死亡後の手続き
死亡退職金の相場は?勤続年数ごとの相場や非課税枠の計算方法についても紹介
更新日:2024.03.09
死亡した場合には死亡退職金が受け取れるケースがありますが、その相場についてはご存じでしょうか。
死亡退職金がどの位受け取れるのか知ることで後々のトラブルを防ぐことにつながります。
そこでこの記事では、死亡退職金の相場について詳しく説明していきます。
この機会に非課税枠の計算方法や注意点について知っておきましょう。
死亡退職金の受け取り方についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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死亡退職金とは
死亡退職金とは、従業員が何らかの理由で在職中に死亡した場合に、本来受け取るはずだった退職金を死亡後に受け取れる仕組みのことです。
ただし、死亡退職金はすべての人がもらえるわけではなく、退職金給付制度を取り入れている企業で働いてた方のみがもらえます。
以下で、死亡退職金と通常の退職金の違いと、死亡退職金の支給方法をご紹介します。
死亡退職金と退職金の違い
死亡退職金は、存命であれば受け取るはずだった退職金を、亡くなった従業員の代わりに遺族に支給する制度のため金額の相場は同じですが、支給の目的と税金が異なります。
退職金が従業員の勤続年数の向上を目的として従業員本人に支給されるのに対して、死亡退職金は遺族の生活保障が目的です。
生計を担っていた方が突然亡くなることによって、経済的負担が増える遺族の今後の生活を支えるために遺された遺族に死亡退職金は支給されます。
そのため、死亡退職金には相続税がかかりますが、退職金は従業員の所得のため所得税がかかる違いもあります。
死亡退職金の支給方法
退職金給付制度を取り入れている企業でも支給方法には違いがあり、主に「退職一時金」と「企業年金」に分かれています。
退職一時金とは、退職する際に一括して退職金を支給する方法です。
一方で退職一時金とは、退職した後に分割して支給されるものになります。
故人の働いていた企業に死亡退職金の制度があるかどうかは、就業規則や社内規定を確認するか、人事部や総務部などの担当部署に問い合わせてみるといいでしょう。
死亡退職金の相場
死亡退職金の支給額は企業によって異なり、一般的には勤務年数や功績によって計算されます。
支給額の相場は、1,000〜2,000万円程度になります。
詳しくは故人の務めていた会社の規定を確認することをおすすめします。
以下に相場の一例をまとめて紹介しますので参考にしてください。
例)勤続20年以上かつ45歳以上の退職者の相場
勤続年数 | 大学卒 | 高校卒 |
20~24年 | 1,267万円 | 525万円 |
25~29年 | 1,395万円 | 745万円 |
30~34年 | 1,794万円 | 928万円 |
35年以上 | 2,173万円 | 1,954万円 |
死亡退職金は課税対象
死亡退職金には相続税がかかりますが、故人が残した金銭や土地などにかかる相続税とは異なるため、以下で説明します。
死亡退職金はみなし相続として扱う
死亡退職金は故人が亡くなったことによって相続する財産です。
故人が死亡した時点で所有していた金銭や土地などの財産とは異なるため、死亡退職金は「みなし相続財産」として扱われます。
みなし相続財産には、死亡退職金の他に生命保険なども該当し、受取人固有の財産として遺産分割の対象となる相続財産とは区別されます。
みなし相続財産にも相続税がかかりますが、課税の対象になるのは死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金です。
ただし、死亡退職金の全額が相続税の課税対象になるわけではなく、非課税限度額以下であれば相続税は課税されません。
なお、死亡後3年を過ぎてから受け取った死亡退職金は、一時所得扱いになります。
そのため相続税ではなく所得税の課税対象となるため注意が必要です。
死亡退職金の非課税枠
死亡退職金には非課税枠が設けられており、非課税限度額を超えない範囲の死亡退職金については、相続税はかかりません。
非課税限度額は以下の計算方法で算出できます。
非課税限度額=500万円×法定相続人の数
具体例を以下に挙げて紹介していきますので参考にしてください。
例)法定相続人が配偶者、長男、長女だった場合
非課税限度額=500万円×3人=1,500万円
死亡退職金が1,000万円であった場合には、非課税限度額以下になるので相続税はかかりません。
ただし、死亡退職金が1,500万円より上の場合、例えば2,000万円だったとすれば、差額である500万円が課税の対象になります。
非課税枠を超えた金額は相続財産と一緒に計算していきます。
退職金が非課税枠を超えており、相続人が複数人いるケースでは、非課税限度額をそれぞれの相続人に振分て各相続人の課税額を計算します。
各相続人への非課税額の振り分けの計算式
非課税限度額 × (各相続人が受け取った死亡退職金 ÷ 死亡退職金の総額)
各相続人の課税額の計算式
各相続人が受け取った死亡退職金-各相続人への非課税額の振り分け
受取額と控除額
例)死亡退職金が3,000万円だった場合
非課税限度額=500万円 × 3人 =1,500万円
【受取額】
- 配偶者:2,000万円
- 長男:500万円
- 長女:500万円
【配偶者】
1,500万円 × (2,000万円 ÷ 3,000万円) = 1,000万円
課税対象額=2,000万円 – 1,000万円 = 1,000万円
【長男】
1,500万円 × (500万円 ÷ 3,000万円) = 250万円
課税対象額=500万円 – 250万円 = 250万円
【長女】
1,500万円 × (500万円 ÷ 3,000万円) = 250万
課税対象= 500万円 – 250万円 = 250万円
【相続税の基礎控除額】
3,000万円 + 600万円 ×3人 (法定相続人の数)=4,800万円
死亡退職金の課税対象額は1,500万円だったため、他の相続財産の課税対象額が3,300万円以上あるケースで相続税が発生します。
死亡退職金の受取人
死亡退職金は誰が受け取るのか紹介していきます。
以下で詳しく説明していきますので参考にしてください。
法定相続人が受け取る
原則として死亡退職金を受け取れるのは、配偶者や子どもなどの法定相続人になります。
法定相続人とは、配偶者・子ども・親・兄弟姉妹などの民法で定められている相続人のことを指します。
受取人の順位
受取人には優先順位が決められております。
配偶者は常に相続人になりますが、他の相続人に関しては以下の通りになります。
- 第1順位:子ども
- 第2順位:親
- 第3順位:兄弟姉妹
各会社の退職給与規定に基づく
基本的な受取人は法定相続人になりますが、企業によっては退職給与規定が定められているので例外となる場合があります。
退職給与規定により死亡退職金の受取人が指定されている場合には、優先順位に関係なく、会社の規定に従うことになりますので覚えておきましょう。
例えば、「遺言による受取人の指定が可能」と退職給与規定が定められている場合には、遺言にて指定された方が死亡退職金を受け取ることになります。
このように各会社によって規定はさまざまであるので、退職給与規定をあらかじめ確かめておくことをおすすめします。
遺産分割の対象になる死亡退職金
死亡退職金は受取人個人の固有財産にあたるため、基本的に遺産分割の対象にはなりません。
ただし、故人が勤務していた会社で規定されている死亡退職金に、受取人が指定されていない場合は固有の財産とするのは困難です。
そのため、受取人が定められていない死亡退職金は、遺産分割協議で受取人を決定します。
遺産分割協議で死亡退職金の受取人を決定する場合、相続放棄を選択していると死亡退職金を受け取れなくなるため注意が必要です。
死亡退職金と死亡弔慰金の違い
企業によっては死亡退職金とは別に「死亡弔慰金」として一定の金額を支給するといった制度もあります。
死亡退職金と死亡弔慰金の違いと、死亡弔慰金の意味合いや相場について以下で説明します。
死亡弔慰金とは
死亡弔慰金とは、企業に勤めていた従業員が亡くなった場合に支給する金銭のことです。
支給金額は各企業によって異なるので一概にいくらであるとは言い切れません。
近年では弔慰金制度を取り入れていない企業や廃止する企業が増えています。
死亡弔慰金の相場
【業務上の死亡の相場】
- 一律定額支給の企業の場合:100万円程度
- 勤続年数に応じて支給する企業の場合:10万~30万円程度
【業務上以外の死亡の相場】
- 一律定額支給の企業の場合:30万円程度
- 勤続年数に応じて支給する企業の場合:10万~30万円程度
死亡弔慰金の非課税範囲
死亡弔慰金は非課税の範囲は以下の通りです。
- 業務上の死亡の場合
普通給与の3年分
- 業務上以外の死亡の場合
普通給与の6か月分
死亡退職金の受け取り方
最後に死亡退職金の受け取り方について紹介していきます。
受取期限やいつ受け取れるのかどうかも説明していきますので以下を参考にしてください。
各企業の規定に従う
死亡退職金の受け取りの際に必要な書類や受け取り方については、各企業の規定に沿って進めていきます。
事前に会社に死亡退職金を受け取りたい旨を伝え、必要な書類や流れを確認するといいでしょう。
受け取りの期限
死亡退職金の受け取りには期限がありますので注意が必要になります。
具体的には、請求してから3年以上経過すると、退職金と同様の扱いになります。
退職金には相続税がかかりますので、死亡退職金の受け取りの期限が過ぎてしまった場合には、相続税がかかってしまいます。
また、会社の規定によって死亡退職金がもらえないケースもあるため、事前に会社の規定を確認することをおすすめします。
死亡退職金の支払日
死亡退職金の受け取りについては、基本的に会社の就業規定に沿って支払われることになります。
これは労働基準法23条にて定められており、会社側は定められた支払期日までに支払えば良いとされています。
こういった規定がないケースでは、相続人や受給権者から請求があった日から7日以内に支払うことが定められております。
死亡退職金の相場まとめ
ここまで死亡退職金の意味合いや相場などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 死亡退職金の相場は1,000〜2,000万円程度である
- 死亡退職金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」で算出できる
- 受取人が指定されていない死亡退職金は、遺産分割の対象になる
- 弔慰金とは、企業に勤めていた従業員が亡くなった場合に支給する金銭のこと
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
退職金の相場については、こちらの記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。
参考:退職金の相場はいくら?大企業・中小企業ごとの相場や計算方法を解説|マネーFIX|人生におけるお金の課題を解決するサイト
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。
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