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自筆証書遺言保管制度とは?利用するメリットや注意点を紹介
更新日:2022.05.01 公開日:2022.05.23

記事のポイントを先取り!
- 自筆証書遺言保管制度とは法務局で遺言を保管できる制度
- メリットは紛失や改ざんを防げること、全国閲覧可能など
- 注意点は遺言の内容を検認してくれない、申請は本人のみ
- 遺言書原本の保管期間は、遺言者死亡から50年
自筆証書遺言は、自筆で書く遺言書のことを言いますが、令和2年から運用が始まった自筆証書遺言保管制度とはどんな制度なのでしょうか。
この制度によりどんなメリットがあるのか、また注意点についても知っておきましょう。
そこでこの記事では、自筆証書遺言保管制度について解説します。
この機会に、自筆証書遺言保管制度の概要について理解しておきましょう。
後半では、死亡時の通知や遺言書閲覧までの流れについても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 自筆証書遺言保管制度とは
- 自筆証書遺言保管制度のメリット
- 自筆証書遺言保管制度の注意点
- 公正証書遺言や秘密証書遺言との違い
- 自筆証書遺言保管制度の利用方法
- 保管申請を撤回するには
- 2通目以降も申請はできる?
- 死亡時の通知について
- 遺言書閲覧までの流れ
- 自筆証書遺言保管制度の保管期間
- 自筆証書遺言保管制度まとめ
自筆証書遺言保管制度とは
遺言者が全文を自分で書く遺言書のことを、自筆証書遺言と言い、費用が掛からず気軽に作成できるので、関心を持っている人も多いです。
ただ、自筆証書遺言は、作成した方の自由で保管できるのですが、亡くなった後に発見されない、隠されてしまうというケースがあります。
そこで、相続法が改正され、自筆証書遺言保管制度が創られ、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえるようになったのがこの制度です。
自筆証書遺言保管制度は、2020年7月10日より施行されています。
自筆証書遺言書の原本と画像データを、法務局で保管することができ、紛失、改ざんなどから守ることができるようになりました。
自筆証書遺言保管制度のメリット

自筆証書遺言保管制度が施行されるようになって、以前より変わったことは何でしょうか。
制度の4つのメリットについて解説します。
紛失や改ざんのリスクを防げる
以前は、遺言者個人で保管場所を決めていたので、亡くなってから発見されない、改ざんされ、遺言者の意志が叶えられないこともありました。
自筆証書遺言保管制度が施行されるようになってからは、法務局で遺言書の原本と画像データが保管されるために、紛失、盗難、改ざんすることが不可能になりました。
これによって、遺言が叶えられ、安全で確実な遺言方法となりました。
データとして全国から閲覧可能
自筆証書遺言保管制度では、遺言の原本と画像データも一緒に保管されます。
原本が保管されている遺言保管所だけではなく、全国どこの法務局でも閲覧することができます。
また、遺言書情報証明書も全国の法務局で交付が可能です。
遠方に住んでいる場合でも、遺言を見ることができるのはメリットと言えるでしょう。
死亡時に通知してもらえる
遺言者の死亡の事実を確認したとき、生前に遺言者が指定した1名の方に対して、遺言書が保管されているということが通知されます。
死亡時通知は、遺言者が希望する場合に限り実施されます。
遺言者は、遺言書が保管されているということを、確実に一番早く1名の対象者に伝えることが可能です。
この通知によって、遺言書を保管していることを誰にも伝えることなく亡くなったとしても、遺言書が見つからないという事態を防ぐことができます。
検認が不要になる
今までは、遺言者が亡くなり自筆証書遺言書を開封するときは、家庭裁判所で検認を受ける必要がありました。
これは、偽造や改ざんを防ぐためで、検認を受けなければ遺言にある不動産の名義変更、預貯金の払い戻しができませんでした。
自筆証書遺言書保管制度では、この検認が必要なく、相続人はスムーズに遺言書の内容を実行できます。
自筆証書遺言保管制度の注意点

自筆証書遺言保管制度のメリットについて説明しましたが、デメリットや注意点についても把握しておきましょう。
利用には本人確認が必要
遺言者が自ら法務局に行って、遺言書の保管を申請しなければいけません。
申請するときには、写真付きの本人確認証明書が必要で、運転免許証、運転歴証明書、マイナンバーカードなどを提示します。
病気や高齢など、体力的に法務局まで行くことが難しい場合は、自筆証書遺言の保管制度を利用することができません。
家族が代理人として保管申請をすることも認められていませんし、法務局は土日は空いていませんので、時間的に無理という人もいるでしょう。
遺言書の保管には規定がある
保管する自筆証書遺言は、自由に書いていいわけではなく、様式等に決まりがあり、それを守っている遺言書でないと保管できません。
保管できる自筆証書遺言の規定を紹介します。
- A4サイズ
- 紙に模様や色彩がないこと
- 余白をつける
- 片面のみに記載
- ページ番号が必要
- ホッチキスで閉じていない
すでに自筆証書遺言を用意していても、上記の規定が守られていない場合は保管ができませんので、作り直さなければいけません。
内容の検認はしてもらえない
自筆証書遺言保管制度では、遺言書の保管を行いますが、内容の確認はしてくれません。
法務局でチェックするのは、本文が自筆で書かれているか、署名捺印、日付の確認を行うだけで、これが満たしていなければ保管されません。
内容に問題があったとしても、特に指摘されることなく保管されてしまいます。
法務局で、遺言書の内容について質問をしても答えてもらえないので、事前にチェックを受け、問題がない遺言書を作成する必要があります。
住所を変更したら変更の届け出が必要
自筆証書遺言を保管する際には、氏名・住所を登録します。
登録する内容は以下を参考にしてください。
- 遺言者の氏名・住所・本籍
- 受遺者の氏名と住所
- 遺言執行者の氏名と住所
- 死亡時通知年の氏名と住所
これらの一つでも変更があった場合は、変更を遺言書保管官に届け出なければいけません。
変更するたびに届け出が必要となるので、大変面倒です。
原本は返還されない
自筆証書遺言の原本は、相続人に変換されないのもデメリットです。
法務局に自筆証書遺言を保管すると、相続人に原本が渡されることはありません。
中には、遺言書の紙にこだわりを持って作成している人もいますが、法務局に保管することで返還されませんので、普通の紙で作成したほうが良いでしょう。
公正証書遺言や秘密証書遺言との違い
自筆証書遺言の保管制度は、秘密証書遺言とどのような違いがあるのでしょうか。
二つの遺言との違いについて解説します。
公正証書遺言との違い
公正証書遺言は、公証役場の公証人が関与して公正証書という形として残す遺言のことを言います。
自筆証書遺言は法務省で保管するときも、内容のチェックが入りませんので確実に遺言を実行できないこともあります。
これに比べて公正証書遺言は、法律の専門家によるチェックが入りますので内容に間違いがなく、遺言が無効になることも少なく安心です。
確実に遺産を特定の人に残したい方や、自分の気持ちをきちんと文書で残し実行してもらいたいという方におすすめです。
秘密証書遺言との違い
秘密証書遺言とは、公証人と証人の2人以上に遺言の存在を証明してもらうことができ、さらに特定の人間以外は内容を見ることができない秘密にできる遺言です。
ここでいう特定の人間とは、公証人、証人、相続人含め本人以外のことを言います。
遺言の内容が、決められた法務局で閲覧できる自筆証書遺言の保管とは違い、内容を秘密にすることが可能です。
秘密証書遺言は、遺言者が亡くなった後に遺言が発見されないことを防ぎ、さらに遺言の内容を秘密にしたいという方におすすめです。
自筆証書遺言保管制度の利用方法
自筆証書遺言保管制度の利用を考えている方に、利用の流れ、必要なもの、料金を紹介します。
利用に必要なもの
自筆証書遺言保管制度を利用する際に、持参するものを説明します。
- 自筆証書遺言書
- 保管申請書
- 本籍と戸籍の筆頭者の記載がある住民票の写し
- 顔写真付きの身分証明書(運転免許証・運転経歴証明書・マイナンバーカードなど)
- 手数料
利用する流れ
遺言者が自筆証書遺言を保管する際の流れを説明します。
- 自筆証書遺言を作成
- 保管の申請する遺言書保管の決定
遺言者の住所地、遺言者の本籍地、遺言者が所有する不動産の所在地、いずれかの管轄する遺言書保管書から選択します。
- 保管申請書の作成
申請書の様式は、法務局の窓口または法務省のホームページからダウンロード可能
- 必要なものを持参して保管の申請
- 保管証の受け取り
利用料金
遺言書の保管申請手数料は、1通につき3,900円です。
収入印紙を手数料納付用紙に貼って申請します。
保管申請を撤回するには
遺言者が保管している遺言書を取りやめたい場合は、保管書に遺言書の保管の撤回を行わなければなりません。
本人が撤回の申請を行うことで、遺言書の返還を受けることができます。
保管申請の撤回の流れと、必要なものについて説明します。
申請に必要なもの
- 撤回書(あらかじめ作成したものを持参)
- 顔つきの身分証明書(運転免許証・マイナンバーカードなど)
添付書類や手数料は不要です。
申請する流れ
- 遺言書の撤回を申請する遺言書保管所の確認
撤回を行うことができるのは、原本を保管している遺言書保管所のみで、他の法務局や保管所ではできません。
原本がどこに保管されているかは、保管書に記載してありますので確認します。
- 撤回書の作成
撤回書の様式は法務局の窓口、もしくはインターネットでダウンロード可能です。
- 撤回の予約
遺言書保管書の撤回には予約が必要です。
都合のよい日時で、遺言書保管所の予約を取ってください。
- 撤回の手続きを行う
予約した日時に保管所に行き撤回の手続きを行いますが、遺言者本人でないと手続きができないので注意して下さい。
- 遺言書の返却
遺言書が返却されます。
2通目以降も申請はできる?

自筆証書遺言を保管するときに、さらに追加で2通目も保管したいという場合もあるでしょう。
自筆証書遺言を追加で保管することはできますが、申請は最初に保管の申請をおこなった遺言書保管所でなければできません。
死亡時の通知について
遺言者が死亡したときに、通知することができますが、どのように通知されるのか、通知内容について解説します。
関係遺言書保管通知と死亡時通知
自筆証書遺言保管制度では、関係遺言書保管通知と死亡時通知の2種類の通知があります。
2つの通知はどんな内容なのでしょうか。
関係遺言書保管通知とは
遺言書は法務局において閲覧が可能ですが、相続人のうちのどなたか一人が保管所に保管されている遺言書を閲覧した場合、その他の相続人全員にお知らせが届きます。
また、遺言書情報証明書の交付を受けた場合にも同じように相続人全員に、お知らせが届く仕組みです。
死亡時通知とは
遺言者の死亡が確認できた時点で通知対象とされた方に、遺言保管書に遺言書が保管されている旨の通知が届きます。
死亡時通知は、遺言者があらかじめ1人を対象として通知を希望した場合にのみ通知されるシステムです。
法務局の戸籍担当部局と連携されていますので、死亡の事実が確認できたときに相続人の閲覧より先に通知が届きます。
関係遺言書保管通知と死亡時通知の違い
関係遺言書保管通知は、遺言者の死後に相続人が遺言書の閲覧や証明書の交付を受けると通知されるものです。
これは、遺言書の存在を一部の遺族しか知らない場合に、その他の遺族に知らせることができる制度で、他の遺族に内緒で執行するのを防ぐことになります。
死亡時通知は遺言者が指定した方に、死亡したことが通知される制度です。
2つの通知の大きな違いは、関係遺言書保管通知は相続人全てに通知されるのに対し、死亡時通知は遺言者が指定した方にだけ通知されることです。
遺言書閲覧までの流れ
遺族が遺言書を閲覧するにはどうしたらいいのでしょうか。
閲覧に必要なものと、閲覧するまでの流れを解説します。
閲覧に必要なもの
遺言書を閲覧する場合は、保管所に以下のものを持参します。
- 閲覧の請求書
請求書は必要事項を記入して持参する。
様式は法務省のホームページからダウンロード、または法務局の窓口に備え付けられています。
- 顔つきの官公署から発行された身分証明書
マイナンバーカード・運転免許証、運転経歴証明書など
- 手数料
閲覧までの流れ
- 閲覧の請求する遺言保管書の決定
遺言書の閲覧はモニターによる閲覧と原本の閲覧の2つあります。
モニターによる閲覧の場合は、全国の遺言書保管書すべてで閲覧が可能ですが、原本の閲覧は、原本が保管されている遺言書保管所出ないとできません。
- 請求書を作成
請求書の様式は法務省のホームページからダウンロードするか、法務局の窓口にも備え付けられています。
請求書に必要事項を記入して持参します。
- 閲覧の請求の予約
閲覧には予約が必要です。
- 閲覧の請求
必要書類を用意して遺族保管所に予約した日時に行きます。
- 閲覧をする
利用料金
閲覧の手数料はモニターによる閲覧の場合、1回につき1,400円、遺言書原本の閲覧の場合、1回につき1,700円です。
必要な金額の収入印紙を手数料納付用紙に貼って納めます。
自筆証書遺言保管制度の保管期間
自筆証書遺言保管制度には、保管期間があります。
遺言書の原本は、遺言者が死亡してから50年が保管期間となります。
また、データの保管期間は、遺言者の死亡から150年です。
自筆証書遺言保管制度まとめ

ここまで自筆証書遺言保管制度の情報や、メリットや注意点などを解説してきました。
まとめると以下の通りです。
- 自筆証書遺言保管制度とは、法務局で自筆証書遺言を保管できる制度
- 制度のメリットは紛失や改ざんのリスクがなく全国で閲覧可能
- 制度の注意点は、本人以外は申請できない、内容の検認はしてもらえないなど
- 利用には必要書類、本人確認書類、手数料などが必要
- 遺言書原本の保管期間は、遺言者死亡から50年
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。