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遺言書が無効になる条件とは?正しい遺言書の書き方を紹介
更新日:2024.01.24 公開日:2022.04.21

記事のポイントを先取り!
- 遺言書の種類は3つある
- 書き方を間違えると無効になることがある
- 遺言書を勝手に開けてはいけない
- 遺言書は家庭裁判所に申し立てると無効になる
遺言書は遺言を残すために書きますが、無効になる条件についてご存知でしょうか。
遺言書がどのような状態だと無効になるのか知っておきましょう。
そこでこの記事では、遺言書が無効になる条件について詳しく説明していきます。
この機会に遺言書について覚えておきましょう。
遺言書を無効にする方法についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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遺言書とは
そもそも遺言書とはどのようなものなのでしょうか。
遺言書の目的
遺言書は死後残る自分の財産を、誰にどうやって分けるかなどを書いたものです。
主に亡くなった後の遺産争いを避けたり、自分が希望する人に遺産を分ける目的で書かれます。
遺言書では、相続分や遺産分割方法の指定ができます。
指定すれば、本来法定相続人ではない人にも、財産を譲ることができます。
また、遺言書では相続する権利を剥奪することもできます。
本人が特定の相続人に財産を渡したくないときは、相続する権利をその相続人からある程度剥奪できます。
遺言書の内容を執行する人も指定できます。
遺言執行者を指定しておくと、執行者を中心に進めて、相続手続きを速やかにできるでしょう。
隠し子を遺言書で認知したり、未成年の子供の後見人を指定することもできたりと、遺言書には自分の叶えてほしいことを書くことができます。
ただし、遺言書の書き方は民法で決まっており、法律の形式の通り正しく作らないと無効になってしまうため注意が必要です。
遺言書の種類
遺言書は主に三種類あります。
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の三種類に分かれます。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自分で書く遺言書のことです。
遺言全文、日付、名前を自筆で書いて、押印します。
誰かが立ち会う必要もなく、紙とペンと印鑑さえあれば1人ですぐに作ることができます。
しかし、全て自筆で書く必要があります。
内容の追加や修正する場合は、民法に記載された方法通りに修正しなくてはなりません。
書き方によっては、無効になってしまうのが自筆証書遺言の特徴です。
公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で作ってもらう遺言書です。
証人を二人立ち会わせたり、費用がかかったりと自筆証書遺言より手間がかかりますが、間違いが少なく無効になりにくいのが特徴です。
公正証書遺言は自分で書くのではなく、公証人という法律の専門家に公正証書として作ってもらいます。
公正証書とは、国の機関が作って保管する書類のことです。
公正証書遺言は公証役場に保管されるので、失くしたり偽造される心配がありません。
公正証書遺言を作るときは、遺言の内容を公証人に伝えます。
障害があって喋れなかったり耳が聞こえなかったりする場合でも、筆談や手話通訳などで作ることができます。
しかし、公証人に遺言を伝えなくてはならず、証人もその場に二人立ち会うため、遺言の内容を秘密にすることはできません。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は自分で書いたものを公証役場に持って行って、遺言書の存在を証明してもらうものです。
秘密証書遺言は、自筆の署名と押印があれば、パソコンでの作成や代筆が可能です。
公証役場では遺言書がある事を証明してもらうだけなので、内容が他の人に知られることはありません。
しかし、法律の専門家に監修してもらうわけではないので、自筆証書遺言と同じようにミスがあると無効になってしまいます。
手間をかけて書いた遺言書を、存在証明までしてもらったのに無効になるのは残念なことです。
そのため秘密証書遺言はあまり利用されません。
遺言書が無効になる条件

遺言書が無効になるのはどういう時なのでしょうか。
遺言書の種類別に見ていきましょう。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言には、書き方に関する条件があります。
遺言書の形式に不備がある
遺言書の形式に不備があると、無効になってしまいます。
基本的に遺言書の書き方は自由ですが、守らなければならない形式があります。
自筆証書遺言の場合、作成した日が明確に書かれていなかったり、自筆での署名や押印がないと無効になります。
訂正も、間違った方法でするとその部分や遺言書自体が無効になってしまいます。
無効になるのが心配でしたら、訂正せず最初から書き直しましょう。
内容が不明瞭である
きちんとした形式で書かれていても、内容が不明瞭だと無効になります。
具体的な内容が書かれていなかったり、不動産などが明確に書かれていないと、遺産を分けるときにトラブルになります。
相続人を指定してもその人に相続するのか、遺贈するのか、はっきり書くようにしましょう。
相続人も、どこの誰なのか、住所まで書いておくとすぐ遺産分割を始められます。
遺言書は誰が見てもすぐわかるように書きましょう。
連名で作成した
2名以上が作った遺言書は民法975条で禁止されています。
連名で作成せず、一人の名前で作成しましょう。
夫婦共同での遺言書も無効になります。
夫婦それぞれで遺言書を作るようにしましょう。
他人が介入している
認知症などで、遺言書を書くことが困難であるにも関わらず、遺言書が存在する場合、本人ではなく別の人が書いたものとみなされ、無効になります。
判断力がないということは遺言する能力も無いということになります。
遺言書がどんな効力を持つのか理解できない状態で作られた場合、有効性が疑われます。
また他人が介入していることで、その人に有利な遺言になっている可能性があります。
相続人の中の誰かが、自分に有利な遺言にするために誘導して書かせるということがあります。
そのため他人が介入した遺言書は無効になります。
公正証書遺言の場合
無効になるのが稀な公正証書遺言でも、無効になることがあります。
証人が不適切である
二人必要な証人が一人しかいなかったり、証人が未成年だったりと証人が不適切だと、公正証書遺言でも無効になります。
また、証人が認知症であったり、遺言者や公証人の血縁者や利害関係があるなど、証人になれる人でも問題があると、その公正証書遺言も無効になります。
仲の良い友達など、証人に適している人に証人を頼むときは、その人に問題がないか確認してから頼みましょう。
公正証書遺言を開封する際は、書かれている内容だけではなく、証人が適切な人かどうかも確認するようにしましょう。
遺言能力がない
遺言者も、認知症や精神障害で判断能力がなかったりして、遺言ができない場合は遺言能力がないとして無効になります。
また、遺言を筆談や手話通訳等を使って伝えられないと、遺言能力があると判断されません。
遺言能力の有無は、遺言書が無効になるかどうかの争点で多く取り上げられます。
公正証書遺言を作る際は、遺言者の判断能力がしっかりしている時に作りましょう。
公序良俗に反する
公序良俗に反する内容の遺言書は無効です。
不平等な物であったり、非人道的な内容だと、実行できないので無効になります。
遺言書には公序良俗に反しない事を書きましょう。
秘密証書遺言の場合
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言を組み合わせているようなものなので、無効になる条件も自筆証書遺言と公正証書遺言と共通している所があります。
遺言書の形式に不備がある
形式に不備があると無効になります。
自筆証書遺言では全て自筆で書かないといけませんが、秘密証書遺言はパソコンや代筆が可能です。
ただ、署名の部分は必ず自筆にし、押印もしておかないと無効になります。
作成日も分かるように書いておかないといけません。
訂正方法も間違えていると無効になります。
秘密証書遺言は自分以外に遺言の内容がバレないのが利点ですが、それゆえ形式を確認できません。
書き終わったら不備がないか確認しましょう。
証人が不適切である
秘密証書遺言も、証人が不適切だと無効になってしまいます。
証人は遺言書が存在することを証明するために立ち会ってもらいますが、証人になることのできる人には条件があります。
- 未成年者
- 推定相続人・受遺者、これらの人の配偶者や直系血族
- 公証人の配偶者・4親等内の親族、書記、使用人
以上に当てはまる人は証人になることができないので注意しましょう。
遺言書の書き方が正しくても、証人選びを間違えてしまうと、遺言書は使えなくなります。
無効にならないために、証人はきちんと選びましょう。
遺言書の正しい書き方

無効にならないためには、書き方を分かっておかないといけません。
遺言書の正しい書き方を知りましょう。
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文、日付、名前を自筆し、押印して作ります。
縦書きか横書きかは自由で、用紙にも制限はありません。
筆記具は何でもいいですが、改ざんされるおそれを避けたい場合はペンを使いましょう。
2019年からは、遺言書に添付する財産目録に、パソコンや通帳のコピーを使えるようになりました。
ただし、パソコンで作ることが認められているのは財産目録のみです。
財産目録をパソコンなどで作っても、遺言書自体は必ず自分で書きましょう。
遺言の訂正や文を削除する時は、訂正したいところを二重線で消し、訂正印を押します。
修正ペンや黒塗りでの訂正はできません。
訂正する場合は、横書きの場合は二重線の上、縦書きの場合は二重線の横に訂正したい数字などを書きます。
文に付け加えたいことが出てきた場合、吹き出しなどで文を付け加える所を指定し、その中に加えたい文を書き入れ、付け加えた所の近くに訂正印を押します。
これらのことを終えたら、遺言書の末尾か訂正した所の近くに、訂正した内容を書いて署名します。
公正証書遺言の書き方
公正証書遺言は、遺言者が公証人に遺言の内容を喋り、公証人が内容を文章にして、公正証書として作ります。
遺言者は証人二人と一緒に、本人確認書類等をもって公証役場に行きます。
そこで公証人に遺言の内容を喋り、文章にしてもらいます。
最後に遺言者、証人が確認し、署名押印をします。
原本は公証役場で保管され、遺言者の元には謄本が渡されます。
公正証書遺言は自分で変えられません。
内容を大幅に変えるには、新しく遺言書を作る必要があります。
複数の遺言書があると、日付が最新の遺言書が優先されるので、新しく作った遺言書を優先します。
公正証書遺言で作成していたなら、新しいものも公正証書遺言に統一した方が良いでしょう。
細かな誤記など、大きくない変更であれば、公正証書や補充証書を作成して対応する方法もあります。
公正証書で変更するには追加費用が必要になります。
内容を変更したい場合には、まずは遺言書を作成してもらった公証人や弁護士等の専門家に相談しましょう。
秘密証書遺言の書き方
秘密証書遺言は、遺言者が自分で作った遺言を、証人と一緒に公証役場に持ち込んで、遺言書の存在を保証してもらいます。
秘密証書遺言は、署名と押印を遺言者の直筆にすれば、遺言書本文をパソコンで作成したり、代筆したりすることができます。
基本的な書き方は自筆証書遺言と同じになります。
遺言書は遺言者本人が保管します。
遺言書は勝手に開けると無効になる?
遺言書を隠したり捨てたりするのはもちろんダメですが、遺言書は家庭裁判所で検認しないと効果がありません。
公正証書遺言は必要ありませんが、自筆証書遺言と秘密証書遺言については検認が必要です。
遺言書の開封は検認が必要
検認については法律で決まっています。
検認することで、遺言書の内容を裁判所で明確にし、その後に偽装されたり変造されるのを防ぐことが出来ます。
検認せずに開封した場合は、5万円以下の過料を科せられる可能性があります。
自筆証書遺言は、保管している人か遺言書を発見した相続人が、遺言者の死亡後、すぐに遺言書を家庭裁判所に提出して、検認を請求しなければなりません。
裁判所に検認を請求する際の申立書を、裁判所のホームページからダウンロードして請求します。
遺言者の出生から亡くなるまでの全ての戸籍謄本や、相続人全員の戸籍謄本をそろえておきましょう。
検認を請求した後、相続人は家庭裁判所から、遺言があることを知らされます。
遺言書は、家庭裁判所で相続人立ち会いの元で開封されなければならないので、できる限り立ち会うようにしましょう。
やむを得ない場合は欠席しても問題ありません。
検認手続きが終わると、家庭裁判所で検認済証明書が発行されます。
これで、遺言書の検認手続きが完了となります。
検認前でも無効にはならない
検認せずに遺言書を開封しても、開封した人の相続の資格や遺言書の効力が失われることはありません。
効力が失われることはありませんが、過料を科せられることになります。
開封してしまった場合は、速やかに家庭裁判所へ相談して、指示に従って手続きしてください。
遺言書を隠したり、捨てたり、書き換えたりしてしまった場合には相続人の権利を失いますので注意が必要です。
遺言書は無効にできる
遺言書は無効にできる場合があります。
相続人全員が同意すれば、遺言書とは違った形で遺産を分けられます。
しかし、これは相続人全員が同意した場合の話です。
話し合いで決着がつかない場合、遺言書を無効にするために家庭裁判所で申し立てをすることができます。
家庭裁判所で申し立てができる
無効にしたい場合は、家庭裁判所で遺言無効の調停を申し立てます。
調停は、調停委員が当事者間で仲裁し、お互いの主張を聞いて、妥協点を見つけて解決していきます。
この調停で相続人全員が、遺言書の無効に合意すると、遺言書の無効が確認されて、合意した内容を調書に記載して調停が成立します。
調停調書は判決と同じ効力を持つので、遺言書を無視して遺産相続することが出来ます。
第三者に取り持ってもらう話し合いで解決するので、調停での解決が難しいと思われる場合は、調停を省略して訴訟を申し立てることができます。
遺言無効確認訴訟のやり方
遺言無効確認訴訟とは、遺言書が法律的に無効だということを、裁判所に確認してもらうための裁判手続きのことです。
訴訟を提起し、遺言が無効だと確認する判決を得ることで、遺言に基づく財産分配を防ぎます。
遺言無効確認訴訟では、無効だと主張する相続人が原告に、有効だと主張する相続人が被告になります。
遺言執行者が指定されているケースでは、遺言執行者が被告になることもあります。
訴訟を提起する裁判所は、家庭裁判所ではなく、地方裁判所か簡易裁判所です。
遺言無効確認請求訴訟は、遺言者の死亡後でなくては提起できません。
遺言者の生前に提起しても、不適法として却下されます。
遺言無効確認請求訴訟も、通常の裁判と変わらないので、当事者からの事実関係の主張と、その証拠の取り調べで裁判が進んでいきます。
当事者の手元にある書類や証人尋問が事実関係を裏付ける証拠になります。
遺言能力が関わる事案などでは、文書送付嘱託で遺言者が入院していた先から、医療情報の開示を求めて、提出された文書が証拠になることがあります。
自筆証書遺言が本当に自筆なのか疑われる事案などでは、故人の筆跡鑑定が行われることもあります
遺言無効確認請求訴訟の結果、遺言に無効原因があって無効になると判断された場合、請求認容判決が下され、遺言は無効になります。
遺言に無効原因がなく、有効だと判断された場合、訴訟は棄却されます。
地方裁判所や簡易裁判所での、遺言無効確認請求訴訟の判決が不服の場合、控訴することで上級裁判所での再度判断を求められます。
控訴審での判断に不服がある場合、さらに上告審での再度判断を求められます。
遺言書の無効まとめ

ここまで遺言書が無効になる条件や、無効にする方法などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 遺言書に不備があると無効になる
- 証人に不備があっても無効になる
- 遺言書を開封するには家庭裁判所で検認する必要がある
- 遺言書は家庭裁判所に申し立てて無効にできる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者

袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。