相続
遺産を相続放棄したい場合はどうすればいい?必要な手続きを解説
更新日:2022.04.18 公開日:2022.05.05

記事のポイントを先取り!
- 相続放棄とはすべての遺産相続を放棄すること
- 相続放棄の手続きは相続開始日(死亡日)から3ヶ月以内
- 期限を過ぎると相続放棄は非常に困難になる
- 手続きは状況に応じて専門家に依頼した方が良い場合もある
遺産を引き継ぐことを遺産相続といいますが、遺産相続を放棄できることはご存知でしょうか。
遺産の相続放棄をする際の期限や、手続き方法を知っておきましょう。
そこでこの記事では、遺産の相続放棄について解説していきます。
この機会に、相続放棄の正しいやり方について覚えておきましょう。
後半には相続放棄を専門家に頼んだ場合の費用についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 相続放棄とは
- 遺産の相続放棄を考えるケース
- 相続放棄の手続きは3ヵ月以内にする
- 相続放棄の手続きを自分で行う方法
- 相続放棄の手続きを専門家に依頼すべきケース
- 相続放棄の手続きを専門家に頼んだ時の費用は?
- 遺産の相続放棄についてのまとめ
相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)のすべての財産を放棄する制度のことをいいます。
相続財産は、不動産や預貯金などのプラスの財産だけではなく、負債などのマイナスの財産も含むものです。
すべてを相続しなければならないとなると、相続人にとって不利になってしまう場合もあるでしょう。
そのようなときに相続人を守ることができるのが、相続放棄です。
遺産の相続放棄を考えるケース
遺産の相続放棄は、相続人が相続を行うことで不利になる場合に行うべきものです。
以下のような場合には相続放棄が得策といえますので、ぜひ参考にしてください。
マイナスの財産が多い時
遺産を相続する際には、被相続人の財産情報について調べます。
このときに、被相続人の財産の合計がマイナスだった場合には相続放棄をした方が良いでしょう。
相続財産は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産にも適応されるため、このまま遺産相続を継続するということは、負債を背負うこととなるのです。
遺産トラブルを回避したい時
遺産を相続する場合には、必ず相続人全員が集まる必要があります。
しかし、必ずしも相続人全員と仲が良いわけではないので、できれば関わりたくない親族がいる場合もあるでしょう。
また、遺産相続においては関係の良し悪しにかかわらず、相続人同士のトラブルなども起こり得ます。
場合によっては、遺産を相続するよりもトラブルを避けたい方もいるでしょう。
そういった場合に相続放棄をすることで、相続人と関わる必要はなく、相続トラブルを回避することもできます。
特定の人物に遺産を相続させたい時
遺産相続は一般的に、下記の順番で相続することとされています。
- 被相続人の配偶者
- 被相続人の子供あるいは孫
- 被相続人の両親あるいは祖父母
- 被相続人の兄弟姉妹あるいは甥姪
上記の中でも配偶者は必ず相続権利を持っており、以下の遺族はもっとも順位の高い遺族が法定相続人となります。
しかし、相続放棄を行った方は元から相続権利がなかったものとされてしまうことを覚えておきましょう。
もし兄弟姉妹に相続権利を移したい場合は、子供から祖父母までの相続人が相続放棄をする必要があります。
この際、すべての遺産を兄弟姉妹に相続することを目的とする場合では、配偶者も相続放棄をしなければなりません。
また、相続放棄は当人または法定代理人によって行わなければならないので注意してください。
相続放棄の手続きは3ヵ月以内にする

相続放棄するかどうかの判断と手続きは通常、相続開始から3か月以内に終わらせなければなりません。
ほとんどの場合、被相続人が亡くなったことを知った日が相続開始の日となります。
しかし「被相続人が亡くなった当初は別の人が母親だと思っていた」など、自分が相続人になることを知らなかった場合や、3か月以内に決めきれない場合もあるでしょう。
ここでは、相続放棄の手続きが3か月以上かかりそうな場合や、3か月を過ぎてしまった場合の対処方法について説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
3ヵ月以上かかりそうな場合
相続放棄の手続きを3か月以内に終えることが難しいと判断した場合には「相続放棄のための申述期間伸長の申請」を家庭裁判所に申し立てましょう。
上記の申請を行うことで、相続放棄の期限をさらに3ヶ月延長することができます
ただし、相続放棄のための申請期間伸長の申請も、相続開始日から3ヶ月が期限です。
また、申請をしたからといって必ず承認されるわけではないことも覚えておきましょう。
可能な限り、期限以内に手続きを行う必要があります。
3ヵ月過ぎてしまった場合
3ヶ月を過ぎてしまった場合には、原則的に相続放棄はできません。
ただし、以下の場合には例外的に相続放棄を認められる場合があります。
- 相続放棄となる財産や債務の存在を知らなかった
- 相続財産を知らなかったことについて相応の理由がある
- 相続開始日から3ヶ月以内に「相続放棄のための申請期間伸長の申請」をしている
たとえば、相続開始日から3ヶ月を過ぎてから被相続人の債務を知った場合などには、相続放棄が認められる傾向にあります。
しかし、期限が過ぎてからの相続放棄の申し立ては非常に困難です。
無理に自分で行おうとせず、弁護士などへの依頼も考慮することをおすすめします。
相続放棄の手続きを自分で行う方法
相続放棄の手続きを自分で行う際、どのような手順が必要か知っておくことは大切です。
相続放棄の期限は3ヶ月と短いため、相続放棄の手順をあらかじめ知っておくことで、実際に相続放棄を行う際にスムーズに進めることができるでしょう。
費用の用意
自分で相続放棄の手続きを行う場合には、以下の費用を準備する必要があります。
申述人とは、相続放棄を行う人のことをいいます。
- 収入印紙代…申述人1人につき800円
- 被相続人の住民票除票…300円
- 申述人の戸籍謄本…申述人1人につき450円
- 被相続人の死亡記載がある除籍謄本…750円
- 連絡用の郵便切手…申述人1人につき400円〜500円
連絡用の郵便切手代は申述する家庭裁判所によって異なるため、用意する際に確認しましょう。
必要な書類を揃える
相続放棄に必要な書類は、基本的に以下の書類になります。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述者の戸籍謄本
相続放棄申述書は、家庭裁判所または裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。
20歳以上と20歳未満で書類が異なるため注意しましょう。
さらに、申述人によって別途書類を要する場合があります。
申述人が配偶者や子供、孫の場合は以下の通りです。
- 申述人が配偶者または子供の場合、被相続人の死亡記載がある戸籍謄本
- 申述人が孫の場合、上記書類に加えて、本来の相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
申述人が両親や祖父母の場合は以下の通りです。
- 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の子供が故人の場合、その子の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の両親や祖父母が故人の場合、その方の出生時から死亡時までの戸籍謄本
申述人が兄弟姉妹の場合は以下の通りです。
- 被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の子供が亡くなっている場合、その子の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡が確認できる戸籍謄本
- 申述人が甥や姪の場合、本来の相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
また、書類の中には発行するまでに時間のかかるものもあるため、相続放棄をする場合は早めに書類を揃えることをおすすめします。
戸籍謄本は郵送での受け取りを可能としている場合がほとんどですが、受取人によっては郵送を不可としている自治体もあるので事前に確認しておきましょう。
相続放棄申述書の作成
相続放棄申述書の作成は、申述人の「本籍」「住所」「氏名」「相続放棄理由」などの必要事項を記載し、捺印を押します。
書き間違いや不備があると相続放棄を受理してもらえないため、しっかりと確認して誤りがないようにしましょう。
家庭裁判所に書類を提出
必要書類を揃えて相続放棄申述書の記載ができたら、それらすべてを家庭裁判所に提出します。
この際、家庭裁判所ならどこの家庭裁判所でも良いというわけではなく「被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所」という決まりがあるため、注意しましょう。
必要書類を提出する家庭裁判所が遠方の場合には郵送での提出も可能ですが、その際には郵送する日数についても考慮して提出してください。
家庭裁判所から送付された「照会書」に回答し返送
家庭裁判所に必要書類を提出すると「照会書」という家庭裁判所からの質問状が送られてくる場合があります。
照会書が届いた場合は、照会書の質問への回答を記入して再度家庭裁判所に提出してください。
照会書の回答内容によっては相続放棄を受理してもらえないこともあり、一度受理されなかった場合は再度申請することができませんので、丁寧に回答しましょう。
家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届く
提出内容に特に問題がなければ「相続放棄申述通知書」が届き、これを受け取った段階で相続放棄が受理されたこととなります。
相続放棄の手続きを専門家に依頼すべきケース
基本的に相続人の手続きは自分で行うこともできますが、以下のケースでは困難な場合が多々あります。
- 相続放棄できる期限を過ぎてしまった場合
- 財産関係が複雑で、資産超過する可能性がある場合
- 海外移住などで手続きを進められない場合
- 相続遺産の内容に不動産が含まれている場合
- 多忙により相続放棄の手続きまで手が回らない場合
- 自分で手続きを行うことに不安がある場合
- 限定承認と相続放棄のどちらが良いか不明な場合
こうしたケースでは、専門家への依頼を検討する必要があるでしょう。
相続放棄の手続きを代わりに行ってくれる専門家には「弁護士」と「司法書士」がいます。
弁護士の仕事は、書類の作成、家庭裁判所への提出や連絡、相続放棄が受理されなかった場合の再申請です。
注意点として、司法書士に依頼する場合は書類の作成のみ依頼可能なため、他の作業はすべて自分で行う必要があります。
詳しくは後述しますが、仕事内容が異なる分依頼時の費用も異なるため、書き方に不安がある場合には司法書士、それ以外の場合には弁護士に依頼すると良いでしょう。
相続放棄の手続きを専門家に頼んだ時の費用は?

相続放棄は司法書士または弁護士に依頼することができますが、職種によって仕事内容や費用が異なります。
司法書士と弁護士、それぞれの費用について解説していきます。
司法書士に頼んだ場合
司法書士に依頼した場合の費用は、3万~5万円が相場になります。
内訳は以下の通りです。
- 相談料…0~5000円/時間
- 申請書作成代行費用(実費込)…3000~6000円
- 代行手数料…2万~3万円
司法書士の仕事は申請書作成の代行が主ですので、相続放棄の期限が過ぎた場合でも費用に大きな違いはありません。
弁護士に頼んだ場合
弁護士に依頼した場合の相場は、5万円以上になります。
- 相談料…0~1万円/時間
- 申請書作成代行費用(実費込)…5000~1万円
- 代行手数料…5万~10万円
- 成功報酬…なし
弁護士の場合は書類の作成だけではなく、家庭裁判所への提出や、その他対応まですべてを代行してくれるため、費用も高くなります。
遺産の相続放棄についてのまとめ
ここまで相続放棄を考えるケースについてや、相続放棄の申請方法を中心に解説してきました。
まとめると以下の通りです。
相続放棄とは、被相続人の財産すべてを引き継ぐ権利を放棄すること
自分にとってマイナスとなる場合には相続放棄を検討する
相続放棄の期限は相続開始日から3ヶ月以内
手続きは自分でも可能だが専門家に依頼した方が良いこともある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

鎌田 真紀子(かまた まきこ)
国家資格 キャリアコンサルタント ・CSスペシャリスト(協会認定)
経歴
終活関連の業界経歴12年以上。20年以上の大手生命保険会社のコンタクトセンターのマネジメントにおいて、コンタクトセンターに寄せられるお客様の声に寄り添い、様々なサポートを行う。自身の喪主経験、お墓探しの体験をはじめ、終活のこと全般に知見を持ち、お客様のお困りごとの解決をサポートするなど、活躍の場を広げる。