専門家インタビュー
介護福祉士の指導業務における終活支援の必要性ー介護事業所の経営戦略からの視点を含めてーについて
更新日:2024.08.23 公開日:2024.08.23
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研究内容について
Q1.「介護福祉士の指導業務における終活支援の必要性: 介護事業所の経営戦略からの視点を含めて」の研究を始めたきっかけは何ですか?
「介護と死」に関しては、連続した状況であると考えています。
さらに踏み込んでいえば、仏教の四苦にある老病死が連続しているとも考えることができます。
もともと私は、ソーシャルワークを担当する教員であり、「揺りかごから墓場まで」の考え方で、墓場の領域に研究対象を考えたことがきっかけです。
その背景としては、少子高齢多死社会で、「多死」を考えると墓場の問題を考慮する必要があったためです。
墓場の問題は、言い換えると遺骨をどうするかということにもつながります。
現代社会では、必ずしも実家の代々ある墓所に収まるということではなく、納骨堂や場合によっては海洋葬等もあり、「遺骨=墓所」といった考え方にならないことがあげられます。
この問題を介護事業と関連させたというのが、本研究のきっかけです。
Q2.研究対象である、 介護事業所の経営戦略とは何ですか?
経営戦略には、様々な考え方があります。
例えば、「利用者の看取りまで行います」というのも経営戦略の1つであり、それに伴って人員配置や施設整備等を行っていくことにつながっていきます。
ただし、「看取りまで行う」事業形態について、「臨終および死後処置」までが事業所としての対応の限界になっていることが指摘できます。
言い換えれば、死後事務に関しては事業の対象外となっています。
現状で死後事務に関して、福祉の領域で対応できる事業所は、一部の市町村社会福祉協議会が行う死後事務委任契約のみであり、介護事業所で対処できるとは言えません。
その際、介護事業所が死後事務の問題まで踏み込むことができれば、介護領域と終活領域をつなげて考えていくことが可能になります。
これを新たな介護事業所の経営戦略と考えたということになります。
Q3.本研究の研究成果を教えてください。
本研究の研究成果は、介護福祉士に助言指導の役割があることは、社会福祉士及び介護福祉士法で示す通りです。
ただし、介護に関する助言指導であり、死後事務を含めた終活の領域については、養成過程には入っていません。
一方、死後処置(遺体清拭等)に関しては、養成課程に含まれており(当方が介護福祉士を取得を目指した2000年当時の話になります)、死について養成課程で触れることがタブーとされているわけではありません。
したがって今後、死に対しての指導(デス・エデュケーション)を行うことが、介護事業所に求められると示しています。
ただし、問題点もあります。
いわゆる死生観は、本人および家族の育ってきた文化や宗教観にも影響されることもあり、一概に死を介護事業所に所属する介護福祉士が指導するには対応が困難であることも指摘できます。
Q4.佐々木様が考える本研究の意義を教えてください。
現在の研究につながっていくのですが、現在は「人口減少地域に居住する高齢女性の社会的孤立防止」を研究対象として行っています。
これは、平均寿命の観点から女性が男性よりも長寿であることのほか、子ども世代が東京や大阪といった大都市に住み、地方の人口減少地域では老親だけが居住する状況になっていることが示されます。
この時、明治以降の一般的な考え方として機能してきた「長男が一家の墓所を管理し、祭祀を主宰する」という考え方が適応できず、高齢女性がなし崩し的に墓所を管理し祭祀を主宰するという形態も少なからずありますし、子どもたちも実家ごとに関して、遠距離に住んでいることで、「どこか遠いこと」の状況になっていることもあり得る状況です。
加えて、人口減少地域で住民間連携ができているかというと、老人クラブや婦人会の減少により、住民間連携ができなくなっており、高齢女性が地域内で社会的孤立状態になっていることも指摘できます。
前置きが長くなりましたが、夫を介護し、夫が没後に墓所を管理し、祭祀を主宰する妻(高齢女性)が、子どもたちの支援が少ない状況を前提とします。
その際、夫が専門職からの介護を受ける際、死後のことについて考えなければならないことは必然です。
ただし、子どもたちが直ぐに戻ってくるとも限らず、地域では相談できず……といったことで、高齢女性が一人で抱え込む状況になっています。
この時に、介護事業所が助けになれば高齢女性を援助する方策にもなるし、介護事業所としても新たな事業化に向けた戦略を練ることができるといったことが、本研究の意義になります。
Q5.佐々木様の研究における最終的な目標を教えてください。
墓所管理や祭祀の主宰に関して、高齢女性が行う現状があることは、上述した通りです。
それらをサポートするために、市町村社会福祉協議会や各種の専門職は死後事務委任契約を生前の段階で結び、死後にサポートすることが現在の状況であり、ウェブサイトや雑誌等の様々な方法で広報を行っています。
ただし、高齢女性に限定することなく高齢者といった全体で考えると、情報を理解し、使いこなす能力(情報リテラシーおよび情報コンピテンシー)が、若年層と比べると低下しており、必ずしも広報が高齢者に届いていないことも指摘しなくてはなりません。
したがって、広報の方法について、「高齢者側の立場で」どうすればよいのかを考えることが最終的な目標となりいます。
この広報の方法を考える際、高齢者にとってわかりやすい方法は、伝聞型広報(口コミ)が、アナログ的ですが、最も機能しやすい方法だと考えています。
この背景から、実践段階になるのですが、地域での交流が少なくなっている現状を考えた際に、高齢者が地域で集まり交流をし、その際に伝聞型広報をする方法を実践するべく研究計画しています。
実際に、交流を主とした方法は、2022年度に大分県内で実践しており、高齢女性を対象とした茶会や健康プログラム等を計画・実践し、参加者等から好評を得ました。
その際、高齢者が地域で集まることができるようにするには、私個人の力だけで対処することは難しく、市町村や、まちづくり協議会との連携が必要です。
また交流プログラムを実践するうえでも、終活の広報だけではなく、レクリエーション、場合によっては、外出行事(地域の文化を知る)も組み合わせて参加者が興味深く展開できるようにしてくことが必要と考えており、いわば終活領域を対象とした各種機関の連携が求められ、それに向けた社会システムづくりも合わせて計画しています。
先生の経歴について
Q1.先生の略歴を教えてください。(5つまで)
2010年3月:淑徳大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程 修了
2024年4月:西九州大学健康福祉学部社会福祉学科 准教授
Q2.先生の資格・学会・役職を教えてください。(5つまで)
資格・学位
博士(社会福祉学)(2010年3月、淑徳大学)
社会福祉士
介護福祉士
専門社会調査士
主な所属学会
日本社会福祉学会、日本女性学会、茶の湯文化学会、日本都市学会、日本仏教社会福祉学会 等
先生の所属先
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