相続
遺産の法定相続分とは?計算方法や遺言書がある場合についても紹介
更新日:2024.01.24 公開日:2022.05.13
遺産を相続する際に指標となる「法定相続分」をご存知でしょうか。
自分がどれだけの遺産を相続できるのか、法定相続分の計算方法について知っておきましょう。
この記事では、遺産の法定相続分について詳しく解説していきます。
この機会に、相続人がいない場合や遺言書がある場合の相続分についても覚えておきましょう。
特別受益による法定相続分への影響についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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法定相続分とは
法定相続分とは、民法で定められた遺産を誰にどれだけ分配するかの割合のことです。
故人との関係性に応じて相続人の取り分が法で定められており、遺産分割の際には目安とされます。
ここでいう関係性とは、法律上の関係性のことをいい、遺産を相続する権利のある相続人を定める際の基準となります。
法定相続分は、あくまで遺産分割をする際の目安のため、必ずしもその通りに分割する必要はありません。
法定相続分の計算方法
民法では、遺産を相続する権利のある人のことを法定相続人と呼びます。
ここからは、誰が相続人となるのか、法定相続分がどのくらいなのかについて、具体的に説明していきます。
相続人の対象者
相続人であるかどうかは、故人との法律上の関係性によって定められています。
まず、故人に配偶者がいる場合、配偶者は必ず相続人になります。
配偶者以外の相続人については順位があり、第1位から第3位まで定められています。
- 第1位:故人の直系卑属(子供・子供が死亡している場合は孫)
- 第2位:故人の直系尊属(父母・父母が死亡している場合は祖父母)
- 第3位:故人の兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)
上記すべてにおいて、法律に基づいた関係性でない場合は、相続人とはならないことにご注意ください。
内縁の夫・妻、故人が認知していない子供などは相続人にはなりません。
また、第1位から第3位までの相続人に関しては、自分より上位の相続人が存在する時点で、遺産相続の対象から外れます。
例えば、故人に配偶者がいて、第1位である子供がいないとします。
この場合、第2位の父母が健在の場合は配偶者と父母が相続人となり、第3位である兄弟姉妹は相続人にはなりません。
第2位の父母や祖父母も亡くなっていて直系尊属がいない場合は、配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。
法定相続分の計算式
相続人によって、法定相続分が定められています。
それぞれのパターンにおける具体的な計算を以下に紹介します。
配偶者だけの場合
他に相続人がいない場合には、全て配偶者が相続します。
第1位の場合
配偶者が1/2、残りの1/2を第1位の人数で割ったものを相続します。
第2位の場合
配偶者が2/3、残りの1/3を第2位の人数で割ったものを相続します。
第3位の場合
配偶者が3/4、残りの1/4を第3位の人数で割ったものを相続します。
相続人がいない場合は?
必ずしも、最上位の相続人である配偶者がいるケースばかりではありません。
配偶者がいない場合には、法定相続分はどのようになるのかを見ていきましょう。
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合には、第1位から第3位までのうち上位の相続人が全額遺産を相続することになります。
子供が亡くなっている場合
第1位である子供がすでに亡くなっている場合は、その子供つまり故人の孫が第1位相続人となります。
これを代襲相続といい、孫がいなければひ孫、ひ孫がいなければ玄孫へと、どこまでも下の世代に続いていきます。
第2位の場合、父母が亡くなっている場合には祖父母、祖父母も亡くなっていれば曽祖父母と上の世代へ相続権が移ります。
第3位の相続人である兄弟姉妹が亡くなっている場合には、代襲相続で甥・姪が相続権をもちます。
ただし、第3位の場合の代襲相続は、甥・姪までです。
相続人当人が亡くなっている、という以外にも「欠格」「排除」と呼ばれる措置によって、上記の取り扱いになることがあります。
誰もいない場合
配偶者がいない場合だけではなく、第1位から第3位までの相続人もいない、ということもあります。
このような場合には、「特別縁故者」に該当する人物がいるかどうかがポイントになります。
特別縁故者とは、相続人ではないが、故人と特別親しい関係にあった人のことをいいます。
内縁の配偶者や、事実上の養父母・養子、亡くなった子の配偶者などがそれにあたります。
また、故人の療養看護に職務ではなく、個人的に努めた人も該当することがあります。
特別縁故者と認められ、かつ相続人が誰もいない場合は、特別な手続きを踏むことで遺産を相続することが可能です。
離婚していた場合の法定相続分
離婚により配偶者がいない場合、法定相続分はどうなるのでしょうか。
離婚すると法律上の関係性がなくなるため、元配偶者は相続人にはなれません。
しかし子供については、両親が離婚しても法律上の親子関係がなくなることはないため、第1位の相続人となります。
再婚していた場合の法定相続分
次に、再婚している場合について考えていきましょう。
再婚した相手に子供がいるケースの法定相続分は、どうなるのでしょうか。
まず再婚した相手である配偶者については、法律上の婚姻関係を結んでいるので相続人となります。
再婚相手の子供は、法律上の親子関係の有無で大きく異なります。
もし子供が養子縁組されている場合であれば、配偶者の連れ子であっても第1位相続人となります。
養子縁組していない場合は、相続人にはなりません。
遺言書がある場合の法定相続分
遺産分割の方法として、法定相続分の説明をしてきましたが、それ以外にも分割の方法があります。
故人が遺言書を残している場合もそのひとつです。
ここでは、遺言書がある場合にはどのように遺産分割を進めていくのかを見ていきます。
法定相続分より遺言書が優先される
遺言書がある場合は、遺言書に書かれていることが最優先されることとなります。
遺産分割については、遺留分を侵害しない限り、その割合は法定相続分にならう必要はありません。
遺産分割には遺留分がある
例えば、妻子ある男性が亡くなったとします。
その時、遺言書の中に「遺産は全て愛人が相続するものとする」と書かれていたとしたら、争いに発展することは容易に想像できます。
このように明らかに不公平な内容が遺言書に記されていた場合、相続人が異議を申し立てられる制度があります。
それが遺留分侵害額請求です。
遺留分とは、故人の近親者である法定相続人に保障されている、最低限の遺産取得分のことです。
ただし遺留分侵害請求ができるのは、配偶者と第1位、第2位の相続人までとなります。
それぞれの遺留分は、以下の通りです。
- 配偶者、第1位相続人…財産の1/2
- 第2位相続人 …財産の1/3
遺留分も法定相続分と同じく、上位の相続人のみが取得できます。
法定相続人は、法律上は遺留分を相続する権利があるので、遺留分を侵害している相手に対しては請求できることを知っておきましょう。
ただし、遺留分侵害請求には時効があるので注意してください。
終活ノートは優先されない
先ほど、遺言書は最優先されると説明しました。
では、故人の希望が書かれている終活ノートやエンディングノートはどうでしょうか。
残念ながら、終活ノートには法的効力はありません。
あくまで希望を書き記しただけのものであり、強制力はないことを知っておきましょう。
遺産分割について法的効力を持たせるためには、正式な遺言書を準備しておく必要があります。
特別受益による法定相続分への影響
最後に、特別受益が法定相続分に与える影響について説明します。
特別受益といっても、聞いたことのない方がほとんどではないでしょうか。
しかし、遺産相続の際には重要なポイントになることがあるので、知識として取り入れておきましょう。
特別受益とは
特別受益とは文字通り「特別に受けた利益」を指すもので、故人が生前に一部の相続人に対して行う行為のことをいいます。
特別受益のうち、いくつかの事例を次にあげます。
生前贈与
故人が生前贈与を行っていた場合、その贈与分もすべて合算したものを遺産として考えることとなります。
すべての遺産を相続人の法定相続分で分割して、そこから生前贈与を受けた残りの遺産を受け取ることになります。
婚姻・養子縁組への贈与
生前贈与以外にも、婚姻や養子縁組への贈与も特別受益とされます。
婚姻のための贈与とは、結婚の時の持参金や嫁入り道具などとされますが、時代の変化とともに変わりつつある部分かもしれません。
結納金や結婚式の費用なども、生前贈与というよりも親が扶養している範囲の出費と捉えられているため、特別受益には当たらないとされています。
養子縁組の際の贈与とは、実親が出す持参金がそれにあたります。
普通養子縁組の場合には、実親、養親どちらの相続人にもなるため、実親の遺産相続においては特別受益とされることになります。
生計の資本としての贈与
また、生活の資本としての贈与も、特別受益になる場合があります。
例えば次のような、必要以上の援助があった場合に特別受益とみなされます。
- 住宅を建築・購入する際の資金援助
- 相続人が起業するなどの際の資金援助
- きわめて多額の生活費の援助
一般的に考えられる範囲内での生活費の援助であれば、特別受益には当たらないと考えられます。
生命保険は特別受益にならない
生命保険については、保険の受取人の固有財産と考えられており、基本的には特別受益に当たらないとされます。
ただし、保険金額と遺産総額の比率、他の相続人が受け取る遺産との比較によっては、特別受益になる場合もあるので注意が必要です。
特別受益の計算方法
これまでに紹介したような特別受益がある場合に、どのように遺産分割をするのか、その計算方法について見ていきましょう。
特別受益がある時には相続分を計算する際、特別受益分の資産への「持ち戻し」が行われます。
つまり、死亡時の資産に特別受益分を足したものが総資産と考えられ、そこから法定相続分に応じて遺産分割されることになります。
特別受益を受けた人
特別受益を受けた人は、すでにいくらかの贈与を受けているため、死亡時に相続する分が他の相続人よりも少なくなります。
特別受益を受けていない人
逆に特別受益を受けていない人は、死亡時に相続する分は特別受益を受けた相続人よりも多くなります。
相続人によって不公平が起こらないようにと、決められているのです。
遺産の法定相続分まとめ
ここまで遺産の法定相続分について、具体的なケースも交えて詳しくお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 法定相続分とは、遺産を分割する際に目安となる法で定められた割合のこと
- 必ず相続人となる配偶者と相続順位によって、相続分の割合は異なる
- 遺言書がある場合には遺言書が最優先される
- 死亡時の資産と特別受益を足したものが総資産とされる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。