相続
遺産相続で個人の預金を引き出すには?必要書類や手続きを解説
更新日:2024.01.24
遺産相続において、故人の預金は相続人共有財産になりますが、どういう手順で引き出すのかわからない方も多いでしょう。
また、遺産分割は時間がかかりますので、その前に預金を引き出しておきたいという場合もあります。
そこでこの記事では、遺産相続での預金の引き出しについて詳しく説明していきます。
この機会に、遺産の預金の引き出し手続きについて確認しておきましょう。
遺産相続前の預金の引き出しや、仮払い制度についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 遺産相続で預金を引き出す手続きの流れ
- 遺産相続で預金を引き出すために必要な書類
- 遺産分割前に預金の引き出しする流れ
- 仮払い制度を利用する場合の注意点
- 預貯金の相続に期限はある?
- 遺産相続で預金を引き出す際のまとめ
遺産相続で預金を引き出す手続きの流れ
遺産相続で預金を引き出す場合、銀行に行って誰でもすぐに引き出せるわけではありません。
ここでは、遺産相続で預金を引き出す手続きの流れを紹介します。
どの銀行に預金口座を持っていたか特定する
預金の引き出しにはまず、故人がどの銀行に口座を持っていたのかを調べなければいけません。
銀行を特定するためには、預金通帳やキャッシュカード、銀行からのノベルティ、郵便物などを手掛かりに探します。
また、故人の残した遺言書や財産目録でわかる場合もあります。
銀行に口座名義人が亡くなったことを伝える
銀行に口座名義人が亡くなったことを報告します。
その後、口座はどういう状態になるのか、解説します。
死亡の届け出をした時点で故人の預金口座は凍結される
銀行は死亡の報告を受けると、その口座は凍結され、以降入出金が一切できなくなります。
口座から公共用金などの引き落としが行われている場合は、別途払い込み用紙で支払います。
引き落としや入金ができなくなるので、新しい振込先を伝える必要があります。
残高証明書を取得する
故人の銀行にある預金は、相続財産になりますので亡くなった時に、預金と借入金残高を明確にしておかなければいけません。
そのために、銀行で「残高証明書」を発行してもらいます。
相続人が複数いる場合、遺産分割しますが、その時に預金の残高がどれくらいあるのか確認するために必要です。
また、相続税申告書を出すときには、残高証明書を添付して提出します。
残高証明書は、指定した日付の残高預金を銀行が証明して発行する書類ですが、本来は口座名義人が手続きするものです。
ただし、相続の手続きで発行してもらう場合は、口座名義人は亡くなっていますので、相続人が残高証明書発行の手続きをします。
相続人は、故人がどこの銀行の口座を持っていたのかを確認したのち、それぞれの銀行にお願いして残高証明書を発行します。
ネット銀行の場合は、カスタマーセンターなどに問い合わせて、郵送の手続きが必要です。
銀行に請求するときは、故人が亡くなった日付の残高証明書を発行してください。
手続きに必要な書類は以下です。
- 口座名義人が亡くなったことが確認できる、戸籍謄本
- 申請する人と、口座名義人がどんな関係なのかを確認できる書類(戸籍謄本、遺言書など)
- 申請者の実印と印鑑証明書
- 口座預金の通帳、預金証書、キャッシュカードなど
- 手数料
仮払いを受けるための手続きをする
亡くなってすぐに発生する費用を支払うために、故人の銀行口座を利用したい場合は多くあります。
葬儀費用、入院費用、被相続人の責務の支払いなどは、亡くなってからしばらくすると発生しますので、相続が終わってからというわけにはいかないでしょう。
そんな時は、故人の銀行口座から仮払いをしてもらえます。
仮払いの請求は、銀行に直接請求する方法と、家庭裁判所に申し立て行う場合があります。
早く仮払いを受けたいときは、銀行で直接手続きを行うのが良いでしょう。
相続の手続きをする
相続の手続きをして、銀行口座の払い戻しや解約をしますが、いつまでに行わなければいけないといった期限はありません。
遺産分割協議は長くかかる場合も多く、1年以上かかることも珍しくありません。
遺産分割の協議が成立したら、銀行で相続の手続きをします。
遺産相続で預金を引き出すために必要な書類
遺産相続で故人の預金を引き出すためには、手続きとともに必要な書類がありますので、確認しておきましょう。
また、相続関係届出書に記入が必要ですが、銀行によっては名称が違うこともありますので注意してください。
遺言書があるケース
故人の遺言書があり、遺言に書かれている通りに遺産を分割する場合でも、受遺者が手続きする場合と、遺言執行者が手続きをする場合では、必要なものが変わります。
また、遺言があっても、預金について具体的な定めがない場合や遺産を特定せずに割合だけを定めた遺贈の場合は、遺言がない場合の取り扱いと一緒になります。
受遺者が手続きする
受遺者とは、遺言書による財産の分与を受け取る人のことを言います。
受遺者が手続きするときに、必要なものを解説します。
- 銀行所定の相続関係届出書など
- 遺言書
- 故人の戸籍謄本
- 受遺者の印鑑証明書
- 受遺者の実印
- 故人の預金通帳・証書・キャッシュカードなど
故人の戸籍謄本は、故人の死亡後の戸籍謄本が基本ですが、銀行によっては出生から死亡まで連続した戸籍謄本が必要な場合もあります。
遺言執行者が手続きする
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きをする人のことを言います。
遺言執行者が手続きするために、必要なものを解説します。
- 銀行所定の相続関係届出書など
- 遺言書
- 故人の戸籍謄本
- 遺言執行者の印鑑証明
- 遺言執行者の実印
- 故人の預金通帳・証書・キャッシュカードなど
遺言書がなく遺産分割協議書のみあるケース
遺言書がない場合は、被相続人が遺産分割協議して遺産分割協議書をもとに、相続します。
この場合の必要な書類について紹介します。
- 銀行所定の相続関係届出書など
- 遺産分割協議書
- 故人の戸籍謄本
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 預金を受ける相続人の実印
- 故人の預金通帳・証書・キャッシュカードなど
遺産分割協議書には法定相続人全員の署名と実印の押印が必要です。
遺言書も遺産分割協議書もないケース
遺言書も遺産分割協議書もない場合の、手続きに必要なものについて解説します。
- 銀行所定の相続関係届出書など
- 故人の戸籍謄本
- 法定相続人全員の戸籍謄本
- 法定相続人全員の印鑑証明書
- 預金を受ける相続人の実印
- 故人の預金通帳・証書、キャッシュカードなど
故人の戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写しで、法定相続人全員の戸籍がわかる場合は、法定相続人全員の戸籍謄本は不要になります。
遺産分割前に預金の引き出しする流れ
遺産分割前に預金を引き出すには、銀行に仮払いをしてもらいます。
仮払いを受けるためには、銀行で直接手続きする、家庭裁判所に申し立てるという2つの方法がありますが、それぞれの手続きについて詳しく説明します。
金融機関の窓口で直接仮払いの手続きするケース
仮払いを早く行いたい方は、金融機関の窓口に直接手続きをしてください。
必要な書類、仮払いの上限などを説明します。
必要な書類
- 被相続人の出生から死亡時までの連続した戸籍謄本、または法定相続情報一覧図
- 相続人の身分証明書、印鑑証明書
- 仮払申請書
他にも金融機関所定の書類が必要となる場合もありますので、確認して準備してください。
仮払いの上限額
どのくらい仮払いしてもらえるのかというと、次の計算式で算出できます。
相続開始時の銀行口座の残高×相続人の法定相続分×3分の1
この計算式で出た金額と150万円、どちらか大きな金額の範囲内で仮払いを受けることが可能です。
家庭裁判所で申立てするケース
家庭裁判所で申し立てすることで、金融機関から仮払いを受けることが可能です。
必要な書類と、上限金額について説明します。
必要な書類
家庭裁判所に仮払いの申し立てをするときには、理由が必要です。
銀行よりも時間がかかりますが、家庭裁判所の申し立てをすると仮払いの金額が多くなります。
例えば、相続人の生活費のために仮払いしたい場合は、
- 相続人の源泉徴収票
- 課税証明書
と収入に関する書類が必要となります。
仮払いが何で必要なのか、何に使うのかによって、必要書類が異なるので確認してください。
仮払いの上限額
基本的には、最大で法定相続分までと決められています。
スポンサーリンク仮払い制度を利用する場合の注意点
遺産相続する前に、仮払い制度を利用すれば故人の預貯金を引き出せますが、注意点もありますので、確認しておきましょう。
相続放棄できなくなる可能性がある
仮払い制度を利用して遺産を受け取ると、その後相続放棄をできなくなる可能性があります。
仮払金を使うということは、故人の遺産を相続したということにもつながりますので、他の財産を含めて相続を了解したことになります。
ただし、仮払いをして故人の葬儀費用を支払っただけであれば、相続放棄は可能です。
仮払金を生活費に使った場合は、相続放棄はできなくなります。
その場合、被相続人に借金があると、負の財産も相続することになるので注意してください。
相続人同士のトラブルの原因になる
相続人の一人が、他の相続人に相談しなくても仮払いを受けられるようになったため、トラブルになるケースもあります。
たとえ、葬儀費用、故人の入院費用の支払いに使ったとしても、知らせないで使ったことを面白くないと思う人もいるでしょう。
それによって、遺産分割の時に他の財産を減らされてしまうこともあります。
仮払い制度を利用するときは、必ず他の相続人に相談し、どのくらいの金額が必要なのかを説明しておくことが大切です。
預貯金の相続に期限はある?
預貯金の相続に関しては、法律上の規定で預金は5年で消滅時効にかかります。
場合によっては10年ということもありますが、事実上はほぼ期限がないと考えられるでしょう。
ただ、期限がないからと言って放置しておくとデメリットが生じます。
ここでは預貯金の手続きを放置することで、考えられるデメリットについて解説します。
税務上の手続きにおけるデメリット
預貯金の相続手続きに期限はありませんが、法務上の手続きには期限があるので注意が必要です。
その中でも相続税は、申告や納税に期限があり、延滞すると延滞税や無申告加算税がかかるので、期限を守らなければいけません。
相続税の場合は、「遺産総額が3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合は、相続することを知った日から10ヵ月以内に申告・納税しなければなりません。
銀行預金の相続は期限がないからいつでも大丈夫と思っていたら、実はかなりの額の預貯金があり相続税の支払いが必要というケースがあるかもしれません。
まずは、どこの銀行にどのくらいの預貯金があるのかを、把握しておくことが大切で、高額の場合はすぐに手続きをしてください。
相続放棄におけるデメリット
相続は、プラスの財産だけではなくマイナスの財産も相続しなければいけません。
故人の財産よりも借金が多い場合には、相続人は相続放棄することで、借金を含めた財産を一切相続しないという選択ができます。
相続放棄には期限があり、相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで、相続放棄が成立します。
3ヵ月はかなり短い期間なので、預貯金の手続きを放置しておくとあっという間に、相続放棄ができなくなってしまいます。
故人に借金があるのを知っていたが、預貯金があるから大丈夫と思っていて、いざ手続きをしてみたら、全然なかったということもあるかもしれません。
その場合、3ヶ月過ぎていたら、相続放棄ができず借金を背負ってしまうことになります。
相続放棄の期限に間に合わせるためにも、故人の預貯金の確認は早めに行ってください。
遺産相続で預金を引き出す際のまとめ
ここまで、相続人が故人の預金を引き出すための情報や、仮払金についてを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 故人の預金の引き出すためにまずは口座を特定する
- 預金の相続には残高証明書を銀行で取得
- 相続の前に預金を引き出すためには、仮払い申請をする
- 仮払いの手続きは銀行か家庭裁判所で行う
- 預貯金の相続に期限はないが放置するのはデメリットもある
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。
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