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遺品の所有権は誰が持つ?相続する場合・放棄する場合の注意点を紹介
更新日:2022.05.17 公開日:2022.04.21

記事のポイントを先取り!
- ・相続人が遺品の所有権を持つ
- ・遺品整理は遺族が行うのが一般的
- ・相続放棄で所有権放棄も可能
- ・形見分けは所有権がなくても大丈夫
家族が亡くなったとき、問題になるのは誰が何を相続するかです。
誰がどの遺品を相続するかで、家族間のトラブルになることは珍しくありません。
そこでこの記事では、遺品の所有権は誰が持つのかについて、詳しく説明していきます
遺品の所有権を誰が持っているのか知っていれば、トラブルを事前に避けることが可能になるでしょう。
後半では遺品整理するときの注意点や、相続放棄の仕方などにも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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遺品の所有権は誰が持つのか
遺品をはじめとした、現金や預貯金、不動産などの故人の持ち物はすべて相続財産となります。
これらの相続財産を誰が受け取る権利を有するかは、民法第五編、通称「相続法」により定められています。
遺品をどれだけの割合で分割し相続するかは、故人が遺言書を残していない場合は、法定相続人の間で話し合う遺産分割協議で決めます。
法定相続人とは、民法で定められた相続財産を相続する権利を有する者のことです。
相続法においては、続柄によって「誰がどれだけの割合で」相続できるか決められている、法定相続分があります。
法定相続分通りの割合で遺産分割しても良いですが、遺産分割協議で決めた割合で相続財産を分割することも可能です。
遺産分割協議は、法定相続人全員の合意がなくては確定できません。
そのため、遺産分割協議が難航した場合の目安として法定相続分が定められています。
故人の遺言書が残っている場合には、原則的に遺言書の内容に従います。
ただ、法定相続人全員の同意の上なら、遺言書の内容とは異なる遺産分割をすることも認められています。
また、誰か一人にすべての財産を相続するなど、不公平な内容が遺言書に書かれていたとしても、法定相続人(兄弟姉妹・甥姪以外)には遺留分という権利が認められています。
遺留分は簡単に言うと、最低限の相続財産の所有権を主張できる権利のことです。
法定相続人であるにもかかわらず十分な遺産を受け取れない場合は、遺留分を請求すれば最低限の財産を取得できます。
あるいは、遺品整理を行っているうちに遺言書が見つかるケースもあります。
遺言書で法定相続人ではない第三者に遺贈を望んでいる場合もあり、法定相続人だけで相続手続きを進めていると、予想外のトラブルに合う可能性もあります。
遺産整理をする場合には細心の注意を払い、できればプロの手を借りるなど、問題が起こらないように気を付けながら進める必要があるでしょう。
遺品整理は誰がするのか

遺品整理は一般的に遺族が行うことが多いようです。
遺品の所有権を持つ相続人が遺族であることが多いため、自然と遺族が遺品整理をすることになります。
遺品は相続が完了するまでは所有者がいないため、所有権が宙に浮いた状態になります。
そのため、遺産を相続する意思のある法定相続人が遺品整理することが、よりベストといえるでしょう。
また、遺産分割が終了するまでの遺産は相続人全員の共有となります。
たとえ親族であっても、遺産を相続する意思のない者には遺品整理に参加する権利はありません。
もし、相続人が複数いる場合は、その相続人全員で遺品整理することをおすすめします。
相続人全員で遺品整理すれば、無用なトラブルが起きる可能性を下げられるためです。
例えば、相続人の誰かが一人で遺品整理してしまった場合、他の相続人に遺品を隠していると疑われてしまう可能性があります。
全員で遺品整理すれば、余計な疑いをかけられずに済むでしょう。
また、残す遺品と処分する遺品の判断も一人では難しいことがあります。
全員で確認しながら遺品整理すれば、どのようなものが残されているかも明確です。
遺産分割協議に入った際にも、相続人それぞれが相続したいものが分かりやすいので、相続財産の内容を確認する手間も省けます。
相続人が行う遺品整理の注意点

故人が遺言書を残さなかった場合は、遺産分割協議で誰がどのような割合で遺産を相続するか決定します。
しかし、遺言書が残されている場合は、基本的には遺言書の内容に従って遺産分割しなければなりません。
これは遺言書の内容が法定相続分とかけ離れたものであっても、遺言書の通りにしなければいけないので注意が必要です。
また、相続放棄をした相続人は遺品整理に参加することはできません。
遺品整理に参加した時点で相続の意志ありと判断されるので、遺産を相続したくない方は遺品整理に参加しないようにしましょう。
相続放棄したい場合は?

遺産を相続したくない場合は、相続放棄という手続きを取ることで相続人としての権利を放棄できます。
ここでは、相続放棄のやり方や、相続放棄をする際の注意点などを解説していきます。
相続放棄とは?
相続放棄とは、遺品の所有権なども含めた一切の権利や義務を引き継がないとする方法です。
もし、故人に借金やローンがあってその負債を引き継ぎたくない場合は、相続放棄することで負債の承継を避けられます。
しかし、相続放棄は負債などの義務だけでなく、遺品の所有権や現金、預貯金、不動産といったプラスの権利の相続権まで放棄することです。
相続放棄をするかどうかは、負債と権利を天秤にかけ、よく考えたうえで決めなければなりません。
相続放棄の手続きは、家庭裁判所に「相続放棄の申述書」を提出するだけで簡単に終了します。
ただ、相続放棄は、相続開始(故人の死亡)を知ってから3か月以内に行わなければいけません。
この3か月は熟慮期間と呼ばれています。
相続開始から3か月以上経過してしまうと相続放棄できなくなるので、相続放棄を考えている場合は3か月以内に結論を出すようにしましょう。
単純承認
単純承認は、遺品の所有権などの財産と負債などの義務をすべて受け継ぐ相続方法になります。
単純承認は故人の遺産を無条件で相続するもので、特別な手続きはなにも必要ありません。
相続開始を知った時から3か月経過すると自動的に単純承認したとみなされるので、相続放棄や限定承認したい場合は気を付けなければいけません。
限定承認
負債などの義務を承継したくないときは、限定承認という方法もあります。
負債を承継したくないため相続放棄をするつもりだったのに、遺品整理に参加してしまった場合には、限定承認すれば義務を負うことはありません。
限定承認とは、相続財産から負債を返済して、そのあとに遺産が残っていればそれを相続するという方法です。
もし、マイナスのほうが多かった場合は、相続財産をすべて負債の返済に充てるため手元に遺産は残りません。
その代わりに、相続財産以上の返済は免除されるので、自分が返済の義務を負うことを避けられます。
なお、この限定承認も相続開始を知った時から3か月以内に行わなければいけません。
限定承認を考えている方は、熟慮期間内に手続きすることを忘れないようにしてください。
相続放棄をする場合の注意点
相続放棄する予定の人が遺品整理に参加したり、他の相続人の許可なく遺品を処分してしまったりすると、相続の意志があるとみなされてしまいます。
一度相続の意志があるとみなされると、相続放棄することはできません。
相続放棄をするつもりがあるのなら、遺品整理に参加しないように注意しましょう。
また、負債などの義務を避けるために相続放棄を考えている場合は、遺品整理に参加したとしても、前述した限定承認なら負債の相続を避けられることを覚えておきましょう。
相続放棄しても形見分けはできる?
相続放棄した場合でも、形見分けの品を受け取ることは可能です。
一般的に形見分けの品は、高価なものが選ばれることはありません。
市場価値の高い高価な品は、受け取ってしまうと贈与税が発生してしまいます。
そのため、高価な品は形見分けに選ばれずに、相続財産として相続されることになります。
形見分けとは、故人が愛用していたものを分かち合い、思い出の共有や故人の供養をするために贈るものです。
相続財産とはみなされない市場価値の低いものなら、相続放棄を考えている方でも形見分けを受けられます。
ただ、相続財産はすべて相続人が所有権を持つので、相続人の許可を得てから形見分けの品を選ぶようにしましょう。
遺品整理の方法について
ここまで、遺品の所有権について説明してきましたが、遺品整理自体をどうやれば良いのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、一般的に選ばれる遺品整理の方法を2種類に分けて説明していきます。
自分で行う
自分で遺品整理を行う場合は、まず必要なものの準備から始めましょう。
遺品整理ではほこりを吸い込んだり、硬いものを踏んで足を怪我したりする恐れがあります。
汚れてもいい服やマスク、スリッパなど、大掃除で使うような道具を用意しておくと安全に遺品整理できます。
また、不用品は処分するため、段ボールやゴミ袋、マジック、ビニールひもなどを用意して大量のごみに備えましょう。
さらに、ゴミ捨て場が遠い場合などは、台車があると便利です。
買取業者やごみ処理場に直接処分品を持ち込む場合は、軽トラやワゴン車を用意しておきましょう。
準備ができたら、遺品を残すものと処分するものに仕分けしていきます。
残すものは、形見となる故人が大切にしていたものや、通帳や土地の権利書などの財産的な価値があるもの、パスポートなどの身分証明書です。
特に、重要な書類などは誤って処分してしまうことがあるので、仕分けする際に注意しなければいけません。
不用品は自治体で定められた方法に従って捨てるか、買取業者などに持ち込んで買い取ってもらいます。
最後に故人の思い出の品などを形見分けして、遺品整理は終了です。
遺品整理を自分で行う際は、近所から苦情がくる場合があることや、身体的な負担が大きいことを理解しておきましょう。
遺品整理業者に依頼する
自分の力で遺品整理を行う自信がない方は、遺品整理業者に依頼しましょう。
遺品整理業者に頼めば、家の清掃や解体、不動産売買の仲介まで、幅広く対応してもらえます。
ただ、悪徳な遺品整理業者もあり、安く買いたたかれてしまったなどのトラブルも多く発生しているようです。
そこで、優良業者を見極める指標の一つとして、遺品整理士の資格を保有している業者に依頼すると良いでしょう。
絶対に優良業者であるとは断言できませんが、一定以上のノウハウやモラルを持っている可能性が高くなります。
遺品の所有権についてまとめ
ここまで、遺品の所有権についての情報を中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
遺品の所有権は相続人に引き継がれる
遺品整理は遺品の所有権を持つ遺族が行うことが一般的
遺品の所有権を放棄したい場合は、相続放棄の手続きをとる
相続放棄して所有権がなくても、形見分けは受けられる
遺品整理は自分でやるか、遺品整理業者に依頼する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。