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遺言書の効力とは?種類別の効力と無効になるケースを解説
更新日:2022.12.27 公開日:2022.04.22

記事のポイントを先取り!
- ・遺言書には財産の分配などを記載
- ・遺言書の効力は相続分の指定など
- ・遺言書は日付が無いと無効
- ・遺言信託とは遺言手続きの支援
遺言書の効力についてご存知でしょうか。
遺言書がどのようなものかを知っていても、遺言書の種類や効力について知っている人は少ないかもしれません。
そこでこの記事では、遺言書の効力について詳しく説明していきます。
この機会に、遺言書の種類別効力や無効になるケースについて覚えておきましょう。
遺言信託サービスについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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遺言書とは
遺言書とは、遺言者が財産を誰にどのように分け与えるのかなどを記載したもののことです。
ただ書けば良いというものではなく、民法の規定に従った書き方のものでないと効力は生じません。
遺言書の種類別の効力
遺言書に効力を持たせるためには、どのような書き方をすれば良いのでしょうか。
普通方式遺言
まずは、普通方式遺言について説明します。
自筆証書遺言
民法で定められた遺言の中では、最も簡単なものです。
有効となるには、遺言書の作成日、遺言者の氏名、遺言の内容が遺言者自身によって書かれていなければなりません。
そして、自署で記入し、自身の印鑑を押す必要があります。
印鑑は必ずしも実印である必要はなく、認印などでも問題ありません。
パソコンやワープロ、録音や映像で作成したものはNGです。
ただし、2019年1月13日に施行された民法の改正により、相続財産の目録は自筆以外でもよくなりました。
作成時において特別な手続き等はいりませんが、開封するには家庭裁判所にて検認してもらう必要があります。
公正証書遺言
公証人が遺言者の代理で遺言書を作成・保管する方法です。
証人2名以上が立ち会う中での作成となります。
適法な手続きを踏みながら、遺言者は公証人に口頭で遺言内容を伝えます。
書き方を間違えると無効になりやすい自筆証書遺言に比べて、法律のプロに作成してもらえる公正証書遺言は無効になりにくいのがメリットです。
また、家庭裁判所の検認も必要ありません。
一方で費用が発生する、作成に時間がかかるなどがデメリットといえます。
秘密証書遺言
封筒に入れて封じられた遺言書です。
遺言内容を秘密にしておきたい場合に作成されます。
公証人に提出して所定の処理をしてもらいますが、公証人も内容は確認できません。
そのため、不備があったとしても修正はできません。
自書である必要はなく、遺言者の署名と押印さえあれば作成可能です。
パソコンや代筆でも問題ありません。
ただし、署名欄の押印と封印は同じ印鑑でなければなりません。
印鑑は実印が望ましいと考えられますが、認印でも大丈夫です。
また開封時は、家庭裁判所の検認が必要になります。
自筆証書遺言と公正証書遺言が合わさったような遺言書です。
特別方式遺言
次に、特別方式遺言について説明します。
一般臨終遺言(危急時)
病気などで死が迫っている時の遺言です。
自ら署名・押印ができないため、自筆証書遺言などの通常方式の遺言を作成することはできません。
そこで、3名以上の立ち会いがあれば遺言の作成が可能とされています。
立ち会った人の作成・署名・押印が必要となります。
難船臨終遺言(危急時)
船の遭難で死亡が迫っているような場合、遺言書の作成どころではありません。
そこで、証人(2名以上必要)に言葉で伝えることで遺言が残せます。
証人は、遺言書の作成・署名・押印をします。
一般隔絶地遺言(隔絶地)
伝染病にかかって隔離されている人は、警察官と証人各1名の立ち会いで遺言を残すことが可能です。
遺言者が作成した遺言書に、立会人が署名・押印をします。
伝染病による隔離以外に、行政処分や懲役等の刑事処分で世間と隔離されている際にも行われます。
船舶隔絶地遺言(隔絶地)
航行中の船舶の中にいて外界から隔絶されている場合は、1名の船舶関係者と2名以上の証人の立ち会いがあれば遺言を残せます。
この時、遺言者自身による自署および書面作成が必要です。
同時に、立会人による署名・押印も必要になります。
遺言書の効力とは
遺言書は、どのような効力を発揮するのでしょうか
相続人の廃除
相続人が遺言者に虐待や侮辱したり、非行を行ったりした場合は、廃除事由があるものとして、相続権を失わせることが可能です。
相続分の指定
定められた法定相続分に関係なく、遺言で遺産の配分を変えられます。
例えば妻1人と子どもが2人いる場合、法定相続分では妻が2分の1、子どもがそれぞれ遺産の4分の1を取得できるとされています。
しかし遺言書に妻は4分の1を相続し、子甲は遺産の8分の5を、さらに子乙には遺産の8分の1を相続すると記されていた場合は、それに従わなければなりません。
遺産分割方法の指定と分割の禁止
遺言者は、遺産分割で揉めることを回避する意味で、相続開始から5年以内は遺産の分割ができないものとすることが可能です。
遺産分割の方法は、自分で決めずに第三者への依頼もできます。
相続財産の処分(遺贈)に関すること
通常、財産は法定相続人となる配偶者や子どもに相続されます。
しかし、遺言書を残せば、愛人など法定相続人でない第三者にも相続できます。
また、団体に対しても、相続財産を遺贈することが可能です。
内縁の妻と子の認知に関すること
隠し子がある場合は、遺言で認知することで遺言者の相続人にできます。
後見人の指定
遺言者が死亡することで親権者が不在となり、残された子が未成年であった場合、第三者を後見人として指定できます。
後見人には、未成年者の財産管理等をまかせることが可能です。
相続人相互の担保責任の指定
相続した財産に欠陥があった場合でも、相続人には担保責任があります。
遺言者は、担保責任の負担者・割合なども遺言書で決めておくことが可能です。
遺言執行者の指定または指定の委託
相続財産を名義変更しなければならない場合、事務手続きが必要になることがあります。
手続きの方法は、預貯金の名義変更や土地の変更登記などと同じです。
遺言者は、このような遺産相続に必要な手続きを行う遺言執行者を指定できます。
あるいは、第三者を指定して委任することも可能です。
遺言書の効力による具体的な例
遺言書を使うと、具体的にどういった効力が発生するのでしょうか。
特定の人に多く相続させることができる
複数の相続人がいる場合には遺言書で、長男、長女、次男など特定の相続人に多めの、あるいはすべての遺産を相続させることができます。
相続人以外の人に遺産を遺贈できる
遺言書により、孫や内縁の妻など、相続人以外の人に遺産を相続させることができます。
遺産を寄付することができる
遺産を相続する人がいない場合は、遺言書により、法人や団体などに遺産を寄付することが可能です。
ケース別の遺言書の効力について
ここでは、色々なケース別の遺言書の効力について解説します。
遺言書が複数ある場合
遺言書は、日付がなければ無効となります。
日付が異なるものがいくつかある場合は、最新の日付のものが有効ですが、いずれも有効になることもあります。
遺産分割後に見つかった場合
遺産分割協議が終わってから遺言書が出てきたというようなこともあるでしょう。
そのような場合は、遺産を受け取った人や相続人のうちの1人でも遺言書に従う意思があれば、遺言書は有効になります。
遺言書が開封してある場合
遺言書が開封してあっても、効力に変わりはありません。
公正役場にある公正証書遺言は、開封しても問題ありません。
しかし、自筆証書遺言と秘密証書遺言は、勝手に開封はできません。
勝手に開封した場合は、5万円以下の過料が科せられます。
とはいえ、実際に過料が科せられることはないようです。
ただ事前に開封されていると、偽造や改変、隠匿の疑いが生じるため、相続させてもらえなくなる恐れもあります。
うっかり開けてしまった場合は家庭裁判所に行き、遺言書の検認をしてもらいましょう。
必要書類等は、行く前に裁判所のホームページなどで確認しておいてください。
遺言書を無くした場合
自宅に保管していた遺言書を無くしてしまった場合、遺言書は無効となります。
また、相続人の1人が遺言書の内容に不満で燃やしてしまったような場合も、遺言書は無効です。
遺言書の記載内容にかかわらず遺言書が紛失した場合は、遺産分割を話し合う必要があります。
遺言書は破損したり紛失したりしないように、大切に保管しなければなりません。
遺言書の内容に不満がある場合
必ずしも、遺言書に書かれたとおりに遺産分割をする必要はありません。
相続人全員が遺言の内容を否定すれば、遺言は無効となります。
しかし、1人でも遺言書の通りにしたいという相続人がいた場合は、遺言書が優先されます。
相続人以外の人に財産を渡すように遺言書に書かれていた場合、その人が同意すれば財産を渡す必要はありません。
しかし現実的には、相続人以外の人が遺言書に従わずに遺産相続を放棄することはあまり考えにくいことでしょう。
その場合は、法定相続人が最低限の遺産を確保できる「遺留分減殺請求」を検討することになります。
遺言書の効力が無効になるケース
前述した遺言書が無効となるケース以外にも、遺言書の効力が無くなるケースがあります。
遺言書の種類別に紹介していきます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言の効力が無効になるのは以下のケースです。
遺言書に日付が記入されていない、または作成日ではない日付の場合
財産目録以外の箇所が、パソコンやワードを使用して書かれている場合
音声や映像の場合
利害関係のある人が、遺言書を書かせている疑いがある場合
被相続人(故人)の署名押印が無い場合
加筆修正の仕方が誤った処理をされている場合(加筆修正箇所のみ無効)
15歳未満や認知症などで意思能力が無いと判断された場合
2名以上で書かれた遺言書である場合
公正証書遺言
公正証書遺言の場合、公証人により適切な手続きを行って作成されるもののため、無効となるケースはほとんどありません。
無効となるのは、以下のケースです。
公証人が不在、または証人が席をはずした時に作成されている場合
証人に相応しくない人が立ち会うなど、証人の人数が足りていなかった場合
公証人に口で伝えず、ジェスチャーなどで伝えた場合
秘密証書遺言
秘密証書遺言の場合は、パソコンや代筆で記入していても遺言書は有効です。
その点以外は、自筆証書遺言が無効となるケースと同様です。
無効となるケースで特に多いのは、日付や押印の不備だとされています。
遺言書作成の注意点

遺言書のトラブルを防ぐには、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
遺留分を侵害しないようにする
遺言書を作成する時には、できるだけ遺留分を侵害しないように気をつけることが大切です。
配偶者や子どもの遺留分を侵害すると、トラブルになりやすいとされています。
公正証書遺言を利用する
公正証書遺言を利用すれば、遺言書の書式に不備があって無効になることはまずありません。
可能な限り、公正証書遺言を利用するようにしましょう。
一方、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合はどうしても不備があることが多く、無効になりやすいようです。
専門家に相談する
困った時は、司法書士や弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
できれば遺言執行者になってもらうと、遺言内容も実現しやすくなります。
遺言書を作成したものの、無効となってはどうしようもありません。
専門家のサポートにより、自分の作成した遺言書によって遺留分トラブルが発生することのないようにしておくと安心です。
遺言信託サービスとは?

遺言信託サービスとは、どのようなサービスなのでしょうか。
遺言信託の特徴
信託銀行等が、遺言書作成に関する手続きをサポ―トするサービスを「遺言信託サービス」といいます。
遺言信託では、遺言書に関する相談や遺言書の保管、相続財産の調査から遺産分割手続きまで行ってくれます。
さらに、信託銀行は、財産管理に関する豊富な経験・知識があります。
相続や財産管理のプロになら、安心してまかせられるでしょう。
遺言信託の流れ
まず、遺言者は信託銀行に遺言書作成の相談をし、コンサルを受けます。
その後遺言者は、公証役場に公正証書遺言の作成を依頼します。
この時、財産に関する遺言執行人として信託銀行が指定されるのです。
次に、遺言者は信託銀行と契約を結びます。
遺言者は同時に、相続人の中から死亡通知人を指定します。
遺言信託のメリット
遺言信託の1つ目のメリットは、遺言書作成の手間をはぶけることです。
遺言書を作成するには、保有財産の内容や遺産分割の方法の検討など、事前準備が必要です。
また、遺言書の作成には専門的な知識も要求されます。
遺言信託のサポートを利用すれば、遺言書作成がスムーズに進むでしょう。
2つ目のメリットは、遺言書の内容をいつでも修正できる点です。
遺言書を作成してから、その本人が亡くなるまでには時間があります。
その間も、資産の内容や相続人の状況は変化することがあるでしょう。
後々、遺言書を修正する必要が出てくる可能性もあります。
遺言信託では、遺言書にある財産状況や相続人の状況が変化した場合にも対応が可能となっています。
3つ目のメリットは、遺言者が亡くなった時には、遺言執行者となって相続に関する手続きのサポートをしてくれることです。
遺言信託を利用すれば、相続手続きをトラブルなく円滑に行えます。
遺言信託のデメリット
一方で、遺言信託のデメリットとしていえるのは、費用がかかることでしょう。
手数料の体系は、金融機関や受けるサービスの内容によって変わってきます。
基本的には遺言書の作成時、保管中、遺言書の変更時、遺言執行時にそれぞれ費用が発生します。
なかでも遺言執行にかかる手数料の計算方法は定まっており、財産の評価額次第で手数料が変わってきます。
おおよそのかかる費用は、事前に見積もっておくようにしましょう。
また、子の認知や相続人の「廃除」といった相続人の身分に関する遺言を望む場合は、信託遺言を引き受けてもらえないことがあります。
さらに、推定相続人の中で遺産の取り分等についてトラブルが発生している場合なども引き受けてもらえないことがあるようです。
遺言書の効力のまとめ

ここまで遺言書の種類別の効力や、無効になるケースなどについてお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
遺言書とは、被相続人が死後に財産を誰にどう分配するかなどを記載したもの
・遺言書の効力には、相続分の指定などがある
・遺言書が無効になるケースとして、日付が記入されていない場合などがある
・遺言信託とは、信託銀行等が相続に関する手続きをサポートするサービス
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。