終活
自筆証書遺言が無効となる条件とは?遺言書を無効にする方法も紹介
更新日:2022.05.01
自筆証書遺言は作成したいときに手軽に記載できますが、無効になるケースについてはご存じでしょうか。
自筆証書遺言が無効になる条件を知ることで、正しい記載方法がわかるでしょう。
そこでこの記事では、自筆証書遺言が無効になる条件について詳しく説明していきます。
この機会に遺言書を無効にする方法について知っておきましょう。
自筆証書遺言を処分すれば無効にできるのかなどについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 自筆証書遺言とは
- 自筆証書遺言が無効となる条件
- 封のない自筆証書遺言は無効になる?
- 後から出てきた自筆証書遺言は無効になる?
- 有効な自筆証書遺言を無効にするには?
- 自筆証書遺言を処分すれば無効にできる?
- 終活ノートがあれば遺言書は必要ない?
- 自筆証書遺言の無効まとめ
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、文字通り遺言者本人が自ら記載する遺言のことです。
自筆証書遺言の特徴としては、思い立ったときに気軽に記載でき、作成する際に費用がかからないことです。
ただし、わざわざ自分で記載して作成した遺言書も、条件によっては無効になるケースもあります。
自筆証書遺言について、以下の章で詳しく説明していきます。
自筆証書遺言が無効となる条件
自筆証書遺言の意味合いがわかったところで、次に無効となる条件について説明していきます。
ケースごとに紹介していきますので以下を参考にしてください。
自筆ではない
自筆証書遺言のポイントとしては、遺言者が自分で記載し作成する必要がある点です。
そのため代筆などはできず、第三者が代理で記入した自筆証書遺言は無効になります。
この他にもパソコンやワープロなどを使用して作成された遺言書も、自筆証書遺言とは認められません。
遺言者が自分で記入した、自筆の遺言書であれば、用紙のサイズや種類に指定はありませんのでご安心ください。
なお、改ざん防止のためにも、鉛筆やシャープペンシル、消せるボールペンなどでの記載はせずに、ボールペンや万年筆を使用して作成することが大切です。
作成日の記載がない
遺言書に作成日の記載がないケースは無効となってしまいます。
複数の遺言書が見つかった場合、記載された日付が新しいものが有効となるため、日付が非常に重要になります。
なお日付を記載する際には、正確に記載する必要があります。
そのため、令和3年11月吉日のように記載した遺言書は無効になりますので注意が必要です。
署名がない
遺言書には本人の署名・押印が必要になりますので覚えておきましょう。
内容が正確であっても、最後の署名や押印がない遺言書は、無効になってしまいます。
印鑑については認印・実印のどちらでも構いませんが、後々トラブルになることを防ぐためにも、できれば実印を使用することをおすすめします。
また、原則として遺言書は1人につき1通です。
そのため、署名する際には連名で記載すると無効になってしまいますので注意しましょう。
押印がない
遺言書が複数枚にわたるケースでは、バラバラにならないようにホチキスなどで順番にまとめることをおすすめします。
また、用紙と用紙の間には署名・押印の際に使用した印鑑にて割り印を押す必要があります。
割り印は別名、契印とも呼ばれており、1枚目と2枚目の間に印鑑を押し、2枚の書類が一続きになっていることを証明できます。
契印があることで、遺言書の前後関係がわかるので説得力が増します。
代理人が作成している
自筆証書遺言は本人が自らの意思で記載したものでないと無効になります。
例えば遺言者に十分な判断能力がないケースでは、遺言能力がないとされてしまいます。
具体的に申し上げますと、認知症や脳血管疾患などで正常な判断が難しいケースなどが挙げられます。
このようなケースでは、2人以上の医師の立ち合いのもとで作成された遺言書であれば、有効とされるケースもあります。
内容が不明確である
遺言書の内容は第三者が見ても十分に理解できるように明確に記載する必要があります。
例えば、「〇〇市の土地を譲る」ではなく、「〇〇市△△町1-2-3」など詳しい情報まで記載するようにしましょう。
また、公序良俗の侵害や支離滅裂、矛盾、明らかな贔屓(遺留分の侵害)など、内容自体に問題があるケースも無効となります。
封のない自筆証書遺言は無効になる?
次に自筆証書遺言の「封」について紹介していきます。
よくある疑問について以下で紹介していきますので参考にしてください。
封が無くても有効
封がない自筆証書遺言は無効になってしまうのではないかと疑問に思われる方も少なくないかと思います。
結論から言いますと、封がなくても遺言書の内容が正確であれば法的に有効です。
自筆証書遺言で封がされていなかったケースでも、本人が作成したものであるのか確認するために家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。
封筒が無くても有効
自筆証書遺言は思い立ったときに気軽に記載できるので、そもそも封筒に入っておらず、メモのような形で残されているものが見つかるケースもあります。
このような場合にであっても遺言書として正確に記載されていれば有効になります。
そのため、家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。
開封してしまったら無効になる?
基本的には自筆証書遺言を勝手に開封することは禁止になっています。
この理由としては勝手に開封すると、偽装したり、破棄してしまったりするリスクがあるためです。
法律にて遺言書は家庭裁判所で相続人の立会いのもと、開封しなければいけないことが定められていますので覚えておきましょう。
万が一勝手に開封してしまった場合には、5万円以下の過料が課せられることがあるので注意してください。
たとえ自筆証書遺言書が開封されてしまったとしても、遺言書の効力は有効になります。
後から出てきた自筆証書遺言は無効になる?
遺産分割終了後に自筆証書遺言が出てくるケースも中にはあるかと思います。
こういったケースでは後から出てきた遺言書はどういった扱いになるのか、以下で紹介していきます。
後からのでも有効
遺言書は基本的に遺言者の意思が最も重要であると考えられているため、気が変わったときには何度でも修正して記載できます。
そのため、後から自筆証書遺言が見つかるケースも少なくありません。
このようなケースでは、その内容に問題がなければ法的な効力があります。
複数遺言書が存在する場合は?
遺言書が複数見つかったケースでは、基本的には記載された年月日が新しいものが有効になります。
詳しく言いますと、遺言書の内容が抵触するケースでは、後から記載した遺言が有効となり、前の遺言は撤回されることが法律で定められています。
有効な自筆証書遺言を無効にするには?
次に、すでに有効であるとされた自筆証書遺言を無効にするにはどうすれば良いのか紹介していきます。
遺産分割調停・裁判に申し立てる
遺産分割協議にて話し合いがまとまらなかったケースでは、遺産分割調停や裁判にて申し立てをすることになります。
具体的に言いますと、裁判所に「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」の申立てをしてください。
この申し立てに時効はありません。
そのため、遺言者が亡くなられてから何年経過しても申し立てをすることができます。
遺産分割協議で了承させる
自筆証書遺言が見つかったとしても、相続人や受遺者、遺言執行者の全員の同意があれば遺言の内容と異なる遺産分割ができます。
遺言執行者の同意については、必要とされるケースと不要とされるケースがあるので、詳しくは住んでいる地域の家庭裁判所に確認することをおすすめします。
自筆証書遺言を処分すれば無効にできる?
自筆証書遺言を無効にする方法を紹介してきましたが、処分すれば無効にできるのではないかと思われた方もいるかと思います。
この考え方には注意が必要になるので以下をご覧ください。
遺言書の破棄は罪になる
遺言書を見つけた際に勝手に破棄した場合には、刑法259条の私用文書毀棄罪に問われる可能性があります。
破棄とは具体的に言いますと、遺言書を捨てたり、燃やしたり、隠したりする行為のことです。
故意に遺言書を破棄して罪に問われた場合には、ペナルティとして5年以下の懲役が課せられます。
内容を勝手に変更しても罪になる
遺言書に手を加えて勝手に内容を変更した場合には、刑法159条1項の有印私文書偽造罪に問われる可能性があります。
例えば、相続人により遺言書が書き換えられ、自分の遺産相続分が増えるように修正したケースなどが挙げられます。
このような場合には、ペナルティとして3カ月以上5年以下の懲役が課せられることになります。
終活ノートがあれば遺言書は必要ない?
近年では終活が話題となり、エンディングノートと呼ばれる終活のためのノートを用意される方も増えています。
このエンディングノートは、生前や死後に関係なく自分の希望を自由に記載できるものになります。
この中には、終末期の医療や葬儀、お墓の希望などを記載するだけでなく、遺産相続について書かれていることもよくあります。
しかし、このエンディングノートには、法的な効力はありません。
実際に遺産相続する際には、遺言書が必要になります。
自筆証書遺言の無効まとめ
ここまで自筆証書遺言が無効になるケースや条件などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 自筆証書遺言とは、文字通り遺言者本人が自ら記載する遺言のことである
- 自筆証言遺言には、作成日、署名、押印が正しく記載されていないと無効になる
- 複数の遺言書が存在した場合、新しい遺言が有効となり前の遺言は撤回される
- 自筆証言遺言を無効にする手段があるが、破棄・変更は罪となる
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
田中 大敬(たなか ひろたか)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。