死亡後の手続き
死亡退職金はどんな退職金?受取人や相続税等について説明
更新日:2024.06.07 公開日:2022.05.26

記事のポイントを先取り!
- 死亡退職金は遺族が受け取る
- 無で対応が変わる
- 死亡退職金は相続財産扱い
- 弔慰金は非課税扱い
会社に勤めている故人が亡くなった場合には、死亡退職金が遺族に支払われることがあります。
この記事をご覧の方の中には死亡退職金について深く知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、死亡退職金がどういった退職金であるかを詳しく解説します。
死亡退職金について理解を深めることで、実際に受け取ることになった時に役立ちます。
記事の後半では弔慰金と相続財産の関係性にも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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死亡退職金とは
まずは死亡退職金とはどういったものであるかを解説しましょう。
死亡退職金の定義や、弔慰金との違いなどについてもご紹介します。
死亡後3年以内に確定した退職金
死亡退職金とは、本来故人が受け取るはずであった退職金を、死亡後に遺族に対して支払うものです。
故人が死亡してから3年以内に支払いが確定したものに関しては、相続税の対象となります。
この退職金はどの企業でも支払われるものではなく、退職金が用意されている企業に限定されています。
そのため、退職金が支払われない企業ではそもそも死亡退職金を受け取れないことがあるため注意しましょう。
生前退職でも死亡退職金は発生する
死亡して退職した場合だけでなく、生前に退職した場合でも、死亡退職金が発生することがあります。
それは、退職後に退職金の支払いが確定していない状態で亡くなった場合です。
このケースでは退職金を死亡退職金として遺族に支給します。
弔慰金との違い
死亡退職金と似たものとして、弔慰金(ちょういきん)が挙げられます。
この弔慰金は故人が亡くなった場合、死亡退職金と同様に勤めていた企業から遺族に対して支給されるお金です。
弔慰金には故人への弔いと遺族への慰めの気持ちが込められています。
一方で、死亡退職金は家族を亡くした遺族の生活を保障することを目的としたものです。
弔慰金は退職金とは別の扱いのものとして考えると良いでしょう。
死亡退職金は誰が受け取る?

死亡退職金を受け取る人は、会社の規定や受け取る状況によって異なります。
ここからは、死亡退職金を誰が受け取るのかを以下で詳しく説明していきます。
会社の規定で指名された人
事前に故人が会社に受取人を申請していた場合や、会社の規定で死亡退職金を誰が受け取るか決まっている場合にはそれに従います。
規定によっては、遺言で受取人を指定することも可能です。
一般的に、受取人を事前に指定する場合は、故人の配偶者が指定されています。
必ず死亡退職金を渡したい方がいる場合、事前に指定しておくことをおすすめします。
法定相続人
会社の規定や遺言などで受取人が指定されていない場合、死亡退職金は法定相続人に支給されます。
法定相続人とは、法律で定められた相続人のことで、配偶者や子供、兄弟、親などが法定相続人にあたります。
配偶者は相続人に必ず含まれますが、その他の法定相続人には相続順位が存在します。
相続順位は、第1順位が被相続人の子供、第2順位が被相続人の両親、第3順位が被相続人の兄弟・姉妹です。
死亡退職金の受取人が指定されていない場合は、これらの相続人による遺産分割協議を経て、相続財産を分割します。
子供が未成年の場合はどうなる?
子供が未成年で、死亡退職金の受取人に指定されていた場合でも、本人が退職金を受け取れます。
死亡退職金を受け取ることに対し、子供は何か負担を強いられることはありません。金銭を授与されるだけなので、未成年者でも問題なく受け取れます。
配偶者が、子供の代理人として退職金の受け取り手続きをすることは可能です。
しかし、子供の代わりに配偶者が退職金を受け取ることはできないため注意しましょう。
死亡退職金の相場は?
死亡退職金の相場は、大卒で1,000〜2,000万円、高卒で500〜1,000万円となっています。
高卒でも35年以上勤めた場合には2,000万円程度もらえるなど、勤続年数が長いほど退職金も多くなる傾向にあります。
しかし、上記は管理職や役職ごとに分けられているわけではなく、企業に勤める人全体での退職金相場です。
死亡退職金の支給額はその企業によって様々で、退職金規定も企業に委ねられています。
そのため、上記はあくまで相場であり、勤める企業によってもらえる退職金は変動があると考えるのが良いでしょう。
こちらの記事では、退職金制度の仕組みや平均相場など詳しく解説しています。良ければご覧ください。
退職金の平均額をケースごとに解説 | 退職金の種類と計算方法・傾向についても解説(ベンナビ労働問題)
死亡退職金に相続税は発生する?
相続税が発生するかどうかは、死亡退職金を受け取る際に知っておくべき事項のひとつです。
ここからは死亡退職金に、相続税が発生するかどうかを説明します。
死亡退職金はみなし相続財産である
死亡退職金はみなし相続財産として扱われます。
みなし相続財産とは、被相続人から相続や遺贈されたものではないが、相続財産と同様に扱われるものを指します。
死亡退職金は被相続人が勤めていた会社から、本人が死亡したことによって支払われるものです。
受け取るのは本人ではなく相続人ですが、本人が亡くなったことがきっかけとなっているため、相続財産として扱われます。
死亡退職金の非課税枠
死亡退職金は、みなし相続財産であるため相続財産と同様に相続税が発生します。
しかし、退職金の全額に税がかかるわけではなく、非課税枠が存在しているため、一定額は課税されません。
この非課税枠が存在することで、被相続人の死後、遺族の生活を保障する意味も込められています。
この死亡退職金の非課税枠は「500万円 × 法定相続人の人数」で決定されます。
そのため、法定相続人の人数が3人であった場合には、「500万円 × 3人」という計算式になり、結果的に1,500万円の非課税枠が得られます。
この法定相続人には相続放棄した人の人数も含まれます。
相続放棄した場合には、放棄した当人は分割協議に参加する権利は失います。
しかし、非課税枠は放棄した場合でも変わらないため、覚えておきましょう。
相続放棄すると死亡退職金は貰えない?

相続放棄した場合にも、条件を満たせば死亡退職金をもらうことが可能です。
ここからは相続放棄した場合の、死亡退職金の扱いについてご紹介します。
相続放棄しても指定されていれば貰える
死亡退職金の受取人が事前に指定されていた場合、当人が相続放棄していたとしても死亡退職金をもらうことが可能です。
これは、受取人が指定されていた場合、死亡退職金は相続財産ではなく、その人固有の財産として扱われるためです。
相続放棄して相続の権利を失ったとしても、受取人が自分であった場合には死亡退職金の受け取りが可能なことを覚えておきましょう。
相続放棄した際の注意点
相続放棄した場合でも、自分が受取人に指定されていれば、死亡退職金の受け取りは可能です。
しかし、相続放棄した場合は、相続税の非課税枠が利用できません。
これは、相続放棄することで、相続人としての立場を失うためです。
また、受取人が被相続人になっている場合には相続財産として扱われるため、死亡退職金を受け取ってしまうと、今度は相続放棄できなくなります。
相続放棄したい場合には、自分が受取人に指定されているかどうかを確認した上で、受け取るかどうか判断しましょう。
死亡退職金の受け取り方
死亡退職金をもらう時には、手続きが必要となります。
ここからは、実際に死亡退職金をもらう時の受け取り方法についてご紹介します。
死亡退職届を提出する
死亡退職金を受け取れる場合には、故人が勤めていた会社から死亡退職届をもらいましょう。
死亡退職届をもらったら、そこに必要事項を記入した上で書類を提出します。
遺族が行うのはこの書類の提出のみで、他の手続きなどは会社側が行ってくれます。
死亡退職届の提出に際して用意する書類は企業によって異なりますが、基本的には以下の3つが必要です。
- 退職金請求届
- 被相続人の死亡が分かる書類
- 戸籍謄本などの被相続人と受取人の関係性を証明する書類
上記以外にも必要な書類があれば、用意して提出します。
また、死亡退職金を受け取れるのは、退職規定に死亡退職金について定められている場合のみのため、事前に申請が可能かどうか、会社に問い合わせしておきましょう。
死亡退職金の振り込み時期
死亡退職金は規定がない場合、基本的に申請から7日以内での支払いが労働基準法で義務付けられています。
しかし会社の規定で支払日が定められている場合には、その日に支払えば問題ないとされています。
死亡退職金の振り込み時期は、規定がある場合とない場合で大きく異なることを知っておきましょう。
心配であれば、事前に会社側に質問するなどして、振り込み時期を明確にしておくことが大切です。
死亡退職金の期限
死亡退職金は、故人の死亡から3年以上経過して受け取りが確定すると、一時所得扱いとなり、相続税ではなく所得税が課されます。
3年以内に受け取りが確定しているものに関しては、相続税が課されます。
受け取るまでに3年以上かかっても、3年以内に確定しているものは退職金として扱われる形です。
死亡退職金として扱われるのは、3年が境目であることを覚えておきましょう。
いつまでに死亡退職届を提出すれば良いかは、会社の規定によって様々です。
そのため、会社の規定で届の提出期限が過ぎていた場合、死亡退職金を受け取れない場合があります。
事前に、いつが期限となっているか問い合わせし、その期日までに必要となる届を提出することを忘れないようにしましょう。
弔慰金は相続財産に含まれる?

死亡退職金と扱いが似ている弔慰金ですが、これは相続財産に含まれるのでしょうか。
以下で詳しく解説していきます。
弔慰金は非課税対象
弔慰金は、花輪代や葬祭料と同様に、非課税として扱われます。
これは死亡退職金が故人に対する退職金という扱いである一方、弔慰金が故人の遺族に対してのお見舞い金として支払われる点が関係しています。
法律では「社会通念上相当と認められているもの」は非課税とされており、これに弔慰金が当てはまります。
この「相当と認められているもの」というのは、世間の常識に当てはめた場合、それに合っているということを意味します。
弔慰金は遺族へのお見舞い金であり、それが非課税なのは社会通念に沿っているということが表されているのです。
弔慰金には会社以外に国や自治体から支給されるケースもあり、これも基本的に非課税となります。
しかし、弔慰金が一定額を超えた場合には、課税される可能性があるため注意しましょう。
弔慰金が課税対象となる条件
弔慰金が、一定額を超えた場合は課税されます。
ここからは弔慰金が課税される場合の条件について解説していきます。
業務上で死亡した場合
故人が業務中に死亡した場合には、弔慰金は月給の36ヶ月分(3年分)の支給が認められています。
この36ヶ月分というのは、ボーナスなどを含まない、普通給与のみでの計算です。
この金額を超えた弔慰金については、退職金扱いとなり、金額を超える部分に対して課税がされます。
このオーバーした部分に関しては、死亡退職金の非課税枠が適用となります。
そのため、前述した「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税として扱われます。
例えば、一ヶ月の普通給与が40万円の場合に弔慰金として2,000万円を支給された場合、36ヶ月分である1,440万円までは弔慰金の非課税が適用されます。
弔慰金の非課税枠をはみ出した560万円に関しては退職金扱いとなり、課税対象となります。
ただし、この560万円は退職金の非課税枠が適用となります。
法定相続人が3人であった場合、退職金の非課税枠は1,500万円となるため、この560万円も退職金の非課税枠が適用されます。
そのため、最終的に全額が非課税で受け取ることが可能です。
弔慰金が高額になると、課税対象となるため注意しましょう。
業務以外で死亡した場合
故人が業務以外の要因で死亡した場合には、弔慰金は月給の6ヶ月分が支給されます。
この6ヶ月分にはボーナスが含まれず、普通給与のみで計算されます。
この金額を超えた場合、業務上で死亡した場合と同様に、退職金として扱われます。
例えば、一ヶ月の普通給与が40万円であった場合には、240万円まで弔慰金としての支給が認められる形です。
死亡退職金まとめ

今回は死亡退職金の受け取りや税金の扱いなどを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下のとおりです。
- 死亡退職金は故人が受け取るはずだった退職金を遺族が受け取るもの
- 受取人が指定されている場合はそれに従い、指定されていない場合は法定相続人による遺産分割協議が行われる
- 死亡退職金は相続財産扱いで、相続税がかかる
- 弔慰金は相続財産に含まれず非課税扱いだが、一定額を超えると退職金扱いになる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。
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