相続
祭祀承継者の承継を拒否したい場合は?納骨はどうするのかも解説
更新日:2024.02.03 公開日:2022.05.25

記事のポイントを先取り!
- 祭祀財産とは先祖供養ための祭具
- 祭祀承継者は民法の規定に従う
- 祭祀承継者は拒否できない
祭祀承継者とは祭祀財産を承継し、祭祀財産の管理をはじめ、故人の年忌法要の管理や主催する人のことです。
しかし、人によってはこの祭祀承継者を拒否したい場合もあるでしょう。
祭祀承継者の承継を拒否したい場合はどういった対応をすればいいのでしょうか。
さらに、拒否した場合の納骨はどうなるのでしょうか。
そこでこの記事では、祭祀財産の承継を拒否したい場合について詳しく説明していきます。
この機会に祭祀財産の承継を拒否したい場合の方法を覚えておきましょう。
故人と宗旨・宗派が異なる場合についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 祭祀継承者とは?
- 祭祀財産とは?
- 祭祀継承者の決め方
- 祭祀継承者の承継は拒否できない
- 遺骨の所有権は祭祀継承者にある
- 祭祀継承者の承継を拒否したい場合
- 被相続人と宗旨・宗派が違う場合
- 祭祀継承者を拒否したい場合の納骨についてのまとめ
祭祀継承者とは?
お墓や家系図、神棚、位牌、仏壇、仏像といったものは「祭祀財産」にあたります。
このような祭祀財産を管理したり、故人の年忌法要の管理や主催したりする人のことを祭祀承継者と言います。
祭祀承継者とは一家の歴史を担う人と言えるでしょう。
祭祀承継者の役割は、1周忌や3回忌といった年忌法事やお盆やお彼岸などの先祖にまつわる行事の管理、主催することです。
祭祀に必要なお布施やお墓の管理料などは、基本的に祭祀承継者が負担します。
とは言え、参列者からいただく香典を拒否することはないので、全額が祭祀承継者の負担とはならないでしょう。
祭祀継承者が死亡した場合は、遺族の中から誰かが選ばれ継承者となります。
こうして祭祀承継者は代々引き継がれていきます。
祭祀財産とは?
お墓や家系図、神棚、位牌、仏壇、仏像といったものは祭祀財産にあたることは既に説明しました。
民法で、系譜、祭具、墳墓(お墓のこと)の3種類が祭祀財産として規定されています。
祭祀財産と相続財産の違いは、相続財産の場合は相続税がかかりますが、祭祀財産は相続税がかからない点です。
また、相続財産は何人かの相続人に分割相続されますが、祭祀財産は1人だけに承継される点も違いといえるでしょう。
具体的に祭祀財産を説明していきます。
「系譜」
家系譜や家系図、祖先代々の血縁関係のつながりを記した巻物や冊子のことを系譜と言います。
「祭具」
仏壇、位牌、盆ちょうちん、神棚、霊位、十字架、などといった祭祀に用いられる器具のことです。
宗教や宗派によっても使用される器具や使用方法は異なります。
「墳墓」
「墳墓」はお墓の法律用語です。
故人が納骨されています。
墓石、墓碑、霊屋、棺桶のみならず墓地も墳墓と解釈されています。
祭祀継承者の決め方
祭祀承継者はどのようにして決められるのでしょうか。
被相続人の指定
民法では被相続人が指名した人が継承者となると定められており、祭祀承継人の第一順位となります。
この場合の指名は、遺言書による指名でなく、口頭での約束でも有効とされています。
ただし、口頭の場合は、被相続人の死後は確かめられないので、証拠となる記録を残しておくのが望ましいでしょう。
慣習に従う
慣習に従って祭祀主宰者がそのまま祭祀継承者になることも、民法で規定されています。
慣習に従うということは不明確な部分もありますので、遺族間で争いが生じる可能性もあるでしょう。
家庭裁判所の判断
慣習に従うということが不明確なため、祭祀承継者をめぐって遺族間で争いが生じた場合は、家庭裁判所の判断を仰ぐこととなります。
家庭裁判所は諸々の状況を勘案のうえ、祭祀財産の承継者を決定します。
承継者となる人の条件は規定されていないので、友人などでも問題ありません。
通常は、長男など慣習的に祭祀承継者にふさわしい人が第2順位となりますが、拒否されたり、遺族間で揉めたりしたような場合は家庭裁判所が選定します。
祭祀継承者の承継は拒否できない

遺産相続の場合は相続を拒否することが可能ですが、祭祀財産は相続財産ではないので、拒否できるという規定がありません。
故人の指定や慣習によって祭祀承継者になれば、実家やお墓から離れて暮らしていても、祭祀や納骨に関する知識がなくても、拒否することは不可能です。
遺骨の所有権は祭祀継承者にある
遺骨やお墓の所有権は祭祀承継者にあるため、納骨や遺骨を管理する権利も祭祀承継者にあります。
お墓にある遺骨を出して分骨して散骨したいとか、手元供養をしたいといった申し出を受けることもあるかもしれません。
あるいは、墓じまいをして自宅の近くの霊園に納骨したいといった申し出もあるかもしれません。
所有権を持つ祭祀承継者は納骨の実施を決定できます。
祭祀継承者の承継を拒否したい場合
祭祀承継者の承認を拒否したい場合はどうすればいいのでしょうか。
祭祀承継者の所有物となった祭祀財産は、祭祀の進め方を決定することもできますし、祭祀財産を自由に処分することも認められています。
祭祀承継者は祭祀財産を相続した後、祭祀の開催が困難な場合は財産を処分することも法律上は問題ありません。
墓じまいの処理としては、散骨や永代供養、手元供養などがあります。
注意点としては、親族に相談せずに墓じまいすると、後々トラブルになる可能性があることです。
しっかり話し合って、親族を納得させておく必要があります。
祭祀承継者はお墓の管理や祭祀を主催することを法律で規定されているわけではありません。
従って、こういったことをしなくても法律上は全く問題ありません。
墓じまい
墓じまいとは、現在のお墓をなくしてしまうことです。
従来のお墓の墓石を取り除いて、墓地の管理者に更地にして返還することを言います。
墓じまいが終わって、お墓から出した遺骨は、別の場所もしくは別の形で供養します。
別の墓地や永代供養墓地などに遺骨を移して納骨することを「改葬」と言います。
墓じまいと言うと墓石を単に取り除くイメージがあるかもしれませんが、形を変えて引き続き供養を継続するということです。
墓じまいはお墓参りを拒否するということではなく、供養する場所や供養方法をリニューアルし、供養をしやすくするということです。
永代供養
永代供養には、どのようなパターンがあるのでしょうか。
納骨堂
永代供養の代表的なものとして納骨堂があります。
納骨堂の場合は、寺院の僧侶や霊園の管理者が合同供養してくれます。
33回忌まで納骨堂に納められ、その後は供養塔などで合祀されることが多いようです。
納骨堂で永代供養する場合の費用相場は、50万円〜100万円程度です。
樹木葬
樹木葬は、永代供養でよく見られる埋葬方法であり、墓石のかわりに樹木を墓標とするものです。
霊園が供養と管理をしてくれるので、安心してまかせられます。
樹木葬には、1人に1本の樹木を墓標とするものと、1本の樹木に複数の遺骨を納骨するものがあります。
樹木葬で永代供養の場合の費用相場は、30万円〜70万円程度です。
被相続人と宗旨・宗派が違う場合

祭祀承継者は故人と宗旨・宗派が異なる場合もあります。
そのような場合は、祭祀承継者としてどのように対処すればいいのか悩んでしまうこともあるでしょう。
たとえ同じ仏教だとしても、宗派によってお経や葬儀の作法が異なります。
ある宗派の僧侶が、違う宗派の葬儀の読経をしたり、葬儀を執り行ったりすることは拒否されるのが当然です。
寺院の納骨堂や霊園の場合
寺院が運営する納骨堂や霊園の場合でも、宗派が違う人の納骨は拒否されることがほとんどでしょう。
生前の宗旨宗派は問わないとする寺院でも、納骨後にはお墓を運営する寺院の宗派の供養方法が行われてしまいます。
場合によっては改葬する必要があるかもしれません。
宗派が違うと、位牌に刻む戒名も変わってきます。
戒名を付け直すとしたらさらに費用がかかってしまいます。
被相続人の意思を尊重して、被相続人の望む宗派の寺院に遺骨を納める方法もあるでしょう。
しかし、その場合は祭祀相続人の菩提寺や同じ宗派の寺院と同一という保証はありません。
自分と異なる宗派の寺院に埋葬を依頼しなければならないかもしれません。
祭祀継承者は複数のお墓を管理することとなり、その分費用がかかってしまいます。
分骨するという方法もありますが、二つのお墓を参拝しなければならなくなるでしょう。
費用もかかりますし、墓参りの稼働に時間もかかってしまうでしょう。
公営の霊園の場合
公営の霊園なら宗旨宗派不問とするところが多数あるようです。
しかし、公営墓地の場合は、墓地がある自治体に所属している人以外は拒否されるなどといった制約があります。
民間の霊園の場合
民間の霊園なら、公営の霊園と違って地域を問わず宗教不問とする所が多いようです。
民間の場合、公営の霊園より費用はかかってしまいます。
しかし、祭祀継承者と故人の宗旨・宗派が異なる場合は、宗旨宗派不問とする施設が多い民間霊園へ改葬するのが一番の解決策と言えるのではないでしょうか。
祭祀継承者を拒否したい場合の納骨についてのまとめ

この記事では祭祀承継者が承継を拒否したい場合の対処方法等について解説してきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 祭祀財産とは先祖供養ための祭具
- 祭祀承継者は民法の規定に従う
- 祭祀承継者は拒否できない
- 宗派が違う場合は民間霊園へ改葬
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。