手の取り分が減るといった関係性にあります。
そのため、利害関係は対立する立場にあるといえるでしょう。
このようなケースで例えば、親が子どもの代理として子どもの相続放棄をするといったようなことはできません。
ただし、利害が対立しない状況であれば相続放棄は認められます。
例としては、親が自分の相続を子どもより先に放棄したり、子どもと同時に相続放棄したケースです。
未成年者が単独で相続放棄する場合
未成年者は原則として、1人で相続放棄をすることができないことになっています。
そのため、親が法定代理人として相続放棄することになりますが、上記で説明した通り利害が対立するようなケースでは代理することができません。
このようなケースでは、特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てることになります。
特別代理人の選任の申立ては、親権者や他の相続人などの利害関係人が行うことが可能です。
遺産に手をつけている場合
被相続人の権利義務を相続することを無条件に承認する単純承認をしてしまった場合は、相続放棄が不可能となります。
上記を簡単に説明すると、故人の遺産に手をつけてしまった場合には相続放棄ができなくなるということです。
例えば、故人が所有していた土地を勝手に売却したり故人の遺品を勝手に処分したりすると、遺産の相続放棄ができなくなります。
遺産の相続放棄まとめ
ここまで遺産の相続放棄についての情報や、手続き方法を中心にお伝えしてきました。
まとめると以下の通りです。
- 相続放棄は相続の権利があることを知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申請する
- 相続放棄をしても死亡保険金や死亡退職金、遺族年金は受け取れる
- 故人の遺産に手をつけてしまったケースでは相続放棄ができなくなる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
鎌田 真紀子(かまた まきこ)
国家資格 キャリアコンサルタント ・CSスペシャリスト(協会認定)
経歴
終活関連の業界経歴12年以上。20年以上の大手生命保険会社のコンタクトセンターのマネジメントにおいて、コンタクトセンターに寄せられるお客様の声に寄り添い、様々なサポートを行う。自身の喪主経験、お墓探しの体験をはじめ、終活のこと全般に知見を持ち、お客様のお困りごとの解決をサポートするなど、活躍の場を広げる。
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