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遺言書があっても相続放棄する方法は?認められないケースも紹介
更新日:2022.12.27
遺言書による相続放棄には認められないケースがあります。
相続放棄が認められないケースには、どのようなものがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、遺言書による相続放棄について詳しく説明していきます。
この機会に、遺言書による相続放棄を選ぶケースや手続きなどについて覚えておきましょう。
相続放棄は生前でもできるのかについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 遺言書とは
- 相続放棄とは
- 遺言書により指定された場合の相続放棄
- 遺言書があっても相続放棄を選ぶケース
- 相続放棄の流れと手続き方法
- 遺言書があり相続放棄が認められないケース
- 遺言書があり相続放棄する際の注意点
- 遺言書があり相続放棄以外の方法
- 「相続」と「遺贈」の違い
- 相続放棄は生前にできる?
- よくある質問
- 遺言書による相続放棄のまとめ
遺言書とは
遺言書とは、自分が亡くなってから財産をどのように配分するのかを記載した書面です。
遺言書には、作成・保管の方法によって、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。
https://www.eranda.jp/column/24781
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相続放棄とは、財産を相続する権利を消滅させることです。
被相続人の、預貯金や不動産などを含む全財産が放棄の対象となります。
遺言書により指定された場合の相続放棄
遺言書により相続人が指定されていた場合でも、手続きをとることで、相続を放棄することが可能です。
手続きとは、裁判所に所定の書類を提出することになります。
放棄の対象は、遺言書による相続部分だけではなく、借金なども含まれまるので要注意です。
遺言書があっても相続放棄を選ぶケース
遺言書に相続人と指定されていても、相続放棄を選ぶのはなぜでしょうか。
相続財産に負債が多い場合
相続放棄の場合、資産を相続しないのはもちろん、負債も相続しません。
被相続人の財産の負債を相続放棄することで、相続人が損害を受けることを避けられます。
例えば、被相続人が多大な借金をかかえている場合、被相続人がこれを相続すると莫大な借金を引き継ぐことになります。
相続を放棄することによって借金の引き継ぎを回避できます。
相続問題を回避したい
遺産分割など、相続問題に巻き込まれたくないために相続を放棄することもあるようです。
相続放棄する場合、本人以外の相続人の相続割合は増えることになります。
また、相続権がなかった人に相続権を与えられることもあります。
相続放棄した場合は、その人の子による財産の代襲相続は不可能です。
相続放棄の流れと手続き方法
相続放棄する場合の流れと手続き方法についてここでは解説します。
相続放棄の申述先
被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に申述することで相続放棄が可能です。
裁判所のホームページを参照すれば、居住地を管轄する裁判所を調べることができます。
申述に必要な書類
相続放棄の申述に必要な共通の書類は以下の三つです。
- 相続放棄の申述書
- 相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人の戸籍謄本
そのほかに、申述人の立場によって以下の資料が必要となります。
申述人が配偶者の場合
- 被相続人の死亡を記載した戸籍謄本
申述人が子または孫の場合
- 被相続人の死亡を記載した戸籍謄本
- 被代襲者(配偶者または子)の死亡記載のある戸籍謄本
申述人が被相続人の親または祖父母の場合
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
申述人が兄弟姉妹または甥・姪の場合
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 配偶者(または子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 被相続人の親(父・母)の死亡記載のある戸籍謄本
- 兄弟姉妹の死亡が記載された戸籍謄本(死亡している場合)
これらの書類の提出は、家庭裁判所へ出向いて提出するか郵送するかのいずれかを選択します。
https://www.eranda.jp/column/25258
相続放棄にかかる費用
相続放棄にかかる費用としては、申述の際に収入印紙代として800円が必要です。
戸籍謄本には1通450円の小為替が必要です。
本人の本籍地でしか戸籍謄本は取得できず、居住地の役所では取得できません。
郵送する際の切手なども、裁判所によって異なります。
申述書の作成方法
裁判所のホームページから相続放棄申述書の用紙はダウンロード可能です。
「申述の理由」については、家庭裁判所から追加で事情説明書などを求められる場合もあります。
相続人が未成年者であるか、成年被後見人の場合は法定代理人が必要です。
未成年者による相続の放棄で、法定代理人の相続分が増える場合があります。
それは、未成年者と法定代理人が共同相続人であり、両者の利害が対立するケースです。
1人の未成年者が相続放棄すると、ほかの未成年者の相続分が増える場合もあります。
これは、未成年者と成年の共同相続人間で利害が対立するケースです。
この場合は、法定代理人では対応ができず、特別代理人をたてる必要があります。
申述書の書き方
申述書には、管轄する家庭裁判所の名前を記載し、申述書提出日付、相続人の名前を記載することが必要です。
そして、提出書類にチェックを入れます。
申請書には、相続人と被相続人との関係および本籍・住所の記載も必要です。
法定代理人に関する情報、被相続人に関する情報を記載し、相続人が捺印します。
相続放棄する場合、理由を記載します。
理由の記載は、債務超過のため支払いができないなどと具体的な内容を記載するようにしましょう。
証明書が発行される
相続放棄の申述が裁判所に受理されると、2週間以内に、「照会書」が相続人に郵送されます。
照会書の記載事項を記入したら、署名押印して、裁判所へ返送します。
照会書を返送すれば、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が郵送され、手続きは完了となります。
相続登記の時などに証明書は利用できる
「相続放棄申述受理証明書」は、相続放棄をしたことを裁判所が公的に証明するものです。
不動産の相続登記の際に添付が必要になります。
相続放棄申述受理証明書は家庭裁判所にありますし、裁判所のホームページからダウンロードすることも可能です。
1件につき150円の収入印紙が必要で、郵送の場合は返信用の切手を添えて申請します。
相続放棄をしたことを債権者に証明するためには、当該証明書の写しを各債権者に郵送するかFAX送付が必要です。
https://www.eranda.jp/column/24775
スポンサーリンク遺言書があり相続放棄が認められないケース
遺言書があって相続放棄が認められないケースにはどのようなものがあるのでしょうか。
相続財産の処分した場合
遺言書によって指定された相続人が相続財産の一部あるいは全部を処分した場合、相続放棄が認められません。
この場合は、法定単純承認といって、法律上単純承認したものとみなされます。
ただし、被相続人の葬儀代を支払っただけといった場合は例外として相続放棄が可能です。
相続財産の隠匿・消費した場合
相続財産の一部または全部を故意に隠匿(いんとく)または消費し、財産目録への記載しなかった場合も、背信行為となり相続放棄ができません。
背信行為があった場合は、相続人を保護する必要はないからです。
一方、背信行為があった場合でも、相続人となった別の人が認めた場合は、相続放棄が可能です。
遺言書があり相続放棄する際の注意点
遺言書で指定されている人が相続放棄する場合、どのような点に注意すればいいのでしょうか。
相続の一部のみを放棄できない
相続放棄は、全財産が対象となり、負債だけとか資産だけとか一部のみを相続することはできません。
特定の資産だけを相続放棄することも不可です。
相続放棄には期限がある
相続放棄ができるのは、自分が相続人であることを知ってから3カ月以内です。
3カ月を過ぎると、家庭裁判所に放棄を申述しても受理してもらえなくなります。
理由によっては、例外的に期間経過後でも手続きできることもありますので、司法書士や弁護士に聞いてみましょう。
相続人全員が相続放棄した場合
相続人全員が相続放棄した場合は、資産は国のものになります。
借金などの負債は、家庭裁判所の承認のうえ、相続財産管理人によって返済が行われます。
負債があれば債権者のために、できる限り弁済に充当すべきでしょう。
相続財産管理人によって、不動産を処分して弁済に充てるケースもあるようです。
資産から債権回収ができそうもない場合は、債権者は連帯保証人に支払いを請求します。
相続放棄した場合でも、連帯保証人は支払いの責務を免れることはできません。
相続財産管理人が選任されるまで管理する必要がある
相続放棄をした人は、相続人ではなくなり、相続財産の権利・義務を負うことはありません。
民法では、相続を放棄した場合、相続人となった人が相続財産の管理を始めるまでは、その財産を管理しなければなりません。
この時、自分の財産を管理するのと同じくらい注意する必要があります。
相続人が不在となる場合も、相続財産管理人が選任されるまでその財産は管理しなければならないとされています。
その場合も自分の財産と同じくらいの注意を払うことが必要です。
実際は相続財産管理人が選任されないことも多いようです。
相続放棄した相続人が、必ずしも相続財産管理人を選任する義務を負うものではありません。
相続放棄による代襲相続について
子が父の相続を放棄した場合、子が相続することはできませんし、孫が子に代わって父の財産を代襲相続することもできません。
一方、子が父よりも先に死亡し、孫が子の相続を放棄したとしても、孫は子の相続人ではありません。
しかし、父との関係では直系卑属であることは変わりありません。
また、孫の相続放棄はあくまで子の財産に対してであり、父の財産に対してではありません。
そのため、子が死亡した後に父が死亡した場合、孫は父の財産を代襲相続できます。
生命保険の取り扱い
被相続人が生命保険に加入しており、その受取人として特定の相続人が指定されている場合があります。
この場合、原則として、生命保険金は受取人に指定された人の財産となります。
生命保険金は、受取人が指定されている相続人が相続を放棄した場合でも、保険金は受け取れます。
しかし、被相続人が生命保険の受取人を本人にしていた場合は、保険金は被相続人の財産になりますので相続の対象です。
従って、相続放棄をした場合は、保険金の相続もできなくなります。
解約返戻金の取り扱い
被相続人が亡くなった時に解約すれば解約返戻金は被相続人のものです。
よって、生命保険金も相続税の対象になります。
解約返戻金がいくらになるのか知りたい時は、生命保険会社に確認しましょう。
遺言書があり相続放棄以外の方法
遺言書で相続人が指定されている場合、相続放棄以外で遺産を処分する方法はあるのでしょうか。
遺産分割協議
遺言で相続人として指定されたけれど、自分としては放棄したいが多少は受け取りたいという場合が考えられます。
遺言によって増やされた相続分はいらないけれど、法定相続分は欲しいと考えることもあるでしょう。
例えば、「甲という不動産」より「乙という不動産」の方を相続したいという場合もあるでしょう。
このような場合は、相続放棄しなくても、他の相続人との遺産分割協議という方法があります。
具体的には、遺言で長男の相続割合が多くても、相続人全員が合意すれば、法定相続割合の通りに分割することが可能です。
相続放棄は、増えた部分のみならず、その他の相続も失ってしまいます。
その場合、放棄した人が不利益を受ける恐れがあるのです。
遺産分割協議のメリット
遺産分割には、トラブルを予防するというメリットがあります。
遺産分割協議の際、相続人間で争いが起こりがちですが、遺産分割協議が成立し協議書を残せば、相続人間の合意が明確になります。
口約束では相続内容に関して、言った・言わないという問題が発生します。
書面に記録しておくことで相続内容が明確になり、保存することもできます。
協議書があれば、他の相続人達が被相続人の財産が欲しいとか、合意していないなどと訴えることはできません。
書面による記録がなければ、相続人の口座は凍結され、被相続人の預金を遺産分割できません。
相続人へ不動産を相続登記する際も、協議書の提出が必要です。
遺産分割協議書は、相続手続きを円滑に進めるために必要なのです。
「相続」と「遺贈」の違い
相続と遺贈にはどのような違いがあるのでしょうか。
遺贈(いぞう)とは
「遺贈」とは、遺言によって遺言者の財産を他人に贈与することです。
財産を受ける他人のことを受遺者と呼びます。
相続人でも、相続人以外の人も受遺者になることが可能です。
家族でない人でも遺贈を受けることもできます。
遺贈の場合に放棄する方法
遺贈の場合に放棄する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。
特定遺贈の放棄
特定遺贈は意思表示によって放棄することが可能です。
争いにならないように、特定遺贈を放棄する意思表示として内容証明郵便で伝えるのが良いでしょう。
受遺者は期間の制限もなく、いつでも遺贈を放棄できます。
しかし、受遺者が遺贈を受けるのか、放棄するのかを明らかにしない場合もあります。
そのような場合は、相続人は、受遺者に一定の期間を定めて催促できます。
定められた期間内に受遺者から回答がない場合は、遺贈を認めたものとみなされるのです。
包括遺贈の放棄
包括遺贈を放棄したい場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺贈放棄の申述書を提出することで可能となります。
申述書の提出期限は、相続の開始があったことを知ってから3カ月以内です。
https://www.eranda.jp/column/25263
スポンサーリンク相続放棄は生前にできる?
被相続人の財産の負債が多い場合、相続人が負債を相続しないための予防方法が相続放棄です。
相続放棄は、被相続人の死後、家庭裁判所に申述することで可能となります。
では、自分の親が多額の借金を抱えており、これからもその状態が続くことが想定される場合、生前に相続放棄することは可能でしょうか。
残念ながら、生前に相続放棄することは不可能です。
生前の相続放棄は、法律で認められていませんし、家庭裁判所も受け付けてもらえません。
相続放棄は、法令で定められた手続きをしなければ認められません。
たとえ「相続放棄を認める」といった念書があったとしても、被相続人の死後に、他の相続人が相続権を主張した場合は対抗できません。
では、被相続人が債務超過のまま死亡することが見込まれる場合に、相続発生前に何かしらの対策を講じることはできないのでしょうか。
結論からいうと、相続人にできることはありません。
相続人のために、被相続人が債務整理などをして自分の債務を減らしておくことくらいしか方法はないようです。
よくある質問
Q:相続放棄の期限は?
A:遺産相続の放棄は、自分が相続人であると知ってから3ヶ月です。
3ヶ月を過ぎると遺産相続ができなくなります。
Q:遺産相続を放棄したかかどうかの確認の仕方は?
A:裁判所から発行される相続放棄申述受理証明書が相続放棄の証明書です。
Q:負債だけ相続放棄できるの?
A:相続放棄は全ての遺産の相続を放棄することなので、借金などの負債だけを相続放棄することはできません。
スポンサーリンク遺言書による相続放棄のまとめ
この記事では、遺言書による相続放棄について、選ぶケースや手続き方法などを中心に解説してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 遺言書があっても相続放棄を選ぶケースは、負債が多い場合などがある
- 相続放棄の申述は、最寄りの家庭裁判所に相続放棄申述書等を提出する
- 相続放棄が認められないのは相続財産の全部や一部を処分した場合
- 生前の相続放棄は法律で認められていないため、できない
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。
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