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自筆証書遺言とは?正しい書き方、注意点を解説
更新日:2022.05.17 公開日:2022.06.04

記事のポイントを先取り!
- 自筆証書遺言は内容を誰にも知られず書き換えも適時可能
- 自筆証書遺言は書き損じや紛失などのリスクがある
- 要件を満たすため、自筆で氏名や押印、作成日を記載する
手軽に作成できる自筆証書遺言ですが、その内容についてご存じでしょうか。
自分の遺産を理想の形で相続するためにも、正しい書き方を知っておくことが大切です。
そこでこの記事では自筆証書遺言について、解説します。
この機会に「遺留分侵害額請求」について覚えておきましょう。
後半には自筆証書遺言以外の遺言書についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 自筆証書遺言とは
- 遺言書に書ける法定遺言事項
- 自筆証書遺言を作成するメリット
- 自筆証書遺言を作成するデメリット
- 自筆証書遺言を書く際の注意点
- 自筆証書遺言の作成手順
- 自筆遺言書の書き方見本
- 自筆証書遺言の保管方法
- 自筆証書遺言以外に遺言を残す方法は?
- 自筆証書遺言のまとめ
自筆証書遺言とは
「自筆証書遺言」とは、遺言書の種類の一つで、文字通り遺産を残す方が自筆で作成するもので、多くの方がイメージする遺言書のことです。
自筆証書遺言以外の遺言書は、「秘密証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
主な違いは公証人役場などに出向く必要があるかないかというところで、自筆証書遺言はその必要がありません。
遺言書に書ける法定遺言事項
遺言書が正しく記載されたものであれば、故人の意志として尊重され、法的な効力をもって希望に沿った相続が可能になります。
遺言書で可能になる法的効力を「法定遺言事項」と呼びます。
主な法定遺言事項は下記の通りです。
- 相続分配の指定:誰に何をどのような割合で遺産を相続するか指定できる
- 相続人の排除:相続させたくない人物を相続対象から排除できる
- 遺留分減殺方法の指定:遺言書によって相続対象から外れた方が遺留分を出した際に、どの遺産から遺留分を出すかを指定できる
遺留分(いりゅうぶん)とは法的に相続対象の権利者に与えられた最低限の相続金額のことです
- 特別受益持出の免除:生前贈与を受けていた場合、相続金額から贈与分を差し引かれてしまうが、遺言書に免除を明示すると、差し引かれる分が免除になる
- 生命保険受取人の変更:生命保険の受取人の変更及び指定ができる
- 遺言執行者の指定:遺言内容を推し進めるにあたり誰に執行してほしいかを指定できる
- 祭祀継承者の指定:祭祀継承者(さいしけいしょうしゃ)とはお墓や仏壇を引き継ぐ人のこと
- 遺産の遺贈:法定相続人以外の方へ遺産を分配できる
- 遺産の寄付や信託:遺産を指定団体などへ寄付したり、信託銀行で運用してもらうよう指定できる
- 婚姻関係がない内縁の家族認知:遺言書で認知することでその対象者へ遺産を相続できる
- 後見人の指定:自分の死後、後見人をつけたい未成年者などの後見人を指定できる
自筆証書遺言を作成するメリット

自筆証書遺言にはいくつかのメリットがありますのでご紹介します。
自分の求める条件などと照らし合わせる参考にしてください。
自分の考えを遺言に反映しやすい
内容を誰にも知られることなく作成できるため、他者の影響を受けずに考えを記録できます。
下記で紹介する2つのメリットも相まって、作成後に自分の考えが変わっても容易に再作成できます。
費用がかからない
他の遺言書と比べ費用がほとんどかかりません。
正しい遺言書の書き方の知識がなければ、その参考図書の購入費用がかかります。
それ以外は紙代や筆記用具、封筒代程度です。
書き換えやすい
自分ひとりで作成できる自筆証書遺言は、他者を必要としないため思いついたときに書き換えが可能です。
誰の承認も必要ありませんので、考えが変わったら好きな時に好きなように内容を書き換えられます。
自筆証書遺言を作成するデメリット

自筆証書遺言はメリットがあると同時に事前に知っておくべきデメリットがあります。
予期せぬ悪い結果にならないようデメリットを確認した上で検討されることをおすすめします。
紛失の危険性が高く、相続人が発見できないことも
他の遺言書と異なり自分ひとりで作成し保管する自筆証書遺言は、正しく書かれていても発見されない限り適用されることはありません。
また作成から長い時間が経過したり、保管管理がずさんな場合は紛失してしまうという大きな危険性が懸念されます。
毀滅、改ざん、変造の危険性が高い
被相続人以外の証人を要さない自筆証書遺言を発見した相続人が、その内容を都合よく思わない場合、毀滅(きめつ)・改ざん・変造される恐れがあります。
遺言書の存在が明らかでない場合、故人が亡くなっている以上第一発見者次第でいかようにもできてしまうのが大きなデメリットです。
小さなミスにより無効となりやすい
自筆証書遺言の書き方が定められた様式から外れていると、書かれている内容は無効となります。
記入された内容と矛盾する遺産の処理をしていた場合、新たな行為と矛盾する限りでその遺言も無効となってしまいます。
検認手続が必要となる
遺産の相続が開始された後、検認のために家庭裁判所での手続きがあることを事前に擦り合わせることを相続対象人に伝えておくことが重要です。
自筆証書遺言で必要となる検認手続きについて、家族間で確認しあっておくとよいでしょう。
自筆証書遺言を書く際の注意点

ここまで解説してきたこと以外にも自筆証書遺言にはいくつかの注意点があります。
遺言者本人が自筆(手書き)で全文を書く
遺言書として効力を持たせるために全文を自筆で書くこと以外に、日付と氏名、押印が必要になります。
ちなみに遺産内容を把握しやすくするために作成する財産目録については自筆である必要はなく、パソコンで作成しても問題ありません。
作成日付を正確に書く
遺言書に記載する日付は、西暦もしくは元号を用いて正確に記録しておきましょう。
同じ人物による複数の自筆証書遺言が発見され、内容がそれぞれ異なる場合は日付が最新の内容が有効となります。
戸籍上の氏名をフルネームで正確に書く
記載する氏名は戸籍上の氏名が適用されます。
万が一に備えて戸籍を確認した上で氏名を書き記しましょう。
氏名の後に印鑑を押す
押印で注意すべきはカスレや部分的に押されていないなどの押し損じです。
最悪のケースでは押印の仕方ひとつで効力が無効になる場合もあるようです。
書き間違えた場合は法の定めた方法で訂正する
自筆で文を作成すると、どうしても書き間違えをしてしまうこともあるでしょう。
その際は訂正箇所に印を押した上で、記入欄外に訂正した箇所を明記する必要があります。
消えにくい筆記具を使って書く
自筆証書遺言に残された文字は、適切に読めるかどうかが重要です。
そのために確実にしておきたいのは摩擦や擦れ、時間が経っても消えにくい筆記用具を使うことです。
消しにくいボールペンや万年筆でしっかり書くようにしましょう。
遺産配分は遺留分の侵害のないように注意する
遺言書を用いて遺産を自分の意志通りに分配するためには、遺留分侵害額請求を受けないようにする必要があります。
遺留分侵害額請求とは、本来遺産相続できるはずの法定相続人が遺言書によって排除された場合に請求を求める制度です。
請求が通ると相続人にかかる負担が大きくなってしまうため、あらかじめ遺留分も加味した遺産分配を遺言書に残すとスマートです。
自筆証書遺言の作成手順
自筆証書遺言を作成するために、その手順を項目ごとに確認しておきましょう。
自分が所有する財産・相続人を確認する
相続するべき遺産の種類や価値について、一通り確認することから始めましょう。
また同時に自分の遺産を相続する相続人が誰なのか、人数も合わせて把握します。
相続財産の分け方を決める
財産の種類や金銭的価値と、何を誰にどのような割合で分配するかを検討しましょう。
下書き・清書する
遺産の分け方が決まったら、内容を文面として下書きします。
下書きした内容を読み返すなど十分に確認したら清書します。
封筒に入れ、封印する
封筒は事前に用意しておきましょう。
清書した遺言書を封筒に入れ、必ず封印します。
保管する
遺言書を適当に放置すると、考えが変わった時に書き換えできず複数の遺言書が作られてしまいます。
また、作成した遺言書を管理していないと誤って処分したり、紛失して自分の意志が相続に反映されなくなりますので十分注意してください。
自筆遺言書の書き方見本
自筆遺言書を実際に書くことを検討されている方は、参考となる見本を確認しておきましょう。
例文
遺言書
遺言者 OO OO(被相続人の氏名)は、次の通り遺言する。
1、妻 OO OOに次の遺産を相続させる。
(1)現金3,000万円
XX銀行△△支店 遺言者名義の定期預金(口座番号OOO-OOOO)
2、息子 OO OOに次の遺産を相続させる。
(2)土地
所在:OO県XX市OO
地番:2-35
地目:宅地
地積:150平方メートル
3、遺言者はこの遺言の執行者に、妻OO OOを指名する。
令和4年3月16日
OO県XX市3丁目5-2
OO OO(氏名・押印)
スポンサーリンク自筆証書遺言の保管方法
大切な遺言書を保管する方法についてご紹介します。
誰にも見せないことを選択し、自筆証書遺言を採用するからには誰かに内容を見られないことが重要です。
そのためにはできる限り家族や親族に預けず、指定した遺言執行者に預けるのが無難です。
家族や親族といえど、遺言書の内容が不都合な相続分割だった場合、改ざんや隠蔽の可能性もないとはいえません。
法改正で知っておきたいのは2020年の民法改正によって、自筆証書遺言を法務局に預け可能になったことです。
安心して保管するためにも、積極的に利用したいものです。
自筆証書遺言以外に遺言を残す方法は?
自筆証書遺言以外の2つの遺言書について概要を知っておきましょう。
公正証書遺言
公正証書遺言は公証人という第三者を介入させ、法規制に従った遺言書の作成が可能です。
そのため遺言書内容の不備で効果が無効になることがない、というメリットがあります。
また公証役場に原本が保管されるため、紛失や改ざんの恐れもありません。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は公証人1人と証人2人の目の前で、作成した遺言書や自分の情報を明示し封書します。
公証人及び証人も封書に署名・押印して効力を持たせます。
自筆証書遺言のまとめ

ここまで自筆証書遺言の情報や、作成するメリット・デメリットについて解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 自筆証書遺言は遺言者本人が自筆で作成し、管理保管する遺言書
- 遺言書は法的効力を持ち、相続人などに発見されれば希望通りの相続が可能
- 公正証書遺言と秘密証書遺言は自筆証書遺言と異なり、第三者が介入する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。