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遺産の使い込みに気付いた時の対応は?時効や確認方法も解説

更新日:2022.04.26

遺産

記事のポイントを先取り!

  • 使い込まれた遺産は基本的には取り戻すことができる
  • 使い込まれた遺産を取り戻し場合には証拠が必要
  • 時効などによって取り戻せないケースがあることも知っておく
  • 遺産の使い込みを予防する方法もある

無断で遺産が使い込まれたことが発覚した場合の、最善の対処方法をご存知でしょうか。
遺産の使い込みが発覚した際にすべきことについて知っておきましょう。

そこでこの記事では、遺産の使い込みが発覚した場合について解説します。
この機会に、使い込まれた遺産を取り戻す方法を覚えておきましょう。

後半では、遺産を取り戻せないケースについて触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

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  1. 遺産の使い込みは罰せられる?
  2. 遺産の使い込みの疑いがある場合の確認方法
  3. 使い込まれた遺産は取り戻せる?
  4. 遺産を取り戻せるケースと戻せないケース
  5. 使い込みの証拠として集めるべき資料
  6. 不当利得返還請求の時効は?
  7. 不法行為にもとづく損害賠償請求の時効は?
  8. 時効にかからずとも立証が難しいことも
  9. 遺産の使い込みを未然に防ぐ方法
  10. 遺産の使い込みまとめ
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遺産の使い込みは罰せられる?

結論から述べると、遺産の使い込みで罰せられることはありません。
他人の財産を勝手に使い込むと、「窃盗罪」や「横領罪」に問われるのが一般的です。

しかし、配偶者や親子などの親族間で、自分のものではない財産の使い込みがあっても、これらの罪に問われることはありません。

つまり、被相続人の財産を、被相続人と同居していた方などが勝手に使用してしまう「遺産の使い込み」においても罰せられることはないということです。

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遺産の使い込みの疑いがある場合の確認方法

被相続人が生きているうちに遺産の使い込みの疑いが出た場合には、まず第一に被相続人本人に連絡をして預金取引状況を確認してもらいます。
親族同士で話し合うのは、預金取引状況を確認後、使い込みが明らかになってからにしましょう。
被相続人の死後、遺産の使い込みが発覚した場合には、遺産を使い込んだ相続人へ開示や説明を要求することをおすすめします。

この要求に応じてもらえない場合には弁護士に相談し、金融機関へ問い合わせてもらうといった調査をしてもらいましょう。

遺産の使い込みが疑われた場合には、放置はせず、状況をはっきりさせることが大切です。

使い込まれた遺産は取り戻せる?

使い込まれた遺産は、「不当利得返還請求」または「不法行為にもとづく損害賠償請求」で裁判を行うことで取り戻すことが可能です。

不当利得とは、本来は受け取ることができない人が受け取ったお金のことをいいます。
損失を被った被害者は、不当利得を得た加害者に利得の返還を請求することが可能です。
不法行為にもとづく損害賠償請求とは、不法行為によって損害を受けた被害者が、不法行為を行った加
害者へ損害賠償を求めることをいいます。

遺産の使い込みが発覚した場合、不当利得返還請求と、不法行為に基づく損害賠償請求、どちらの方法でも使い込まれた遺産を取り戻すことが可能です。

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遺産を取り戻せるケースと戻せないケース

基本的に使い込まれた遺産は取り戻すことが可能ですが、場合によっては取り戻すことができないこともあります。
そこでここでは、遺産を取り戻せるケースと取り戻せないケース、それぞれについて詳しく説明していきます。

遺産を取り戻せるケース

遺産を使い込まれた証拠がある場合には、遺産を取り戻すことが可能です。
遺産を使い込んだ方が使い込みを否定している場合でも、証拠さえあれば遺産を取り戻すことができます。

遺産の返還請求時に「使い込みの証拠がある」と伝えれば、裁判を起こさずに遺産を返還してもらえる可能性があります。
裁判を起こしたとしても証拠があれば勝てる確率が上がります。
裁判を起こすことに抵抗がある方もいると思いますが、遺産の返還請求に関する裁判では、裁判に負けたからといって刑罰や罰金が科せられることはありません。

遺産を使い込んだ方は、使い込んだ分の金額を返金するだけです。
遺産の返還請求を行う際には、弁護士に依頼することで効率的に遺産の返還請求を進めることができますので、検討してみると良いでしょう。

遺産を取り戻せないケース

遺産を取り戻せない理由としては以下のものがあります。

  • 遺産を使い込んだ方にお金がない場合
  • 時効が成立してしまった場合
  • 被相続人の健康状態を考慮して必要な金額を出費したとされる場合

遺産の使い込みが発覚した場合でも、使い込んだ方に返すお金がなければ遺産が戻ってくることはありません。
返しきれないほどの遺産を使い込まれてしまう前に、返還請求をすることが大切になるため、遺産の使い込みが発覚した場合にはできる限り早めに対応する必要があります。
遺産の返還請求には、「不当利得返還請求」または「不法行為に基づく損害賠償請求」を利用します。

しかし、不当利得請求には10年、不法行為に基づく損害賠償請求には3年の時効があり、その時効を過ぎてしまった場合には、遺産の返還請求が不可能になります。
遺産を取り戻すためには、それぞれの時効が切れる前に遺産の返還請求を行いましょう。

最後に、被相続人の健康状態を考慮して必要な出費をしたと思われる場合には、遺産を取り戻すことはできません。
ただし、この場合には本当に必要な出費であったかどうか、被相続人の健康状態と出費の内容についての精査が行われます。

使い込みの証拠として集めるべき資料

使い込まれた遺産の返還請求を行うには、遺産を使い込んだ証拠が、必ず必要になります。
以下のものが遺産を使い込んだ証拠になりえます。

  • 被相続人名義の預金通帳や預金通帳や取引明細書
  • 使い込み時の被相続人のカルテや診断書
  • 使い込み時の被相続人の介護認定資料や介護記録

被相続人の預金から遺産が引き落とされて使い込まれていた場合には、預金通帳を手に入れるか、銀行から取引明細書を用意してもらう必要があります。

たとえば、使い込みの事実を認めず「生活費のために使用した」などと言われても、引き落としの金額や引き落としの頻度を確認することで、それが本当かどうかわかります。
また、使い込みの事実を認めない際の言い訳として「生前贈与でもらった」などと主張される場合もあります。

しかし、生前贈与には贈与をする方が、贈与をすることによる自分への影響を正確に理解する能力があるということが必須です。
認知症などの場合にはその能力がないことがほとんどのため、使い込みの時点で被相続人が認知症であったことを証明するカルテや介護資料などがあれば、不法利得を証明できます。

ただし、カルテなどの医療関係資料を個人で取得することは困難ですし、これらの資料は保管期間が決まっています。

たとえば、カルテの場合は保管期間が5年と決まっており、それを過ぎると破棄されてしまう可能性があるため、早めに取得する必要があります。
そのため、遺産の使い込みが発覚した場合にはすぐに専門家に依頼し、証拠を集めてもらうことが得策でしょう。

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不当利得返還請求の時効は?

不当利得返還請求には、権利行使のことを知った日から5年、または権利の発生時から10年間の時効があります。

つまり、「相続が開始された時から5年以内」または「遺産の使い込みがあってから10年以内」に請求できなければ時効になってしまいます。

遺産の使い込みが行われてから年数が経っていると、時効により返還請求を行えない場合があります。

このことからも、遺産の使い込みが発覚した場合には速やかに返還請求を行う必要があります。

不法行為にもとづく損害賠償請求の時効は?

不法行為に基づく損害賠償請求にも時効があり、こちらは損害および加害者を知ってから3年」になります。
つまり、「遺産の使い込みが発覚してから3年以内」が、不法行為にもとづく損害賠償請求の時効で、不当利欲返還請求の時効よりも短いため注意しましょう。

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時効にかからずとも立証が難しいことも

不当利得返還請求の場合は10年、不法行為にもとづく損害賠償請求の場合は3年の時効がありますが、時効を過ぎていなくても使い込みを立証できなければ遺産の返還はされません。
遺産の使い込みを立証するためには、カルテや預貯金の取引明細書などが証拠として必要になります。

しかし、カルテの場合には5年間、預貯金の取引明細書の場合には10年間と保管期間が定められており、それを過ぎてしまうと破棄されてしまう可能性があります。
時効を過ぎていなくても、カルテや取引明細書などの証拠が破棄されていれば遺産を使い込んだことを立証するのは難しくなります。

不当利得返還請求や、不法行為にもとづく損害賠償の時効だけではなく、遺産の使い込みを立証するために必要な証拠にも時効があることを覚えておきましょう。

遺産の使い込みを未然に防ぐ方法

遺産の使い込みが発覚した場合、返還請求を行うことはできますが、必ずしも遺産が戻ってくるとは限りません。
ここでは、遺産の使い込みを防ぐために事前にできることを説明していきますので、ぜひ参考にしてください。

被相続人名義の預貯金口座をすぐに凍結

遺産の使い込みは生前に行われると思われがちですが、実は被相続人の死後直後に行われることも多いです。
この遺産の使い込みは、被相続人の死後すぐに被相続人名義の預貯金口座を凍結することで予防ができます。

基本的に、預貯金口座を凍結すると、遺産分割協議を終えるまで口座内のお金を引き落とすことができなくなりますので、使い込まれる心配がなくなります。
遺産から葬儀費用を工面しようと考えているご遺族の方は、預貯金口座の凍結ができないと思ってしまうかもしれませんが、心配はいりません。
2019年7月から施行された法律により、遺産分割協議完了前でも、凍結した口座から一定範囲の仮払いが行えるようになりました。

ただし、凍結口座からの仮払いで葬儀費用を工面する場合には、後々のトラブルを予防するためにも、明細書を大切に保管しておきましょう。

成年後見制度を利用する

成年後見制度とは、被相続人が認知症や障がいによって財産を管理できない場合に、本人に代わって後見人に遺産となる財産の管理をしてもらう制度です。
この際の後見人は、民法に従って家庭裁判所が選出をします。

成年後見制度を利用すると生前贈与などが難しくなりますが、財産の使い込みなどを防ぐことができます。
相続税の節税対策として生前贈与を希望される方は、被相続人がご自身で財産管理を行えるうちに相続税の対策をしておきましょう。

任意後見制度を利用する

任意後見制度とは、被相続人が元気なうちにご自身で後見制度を締結する制度です。
つまり、民法の定めによって後見人を選出する成年後見制度とは異なり、任意後見制度では被相続人自らで後見人を選出します。

任意後見制度は財産の使い込みを防ぐことだけではなく、被相続人の意向を具体的に定めることが可能で、資産家などによく利用される方法です。

家族信託を利用する

家族信託とは、被相続人が元気なうちに信頼できる親族に財産管理を依頼し、その内容について信託契約を締結することをいいます。
この信託契約は、被相続人が認知症を発症した場合などでも続いていくため、遺産の使い込みを防ぐことができます。

また、民法の定めによって後見人を選出する任意後見制度では家庭裁判所の介入がありますが、家族信託の場合は家庭裁判所の介入がありません。
そのため、被相続人にとっては気を張らずに財産管理を依頼することができます。

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遺産の使い込みまとめ

ここまで遺産の使い込みが発覚した場合について解説してきました。

まとめると以下の通りです。

  • 使い込まれた遺産は基本的には取り戻すことが可能
  • 遺産を取り戻すには証拠が必要
  • 遺産を取り戻すためには3年または10年の時効がある
  • 遺産を取り戻せないケースがあることも覚えておく

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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監修者

評価員(やまぐち)

山口 隆司(やまぐち たかし)

一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター

経歴

業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。

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