相続
祭祀財産を相続するには?相続の対象者や相続税などを紹介
更新日:2024.02.03 公開日:2022.05.24
祭祀財産は相続できる財産ですが、祭祀財産の相続は、拒否できないことをご存知でしょうか。
祭祀財産の相続に相続税はかかりませんが、今後管理していくのに負担が生じることもあります。
この記事では、祭祀財産を相続する時の注意点について詳しく説明していきます。
この機会に祭祀財産の相続とはどういうものかを知っておきましょう。
祭祀財産の生前贈与、相続人がいない場合についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 祭祀財産とは
- 祭祀財産を相続する人
- 遺産分割はどのように分けたら良い?
- 祭祀財産にはいくら相続税がかかる?
- 相続放棄したら祭祀財産はどうなる?
- 祭祀財産の相続に必要な手続き
- 祭祀財産は生前相続が可能
- 祭祀財産の相続人がいない場合は?
- 祭祀財産の相続まとめ
祭祀財産とは
「祭祀財産」とは、宗教上や信仰上、先祖や死者を弔う際に必要な財産です。
具体的には、「系譜」や「祭具」、「墳墓」などが挙げられます。
- 「系譜」 巻物や家系図に、先祖など一族の名前が書きこまれたもので、家の成り立ちを記した、一族にとって重要な記録のこと
- 「祭具」 仏壇や位牌、仏像など、信仰の対象物となるものなどを指し、その家にとって信仰上必要であれば、太鼓や鉦なども含まれる
- 「墳墓」 墓地や、先祖の名前や家の由来などが記入された墓碑などを指す
こうしたものが祭祀財産として扱われ、金銭や株式、土地などの、一般的な財産として扱われるものとは区別されています。
一般的な財産は、相続する時には相続税がかかりますが、祭祀財産には基本的に相続税はかかりません。
しかし、一般的な遺産は相続を拒否できますが、祭祀財産を相続する祭祀承継者に指定された場合、相続を拒否できません。
一般的な財産と祭祀財産では相続のルールも異なるため注意が必要です。
祭祀財産を相続する人
祭祀財産は祭祀承継者を選び、相続することになります。
祭祀承継者は原則一人が指定されるものとされており、祭祀承継者に指定されると、祭祀財産の相続を拒否できないことになっています。
ここでは、祭祀財産を相続する人の選び方について解説していきます。
被相続人からの指定
被相続人が祭祀承継者を、遺言などで指定できます。
祭祀承継者は仏壇やお墓などの祭祀財産を相続することになりますので、いいかえると、これから仏壇やお墓を守っていく人、ということになります。
今後も、しっかりと仏壇やお墓に手を合わせてくれたり、きちんと管理してくれる人を選び、遺言などで指定することになります。
親族内の慣習
被相続人が祭祀財産の相続について、遺言などで特に指定していない場合には、親族内の慣習によって、祭祀承継者が指定されることになります。
慣習とは、例えば、長男が継いでいくとか、ずっと亡くなった人と一緒に暮らしていた人が継いでいく、などと、代々実施されていることです。
また、その地域や宗派によって、誰が家を継ぐか慣習的に決まっていることも多いとされています。
家庭裁判所からの指定
被相続人からの指定や、親族内の慣習といったものが特にない場合は、家庭裁判所で祭祀承継者決定の調停や審判手続によって決めることになります。
この場合は、祭祀承継者になるべき人物を、死者との関係や、一族の中での立場、金銭的余裕などから、合理的に妥当な人を選び出す判断がなされます。
遺産分割はどのように分けたら良い?
金銭や土地、株式などの一般的な財産は、遺言や法律などで定められた比率で相続し、もらう側の人に分割しなければなりません。
また、相続遺産は、権利を放棄することが可能で、受け取りたくない場合には拒否できる自由があります。
一方で、祭祀財産の場合、受け継ぐ祭祀承継者に指定されるのは原則一人とされています。
指定された祭祀承継者が全ての祭祀財産を受け継ぐことになります。
祭祀財産を受け継ぐ祭祀承継者は、拒否できないことになっています。
祭祀承継者は相続遺産とは別物と民法で定められているからです。
そのため、仮に遺産を受け継ぎたくない場合に、遺産の相続放棄した場合でも、祭祀財産の承継の権利は失われません。
祭祀財産を受け継ぐ人は、仏壇やお墓の管理など、今後金銭的負担が発生する場合があります。
だからといって、相続遺産を分割する際に、有利になるということはありません。
とはいえ、金銭的負担を一人に押し付けてしまうと、その人の生活が大変になってしまいますし、先祖は家族や親戚全員の先祖でもあります。
法律で決められているからとはいえ、今後先祖をどのように守っていくのかを、家族や親戚が皆で考えていくことが、何よりも重要です。
祭祀財産にはいくら相続税がかかる?
相続財産には相続税がかかりますが、これとは別物として扱われる祭祀財産は、税金がかからないこととされています。
これは、祭祀財産は相続人となるのではなく、祭祀主宰者に承継されるものであると、民法で規定されているからです。
いくら相続に税金がかからないとはいえ、今後仏壇やお墓を守っていくにあたり、維持管理費、場合によっては破損個所の修繕などに出費がともなうのも事実です。
相続した際は、今後出費されるお金を予測して、いざという時に備えておくことが必要です。
また、祭祀承継者は基本的に祭祀財産の承継を拒否できないことから、多くの負担がかかってしまうことになります。
こうした負担を減らすために、将来のことを考えて、生前に仏壇やお墓を購入しておき、次の祭祀継承者が支出する負担をできるだけ減らしておくことも必要です。
事前に、自分の入るお墓のある菩提寺や霊園などに、永代供養料を支払っておくことも、その一環です。
また、永代供養墓を購入しておくことなども検討するとよいでしょう。
くわえて、自分が亡くなった場合、いつ、どのようにお参りしてほしいのかを、あらかじめ次の祭祀承継者に相談しておくのも有効です。
そして、もし祭祀承継者が、金銭的な負担などで将来的に祭祀が難しくなった場合のことまでを含めて、相談しておくのもよいでしょう。
何より大切なのは、誰もが最小限の負担で、とどこおりなく祭祀承継がなされることです。
相続放棄したら祭祀財産はどうなる?
祭祀財産を受け継ぐ祭祀承継者は、拒否できないことになっています。
遺産の相続を放棄した場合でも、祭祀承継者に指定された場合は、祭祀財産を受け継がなくてはなりません。
仮に遺産を受け継ぎたくないと遺産の相続放棄をした場合でも、祭祀財産の承継の権利は失われません。
祭祀財産は承継しなければならないということになります。
祭祀財産を承継すると、仏壇やお墓の管理など、多くの負担をともなうことになります。
もし、祭祀承継者に指定されることが明白な場合は、その費用をどう捻出していくかをよく考えて、相続遺産の相続も考えていくべきです。
最終的には、相続遺産で分割された財産から、祭祀遺産の維持費などを捻出することにもなる可能性が高いからです。
祭祀財産の相続に必要な手続き
祭祀財産は、相続遺産とは違い、祭祀主宰者に承継されるものであると、民法で規定されています。
したがって、相続遺産の相続とは別の手続きにより承継していくことになります。
ここでは、祭祀財産の相続に必要な手続きについて解説していきます。
必要な書類
祭祀財産の承継のために必要な書類は、その祭祀財産によって多少違います。
ここでは、祭祀財産の承継で一般的な、お墓について解説します。
お墓の祭祀承継のために必要な書類の代表的なものは、受け継ぐ人の戸籍謄本や住民票、前の墓地使用者の死亡の事実が記載された戸籍謄本が挙げられます。
特に、前の祭祀承継者との関係が分かるようにしておく必要があります。
そのほか、墓地や霊園の管理者との手続きに必要なため、墓地使用許可証、実印、印鑑証明書も必要です。
墓地や霊園側への墓地使用料などの支払方法によっては、銀行口座振込用紙なども必要になってきます。
求められる必要書類は、墓地や霊園によって多少違ってきたり、祭祀承継者の決め方によっても、異なる場合があります。
その時の状況に応じて、墓地や霊園に問い合わせておくことも重要です。
名義変更の流れ
お墓の名義変更の場合は、まずお墓や霊園の管理者に連絡します。
まずは、電話などで連絡してみるとよいでしょう。
手続きの内容は、お墓や霊園の管理者が丁寧に教えてくれます。
準備する物は以下の通りです。
- すでに発行済みの前の祭祀承継者が保管している墓地使用許可証
- 新しい承継者の住民票、印鑑登録書
- 被相続人と新しい祭祀承継者の関係の分かる戸籍謄本
などを準備することになります。
いずれにせよ、お墓や霊園によって、提出書類が多少異なる場合がありますので、まずは問い合わせて、よく確認するのがよいでしょう。
祭祀財産は生前相続が可能
祭祀承継者に指定されると、原則、生涯にわたり祭祀承継者であり続けます。
ただし、祭祀承継者は生前に変更することが可能とされています。
変更方法は、当事者間での協議によって決めることが可能で、合意すれば、書面でも口頭でもよいことになっています。
口頭の場合は、他の親族が知らなかったということで、揉める場合があるので、他の親族にも立ち会ってもらう必要もあるでしょう。
書面できちんと協議での決定事項を残したり、事前に親族ともよく相談したりしておくことも必要です。
家庭裁判所で祭祀承継者を指定する申し立てをすることにより、次の祭祀承継者を指定する方法もあります。
申し立てについては、現在の祭祀承継者がしてもよいですし、親族から申し立てをしてもよいことになっています。
祭祀承継者が病気などで動けない状態の場合などは、親族などと相談のうえ、家庭裁判所で次の祭祀承継者をきちんと決めてもらうこともできます。
祭祀財産の相続人がいない場合は?
子どもがいなかったり、親戚がいなかったりと、様々な理由で、祭祀承継者となる人がいない場合があります。
こうした場合の、祭祀財産の扱いについては、いくつかのパターンがあります。
墓地や霊園の場合は、そこで決められている規則に拠ることになります。
祭祀承継者が明らかにいない場合は、お墓が撤去され、入っていた遺骨などは、無縁仏として共同墓地に合葬されることが多いです。
最終的にお墓のあった場所は更地にされることになります。
菩提寺の場合は、規則といったものがない場合が多く、お寺や地域の慣習に従うようになります。
その際も、明らかに使用されていないお墓があり、祭祀承継者がいないことが分かると、やはり撤去されてしまう可能性があります。
こうした際には、無縁の遺骨は共同の墓に合葬される、などの措置がとられることになります。
ただし、霊園やお寺側でもすぐに撤去できるわけではなく、お墓を整理する場合は、縁故者に1年以内に申し出る必要が法律で定められています。
縁故者が見当たらない場合には、お墓を撤去する旨を立札や官報などに掲載し、1年が経過すれば、霊園やお寺側の判断で、お墓を撤去することが可能となっています。
祭祀承継者にはなれない立場の人の中に、お墓の管理の申し出をしてくれた人がいた場合でも、最終的にお墓を管理している霊園などとの話し合いが必要です。
こうしたことから、祭祀承継者がどうしてもいない場合には、事前にお墓の管理者に相談しておくことも必要になります。
事前に永代供養墓を購入しておくことも、一つの考え方です。
永代供養墓は、お寺や霊園墓地の管理者がいなくならない限り、永続的に管理してくれるお墓です。
通常のお墓の管理料は、少額を月や年単位、もしくは複数年で支払うことになります。
永代供養墓の場合は、高額にはなりますが、事前に永代供養料として、お墓の管理者に支払っておくことになります。
こうすることで、祭祀承継者がいない場合でも、お墓は管理者によって守ってもらえることになります。
このように、今後お墓を守っていく人がいない場合は、生前に、今後のお墓の祭祀のことを、よく考えておく必要があるでしょう。
祭祀財産の相続まとめ
ここまで祭祀財産の相続の方法を中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 祭祀財産とは系譜、祭具、墳墓など宗教上必要なもの
- 祭祀承継者に指定されると祭祀財産の相続を拒否できない
- 相続遺産の相続を放棄しても、祭祀財産の相続は拒否できない
- 祭祀財産は生前の相続も、協議することで可能
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。