専門家インタビュー
都市部団地高齢者の認識するエイジング・イン・プレイスの実態と課題について
更新日:2024.09.03 公開日:2024.09.03
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研究内容について
Q1.「都市部団地高齢者の認識するエイジング・イン・プレイスの実態と課題」の研究を始めたきっかけは何ですか?
横浜市立大学在職時に、地(知)の拠点整備事業で大学近郊の大型団地に関わらせて頂いたのがきっかけです。
我が国では1960年代から80年代にかけて開発された都市部団地において、かつては働き世代だった住民達が一斉に高齢期を迎えています。
そのため、彼らの高齢期の生活や終末期の迎え方をどのように支えるかが喫緊の課題となっています。
団地に居住する高齢者の生活支援を行うにあたり、彼らがどのような最期を迎えたいと考えているのかを当事者の視点から明らかにする必要があると考えました。
Q2.研究対象である、エイジング・イン・プレイスとは何ですか?
エイジング・イン・プレイスとは、高齢者が、虚弱化とそれに伴う問題に関わらず、住み慣れた自分の家や地域でできるだけ長く住むことであり、それによって施設入所を遅らせたり、避けたりすることができます。
本研究ではエイジング・イン・プレイスを「住み慣れた場所でその人らしく最期まで暮らす」ことと定義しました。
Q3.「都市部団地高齢者の認識するエイジング・イン・プレイスの実態と課題」の研究成果を教えてください。
都市部団地高齢者の考えるエイジング・イン・プレイスの実態と課題について、フォーカスグループインタビューを実施しました。
彼らの語りから、子ども世代にケアを期待しない意識や個人主義の文化等の団地高齢者特有の実態が明らかになりました。
加えて、社会資源へのアクセスが容易な都市臨海部に居住することや有料サービスへの出費が苦にならない経済状態等のA団地に固有の文脈が団地高齢者の孤立をさらに助長する可能性も実態として考えられました。
一方、互助の必要性やさりげない支え合い活動の実践は意識されているのですが、支え手となる住民の不足があると語られました。
住民の中での支え手の不足については、昨今の団地では転出入や就労している高齢者が多く住民間での支え合いが難しいという他の団地にも共通する要因があると考えられました。
支援者や行政は、その都市部団地に固有だったり、他地域にも共通したりする実態と課題を踏まえた支援を展開する必要があると思います。
Q4.大河内様が考える本研究の意義を教えてください。
インタビューで当事者の声をお聞きしたことで、
【団地でのエイジング・イン・プレイスの実感がない】
【家族によるケアを利用した最期の迎え方にもモデルが存在しない】
【団地高齢者の孤立を助長する都市部団地の文化】等の実態を明らかにすることができました。
Q5.大河内様の研究における最終的な目標を教えてください。
20-30代の働き盛りに新たに建設された団地に入居したため、高齢者が慣れ親しんだ家で周囲の助けを借りながら生きていく姿を目の当たりにしておらず、将来をイメージできないため、暮らし続けることの決断ができないということは全国共通の課題だと思います。
また、宅配や有料サービスを利用することで、孤立したままでも生活はできてしまう、ということも高齢者に限らず、課題になっています。
私は、高齢者が住み慣れた家で、地域とのつながりを保ちながら、尊厳をもって最期まで暮らしていけるための仕組みを整えることが目標に研究を進めていきたいと考えています。
先生の経歴について
Q1先生の略歴を教えてください。(5つまで)
看護師・保健師を経て、大学教員になりました。
愛媛大学、横浜市立大学を経て、現在、熊本大学で看護教育に従事しています。
Q2.先生の資格・学会・役職を教えてください。(5つまで)
看護師、保健師、前向き子育てプログラム トリプルPファシリテーター
日本公衆衛生学会、日本看護科学学会、日本公衆衛生看護学会、等
熊本大学大学院生命科学研究部 環境社会医学部門 看護学分野 教授
先生の所属先
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