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相続

祭祀財産の種類は3つ|承継人の決め方と放棄・相続税について

更新日:2022.05.03

遺産

記事のポイントを先取り!

  • 祭祀財産は、祖先を祀るために必要な財産のこと
  • 祭祀財産は3種類ある
  • 祭祀財産は、相続税の対象外
  • 非課税にならないケースもあるので注意

先祖代々のお墓や家系図を管理していた人が亡くなった場合、祭祀財産の承継問題が発生します。
そもそも、祭祀財産について詳しく知らない方も多いかと思います。

そこでこの記事では、祭祀財産の種類や相続の仕方について解説します。

この機会に、祭祀財産の種類について知っておきましょう。
後半では、通常の相続財産との違いについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

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  1. 祭祀財産とは
  2. 祭祀財産の種類は3つ
  3. 祭祀財産の承継人の優先順位
  4. 祭祀財産の放棄は可能?
  5. 祭祀財産と相続財産とは別物
  6. 祭祀財産は相続税の対象外
  7. 祭祀財産が非課税にならないケース
  8. 祭祀財産の種類のまとめ
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祭祀財産とは

祭祀財産(さいしざいさん)とは、祖先を祀るために必要な財産のことを指します。

民法897条に規定されているもので、預貯金や家屋などの、通常の財産とは区別されています。
お墓や家系図などが祭祀財産にあたり、代々一人に引き継がれていくものです。
また、祭祀財産を承継する人の決め方も、法律で決められています。

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祭祀財産の種類は3つ

ここでは、祭祀財産の種類について解説していきます。
以下より主な3種類について詳しく紹介しますので、参考にしてください。

系譜

祭祀財産のひとつとして挙げられるのが、系譜です。
系譜とは、祖先からの血脈の流れを、文書や図にして表したものです。

冊子や巻物、掛け軸などに記して、残されていることが多いです。
家系図や家系譜、過去帳などがこれにあたります。

家系図とは、先祖代々の名前が、線で繋いで記してある図のことです。

一族の歴史と繋がりを一目で見ることができる、チャートのようなものと言ってもいいでしょう。

家系譜とは、祖代々の名前だけではなく、一人ひとりの生涯のまとめも記されているものです。
生年や没年月日に加えて、どのような仕事をし、どのような功績があったかということにも言及しています。
自分のご先祖様を、より身近に感じることができる、一族の歴史書のようなものです。

過去帳とは、仏教の帳面のひとつで、仏壇や菩提寺に保管している、先祖代々の生死の記録です。
ひとりひとりの没年月日と享年に加え、俗名と戒名が記されています。
いわば先祖代々の戸籍表のようなものです。

過去帳は仏教のものですが、他の宗教でも類似するものがあります。
神道では霊簿、キリスト教では信徒籍台帳が過去帳に近い存在と言えるでしょう。

祭具

祭具とは、祭祀を行う際や礼拝の際に使用する道具のことです。
具体的にどのようなものが祭具として認められているのか、いくつか例をあげておきましょう。

位牌

故人の戒名と俗名、没年月日や享年が記された木の板です。
仏教的な祭祀の際に使用されます。

仏壇

先祖の位牌や、御本尊などを安置しておく壇です。
お墓に行かなくても、ご先祖様に手を合わせることができるものです。
家の中にある、お寺のような存在と言ってもいいでしょう。

仏像

仏の彫刻や、掛け軸などに描かれた絵のことです。
御本尊として、仏壇の中に安置しておきます。

仏具

仏事に使用する用具のことです。
三具足や五具足とも呼ばれる、花立、香炉、灯明立などが代表的なものです。

りんや線香差し、仏飯器や茶湯器なども仏具にあたります。
日本の夏の風物詩とも言える、お盆の際に出す回り灯篭なども仏具に含まれます。

神棚

神道の祭祀の道具で、神様を祀っている棚です。

神体

神様が宿るとされている物体です。
神社などでは樹木や岩などを祀ることがありますが、一般的な家では神札を神棚に祀ることが多いでしょう。

神具

神道の祭祀の際に使う道具です。
神鏡や水玉、榊立や徳利、皿などが神具にあたります。

墳墓

墳墓とは、遺体や遺骨を納めている施設のことです。

お墓の墓石や棺、墓碑や墓誌、霊屋などが該当します。
一般的には墓地の敷地も、祭祀財産として認められています。

しかし場合によっては、祭祀財産として認められないことがあるかもしれません。
広島高裁の判決で、墓石と墓地の敷地は一体ではないが、社会通念上ひとつと見なすことができる、としています。

これは、お寺や霊園などの一区画の墓地なら、問題なく祭祀財産として扱うという意味です。
しかし、墓地としてはあまりにも広い敷地の場合は、祭祀財産として認められない可能性があります。

また、お墓に納められている遺骨を祭祀財産としてみなすかどうかについては、諸説あるようです。
民法891条では、遺骨は祭祀財産ではない、としています。

しかし東京高裁では、遺骨も祭祀主催者が承継すべき、という判決が出されています。
遺骨は祭祀財産ではないが、それに準ずる存在である、と考えておいたほうがいいでしょう。

祭祀財産の承継人の優先順位

先祖代々のお墓を守る責任者のことを、祭祀主宰者と言います。
ひとつの家のお墓につき、祭祀主宰者は一人です。
親子や兄弟などで、同時に主宰者を務めることはできません。

祭祀主宰者のする仕事は、一族の祭祀財産の管理と、年忌法要などを行うことです。
一族の祭祀主宰者が亡くなった場合には、その立場と仕事を承継する人を決める必要があります。

祭祀主宰者を承継するのに、続柄などによる優先順位はありません
しかし、祭祀主宰者を決める方法には、優先順位があります。
では、祭祀財産を承継する人を決める方法を、順に紹介していきましょう。

①被相続人が指定する

最初の方法は、被相続人が指定することです。

被相続人とは、今までの祭祀主宰者のことを指します。
今までの祭祀主宰者が亡くなる前に、次の祭祀主宰者を指名していれば、その指名が優先されます。

祭祀財産の相続は通常の財産相続とは異なり、必ずしも相続者の指名に遺言状が必要なわけではありません。
口頭での約束でも問題ありません。
生前の祭祀主宰者の意向が、なによりも優先されるわけです。

そのため、必ずしも配偶者や子供が指名されるわけではありません。
親族以外の人が指名されることも、十分に考えられます。

②慣習に従って決める

もし、祭祀主宰者の指名が無かった場合は、慣習によって決めることになっています。
慣習とはその地域による慣わしのことで、特に明確な規定はありません。

かつては、配偶者や長男が後を継ぐ、ということが一般的でした。
しかし現代ではそのような慣習も、当然ではなくなってきています。

そのため一族の話し合いによって、祭祀を承継する人が決められることになります。
話し合いの仕方も、一族によってそれぞれに異なるでしょう。
決め方にも特に決まりはないので、相続者になる人と周りの人々が、納得できれば問題ありません。

③家庭裁判所に委ねる

被相続人による遺言などの指定がなく、親族間での話し合いでも、新たな祭祀主宰者が決まらないこともあるでしょう。

その場合には、民法897条の規定により、家庭裁判所に判断を委ねることになります。

裁判では、以下のような事柄を吟味しながら、祭祀財産を承継する人を決定します。

  • 被相続人との続柄
  • 被相続人の意向
  • 被相続人との生前の付き合い
  • 承継候補者の意思
  • 承継候補者の能力
  • 該当祭祀財産との物理的な距離
  • 祭祀財産を取得する目的
  • 祭祀財産の管理状態
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祭祀財産の放棄は可能?

祭祀財産を相続して祭祀主宰者になることが、どうしても嫌だという人もいるでしょう。
通常の財産相続なら、嫌な場合は拒否できます。

遺産よりも借金が多い場合など、相続放棄をすることはよくあることです。

しかし、お墓などを含めた祭祀財産の場合、相続放棄はできません

先の祭祀主宰者に指名されたり、裁判所の判決で指定された場合は、相続せざるを得ないのです。
しかし祭祀承継者となった場合でも、祭祀を行わなければならない、という義務はありません。
祭祀財産の管理や祭祀の施行は、祭祀承継者の自由なのです。

新たな祭祀承継者が、全く祭祀を行わなくても、法的には問題ありません。
相続した祭祀財産を処分・売却することも、自由にできます。

祭祀財産そのものがなくなってしまえば、祭祀の施行も財産の管理も必要なくなります。

つまり嫌がっている人を、無理に祭祀承継者にした場合、すべての祭祀財産を失う可能性があるのです。
お墓をはじめ、家系図や位牌は、家族や一族にとって大切な財産です。

先祖代々の大切な財産を守っていくためには、役割をやる気のない人に押し付けてはいけません。
祭祀財産を承継する気のある人に、役割を担ってもらうことが重要だと言えるでしょう。

祭祀財産と相続財産とは別物

祭祀財産も通常の相続財産も、いずれも故人から相続するものです。
そのため同じようなもの、と考えている方も多いでしょう。

しかし相続財産と祭祀財産は、全くの別物です。

衣類や貴金属、お金や土地建物などの相続財産は、相続者どうしで分け合うことができます。
一方で祭祀財産は、祭祀承継者ひとりに受け継がれるものです。
他の人と分け合うことができません。

通常の相続財産の場合、遺産の状況によっては相続放棄をする場合もあるでしょう。
祭祀財産は相続財産とは、別物として扱われます。
たとえ相続放棄した人でも、祭祀財産は承継されます。
祭祀財産は独自のルールで、相続されるのです。

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祭祀財産は相続税の対象外

家族や親族が亡くなると、財産を受け継ぐ人には相続税がかかるものです。
しかし、お墓や仏壇などの祭祀財産には、相続税がかかりません

相続税法の12条に、墓所と霊廟及び、祭具に準ずるものは非課税とする、と明記しています。

どうして祭祀財産は、相続の対象から外れているのでしょうか。
お墓などの祭祀財産は、先祖の祭祀に必要なものです。

もし、高額な相続税がかかった場合、祭祀財産の維持や管理が困難になるかもしれません。

その結果祭祀を行えないばかりか、先祖代々から続く祭祀財産を失ってしまう可能性が出てきます。
信仰の自由を守るためにも、祭祀財産は非課税となっているのです。

祭祀財産には相続税がかからないことを、相続税の節税対策として利用することもできます。
相続税を軽減するためには、相続財産を減らしておくことです。

生前贈与という方法もありますが、生前にお墓や仏壇などの祭具を購入しておくことも、節税に繋がります。

生前にお墓や仏壇を購入すれば、その分、預貯金額が減ります。
お墓や仏壇などの仏具は祭祀財産なので、相続財産として数えられません。

例えば、総資産5,000万円ある人が、300万円のお墓を購入したとしましょう。
生前にお墓を購入していた場合は、相続税の対象は4,700万円になります。
一方で相続後に、相続人が購入した場合には、相続税の対象は5,000万円です。

生前にお墓を購入しておけば、相続税の課税対象の300万円分を、非課税にできるのです。
節税を考慮するならば、生前に購入するほうがお得だと言えるでしょう。

祭祀財産が非課税にならないケース

祭祀財産は非課税ですが、場合によっては非課税の対象にならないこともあります。
どのような場合に、非課税対象から外れてしまうのでしょうか。

相続が発生した時点で代金が支払われていない場合

生前にお墓や仏壇などの仏具を購入すれば、相続税の対象にはなりません。
そのため、相続税の節税対策として、生前にお墓や祭具の購入を推奨する人が多いほどです。

しかし相続が発生した時点で、代金の支払いが済んでいない場合は別です。
未払いのお墓や祭具は、非課税として認められません。

お墓の購入は、人生最後の大きな買い物とも言われています。
お墓の価格は全国平均で200万円ほど、都内の一等地に至っては、1,000万円近くする場合もあります。

高額な買い物のため、ローンでの購入を検討する人も多いでしょう。
しかしローンが完済していない場合、未払い分は祭祀財産の非課税対象とならないのです。

例えば、300万円のお墓を、ローンで購入したとしましょう。
そのうち100万円の返済を終えていて、200万円のローンが残っているとします。
その場合は100万円分は祭祀財産として認められますが、残りの200万円分は認められません。
非課税の対象は100万円のみで、残り200万円には相続税が課税されるのです。

ローンを完済してから相続できればいいのですが、未払い分があると節税効果は薄くなりがちです。
そのため相続税を節税するためにお墓や祭具を購入するのなら、現金での購入を考えたほうがいいでしょう。

相続税の課税を逃れるために購入したと判断された場合

お墓や仏具などの祭祀財産の価格は、比較的安価なものから高額なものまで、幅広くあります。
しかし、あまりにも高額なものを購入した場合は、注意が必要です。
相続税の課税を逃れるために購入した、と判断される恐れがあるのです。

祭祀財産の非課税という制度は、人々の信仰の自由を守るためのものです。
相続税が支払えなくて、祭具を手放さなければならないようなことを、防ぐためにあります。

事前に高額なものを買って、節税するための制度ではありません。

「いくらからが高額」という、具体的な規定はありません。
ただし被相続人の財政状況と比較して、祭祀財産が不自然なほど高額となると、税務署のチェックが入る恐れがあります。

その結果祭祀財産として認められない場合は、非課税ではなくなり、課税対象となるのです。

換金性の高い祭祀財産

あまりにも高額な祭具と同様に、換金性の高い祭具も、祭祀財産としては認められません。

国税庁のホームページには、仏具や神具などの、日常礼拝で使用するものは非課税とする、と書かれています。

しかし但し書きとして、投資の対象や骨董的価値のあるものは、その限りではないとしています。

例えば純金製の仏像や仏具、十字架などのことです。
その場合は崇拝や礼拝の対象ではなく、投資の対象とみなされる恐れがあります。

また、同じような高額な祭具を、複数個所有している場合も危険です。
祭具としてではなく、商品として認識される可能性が高いからです。

投資対象として購入した祭具を、後日換金して利益を得たとします。

税務署は被相続人と相続人の財政状況を、数年分遡って調査する権限を持っています。
投資目的で祭具を売買していたら、たちまち判明してしまうでしょう。

祭祀財産は、礼拝で使用するという本来の目的から外れてしまうと、祭祀財産とはみなされません。

相続税を少しでも軽減したい、という気持ちが生まれるのは、ある意味当然のことでしょう。
生前にお墓や仏壇を購入して、節税に繋げることを推奨する意見も多数あります。
しかし、節税が行き過ぎると、人の道から外れたと判断されかねません。
くれぐれも常識の範囲内で行うよう、心掛けてください。

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祭祀財産の種類のまとめ

ここまで祭祀財産の種類や、承継者の決め方などを中心に解説してきました。
まとめると以下の通りです。

  • 祭祀財産には家系図などの系譜、仏壇などの祭具、お墓などの墳墓の三種類ある。
  • 祭祀財産承継者は、先代の指名か一族の慣習で決めるが、裁判になることもある。
  • 祭祀財産の相続放棄はできないが、祭祀財産の処分などはできる。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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