相続
遺産相続で家を相続するために必要な手続きは?流れに沿って解説
更新日:2025.03.12 公開日:2022.05.10

記事のポイントを先取り!
- 家を相続したら相続登記をしなければならない
- 配偶者居住権によって遺された配偶者は家に住み続けられる
- 相続税は5段階に分けて計算する
- 相続後の不動産売却は相続税の負担を減らせる
遺産を相続するとき、故人の持っていた家を相続することがありますが、家を相続するのに必要な手続きについてご存知でしょうか。
家を相続するときには、どういった方法で手続きをすればいいのか知っておきましょう。
そこでこの記事では、家を相続する方法について解説します。
この機会に、どのような流れで手続きを行うのかを覚えておきましょう。
後半では、相続した家を売却する場合について触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 家を遺産相続した場合の分割方法
- 家の遺産分割手続きの流れ
- 家を相続した場合は相続登記の手続きが必要
- 相続登記の申請方法
- 相続登記の手続きにかかる費用
- 相続した家が登記されていなかった場合
- 相続税評価額の計算方法
- 家にかかる相続税の計算方法
- 相続税が節税できる小規模宅地等の特例
- 住んでいる家を相続するとき
- 相続した家を売却するベストタイミングは?
- 遺産相続で家を相続することのまとめ
家を遺産相続した場合の分割方法
家を遺産相続した場合、「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」という4つの方法で分割されることになります。
それぞれの方法について、以下で詳しく説明していきます。
現物分割
現物分割は、遺産を換金せずに、そのままの形で分割する方法です。
換金しないため、物をそのまま受け継ぐことができます。
故人の持っていた土地を分け合ったり、家を相続する相続人と、預貯金を相続する相続人といったように、相続人によって違うものを相続することもできます。
金銭で遺産を分けるわけではないため、もらうものに納得していれば、遺産分けに揉めることなく解決します。
ただ、民法で決められた割合で分割するのが難しい物もあるため、物によっては不公平な分け方になってしまうことがあります。
換価分割
換価分割は、遺産を全て換金してから分割する方法です。
遺産をすべて換金することで、分けにくいものも分けられるようになり、平等に分け合うことができます。
しかし、故人の持っていたものは全て換金されるため、物として残すことはできません。
家も売ってからでないと、分割することができません。
代償分割
代償相続は、相続人の誰かが法律で定められた割合以上の遺産を相続して、その相続人から他の相続人へ差額を払う方法のことです。
相続財産として450万円の家を持っていて、相続人が3人の場合、公平に分けるには150万円ずつ分けることになります。家をそのまま相続したい相続人がいたら、その相続人が家をそのまま相続して、残りの2人に、本来もらえるはずだった150万円を払う形で相続することができます。
自分がもらいたいものをもらう代わりに、不公平になってしまう部分を金銭で埋めるのが、代償分割です。
共有分割
共有分割は1つの財産を、複数の相続人が共同で持つ分割方法です。
共有している相続人には持ち分があります。
1つの家を3人で共有する場合、持ち分はそれぞれ3分の1になります。
相続人皆で共有していると、相続人の1人が家を売りたくなっても、全員から許可を取らないといけなくなります。
一時的に共有するのではなく、ずっと共有する事になると様々なトラブルがおきます。
長く共有せず、分割して相続するようにしましょう。
家の遺産分割手続きの流れ

実際に家を相続することになったら、手続きはどういった流れで行われるのでしょうか。
遺産分割協議を行う
相続人が1人しかいない場合は、全ての遺産をその人が相続します。
相続人が複数いたら、遺産をそれぞれがどのくらい相続するかを決める、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議では、家も含む全ての遺産を分けるために、相続人が全員が集まって話し合います。
故人の持つ全ての財産を記録した財産目録を元に、話し合いをします。
この遺産分割協議が行われないと、不動産の名義変更をすることができず、故人の預金口座を解約することもできないため、遺産を分けることができません。
遺産分割協議は相続人本人が集まって話し合う他、弁護士などを代理人にして行うこともできます。
家などの不動産を相続することになった場合には、どういった分割方法で分けるかも決めないといけません。
話し合いで決まらない場合、調停手続きの申立てをする
遺産分割協議で話がまとまらなかった場合、遺産分割調停で遺産の分け方を決めることになります。
家庭裁判所で遺産分割調停手続きの申し立てをします。
遺産分割調停は、相続人の他に裁判官と調停委員が仲裁して話し合いを行います。
遺産分割の方法に相続人全員が納得して、合意すると調停が成立し、調停で決まった方法で遺産が分けられます。相続人が全員合意しないと調停は成立しません。
遺産分割調停でも話がまとまらなかった場合、自動的に遺産分割審判が始まります。
遺産分割審判では裁判官が遺産の分割方法を決めます。
相続人には故人の子供も含まれるため、未成年者が相続人になることもあります。
相続人の中に未成年者がいる場合、家庭裁判所が選んだ特別代理人が、未成年者の代理人になって遺産分割を行うことになります。
認知症の人が相続人になった場合は、成年後見人が相続人の代理として遺産分割を行うことになります。認知症の進行度合いによって、成年後見人の種類が変わってきます。
遺産分割協議書を作成する
遺産をどう分けるかが決まったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書がないと、不動産の相続登記や金融機関での名義変更や口座解約ができないことがあります。
遺産分割協議書の形式は明確に決まっていません。
手書きで作っても良いですし、手書きで書くのが大変そうならパソコンで作っても大丈夫です。
相続すると明確になっている相続人を除いて作成された遺産分割協議書は、無効になってしまいます。
必ずどの人が相続人になるのか、遺産分割協議ではっきりさせてから作りましょう。
遺産分割協議書は、相続人が自筆での署名と実印の押印をして、署名と押印をした日付を書きます。
協議書に押す印鑑は、実印以外でも効力を発揮しますが、その後にあるいろいろな手続きで協議書を使うため、実印である必要があります。
故人の氏名・死亡した日・本籍・相続することを法定相続人全員で話し合った事・相続する財産の内容・相続人の氏名と故人との続柄・協議が成立した日付を書きます。
書き方がわからなかったら、協議書のテンプレートがあるので、テンプレートにそって書くようにしましょう。
家の相続登記を行う
遺産分割協議書ができたら、家の相続登記ができるようになります。
相続登記は、法務局へ不動産登記申請書と必要書類を提出します。
不動産登記申請書を書くにあたって、戸籍や登記簿謄本の準備も必要になります。
相続登記にあまり時間が割けないという場合は、司法書士など専門家に依頼しましょう。
手書きだと間違えるのが不安だという場合は、オンラインでも提出できるため、オンライン申請を利用するとよいでしょう。
家の相続後、税務署に相続税の申告をすることになります。
申告書を提出することで、相続税の申告をします。
相続税の申告書は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月後が期限となります。
提出期限の日が土・日曜日・祝日になる場合は、期限日の翌日を期限にします。
10ヶ月あるからといって、油断せずになるべく早めに申告するようにしましょう。
家を相続した場合は相続登記の手続きが必要
家を相続したら、相続登記の手続きをしなければなりません。
亡くなった人が名義になっている家を、家を相続する相続人の名義に変えるための手続きのことを、専門用語で「相続登記の手続き」と言います。
家に住み続けるだけではなく、家を売りたい場合や、家に対して担保などの抵当権を設定したい場合は、家の名義を故人の名義から相続人の名義に変えないといけません。
これまで相続登記は義務ではありませんでしたが、相続登記を義務化する改正法が、2024年4月28日までに施行されることになっています。
改正法が施行された後は、相続が始まって、家の所有権を取得したことを知ってから3年以内に相続登記をしないといけなくなります。
期限内に相続登記が終わらない場合は、過料の制裁を受けることになります。
故人の名義のままにしていると、家の売却や家を借入金の担保にすることができません。
家の名義が、故人以外の名義になっているということがあります。
そのようなときは、準備する書類や相続登記の手続きが難しくなるため、専門家に相談しましょう。
相続登記の申請方法
相続登記には3つの申請方法があります。
自分の予定や状況に合った方法で申請するようにしましょう。
法務局の窓口で申請する
法務局の窓口に書類を持っていくと、申請することができます。
窓口での申請は、担当者と確認しながら登記手続きを進めていきます。
作成した書類に不備があっても、担当者と一緒にその場で訂正できるため、用意した書類が間違っていないか心配な人にはおすすめです。
しかし法務局の窓口は平日にしか開いておらず、不足している書類があったら再度出直さないといけなくなります。
遺言書に沿って相続する方法と、遺産分割によって相続する方法では、相続登記に必要になる書類が変わってきます。
どちらにも共通する書類は、戸籍謄本・相続人の戸籍謄本や住民票・不動産の固定資産評価証明書や登記簿謄本・遺言書や遺産分割協議書などです。
効果のある遺言書を使って相続する場合、一般的に遺産分割協議書は必要なくなります。
また代理人に手続きしてもらう時は、委任状を準備する必要があります。
不動産登記申請書には、登記する目的と原因、だれが相続するのか、申請日の日付と申請先の管轄法務局、不動産の表示などを書きます。相続人や不動産について書くときは、戸籍や登記簿謄本のとおりに書かないといけません。戸籍や登記簿を準備して、書かれている通りにそのまま書き写すようにしましょう。
相続登記が完了する予定日に、登記識別情報通知書・登記完了証・原本還付書類一式が返却されます。
ここで使った戸籍謄本なども返却されるため、他の手続きにも使うことができます。
郵送で申請する
書類を郵送して申請することもできます。
書類を準備して、書留郵便で郵送して申請します。
法務局のホームページで登記完了予定日を確認できます。
登記完了書類の受け取りは、法務局に行っての受け取りか、郵送での受け取りができます。
窓口での申請は、窓口の開いている平日の昼にしかできません。
郵送での申請は、平日の昼に法務局まで行かなくてもできるので、平日に仕事があるといった人におすすめです。
郵送になると、窓口と違って担当者と一緒にやっているわけではないので、書類の不備があった場合、すぐに訂正することはできません。
郵送なので、登記が完了する予定日がすぐにわかりません。
いつ書類が帰ってくるかが未定になり、返却書類を使っての手続きのめどが立ちにくくなります。
オンラインで申請する
相続登記もオンラインでの申請ができるようになりました。
オンライン申請だと、自宅から出ることなく申請を終えることができます。
オンラインでの申請は、手数料が安くなるケースがあり、自分の好きな時間に好きな場所で申請できます。
昼間忙しい人でも、夜に申請することができます。
相続登記に必要な書類の中には、オンラインで得られる物もあります。
必要な書類を一緒に取ることで、書類をそろえる時間を短縮することができます。
パソコンを使うのに慣れていない人にとっては、操作方法が難しいので、パソコンを使い慣れていない人は郵送や窓口での申請がおすすめです。
相続登記の手続きにかかる費用

相続登記には、必要な戸籍などを取得するための実費と、登録免許税がかかります。
相続登記をするために、法務局へ登録免許税を納めます。
相続するときの登録免許税は、不動産の固定資産評価額の0.4%の金額になります。
1000円未満の端数は切り捨て、価格が1000円未満になる場合は1000円が登録免許税になります。
郵便局などで税金分の収入印紙を買って、登記申請書に貼って納めます。
司法書士に依頼した場合は、報酬もかかります。
自宅の土地と建物1か所の相続登記を依頼した場合、10万円前後が報酬の相場です。
相続登記する土地の数が増えると、司法書士への報酬も増えていきます。
相続した家が登記されていなかった場合
自分が相続していた家が、登記されていない場合があります。
不動産を得てから1ヶ月以内に登記することが法律で義務付けられています。
本来は家を所有していた故人が、建物表題登記を申請しなければなりませんでした。
すでに亡くなってしまっているため、故人の代わりとして相続人が建物表題登記をしなければなりません。
建物表題登記を申請した後に、相続登記の手続きができるようになります。
建物が登記されていないままだと、家の所有権や抵当権などを登記簿に表せず、法的手続きに手間がかかることになります。
固定資産税も登記されている建物より高くなります。
建物表題登記にかかる費用は0円のため、相続登記以外の費用はかかりません。
相続する建物が未登記なのかを確認するには、毎年届く固定資産税納税通知書を見ましょう。
未登記の建物でも、所有者には納税の義務があります。
固定資産納税通知書に未登記と書かれていたり、建物の家屋番号が空欄になっていると、未登記の可能性があります。
固定資産税納税通知書が見つからない場合は、公課証明書や不動産課税台帳で確認しましょう。
公課証明書や不動産課税台帳は、建物がある市区町村の役場や市税事務所などで得ることができます。
相続税評価額の計算方法
相続税評価額は、土地と家屋で計算方法が違います。
それぞれの場合について詳しく見ていきましょう。
土地の場合
土地の相続税評価額は、「路線価方式」と「倍率方式」の評価方法があります。
「路線価方式」は、土地の面積に路線価をかけて評価額を出す方式です。
全国の道路ごとに路線価というものが決まっており、道路に面している土地が1平方メートルあたりいくらになるのかを表しています。全国の路線価は、国税庁のホームページで見ることができるため、土地の面積がわかれば、自分でも評価額を調べることができます。
中には路線価が書かれず、倍率地域となっている場所があります。
その土地は「倍率方式」で評価額を出します。
「倍率方式」は、固定資産税評価額に、国が定めている倍率をかけて評価額を出す方式です。
倍率表もホームページで見ることができます。
家屋の場合
家屋の相続税評価額の計算方法は、家屋を故人が使っていたのか、他の人に貸していたのか、賃貸アパートなのかで変わってきます。
故人が住んでいたり、事業などで使っていた家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額が使われます。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に書かれています。
他の人に貸していた家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額に、1から借家権割合を引いた数をかけて出します。
借家権とは、借りる人が家屋を借りて使う権利のことです。評価額の30%が借家権割合になります。
借家権の分を家屋の固定資産税評価額から引くことができるため、実質評価額に0.7をかけた数が相続税評価額になります。
故人が賃貸アパートを持っていることがあります。
賃貸アパートの相続税評価額は、固定資産税評価額に、借家権割合に賃貸割合をかけて1から引いた数をかけて出します。
賃貸割合とは、アパートの中で貸している部分の、床面積の割合のことです。
貸している部分の床面積が広いと、評価額が下がっていきます。
賃貸アパートの固定資産税評価額が1億円で、部屋の床総面積が200平方メートル、貸している部屋の床総面積が100平方メートルだとします。
賃貸割合は、部屋の床総面積200で、貸している部屋の床総面積100を割って50%になります。
この賃貸アパートの相続税評価額は、借家権割合0.3に賃貸割合0.5をかけて、1から引いたものを、1億円にかけて8500万円になります。
家にかかる相続税の計算方法
相続税そのものも、方法が分かれば誰でも計算して出すことができます。
自分でも計算して、家にかかる相続税がどのぐらいなのか把握しておきましょう。
正味の遺産額の計算方法
正味の遺産額とは、遺産の総額から債務や葬式費用などの支出を除いた遺産の額のことです。
遺産の総額からまず債務を引き、そこから葬式費用を引くと、正味の遺産額が計算できます
相続時精算課税制度を利用した場合や、相続が開始する前の3年以内に生前贈与された財産がある場合、それらも全て含んで計算します。
正味の遺産額を出す前に、こういったものがないか探し、金額を足すのを忘れないようにしましょう。
基礎控除の計算方法
正味の遺産額を計算したら、基礎控除を計算します。
相続税における基礎控除は、正味の遺産額から、条件なく差し引ける一定の額のことです。
遺産の中で基礎控除の分は、相続税がかかりません。
3000万円に、法定相続人の人数を600万円にかけた数を足したものが、基礎控除の金額になります。
法定相続人の数によって、基礎控除の金額が変化します。
法定相続人の人数が多いと、基礎控除の金額が増えて、相続税を減らすことができます。
相続税を計算する流れ
相続税の計算方法を、順を追って説明します。
正味の遺産額と基礎控除を計算して、相続税の課税対象になる遺産の総額を出します。
正味の遺産額と基礎控除を計算し、正味の遺産額から基礎控除分を引くと相続税の課税対象になる遺産の総額が分かります。
課税される遺産の総額を、各相続人の法定相続分で割り振り、相続人ごとの取得金額を出します。
遺産の総額に法定相続分の分数をかけることで、遺産のうちどのぐらいの金額を得られるのかを出すことができます。
先ほど出した相続人ごとの取得金額に相続税率をかけて、そこから控除額を引いた数が相続税の金額です。
相続税の税率は、取得金額の額に応じて決められています。
相続人ごとの相続税額の計算が、全員分終わったら、全て足して相続税の総額を出します。
全ての相続人の相続税を足して相続税の総額を計算しましょう。
相続税の総額を出したら、実際の相続割合で振り分けて、それぞれの相続人が実際に負担する相続税の金額を出します。
法定相続分とは違う割合で遺産を相続することがあるので、実際の相続割合での負担額をここで出します。
相続税の控除や特例の適用は、ここまでの相続税計算を終わらせてから、相続人ごとにかかる相続税額に対して適応させていきます。
相続税が節税できる小規模宅地等の特例
土地の評価額を出すときに、小規模宅地等の特例が使えることがあります。
小規模宅地等の特例は、故人が住んでいたり、事業で使っていた土地を相続する場合、一定の要件をクリアしていると、相続税評価額が50%から80%ほど減額されることです。
特例が使えると、このように大幅な節税ができます。
土地の使い方によって、要件と評価額が減額できる土地の広さが違います。
故人が住んでいた実家の土地を、故人と同居していた配偶者や親族が相続して、そのまま住み続ける場合、330平方メートルまでの土地の評価額を、80パーセント減額することができます。
故人が事業で使っていた土地を相続することになり、相続人が故人の事業を受け継いで、その土地で事業を続ける場合だと、400平方メートルまでの土地の評価額を、80%減額することができます。
故人がアパートの賃貸業をやっていて、相続人が賃貸業を受け継いで続ける場合、200平方メートルまでの土地の評価額を、50%減額することができます。
要件は細かく、特例が使えるのに見落としてしまったり、使えると思った特例が使えなかったりすることがあります。要件をクリアしていないと減額されないため、特例が使えるかどうかは、専門家に聞きましょう。
住んでいる家を相続するとき

自分が住んでいる家を相続するときには、気をつけておかないといけない事があります。
相続した時に起こる問題
相続したときに、家があることで、さまざまな問題が出てくることがあります。
特に、家以外の遺産が少ない場合、家を相続することで相続人同士が揉めてしまうことがあります。
家は最も高額な遺産です。
相続人が複数人いる場合、平等に遺産分割しようとすると、家をどう分けるかが問題になります。
家を相続した人は、その金額の大きさから、他の遺産をもらうと不公平になってしまうため、他の遺産を相続することができなくなります。
評価額としての金額も高くなるため、相続税を払う金額が増えることになります。
家を相続しなかった人は、家以外の財産を相続します。
預金や有価証券などには限りがあるため、家を相続した人よりは相続できる量が減ってしまいます。
こうしたことから、不動産が遺産のほとんどを占める場合、遺産分割で揉めてしまいかねません。
家に住み続けたい人は、大半が代償分割をして相続するようになります。
しかし、代償分割では、代償金を払うことになり、金銭の出費が増えます。
この代償金が払えないようだと、家に住みつづけたくても、不動産を売却しなければならなくなることもあります。
参考:外壁リフォームで資産価値向上!相続税対策も一緒に考えよう|ぺイプロ
配偶者居住権とは
令和2年4月からの相続から、「配偶者居住権」というものが発生するようになりました。
配偶者居住権とは、夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された配偶者が故人の遺産となる自宅に無償で住むことができる権利のことです。
これまでは、自宅の土地と建物の所有権を相続しないと、家に住み続けることができませんでした。
建物の価値を、所有権と居住権の2つに分けて、このうち居住権を配偶者が得ることで、今後も住み続けられるようになります。
故人の法律上の配偶者であり、配偶者が故人の所有していた建物に、故人が亡くなったときに住んでいて、相続時に配偶者居住権を得ている事が条件です。
居住権を得ることで、配偶者が居住権を持ち、他の相続人が負担付きで所有権を持つことができます。
また権利を分けたことで、評価額も分けられ、自宅の評価額を下げることができます。
自宅の評価額が下がったことで、遺産を分割するとき、配偶者は配偶者居住権の他にも遺産を相続することができるようになります。
配偶者以外の相続人も、家の負担付所有権のほかに遺産を相続することができます。
配偶者居住権を使うことで、相続する時の問題をクリアできます。
似た権利に「配偶者短期居住権」があります。
配偶者短期居住権とは、遺産分割協議が終わるまでの間、残された配偶者が自宅に無償で住み続けられる権利のことです
協議が早く終わっても、故人が亡くなってから6ヶ月間は、自宅に住み続けることができます。
遺言などで配偶者以外の相続人が家の所有権を相続したら、相続人はいつでもこの権利を消す事を申し入れられます。申し入れがあって権利が消えても、申し入れを受けた日から6ヶ月間は無償で建物に住むことができます。
この権利によって、住む家がなくなることになった配偶者も、しばらくは住み続けることができ、安心して次の家を探すことができます。
参考:家がボロボロで老朽化…お金がない人でもボロボロの家をリフォームする方法|ミエルモ
相続した家を売却するベストタイミングは?
相続した家を売りたい場合、いつ売った方が良いのでしょうか。
相続前に売却する場合と相続後に売却する場合、それぞれにメリットとデメリットがあります。
相続前に不動産を売却する
相続前に不動産を売却すると、通常の不動産売却の取引になり、相続とは関係なくなります。
自分の親が持っている家を売却する場合、相続前だと所有者と売主は親になり、売却時は親に所得税と住民税が課税されることになります。
相続前に売却すると、売却したお金は所有者である親に入り、場合によっては、不動産の維持費がかかるよりは売却したほうが良いこともあります。家が遺産からなくなり、現金で分けられるようになるので、相続人の間で起こるトラブルを避けることができます。
しかし、売却取引で売却益が出ると所得税や住民税が課税されます。
売却して現金で相続すると、不動産相続より相続税率が高くなってしまいます。
相続後に不動産を売却する
相続した後に売却すると、相続税の負担が少なくなります。
不動産の所有期間の長さによって、譲渡所得の課税に対して特例が適用できます。
特例のどの要件に当てはまるかで、相続税の税率が変わります。
持っている期間が5年以下の不動産を売却したときは、短期譲渡所得になり、税率は39.63パーセントになります。
持っている期間が5年以上の不動産を売却したときは、長期譲渡所得となり、税率20.315パーセントになります。
持っている期間が10年以上で、譲渡所得が6000万円以下の場合は税率14.21パーセント、譲渡所得が6000万円以上の場合は税率20.315パーセントになります。
相続した後の売却は、相続税は節税できますが、相続税の人数によって手続きが大変になります。
1人だけが相続人であれば、普通の売却の手続きをして、相続税がどれだけ軽減されるのかを確認するだけで終わります。
複数の相続人が共有して持っている不動産は、売却の手続きの際に、相続人全員に許可を取る必要があり、全員が関わらないと売却できません。
相続人の中に、1人でも売却に反対する人がいると、売却の手続きがなかなか進まず、難しくなってしまいます。
遺産相続で家を相続することのまとめ

ここまで、家を相続する方法について解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 家の相続後は、相続登記で名義人を相続人に変える
- 小規模宅地等の特例によって相続税が節税できる
- 住んでいる家を相続するとき、配偶者居住権が使える
- 相続前と後に家を売却するには、それぞれメリットとデメリットがある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考:相続登記を自分でやる完全ガイド!必要書類なども解説|better相続
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監修者

山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。