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相続

遺産がいらない場合にはどうすれば良い?相続放棄のやり方を紹介

更新日:2022.04.27

遺産

記事のポイントを先取り!

  • いらない資産なら相続放棄が可能
  • 相続放棄の申請先は家庭裁判所
  • 相続放棄の申請後は取り消せない
  • みなし相続遺産は相続放棄対象外

相続放棄とは、遺産の相続を放棄することです。
遺産がいらない場合、どうすればこの相続放棄ができるのでしょうか。

そこでこの記事では、遺産がいらない場合について解説します。

この機会に、遺産がいらない場合の相続放棄のやり方、注意点などについて確認しておきましょう。
遺産がいらない場合の寄付についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

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  1. 遺産とは
  2. 遺産がいらない場合
  3. 相続放棄のやり方
  4. 相続には限定承認もある
  5. 相続放棄する際の注意点
  6. 相続放棄してもみなし相続は受け取れる
  7. 遺産がいらない場合には寄付もある
  8. 遺産がいらないまとめ
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遺産とは

遺産とはどのようなものなのでしょうか。
ここでは、遺産の概要や対象となるものを紹介します。

遺産の意味

遺産とは、故人が所有していたすべての財産のことです。
現金、不動産などの財産がまず想像されますが、故人の預貯金債権のみならず借金など一切の権利義務を含みます。

しかし、故人しか持つことができない権利や資格といった一身専属権などは含まれません。例えば、年金や著作権、国家資格、雇用契約での従業員の地位などがあります。

遺産の主な対象

遺産の対象となるものにはどのようなものがあるのでしょうか。
相続の対象となる財産には「プラス」となるもの「マイナス」となるものとがあります。

また、これらの中には、存在が把握しにくいデジタル化された財産もあるので注意が必要です。
例えばネット銀行の預金やネット上の証券口座にある株式、仮想通貨などがあります。

利益となる遺産

利益となる遺産は以下のとおりです。

  • 現預金
  • 外国通貨
  • 不動産(自宅用の建物と土地、賃貸用の土地や建物、田畑、山林、空き地、立木など)
  • 有価証券(株式、投資信託、公社債など)
  • 債権(売掛金、貸付金、立替金、被相続人が受取人の生命保険金請求権など)
  • 借家権・借地権
  • 家庭用財産(車、家具、宝飾品、書画、絵画、骨とう品など)
  • ゴルフ会員権
  • 船舶・飛行機など
  • 仮想通貨(暗号資産)
  • 知的財産権(特許権・著作権など)
  • 慰謝料請求権・損害賠償請求権
  • 電話加入権など

負債となる遺産

一方、負債となる遺産は以下のとおりとなります。

  • 借金(ローン、クレジットカードの未決済分)
  • 買掛金
  • 医療費や水道光熱費などの未払経費
  • 未払税金
  • 未払家賃・未払地代
  • 未払いの慰謝料・損害賠償金
  • 預り金(敷金、保証金など)
  • 保証債務
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遺産がいらない場合

遺産がいらない場合は、どのような対処方法があるのでしょうか。

遺産は相続放棄できる

まずは、相続放棄です。

相続放棄とは、利益となる遺産、例えば預金や不動産といったものよりも、負債となる遺産が多い場合、いらない財産として引き継ぎを放棄できることです。
借金やローンなどの方が大きかった場合は、遺産のすべてを放棄することができます。

相続放棄をするメリット

いらない財産として相続放棄をするメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

遺産争いをしなくてすむ

まず、相続放棄をすることで、相続人間で遺産争いをしなくてすむ点があげられます。
さらに、遺産分割手続きや遺産分割協議といった煩雑な手続きを行う必要もありません。

ちなみに、遺言書を残すことが最も遺産争いを避けることができる方法です。
遺言書を生前に作成し、遺産配分について決めておけば、相続争いとなることも少ないと思われます。

負債を背負わなくてすむ

もう1つのメリットとして、故人の負債を引き継がなくてよく、債権者からも催促を受けることがない点です。いらない財産として相続放棄をしなければ、法定相続分に従って負債を引き継ぐことになります。

法定相続分とは、民法で定められた相続の割合のことです。

例えば、故人の借金が8千万円、相続人が子供4人の場合、子供1人あたり2千万円ずつ借金を引き継ぐことになります。
遅延損害金などがある場合にはその分も含めて負債を負うことになるのです。

相続放棄のやり方

いらない財産として遺産を相続放棄する場合に必要な書類と申請方法について確認していきましょう。

必要な書類

  • 故人の戸籍謄本
  • 故人の住民票または戸籍の附表
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 相続放棄申述書
  • 収入印紙800円
  • 郵便切手

申請の流れ

いらない財産として相続放棄をするには、相続の開始を知ってから3カ月以内に、必要書類といっしょに家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出する必要があります。

その後、家庭裁判所から送付される「相続放棄申述受理通知書」を受け取ったら相続放棄の成立です。

財産調査

相続が開始を知ってから約1カ月にわたって相続全体の財産調査を行います。
このとき、相続放棄するかどうかを決めるのです。

いらない財産として相続放棄する場合は、相続放棄の申述書に財産の状況について記載します。
相続人名義の預貯金がわかる通帳や、定期預金の証書、不動産登記簿謄本などから財産状況は把握可能です。あるいは、固定資産税の支払い状況、特別受益の有無、通帳の履歴でも財産状況はわかります。

親族相続のように直接財産状況が把握できない場合は、故人に近い相続人に聞いてみましょう。
あるいは、銀行の取引履歴を取り寄せて調べてみるといった方法があります。

相続放棄の必要書類の作成

いらない財産として相続放棄を決めたら、相続の開始を知ってから2カ月くらいを目安に相続放棄に必要な書類を作成します。

必要書類は先に説明しましたが、追加の書類が必要になる場合もあるでしょう。
なお、故人の戸籍は、生涯すべてのものが必要となります。
遠方の場合、早く申請しないと郵送のため時間がかかってしまうので注意が必要です。

相続放棄への申立て

相続の開始を知ってから2カ月半くらいまでに、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ相続放棄の申述書と必要書類を提出します。

書類に不備があって期限に間に合わないことがないようにしましょう。
家庭裁判所から連絡があった場合は、その指示に従います。

判断がつかない場合は、「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」をとりあえず提出して、弁護士などの専門家のアドバイスを受けましょう。

相続放棄申述受理通知書を受領

家庭裁判所から郵送される「相続放棄申述受理通知書」を受け取って、相続放棄の完了となります。

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相続には限定承認もある

相続には限定承認という方法もあります。
限定承認とはどのようなものなのでしょうか。

限定承認とは

限定承認とは、利益となる遺産の限度内で負債を補って、残った負債を相続する方法です。

故人の、利益となる財産と負債となる財産がそれぞれどれくらいあるのか不明な場合もあります。
正確に計算してみると利益となる財産の方が多かったということもあります。
また、手放したくない不動産や動産が含まれている場合もあるでしょう。

このような場合に相続放棄すれば、本来、利益となる財産として相続できるはずだったものまで放棄してしまうことになってしまいます。
限定承認なら、利益となる財産の範囲内でのみ負債となる財産を引継げばよく、手放したくない不動産も残すことができるのです。

具体例をあげますと、借金5,000万円と2,000万円の価値がある家を相続した場合、家の売却資金2,000万円を謝金の返済の一部にあて、残りの3,000万円の負債を相続し、家を残すという方法がとれます。

実際には、限定承認の手続きがかなり煩雑なため、行われることは少ないようです。
引き継いだ家や骨とう品、宝飾品などを残したいといった場合によくこの方法が用いられます。

限定承認の条件として、相続人全員の申し立てが必要で、かつ、相続開始を知ったときから3カ月以内に、家庭裁判所に必要書類をそろえて申請しなければなりません。
メリットデメリットをよく勘案してから手続きを行いましょう。

限定承認のメリット

利益となる財産の範囲内で負債となる財産を減らすことができる

相続した借金等の負債を、利益となる財産の範囲内で返済すればよいということです。
負債の額がはっきりわからない場合は、限定承認をしておくと安心でしょう。

手放したくない動産や不動産を相続することができる

相続放棄の場合は、財産の中に自宅などの資産が含まれていればその資産は相続できません。

負債の方が多くても、自宅だけは相続したいという場合もあるでしょう。
このような場合、原例承認なら、「先買権」という欲しいものや必要なものを優先的に購入することができる権利が利用できます。

この権利を行使すれば、自宅や自社株など必要な財産だけを取得することも可能です。

相続放棄する際の注意点

いらない財産として相続放棄をする際はどういった点に注意すればいいのでしょうか。

申請には期限があり

いらない財産の相続放棄を申請するには期限があるので注意が必要です。

遺産を相続することが分かったときから3カ月以内に、家庭裁判所に申請しなければなりません。
3カ月を過ぎてしまえば、相続放棄ができなくなってしまいます。

申請の取り消しはできない

裁判所に相続放棄の申請をし、受理された場合は、原則として取消しや撤回は不可能です。
理由としては、相続放棄が受理された後に取消しや撤回を認めると、他の相続人や利害関係人に損害を与えるおそれがあるからです。

しかし、例外として以下の場合には、相続放棄の申請が受理された後でも、相続放棄の取消しや撤回が認められます。

  • 詐欺または強迫による場合
  • 未成年者が法定代理人の同意を得ないで相続放棄した場合
  • 成年被後見人本人が相続放棄した場合
  • 後見監督人がいるにもかかわらず、被後見人もしくは後見人が後見監督人の同意を得ないで相続放棄した場合
  • 被保佐人が保佐人の同意を得ないで相続放棄した場合
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相続放棄してもみなし相続は受け取れる

みなし相続財産とはどのようなものなのでしょうか。

みなし相続とは

みなし相続財産は、被相続人が亡くなったために取得する財産であり、被相続人が生前から保有していた財産ではありません。
そのため、民法上の財産には該当しませんが、実質的には、相続人に相続されるため、相続財産と変わりはないのです。

相続財産に課税するのにみなし相続財産に課税しないのはおかしいということで、みなし相続も相続税の課税対象とされます。
みなし相続財産の例としては、「生命保険金」や「死亡退職金」「個人年金など定期金に関する権利」などがあります。

みなし相続が受け取れる理由

生命保険金などはもともと、受取人の固有財産であるため、民法上の相続財産とはされていません。
従って、相続を放棄しても相続人は保険金を受け取ることができます。

そうすると、課税されなければすべての財産を保険金などのみなし財産にして課税から逃れようとする動きが出てくることも考えられます。
そのため、みなし財産も相続や遺贈と同じように相続があったものとして相続税が課税されることになったのです。

遺産がいらない場合には寄付もある

遺産が要らない場合は寄付という方法もあります。
この寄付とはどのようなものなのでしょうか。

寄付のやり方

遺産が多いと、相続人同士の争いを避けるため、財産を公共団体などへ寄付することを望む人が増えてきています。あるいは、被相続人がある病気を抱えている場合、自己の病気治療のための研究に使って欲しいと、専門の研究機関などに寄付をする場合もあるでしょう。

このように、遺産を相続人以外の特定団体や企業などに寄付することは可能です。
寄付をすることは、社会貢献のために自分の遺産が活用されるという満足感が得られます。

遺産を寄付する方法としては、遺贈死因贈与があります。
それぞれどのようなものなのでしょうか。

遺贈

遺贈とは、遺贈者が遺言書に記載することで特定の受遺者に遺産を贈与する方法です。

財産を受け取る受遺者は、法定相続人でも法定相続人以外の親族や各種団体でもかまいません。
遺贈の方法は、包括遺贈特定遺贈の2種類があります。

包括遺贈

包括遺贈とは、贈与する財産の割合と相手を指定するものです。

割合は100パーセントでも構いません。
資産のみならず負債も相続されることになりますので注意しましょう。

特定遺贈

特定遺贈とは、贈与する具体的な財産と相手を指定するものです。
負債を引き継ぐことはありませんが、財産に変動があった場合には見直さなければなりません。

死因贈与

死因贈与は、被相続人と相続人との間で生前に結ぶ贈与契約のことで、被相続人の死亡によって効力が発生します。

死因贈与は、贈与者と受贈者の生前の契約ですが、書面によらない口約束の場合は、履行される前はいつでも取消すことができます。

寄付できないものもある

寄付したいといっても、中には住宅など不動産のような現物の場合には、売却価値がなく、換金や扱いに困るようなケースも出てきます。
寄付者本人に悪意はなくとも、こういった不動産などのように寄付できない場合もありますので注意が必要です。

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遺産がいらないまとめ

ここまで遺産放棄のやり方について、やりかたや注意点などを中心に解説してきました。

まとめると以下の通りです。

  • 遺産がいらない場合は相続放棄ができる
  • 相続放棄をするには、必要書類を家庭裁判所へ提出する
  • 相続放棄の注意点として、申請に期限があり、申請後は取り消しができない
  • 相続放棄をした場合でも、みなし相続遺産は受け取ることができる

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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監修者

評価員(やまぐち)

山口 隆司(やまぐち たかし)

一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター

経歴

業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。

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