相続
遺産相続のための公正証書遺言とは?メリット・デメリットも紹介
更新日:2022.04.29
しっかりした文書を残しておかないと、すぐにトラブルに発展してしまうのが遺産相続です。
遺言の正当性を担保するため公正証書遺言を活用すると、のちのトラブルの防止になります。
そこでこの記事では、遺産相続のための公正証書遺言について解説します。
この機会に、公正証書遺言のメリット・デメリットを把握しておきましょう。
後半では、公正証書の作成方法について触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 公正証書とは
- 遺産相続のための公正証書遺言とは
- 遺産相続のための公正証書遺言の作成手順
- 遺産相続のための公正証書遺言のメリット
- 遺産相続のための公正証書遺言のデメリット
- 遺産相続のための公正証書遺言の通知と確認方法
- 公正証書遺言と自筆証書遺言との違い
- 公正証書遺言が無効になるケースとは?
- 遺産相続のための公正証書のまとめ
公正証書とは
そもそも公正証書がどんなものか、説明することができないという方は多いのではないでしょうか。
契約や遺言などで使われることは知っていても、具体的な内容が分からないと思います。
そこでここでは、公正証書について詳しく説明していきます。
公正証書とは
公正証書とは、当事者の依頼で第三者である公証人が作成した文書のことで、公文書として扱われます。
契約や遺言など一定の事項を公証人に証明させることで、紛争を未然に防ぐことが目的です。
作成された公正証書も原本は公証役場が保管することで、書類の偽造などを防ぐ効果もあります。
法律のプロである公証人が作成しているため、文書としての信頼性も高く、証明力や執行力、安全性も高いとされています。
公証人とは
公証人は法務大臣に任命された公正証書の作成者です。
公証人は、裁判官や検察官、法務局長官など長年法律にかかわる仕事をしてきた者から選ばれ、準公務員扱いとなります。
法律の専門家が選ばれるため、遺言や契約などを法的に正しい形で文書にしてくれます。
また、公証人が在籍している役所を公証役場といいます。
役場という名前から勘違いしがちですが、基本的に一つの公証役場に一人の公証人が在籍しています。
遺産相続のための公正証書遺言とは
遺産相続において遺言書の確実性は最も重要視される要素の一つです。
そこで、正当性の高い遺言書を残すために公正証書遺言が利用されます。
ここでは、公正証書遺言についての解説をしていきます。
公正証書遺言とは
公証役場で公証人が作成した遺言を公正証書遺言といいます。
自分の手で書き残す自筆証書遺言と比べて、公証人が作成するので最も確実な遺言書だとされています。
公正証書遺言は公証人が作成するため公文書扱いとなり、文書の真正が確実に担保されます。
公証役場で保管されるので、相続時に偽物の遺言書かどうかで争うなどのトラブルを避けられます。
遺言を公正証書で作成する理由
公正証書の作成時には公証人と二人の証人が立ち会い、遺言者に意思能力があるか確認されます。
そのため、遺言作成時の判断能力で争う必要がなくなります。
確実に意思能力があると判断された場合に作成されるので、意思能力についても争う意味がないのです。
このように、公正証書遺言ならばその他の方式の遺言だと起こりうるトラブルを未然に避けられます。
遺産相続のための公正証書遺言の作成手順
公正証書遺言は自筆証書遺言と異なり、手軽に作成することはできません。
自分一人で作成できない方式のため、事前に準備しておかなければならないことが多くあるためです。
ここでは、公正証書遺言を作成する際の手順を具体的に説明していきます。
全ての財産を確認する
公正証書遺言では、遺産となる財産を全て明記する必要があります。
そのため、預貯金や不動産、株式などの財産をどれほど持っているのか、しっかりと把握しておかなければなりません。
遺言内容を決める
遺言書では誰に何を相続させるか明記しなければなりません。
公証人が遺産の配分を決めてくれるわけではないので、原案を準備しておきましょう。
もし、公正証書遺言の原案の作り方が分からないという方は、司法書士や行政書士などの公的な書類を作る専門家に任せてしまうのも良いかもしれません。
また、持っている財産を全て明記しておくことも忘れないようにしましょう。
証人を2人見つける
公正証書遺言は、作成時に公証人以外に二人以上の証人が必要になります。
この証人は誰でも良いというわけではなく、証人になれない人も存在します。
証人になれない人の条件は以下の通りです。
- 未成年者
- 推定相続人とその配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者と4親等以内の血族
- 公証役場の書記や職員
これらの人は遺言に利害関係がある可能性が高いので、証人になれません。
また、自分で証人を見つけられない場合は、公証役場に相談すれば有料で証人を紹介してくれます。
必要書類を準備する
公正証書遺言の作成に必要な書類は以下の通りです。
- 遺言者本人の印鑑証明書
- 遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本
- 不動産がある場合は登記簿謄本や固定資産の評価証明書など
- 相続人の戸籍謄本や住民票
また、証人の名前、住所、生年月日、職業もしっかり把握しておきましょう。
公証人と打合せをする
遺産となる財産の整理や遺言内容の決定が終わったら公証人と打ち合わせをします。
公証人との打ち合わせが必要なため、公正証書遺言の作成予定日から2週間から1ヶ月ほど余裕を持たせると良いでしょう。
基本的に公証人との打ち合わせは公証役場で行いますが、公証役場によっては電話や出張での打ち合わせが可能な場合もあります。
公証人が遺言者の要望を聞き取り、法的に正しい形で公正証書遺言を作成します。
通帳のコピーや登記簿謄本などの書類の準備などもあるので、ある程度時間をかけて打ち合わせが行われます。
打ち合わせの内容から公正証書遺言の文案が作成され、問題なければ遺言作成に進みます。
公証役場にて公正証書遺言を作成する
公正証書遺言作成の当日は証人二人と公証役場へ向かい、公証役場で作成を行います。
遺言者は実印を、証人は認印を用意していきましょう。
遺言書の確認は公証人が内容を読み上げることで行われます。
遺言書の内容に問題がなければ、遺言者・公証人・証人のそれぞれが署名押印します。
最後に公証人に手数料を払えば、公正証書遺言は公証役場に保管されて、公正証書遺言の完成となります。
遺産相続のための公正証書遺言のメリット
遺産相続において公正証書遺言を作成することは、さまざまなメリットがあります。
ここでは遺産相続時に公正証書遺言を作成するメリットを詳しく説明していきます。
法的に有効な遺言を作成することができる
法律の専門家である公証人が遺言書を作成しているので、確実に有効な遺言書を作成できます。
遺言書は形式が定められているので、自分で書き残す自筆証書遺言などは形式に従わない内容だったため遺言書が無効になってしまうケースがあります。
また、内容が具体性を欠き不明瞭な場合も無効になることがあります。
このように形式上のミスや、内容の不明瞭さなどの理由で遺言書が無効になることを避けられます。
公証役場で保管してもらえる
公正証書遺言以外の形式の遺言書は、遺言書の保管を自分で行います。
そのため、紛失してしまう可能性があります。
公正証書遺言は遺言者は写しを受け取りますが、原本は公証役場で保管されます。
紛失の心配がないのは大きなメリットとなります。
公証人が作成するため偽造できない
公証人が作成してそのまま保管するので、偽造の心配がありません。
自筆証書遺言は筆跡鑑定などで偽造かどうかの判断を下さなければならないため、偽造が見破れず本物と判断されてしまうこともあります。
自分で書く必要がない
公正証書遺言は公証人が作成するため、自分で遺言書を書く必要がありません。
これは、病気で手が震えて字が書けないような人でも遺言書を作成できます。
また、耳が聞こえなかったり口がきけない人も公正証書遺言を作成できます。
ただ、判例によっては言葉が話せない人が身振りだけで作成した公正証書遺言が無効になった場合もあります。
必ずしもすべての人が公正証書遺言を作成できるわけではないと覚えておきましょう。
すぐに遺産相続を開始できる
自筆証書遺言は法的に正しいものか家庭裁判所で検認を受けてはじめて相続が開始されます。
そのため、相続開始までに時間がかかるのですが、公正証書遺言はそうではありません。
公正証書遺言は公証人が作成しているため、法的に正しいことが確定しています。
公正証書遺言ならば検認をせずに相続開始できます。
遺産相続のための公正証書遺言のデメリット
遺産相続をする際に公正証書遺言を作成することは多くのメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。
作成に手間と時間がかかる
公正証書遺言の作成までに打ち合わせや証人探しなど手間や時間がかかります。
ただ、ここで手間を省いて自筆証書遺言などを選択してしまうと、遺言書が無効になってしまうことがあります。
作成費用がかかる
公正証書遺言は公証人に作成手数料を払わなければならないため、費用がかかります。
自筆証書遺言ならば自分の手で遺言書を作成するため費用がかからないので、この点は明確なデメリットとなります。
また、遺言の対象となる相続財産の額で変わりますが、2万〜5万円程度が相場とされています。
公証人に出張してもらう場合はさらに交通費や日当が上乗せされます。
公証人や証人に遺言内容を伝える必要がある
公正証書遺言は作成のプロセスで遺言内容を、公証人と証人に伝える必要があります。
公証人と証人に遺言の内容を知られてしまうことは避けられません。
遺言の秘密を重視するか、内容の法律的有効性を重視するかで遺言の方式を選ぶと良いでしょう。
ただ、最も確実な遺言の方式は公正証書遺言だということは覚えておきましょう。
遺産相続のための公正証書遺言の通知と確認方法
遺言者が亡くなった後、遺産相続時に公証人から公正証書遺言の存在が通知されることはありません。
これは公証役場は公正証書遺言を保管するだけで、公証人に遺言者の死亡が伝えられないからです。
そのため、遺言者の死亡を知らない公証人は公正証書遺言の通知はできないのです。
そこで、公正証書遺言は相続人が自分で探さないといけません。
遺言者には公正証書遺言の正本と謄本が渡されるので、自宅の大切なものを保管する場所を探してみましょう。
それでも見つからない場合は最寄りの公証役場を尋ねてみましょう。
公証役場には遺言書の有無を調べるシステムがあります。
このシステムは日本全国どこの公証役場からでも検索ができ、遺言の有無と、遺言がある場合はどこの公証役場に保管されているかが分かります。
検索するにも申請が必要で、相続人か利害関係者しか申請できませんが、公正証書遺言を探す価値は十分あるでしょう。
公正証書遺言と自筆証書遺言との違い
公正証書遺言と自筆証書遺言には大きな違いがあります。
ここではそれぞれの違いを簡潔に説明します。
公正証書遺言は自筆で遺言書を書く必要がない
公正証書遺言は公証人が作成するため、自分で遺言書を書く必要がありません。
反対に自筆証書遺言は、全文自筆で書かなければ無効になってしまいます。
自筆で書くのが面倒だからといって、パソコンで書いたり代筆を頼んでしまうと、遺言書として認められなくなってしまいます。
公正証書遺言は公証役場に保管される
公正証書遺言は公証役場に原本が保管されるため、紛失の危険がありません。
公正証書遺言を確認する際も、公証役場が写しを発行し原本は使用することはありません。
一方で、自筆証書遺言は自分で保管しなければならないので、紛失や偽造の可能性があります。
公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要
公正証書遺言は作成した時点で法的な真正が確保されているため、裁判所に検認を申請する必要がありません。
遺言者の死後、素早く相続を開始できます。
一方、自筆証書遺言は法的に間違いがないか裁判所に検認を受けてからでないと、相続を開始することはできません。
公正証書遺言が無効になるケースとは?
遺言の中で最も有効性と安全性が高い公正証書遺言は遺言ですが、無効になってしまうケースも存在します。
ここでは、どのような状況で公正証書遺言を作成すると無効になるかについて説明していきます。
遺言能力がない状態で作成されていた
遺言能力とは、遺言がどのような意味を持ち、どのような範囲で効力を発揮するかを理解する能力です。
この能力がないと、わけもわからず遺言を作成したことになるので遺言は無効になります。
遺言能力がない人には認知症や精神病の人などが該当します。
公正証書遺言が無効になるケースでは、遺言者に遺言能力が無かった場合が一番多いです。
証人が不適格であった
公正証書遺言の作成には二人以上の証人の立会いを必要とします。
上記で説明した証人になれない人の条件に当てはまる人物が証人になってしまうと、公正証書遺言は無効になってしまいます。
口授が欠いていた
公正証書遺言を作成する際、遺言者は公証人に遺言の趣旨を口授しなければいけません。
口授とは、口頭で伝えることです。
原則的には頷きなどの動作で意思表示することは許されないので、病気などで喋ることが困難になった場合、どのように意思を伝えるかが重要となります。
意思表示に口授が必要な理由は、打ち合わせ段階では第三者が原案を作成した場合、遺言内容を理解していなくても、頷くことができれば遺言を作成できてしまうからです。
口授は遺言能力の確認に近い性質を持ちます。
なお、口がきけない人は筆談や通訳者を通して意思表示することで、口授に代えられます。
詐欺や脅迫により作成されたもの
詐欺や脅迫よる遺言は、民法の原則に従い、取り消し可能です。
また、遺言者が意図していた内容と実際の遺言内容に食い違いがある錯誤、いわゆる勘違いがあった場合も遺言は無効になります。
錯誤には三種類あります。
書き間違いや聞き間違いである表示上の錯誤、考え自体が間違っている表示行為の意味に関する錯誤、その考えに至るきっかけに勘違いがある動機の錯誤の三種類です。
公序良俗違反
公序良俗に反する内容の遺言も無効になります。
社会的、道徳的に考えて明らかにおかしいものが公序良俗違反です。
例えば、戸籍上の妻がいるのに愛人に全ての遺産を譲ろうとする、などが公序良俗違反に該当します。
遺産相続のための公正証書のまとめ
ここまで、遺産相続のための公正証書遺言について解説しました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 公正証書遺言は公証人の手で作成されるので、遺言内容のミスなどで無効になることはない
- 公正証書遺言を残しておけば遺産相続時に無用なトラブルを避けられる
- 公正証書遺言を作成するためには踏まなければならないステップが多い
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。
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