相続
遺産トラブルには何がある?トラブルの解決や予防方法を紹介
更新日:2025.04.23 公開日:2022.05.10

記事のポイントを先取り!
- 金銭が絡む遺産トラブルが多い
- 遺産分割や不動産など様々な相続トラブルがある
- 遺言書でトラブルの事前対策が可能
- 相続税や相続放棄には期限がある
残された遺産をめぐって兄弟や親族でもめている、という話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
しかし遺産トラブルにはどういったものがあるのか、具体的に説明できる人はあまりいないでしょう。
そこでこの記事では、遺産トラブルについて詳しく説明していきます。
この機会に遺産トラブルについて正しく理解しましょう。
トラブルの解決方法や予防方法についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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遺産相続のトラブルとは
遺産相続では、不動産や預金などの金銭が絡むことからトラブルに発展してしまうケースが多いといえます。
これまで仲の良かった兄弟や親戚でも、遺産をめぐって急激に関係が悪化してしまうことも少なくありません。
遺産相続に関するトラブルは、遺産が大きい場合に起こると考えられがちですが実はそうではありません。
2015年の最高裁判所の調査結果では、遺産分割調停事件の約75%が相続財産5,000万円以下の事案となっています。
そのうち32%が相続財産1,000万円以下で、43%が相続財産1,000万円以上5,000万円以下です。
相続財産5,000万円以下の場合は、遺産分割の金額や割合で争うことが多いようです。
逆に5,000万円以上の富裕層では、相続税に関するトラブルが多くなる傾向にあります。
主な相続トラブル

一口に相続トラブルといっても、どういったことでもめるかはそれぞれの状況で異なります。
一般的なトラブルを、パターンごとに下記で説明していきます。
遺産分割におけるトラブル
遺産をどのように分けるかで、これまで良好だった兄弟や親族との関係が悪くなってしまうことがあります。
遺産が大きいと分かっていれば、トラブルを避けるために事前に対策を立てている場合も多いでしょう。
しかし遺産の額が1,000万円以下で比較的小さいと、相続のタイミングでもめてしまう可能性が高くなる傾向にあります。
不動産におけるトラブル
遺産の大部分が土地などの不動産の場合、その分割の難しさからトラブルに発展してしまうパターンが最も多いといえます。
不動産を売却してお金に換えたい人と、そのまま残して住み続けたい人でもめることもあります。
また不動産の評価額の問題など、様々なケースが予想されます。
遺産の独占によるトラブル
相続人の一人が遺産を独占してしまうというのも、よくあるトラブルの一つといえるでしょう。
例えば長男だからという理由で遺産を独り占めし、兄弟や姉妹との争いになってしまうことが典型的なパターンといえます。
子供についてのトラブル
被相続人が再婚の場合、前妻との間に子供がいることもあります。
前妻との子も法定相続人となるため、その子が遺産の相続を主張してきた場合はトラブルになる可能性もあるでしょう。
それ以外でも隠し子の発覚など、予想外のところから遺産相続のトラブルになる原因が発生する場合もあります。
遺言書の内容についてのトラブル
遺言書を書いて、被相続人が誰に遺産を渡したいかなどの意思を残している場合があります。
しかしその内容によっては、大きなトラブルを引き起こす要因ともなってしまいます。
家族以外の第三者への相続を希望している、または特定の相続人へ大部分の遺産を渡したいなど、あまりにも偏った内容の遺言書がその一例といえるでしょう。
寄与分についてトラブル
長男やその妻など、特定の人が主に老後の世話などをしていた場合は、他より多めの遺産相続を求める場合があります。
また、被相続人が亡くなる前に面倒を見ていたり、事業の手伝いなどを行っていたりした相続人には、寄与分として多めの遺産継承が認められています。
長男が面倒を見ていたにもかかわらず、介護にほとんど携わらなかった兄弟姉妹と同等の遺産分割となった場合には、長男とトラブルへ発展してしまう可能性もあるでしょう。
生前贈与についてのトラブル
被相続人が気に入った相手だけに、大部分の遺産を生前贈与してしまうことがあります。
例えば長男や長女のみに生前贈与を行っていた場合、同じように遺産を相続する権利を持つ他の兄弟姉妹としては面白くない話でしょう。
それが火種となり争い事になってしまうことは、容易に想像できます。
生命保険についてのトラブル
被相続人が生前に、生命保険に加入している場合があります。
もしもその保険金の受取人が指定されていれば、保険金はその受取人が受け取ることになるうえ、相続財産として扱われません。
しかし、例えばその受取人が長男や長女であった場合、不公平と感じた弟や妹からクレームが生じて争いとなってしまう可能性があります。
借金についてのトラブル
被相続人に借金があった場合、遺産相続にはその借金も含まれることを考慮する必要があります。
数万円であれば大きな問題にはならないかもしれませんが、それが数百万単位となれば話が変わってきます。
遺産放棄という方法もありますが、親の残した借金などであれば、誰が払うかで大きくもめてしまうこともよくあるケースといえます。
トラブルを事前に対策する方法
ここまで、遺産相続でよくあるトラブルについて紹介してきました。
トラブルを回避し、もしも争いが起こった時に円満に解決できるよう事前に対策する方法を以下で説明していきます。
事前に話し合っておく
遺産トラブルを避けるためには、被相続人も含めて、兄弟や親族などの相続人同士で事前に話し合っておくことが大切です。
被相続人の希望、遺産の内容や具体的な金額、そして遺産の管理方法や分配をどうするかなどが主な内容となります。
できれば話し合った内容を書面で残しておくとよいでしょう。
遺言書・財産目録を用意する
生前に遺言書を用意すれば、被相続人の明確な意思を残しておけます。
しかし遺産の分配があまりに偏っていたり、不公平な内容だったりすると逆にトラブルを招く可能性があるので注意が必要です。
また遺産が実際にどれくらいあるのかを把握するためにも、財産目録を作成しておきましょう。
遺言書と似たものに終活ノートがありますが、終活ノートに法的な効力はありません。
あくまで残る家族へのお願いといった位置づけなので、正式な遺言書を残しておくほうがよいでしょう。
民事信託や後見制度を利用する
民事信託や後見制度を利用して、第三者に遺産の管理を任せるのもトラブルを回避する一つの方法です。
特に認知症などで判断能力が低下し、資産凍結の恐れがある場合などは有効な方法だといえます。
信託の受託者は基本的に家族や親族がなりますが、公平で安全に遺産の管理運用ができるのであれば、必ずしもそうである必要はないとされています。
法定相続分を確認する
法律における相続人の対象と、その相続順位を事前に確認しておくことで避けられるトラブルもあります。
また、各相続人が遺産をいくらずつもらえるのか、法律上定められた「法定相続分」も予め確認して相続人同士で共有しておきましょう。
遺産分割は納付期限に注意

遺産相続で見落としがちなのが、各手続きには期限があるということです。
期限を過ぎてしまうと申請ができなかったり、場合によってはペナルティが科されたりすることもあるので注意が必要です。
ここでは遺産に相続税がかかる場合と、相続放棄の期限について説明していきます。
相続税の申請は10ヶ月以内
相続する遺産の額が大きい場合、相続税が発生します。
相続税の基礎控除額の条件によって多少の変動はありますが、基本的に総額3,600万円以上の遺産を相続する場合は相続税の納付が必要となります。
相続税は、「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に申告と納付を行わなければならないと定められています。
「相続開始を知った日」とは、通常は被相続人が亡くなったことを知った日です。
何らかの事情がない限りは、「死亡を知った日」は実際の「死亡日」と同じとされます。
故人の死亡日から起算して期限を過ぎてしまった場合は、延滞税がかかるなどの罰則が科せられてしまうため注意しましょう。
また申告だけでなく、納税までをこの期限内に済ませなければいけません。
相続放棄も期限がある
遺産には財産だけでなく借金などの負債も含まれます。
ふたを開けてみたらお金はほとんどなく、借金だけが残っていたということも稀にあります。
明らかに負債の額が大きすぎる場合は、相続放棄を行うことで相続人としての立場を辞退することが賢明といえるでしょう。
相続税と同じように、相続放棄の申告にも期限があります。
相続放棄は、「自分のために相続があったと知ってから3ヶ月」の期間内に手続きをしなければなりません。
この3ヶ月を熟慮期間といいます。
相続人が海外在住や遺産の内容が複雑などの理由で、3ヶ月以内に相続放棄するかの判断が難しい場合があります。
その場合は、家庭裁判所へ「熟慮期間延長の申立て」の手続きを行うことで延長できる可能性があります。
勝手に遺産相続された場合は?

知らない間に兄弟や親族が遺産の分配を済ませていたり、同居の家族が遺産のほとんどを食いつぶしていたりする場合があります。
こういった状況ではどう対処すればよいのか、下記で説明していきます。
遺産分割協議を無効にできる
自分の知らない間に遺産分割協議が行われていた場合、この協議を無効とすることができます。
なぜなら、有効と認められる遺産分割協議とは、相続人である当事者全員が分割内容について合意していることを指すからです。
例えば3人兄弟であるにもかかわらず、末の弟には何も知らせずに長男と次男だけで親の遺産を分けてしまっていたケースがあります。
勝手に遺産分割されてしまった場合、対処方法としては以下の2つが挙げられます。
改めて遺産分割協議を行う
遺産分割協議には「相続人全員の合意」が必要です。
そうなれば、話し合いの場を改めて設けるというのが一番ベターな方法でしょう。
ただ共同相続人の間で何らかの対立やトラブルが起こっている場合、相談する機会を作るのが困難となることもあります。
お互いが法的な知識を持ち合わせていなくてもめることもあるので、状況に合わせて適切な対応を検討するとよいでしょう。
裁判で解決する
話し合いでの解決が困難であれば、訴訟を起こして裁判に持ち込む方法があります。
まず、自分抜きで行われた遺産分割協議が無効であることを裁判で証明することが必要です。
その後に再度協議を行うことも、そのまま裁判の判決によって争いを解決することもできます。
中立的な立場である裁判所が間に入ることにより、身内間での感情的な意見に左右されずに公平な遺産分割が可能です。
遺産を使い込まれた場合は?
父や母と同居していた長男が預金を勝手に使っていたり、親の死後に弟が大金をまとめて引き落としていたりなど、特定の相続人が遺産を使い込んでいる場合があります。
この場合は使い込んだ相続人に対して、自分がもらう分の返還請求を行うことが可能です。
しかし使い込みのタイミングによって、取るべき対応が変わってきます。
まず使い込みが相続発生後であった場合、残された財産は全て遺産分割の対象となります。
したがって他の相続人が勝手に遺産を使い込んでいたのであれば、遺産分割協議で決定した自分の法定相続分の返還請求を行うことが可能です。
逆に使い込みが相続発生前であった場合、少し事態が複雑になる傾向があります。
例えば亡くなる前に親が自分で貯金を使っていたり、同居する子のために親が貯金を引き出していたりする場合などは使い込みには当たりません。
用途が不明な出金があっても、返還請求した金額がその対象にはならない可能性もあります。
また親の貯金を使い込んでしまった場合、使った本人は「親の生活のために使った」と主張してくることもあります。
その家庭の経済状況や相続人との関係性などから判断するしかありませんが、相続発生後の使い込みに比べると証明が難しいといえるでしょう。
遺産のトラブルまとめ

ここまで遺産トラブルにはどういったものがあるか、またその対処方法などについてお伝えしてきました。
この記事のポイントをまとめると以下の通りです。
- 遺産相続では、金銭が絡むことからトラブルに発展するケースが多い
- 主な相続トラブルには、遺産分割や不動産、遺産の独占、生前贈与などがある
- トラブルの事前対策としては、話し合いや遺言書の用意などが有効
- 相続税は10ヶ月以内、相続放棄は3ヶ月以内の申告・納付期限がある
- 勝手に遺産相続された場合、遺産分割協議を無効にできる
これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考:遺産相続にて、「音信不通の親族と連絡を取りたい!」などのお悩みは、人探し専門の探偵へ!
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監修者

山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。