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遺産の使い込みが発覚したらどう対処する?取り戻す方法とは

更新日:2022.06.03

遺産

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記事のポイントを先取り!

  • ・遺産の使い込みとは遺産を勝手に使うこと
  • ・使い込みの調査方法は3通りある
  • ・証明するためには証拠集めが肝心
  • ・返還要求ができないケースもある

遺産の使い込みとは、被相続人の遺産を勝手に使ってしまうことです。
実は遺産の使い込みが発覚する事例は珍しくないことをご存知でしょうか。

そこでこの記事では、遺産の使い込みについて詳しく説明していきます。
遺産の使い込みをした人物が介護をしていた場合についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

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  1. 遺産の使い込みとは
  2. 遺産の使い込みを調査する方法
  3. 遺産の使い込みの証拠となるもの
  4. 遺産の使い込みへの対処方法
  5. 遺産の使い込みの返還要求ができないケース
  6. 遺産の使い込みを防ぐ対策
  7. 遺産の使い込みをした人が介護をしていた場合
  8. 遺産の使い込みについてのまとめ
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遺産の使い込みとは

遺産の使い込みとは、被相続人の預貯金をはじめとする財産を遺産分割する前に勝手に使ってしまったり、処分したりすることです。
遺産の使い込みをする人は様々で、被相続人と同居していた相続人であったり、赤の他人だったりする場合もあります。

遺産分割の前に遺産が使いこまれることによって、相続財産全体が少なくなります。
それによって相続できるはずだった遺産が相続できないことになり、他の相続人にとっては不利な状況になります。

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遺産の使い込みを調査する方法

遺産の使い込みを調査するには自分で調べる、弁護士会照会制度を利用する、裁判所を利用する、以上の3つの方法があります。
各方法について詳しく説明していきます、

自分で調べる

遺産の使い込みでよくみられるケースは、被相続人の預貯金を使いこむことです。
預貯金の使い込みは、自分で調べることが可能です。
調べるためには、被相続人名義の預貯金口座のある金融機関に行く必要があります。

まず、自分が相続人であることを示す必要があるため、戸籍謄本などの書類を提出しましょう。
相続人であることが確認されたら、被相続人名義の預貯金口座のある金融機関で取引明細書を提示してもらえます。
不正な引き出しや送金等の取引内容がないか確認しましょう。

弁護士会照会制度

遺産が多く、自分たちで調べることが不可能であると感じた場合は、弁護士に依頼することも一つの方法です。
弁護士は、法律によって認められた調査制度を利用できます。
それを「弁護士会照会制度」といいます。

弁護士会照会制度を利用することで、効率的に預貯金の取引履歴や生命保険、証券口座の取引履歴などの資料を得ることが可能です。
また、資料をまとめてくれるため、使いこまれた遺産を把握しやすくなるといった利点もあります。

裁判所を利用する

金融機関は口座名義人のプライバシーに配慮するため、開示請求をしたとしても名義の口座の取引履歴まで調べることは通常不可能です。
しかし、裁判(不当利得返還請求訴訟・損害賠償請求訴訟)を起こしたうえで開示請求の手続きを行えば、口座の開示ができるケースもあります。
この方法を「嘱託調査」といいます。

この方法で調べることが可能なのは預貯金だけではありません。
証券会社の取引履歴などを調べることも可能です。

遺産の使い込みの証拠となるもの

遺産の使い込みを証明するためには証拠集めが肝心です。
具体的にどのようなものが証拠となるのか紹介していきます。

預貯金口座の取引明細書

遺産の使い込みを調べるにあたって最初のポイントとなるのが、預金の引き出しを見つけることです。
預貯金口座の通帳を見れば、引き出しがあったのかが判明します。
直近のものであれば良いのですが、過去の場合は通帳を紛失している可能性も大いにあり得ます。

また、通帳を管理する相続人が開示してくれないこともあります。
通帳を確認できない場合は、代わりに「取引明細書」を確認しましょう。
取引明細書は相続人であれば、申請することで手に入れることが可能です。
取引明細書に記載されている内容は、基本的には通帳と同じで預金の出入金です。
通帳と異なるのは、取引明細書にはいつ、どこの支店で取引したかが多くの場合記載されていることです。

どこの支店で引き出されたか判明することで、引き出した人を推測できるケースもあります。
例えば、明らかに被相続人が行くはずのない地域の支店から引き出されていた場合は、被相続人以外の誰かが引き出したことが考えられます。
遺産の使い込みを疑った場合、最初に取引明細書から不自然な引き出しの履歴がないか調べてみると良いでしょう。

要介護認定記録

預貯金からの不自然な引き出しがあったことを証言したとしても、被相続人の意志の下で行ったと言われてしまうことも多くあります。
その場合、親にそもそも引き出しを指示できる能力があったのかがポイントとなります。
親が認知症などで引き出しの指示や管理できる状態でなかった場合は、その取引は被相続人に指示されたものではなく、相続人による使い込みである可能性が大きいといえます。

その状態を証明するためには、要介護認定記録を利用します。
要介護認定記録は、国が定めた基準に基づき介護の必要度を客観的に判定したことを記録したものです。
要介護認定記録は、被相続人が住んでいた市区町村役場に開示を請求します。
その際には、相続人であることを証明しないといけない場合もあるため、戸籍謄本などを持参しましょう。

市区町村役場によっては、相続人であっても要介護認定記録を取得できないこともあります。
役場で取得できない場合は、弁護士会照会を利用して要介護認定記録を取得しましょう。

介護記録

介護記録も要介護認定記録と同様で、被相続人に預金の管理ができなかった状態を証明するために用いられます。
介護記録を手に入れるためには、被相続人が利用していた介護施設に請求しましょう。
ただし、そもそも介護記録を取得できないこともあります。

そのため、事前に介護記録を請求したいことを介護施設に問い合わせるのがおすすめです。
被相続人がどこの施設を利用していたか知らない場合は、要介護認定記録の認定調査票を確認しましょう。

または、施設利用料の支払いが口座引落しであれば、取引明細書で施設名が確認できます。
請求の手続きや必要書類は介護施設によって異なります。
相続人の立場で介護記録を取得できない場合は、要介護認定記録と同様で弁護士会照会を利用し、介護記録を取得しましょう。

医療記録

被相続人が入院、もしくは通院するなどして治療を受けた場合、医療機関には診療記録が保管されます。
診療記録には、治療内容から投与した薬まで記載されています。
そのため、診療記録から被相続人が認知症となっていることが明らかになった場合、預貯金の管理や引き出しは難しいことを証明できます

医療記録は、被相続人が入院もしくは通院していた医療機関に請求します。
医療機関がどこか分からない場合は、要介護認定記録の主治医意見書に記載されているので確認してみましょう。

また、医療記録は相続人が医療機関に申請すれば取得できることがほとんどです。
取得できなかった場合は、要介護認定記録と同様で弁護士会照会を利用し、医療記録を取得しましょう。

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遺産の使い込みへの対処方法

遺産の使い込みが発覚した際に、対処方法を一歩間違えれば事態はより悪化してしまいます。
最悪の事態を避けるためにも、使い込みが発覚した際に取るべき対処方法を説明していきます。

当人同士の話し合い

遺産の使い込みが発覚した際、まずは当人同士での話し合いをします。
話し合いの際には、使い込みの証拠を提示したうえで話し合いを進めるとスムーズです。

話し合いを行った結果、使い込みを認めてもらえた場合は使い込みをした金額から法定相続分を差し引き、他の相続人の法定相続分に応じた割合で返還をしてもらいます。
遺産の使い込みを行った人が相続人以外の場合は、使い込んだ全額を返還してもらいましょう。

遺産分割調停をする

当人同士での話合いで解決しない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。
以前は、使い込まれた遺産はすでに存在しないものとされ、遺産分割調停の対象にはなりませんでした。

しかし、2018年に相続法が改正されてからは、遺産分割前に使い込まれた遺産の場合であっても、遺産分割の対象とみなされるようになりました。
ただし、使い込んだ相続人以外の相続人全員の同意が必要です。

裁判を起こす

話し合いを試みた結果、解決しなければ裁判を起こすことになります。
この場合は2通りの方法があり、不当利得返還請求訴訟もしくは不法行為に基づく損害賠償請求訴訟です。
どちらの裁判を起こすべきかは状況によって異なるため、依頼先の弁護士とよく話し合いましょう。

不当利得返還請求

不当利得返還請求とは、法律上の原因がないのに本来受け取るべきでない人が受け取った利益の返還を求めることです。
勝手に遺産を使い込みをすることは、不当利得に該当します。
遺産の使い込みによって、本来受け取ることのできる法定相続分を受け取れなくなった場合、使い込みをした人に対して不当利得返還請求を行うことが可能です。

ただし、不当利得返還請求の権利には時効があるため注意しましょう。
権利を行使可能なことを知った時点から5年、権利を行使可能な時点から10年とされています。

不法行為に基づく損害賠償請求

不法行為とは、故意または過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害することにより、相手が損害を受けることです。
本来ならば受け取れるはずの遺産が、使いこまれることで遺産を受け取れなくなるのは、この不法行為に当てはまる可能性が高いでしょう。

使い込みをした人に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求ができます。
請求が認められた場合は、遺産の使い込みを行った人に対して使い込んだ遺産の返還や損害賠償が請求されます。

遺留分侵害額請求をする

遺産の使い込みをした人が使い込みを認めず、使い込んだという明確な証拠がない場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合、前述した不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求で遺産を取り戻すことは難しくなります。
その際に取るべき対処法として挙げられるのが、遺留分侵害額請求です。

遺留分侵害額請求とは、最低限相続できることが保障されている相続分を侵害された場合、侵害された分の金銭の支払いを請求できる権利のことです。

生前贈与も以下の条件を満たす場合、遺留分侵害額請求の対象となります。

  • 相続が開始される直前に行われた贈与
  • 遺留分を侵害すると分かったうえで生前贈与された相続開始1年以上前の財産
  • 相続開始10年以内に法定相続人に対して贈与された財産

遺産の使い込みの返還要求ができないケース

遺産の使い込みが発覚しても、残念ながら返還要求ができないケースが存在します。
ここでは、返還要求ができないケースを見ていきましょう。

証拠がない場合

証拠がない場合は、当人間で話し合いをしても、証拠がないのをいいことに使い込みの事実を認めないでしょう。
また、返還請求等の裁判をしても、証拠がなければ裁判所を説得できないため、裁判に負けてしまいます。

使い込みを立証するには、証拠となる資料の存在が重要なポイントです。
被相続人の口座の取引明細書、生前の要介護認定記録や医療記録など、証拠となりうる資料は集めておきましょう。

相手に返還能力がない場合

たとえ返還や損害賠償をしなければいけなくなったとしても、使いこんだ当人が返還や損害賠償するだけの能力がない場合は、返還されない可能性もあります。
遺産の使い込みを疑った場合にはまず、被相続人名義の預金口座を凍結させましょう。

また、使い込みをした人が無資力となる懸念がある場合は、使い込みをした人名義の口座も仮差押えすれば、財産を使い切られてしまうことを防げます。

時効が成立している場合

不当利得返還請求にも、不法行為に基づく損害賠償請求のどちらにも時効があります。
不当利得返還請求の場合は遺産の使い込みをした時点から10年、不法行為に基づく損害賠償請求ができる場合であれば20年です。
それ以上の時間が経過している場合は時効が成立するため、使い込まれた遺産の返還は不可能となります。

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遺産の使い込みを防ぐ対策

トラブルを回避するためには、遺産の使い込みを未然に防ぐことがポイントです。
使い込みを未然に防ぐための対策を参考に行動しましょう。

後見制度の活用

後見制度とは、判断能力が衰えた被相続人に代わり、財産管理や身上保護などの法律行為を行う制度です。
後見制度には、成年後見制度と任意後見制度の2つがあります。
次に、それぞれの違いを説明します。

成年後見制度

家庭裁判所によって選出された後見人が、判断能力が衰えた方の財産を管理し保護します。
また、本人が不当な契約をさせられた場合にも、後見人が手続きをすることで解約も可能です。
後見人には親族が選ばれるケースは少なく、親族以外が後見人に選ばれることが約8割を占めます。
親族以外が選ばれた場合、月に数万円の管理費を支払う必要があります。

任意後見制度

任意後見制度では、本人の判断能力が衰える前に任意後見人を選出します。
そして、本人の判断能力が低下した際に本人に代わって、財産管理や必要な契約締結等をしてもらうことを委任します。
任意後見人は成人であれば誰でもなれるので、本人が希望する人を選出することも可能です。

家族信託を利用する

家族信託とは、当人の判断能力が落ちる前に、あらかじめ家族に資産の管理や運用する権限を委任することを指します。
家族信託は、契約内容を自由に選べる点や資産運用も可能な点から自由度が高い方法といえます。
しかし、信託契約の締結などの際には、高額な費用がかかることが多い点がデメリットとなります。

まとまったお金は定期預金にする

本来ならば、口座名義人以外がキャッシュカードを利用することは禁止されています。
しかし、禁止されているとしても、カードを手に入れた際に暗証番号さえ知っていれば預金の引き出しが可能となります。
預金を勝手に引き出して使われることがないよう、簡単に引き出せない定期預金に入れて保管しておけば、使い込みを防ぐことが可能です。

遺産の使い込みをした人が介護をしていた場合

遺産の使い込みをしたと思われる人が被相続人の介護をしていた場合、被相続人の預金から引き出しがあったとしても、不当な使い込みをしたとは一概にはいえません。
なぜなら、被相続人のために妥当な金額を出金していた場合があるためです。

正当な使い込みである場合は、もちろん返還請求ができません。
最初から使い込みだと決めつけて追及すると、介護していた側からすれば言いがかりを付けられたと感じて揉める原因にもなります。

相続人間のトラブルを避けるためにも、使い込みを調べるためにポイントとなる2点を見ていく必要があります。

誰のために使ったか

重要なのは、被相続人の預貯金から引き出されたお金を誰のために使ったのかということです。
預金の引き出し=引き出したお金を勝手に使ったと決めつけてはいけません。

被相続人に頼まれて引き出した可能性や被相続人宅のリフォーム、介護用品を購入するための費用といったことも考えられます。
使い込みを明らかにするためにも、まずは誰のために使ったお金であるのかをはっきりさせることが重要です。

精査することが重要

使い込みを疑う場合は、引き出したお金の流れを把握することが重要です。
介護をしていた人に直接聞いても、使い込みをしている場合は正直に答えてくれることはまずないでしょう。
そのため、自分で精査する必要があります。

そのために活用できるものとして挙げられるのが、医療カルテ、看護記録、介護記録、介護保険の認定記録といった医療・介護関係の資料です。
医療・介護関係の資料には入院歴、認知症の程度、生活状況などの情報が書かれています。
それらの資料の情報と預貯金の取引履歴とを照らし合わせてみると、どのタイミングで引き出しをされていたのかが明らかとなります。

認知症に認定されてからの引き出し件数が増えていたり、当時の生活状況からは考えられない金額が引き出されていたりなどの使い込みの証拠が見つかるかもしれません。
取得できる資料をできる限り集め、使い込みの事実があったのかを明らかにしましょう。

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遺産の使い込みについてのまとめ

ここまで、遺産の使い込みが発覚した際の対処法などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。

・遺産の使い込みとは、遺産分割前に勝手に使ったり、処分したりすること
・遺産の使い込みの調査方法には自分で調べる他、弁護士や裁判所への依頼も可能
・使い込みの証拠となるのは、預貯金口座の取引明細書や介護記録、医療記録など
・使い込みが発覚した際は、まず当人同士で話し合いを試みる
・時効が過ぎた、証拠がない、返還能力がない場合は返還請求できないこともある

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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監修者

評価員(かまた)

鎌田 真紀子(かまた まきこ)

国家資格 キャリアコンサルタント ・CSスペシャリスト(協会認定)

経歴

終活関連の業界経歴12年以上。20年以上の大手生命保険会社のコンタクトセンターのマネジメントにおいて、コンタクトセンターに寄せられるお客様の声に寄り添い、様々なサポートを行う。自身の喪主経験、お墓探しの体験をはじめ、終活のこと全般に知見を持ち、お客様のお困りごとの解決をサポートするなど、活躍の場を広げる。

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