専門家インタビュー
認知症や高齢者になっても安心して暮らせるための看護実践を追究して
更新日:2023.03.15 公開日:2023.03.15

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研究内容について
Q1.「高齢者看護の実践能力の育成に関する研究」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
超高齢社会が進む我が国では、高齢者看護を実践する看護職への期待が高まっています。
しかしながら、高齢者看護を実践する能力とは何なのかが私が研究に着手した当初は明らかにされていませんでした。
そこで、まず教育支援プログラムの中核となる10の大項目からなる高齢者看護の実践教育支援プログラムの中核となる10の大項目からなる高齢者看護の実践能力(坪井,2008)を国内外の文献から明らかにし、高齢者看護の実践能力を基盤とした「新任期看護師の教育支援プログラム」(坪井,2009)を開発しました。
次に、介護老人保健施設の新任期(1~3年)の学士課程卒業者1名の3年間の教育支援に直接関わり、プログラムの有用性を検証しました(坪井,2011;Tsuboi,et al.,2012,坪井,2013)。
このプログラムを実施した施設では、教育支援をする看護職も新任期の看護師双方にとって、「着実に能力が高まった」教育支援プログラムを実用した新任期看護師の実践は看護の質向上に貢献することを確認しています(坪井,2012)。
また、教育支援プログラムを活用した新任期看護師の教育支援を通して明らかとなった、強化が必要な4つの看護実践能力(倫理・看取り・老年症候群・急変時の看護)について、36の教育支援事例を老人看護専門看護師や高齢者ケア施設の看護師らと収集・再構成し、教材としての適用可能性を検証しました(長谷川ら,2016;Akisada,etal.,2017,坪井ら,2018)。
さらに、36の事例を教育支援の際に汎用性の高い13の事例に絞り、教育支援方法を示した「教育支援ガイド」を出版しました(坪井,2018)。
2021年度に採択された科研では、高齢者ケア施設の新任期看護師を教育支援する看護職に向けた対面研修とオンライン研修を効果的に統合した継続可能な研修プログラムの開発に取り組んでいます。
Q2.その研究を行った経緯を教えてください。
看護系大学が創設されたのは、医療施設に限らず高齢者ケア施設や訪問看護ステーション等様々な場で活躍できる人材育成への期待、新卒者就業の増加、超高齢社会の地域包括ケアシステムの構築において高齢者ケア施設の基盤整備が急務となったことが挙げられます。
教員として学生の進路相談を受けるなかで、医療施設ではなく、卒業直後に高齢者ケア施設への就職を希望する者も少数いましたが、一般的ではありませんでした。
現在のように看護系大学が282 大学 298 課程(省庁大学校を含む)も設置される前は、看護職の養成は専門学校が中心で、病院が自前で看護職を養成していた経緯があり、先ずは病院で経験を積んでという考えが長い間浸透していました。
高齢者ケア施設に就業を希望する学生がいるのであれば、それを叶えたいと思い、そのためには教育支援プログラムが必要だと考えました。
Q3.「認知症と共に生きる高齢者と家族への援助方法の開発」についての研究内容とその研究成果について教えてください。
2011年度より、もの忘れや認知症に不安がある人が住み慣れた場所で暮らし続けるための一助となるよう、研究費(学内一般・COC共同研究、テルモ)を獲得し「もの忘れ看護相談に関する研究」に老年看護学分野の教員と共に取り組んでいます。看護相談の現状と課題(秋定他,2020)、地域全体で支えた事例(坪井他,2021)、オンライン看護相談の実施(秋定他,2021)等を報告しています。
特に事例は、約7年関わらせて頂いた独り暮らしのもの忘れや認知症に不安のある男性への看護相談の内容について報告しました。
その結果、認知症ケア事例ジャーナルに掲載され、講評として「看護大学が地域に存在する社会資源の1つにとなり、地域の人々と連携することで地域包括ケアシステムの構築に寄与することできる」と評価されました。
加えて、もの忘れ看護相談の活動は、老年精神医学雑誌の連載「認知症フレンドリー社会の創生に向けた多様なイニシアチブの活動に関する実践報告」に選定され、2023年5月号に掲載される予定です。
今後の目標について
Q4.坪井様が考える本研究の意義を教えてください。
認知症の人や家族を一方的に支えるのではなく、共に支えあう社会であり続けるために、どのような仕組みがあればそれが可能であるのか、看護の果たすべき役割は何か、当事者の方々の考えを基に超高齢社会における実践に役立つ研究を行っていきたいと考えます。
Q5.坪井様の研究における最終的な目標を教えてください。
認知症になっても住み慣れた地域で最期まで暮らすための支援のあり方を明らかにしたいと考えます。
特に、専門職が支援する一方向的なものではなく、双方向の当事者やその周りの方々の力を活かして支える仕組みを大学の所在する学園都市地区をモデルにつくっていきたいです。
Q6.今後はどういった研究を進めていく方針なのでしょうか?
認知症になっても住み慣れた地域で暮らすためには、意思を表明できる時から意思決定を支えることが重要と考えています。その意思をご本人や家族と共に尊重するにはどのような支援が必要なのかを明らかにしたいと考えます。
みんなが選んだ終活のユーザー様へ一言
Q.みんなが選んだ終活のユーザー様(高齢の方、高齢の親を持つ方)に何かメッセージをお願いいたします。
日々のもの忘れ看護相談を通じて、自分や親の最期はどうなるのか不安を抱えている方が増えてきたと感じています。
社会の人々の認知症に対する見方は10年前と比べて随分柔らかくなってきているように思いますが、認知症への不安もなかなか拭えないのが現実です。
高齢になると、年をとってできなくなることが増えるため、ご本人やご家族はできないことに目が行きがちですが、長生きしてよかったと思えることも日常生活の中にはあると思います。
日常の中にあるよかったことに目を向け、今を生きるために必要な過ごし方を一緒に考えていきましょう。
今回取材に協力してくださった紹介

神戸市看護大学健康生活看護学領域
老年看護学分野
坪井 桂子教授
略歴
1989年~1995年 神戸市衛生局中央市民病院・西神戸医療センター看護師
2009年 岐阜県立看護大学大学院看護学研究科博士後期課程修了
2005年 公立大学法人岐阜県立看護大学看護学部看護学科講師
2011年 神戸市看護大学看護学部准教授
2013年 神戸市看護大学看護学部教授
資格・学会・役職
資格:看護師
主な所属学会 日本老年看護学会、日本看護科学学会、日本認知症ケア学会
先生の所属先
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