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認知症の場合の遺言書は有効?判断基準と無効の場合の対処法を説明

更新日:2025.01.21 公開日:2022.04.25

遺言書

記事のポイントを先取り!

  • 認知症時の遺言書でも有効になる場合がある
  • 遺言能力の有無が有効の判断基準
  • 遺言書無効時には専門家へ依頼

認知症の方が作成した遺言書は有効なのでしょうか?
有効な遺言書の判断基準や、もし無効だった場合の対処法を、いざというときのために知っておきましょう。

この記事では、認知症時に作成した遺言書の有効性について詳しく解説します。

認知症でも有効となる遺言書のケースや、無効になってしまったケース、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

記事の後半では、認知症が重度で遺言書が作成できない場合の対処法もお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

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  1. 認知症の場合の遺言書の有効性
  2. 遺言者が認知症だった場合
  3. 認知症でも有効となる遺言書の残し方
  4. 遺言書が無効になった場合の対処法
  5. 重度の認知症では遺言書を残すことができない
  6. よくある質問
  7. 認知症の場合の遺言書のまとめ
  8. 介護健康福祉のお役立ち通信
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認知症の場合の遺言書の有効性

認知症の方が作成した遺言書でも、ただちに無効になるわけではありません。
しかし遺言書が有効と認められるためには、遺言者の「遺言能力」の有無が重要なポイントとなってきます。

遺言書には遺言能力が必要

遺言書を作成するには遺言能力が必要です。
遺言能力とは、「遺言書の内容を理解できているか」「遺言書の効果を識別できるか」などの能力を指します。

遺言書には主に、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言の3種類があります。
このうち公正証書遺言のみ、公証役場で公証人と証人2人の立会いのもと、作成されます。

第三者が立ち会う公正証書遺言は、ほかの遺言書と比較して無効になる確率が低くなりやすい遺言書です。
しかし、公正証書遺言であっても必ずしも有効になるわけではありません。

重要なのは、遺言者に遺言能力があるかどうかという点です。

遺言能力とは

遺言能力には主に「行為に関する遺言能力」と「意思に関する遺言能力」の2種類があります。
それぞれ詳しくお伝えします。

行為に関する遺言能力

民法961条により「15歳以上でなければ遺言を作成できない」と定められています。
15歳以上であれば、未成年でも親権者や法定代理人の同意なく遺言書の作成が可能です。

意思に関する遺言能力

自らの行為や判断で、どのような結果が生じるのかを理解できる能力のことです。
例えば、「長男に自宅の土地と家屋を相続する」と遺言で残したとします。

自宅の土地と家屋が長男の所有物になる、という事実を遺言者が理解できない場合は、意思能力がないと判断されます。

また、遺言者が昏睡状態にあった場合も、遺言能力はなかったという判断となります。
特に自筆証書遺言は、立会人がいなくても自由に書ける(修正もできる)遺言書のため注意が必要です。

https://www.eranda.jp/column/24906

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遺言者が認知症だった場合

遺言者が認知症だった場合、有効と判断されるかどうかは以下の3つの基準が参考となります。

遺言作成時の心身状態

遺言作成時、遺言者がどのような心身状態だったのかは重要なポイントです。
遺言能力の有無は、医学的観点行動観察的観点の両方から判断されます。

遺言能力の医学的観点

医学的観点とは、遺言者の認知症の種類や症状、また症状の出る頻度や重度さも含まれます。
認知症といっても種類は様々です。

根本的治療が困難なタイプもあれば、内科的疾患が原因の認知症や、処方された薬で認知症の症状が出ることもあります。

例えば、アルツハイマー型や血管性認知症、レビー小体型認知症などは治療が難しいタイプです。
パーキンソン病が発端となる認知症は、身体症状が先行して、精神障害が起こらない場合もあるようです。
頭部外傷・手術が原因の認知症は、症状の頻度がまだらで将来的に回復の可能性もあるとされています。

遺言能力の行動観察的観点

医学的観点から見た遺言者の徘徊・被害妄想といった異常言動は、それだけで認知症と断定するのは難しいようです。

認知症の中核症状は、「記憶力認知機能の低下」と定義づけられています。
そのため、中核症状を軸として事情を調べる必要があるとされています。

一般的には認知症が進むと無気力になり、あまり行動は起こさないことが多いようです。
徘徊やうつでの異常行動は、遺言者が活動的に動ける状態にあるとも考えられるでしょう。

遺言が有効かどうかは、医学的観点を尊重しつつも、遺言者と相続人の立場になった法的観点も考慮して判断されます。

遺言内容の理解力

遺言に記載されている内容や、もたらされる影響についてしっかり理解できる状態だったのかも、遺言能力の判断ポイントです。

治療が困難なアルツハイマー型や血管性認知症を患っていた場合でも、遺言内容が単純であれば遺言能力が肯定されることもあります。

遺言内容の合理性

生前の遺言者の行動や人間関係等を考慮して、遺言内容が不自然ではないかを確認します。
生前の遺言者と相続人との関係や交際状況、遺言書作成にいたる経緯なども参考となるようです。

遺言内容と照らし合わせて、合理性があるのかが調べられます。
合理性を確認するためには、遺言者の生前の日記や書き直す前の遺言書などが参考資料となります。

https://www.eranda.jp/column/24786

認知症でも有効となる遺言書の残し方

認知症時に作成する遺言書を、有効にするための手順を解説します。
行うべき手順は以下の3つです。

認知症検査を受ける

まず、医療機関で認知症の検査を行いましょう
遺言能力があることを間接的に推しはかれる証拠が作れます。

なぜ間接的かというと、遺言書を作成する現場で行う検査ではないためです。

認知症の検査には、長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式)などのテストもありますが、あくまでも目安に過ぎません。

長谷川式とは、認知症かどうかを判断するための簡易的なテストです。
30問中、20問以下の場合は認知症である確率が高くなり、10点以下は重度の認知症の疑いがあるとされています。

しかし、テスト結果が高いと軽度で、低いと重度だというわけではありません。
認知症の程度を正確に測るものではないため、確定診断とならない点は留意しましょう。

MRIなどで脳の写真を撮り、認知症であると医師に判断されれば確定となりますが、その場合は成年後見人を立てなくてはなりません。

専門家に相談する

次に弁護士など、法律の専門家に相談しましょう。
遺言書は、法律に則って作成するものであり、内容や形式は細かく定められています。

自由に書ける手紙のようなものではないことを認識してください。
遺言書に記載できるのは、法律であらかじめ規定されている「遺言事項」です。

遺産分割の指定や禁止、相続人以外への遺贈などがありますが、これらは民法に沿った内容での作成が必要です。
遺言書は記載する際の形式も非常に重要です。

例えば日付を「令和〇年〇月吉日」とした時点で、その遺言書は無効と判定されます。
日付の数字は必ず入れなければなりません。

遺言書は手書きが基本のため、パソコンで作成した書面も無効となるので気を付けましょう。
このように、遺言書を作成するには有効にするためのポイントがいくつもあります。

法律のプロに依頼すれば作成の手間も省けますし、有効な遺言書の作成が可能です。

有効な遺言書には遺言能力の有無が重要視されることから、どのような証拠を準備すればいいのか相談に乗ってくれる点もメリットです。

https://www.eranda.jp/column/25258

遺言書を作成する

最後に、遺言書の作成に取りかかります。
遺言書には自筆証書遺言秘密証書遺言公正証書遺言の主に3種類があります。

認知症の疑いが少しでもあった場合、自身で作成する自筆証書遺言と秘密証書遺言は無効となるリスクが高いといえます。

100%有効とは言い切れませんが、遺言書を作成するなら公正証書遺言がおすすめです。
公正証書遺言は、公証人保証人2名の立会いのもとに作成する遺言書です。

公証人は、元裁判官や検察官など法律に携わった経験のある人しかなれません。
遺言者が口授(こうじゅ・口頭で伝えること)したことを、公証人が遺言書として作成していきます。

内容を精査しながら作成してくれるため、無効となる確率が低くなる遺言書といえるでしょう。
さらに公正証書遺言は、遺言者が亡くなったあとに家族のみで開封しても問題ありません。

自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合、開封するためには家庭裁判所への検認申請が必要です。
作成時は手間がかかりますが、公正証書遺言を作成しておくことをおすすめします。

https://www.eranda.jp/column/25253

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遺言書が無効になった場合の対処法

作成した遺言書が無効だと判断された場合は、どうすればいいのでしょうか?

専門家に任せる

法定相続人が複数いた場合、直接交渉を進めるのはなかなか難しいようです。
感情的になり冷静的な判断を誤る可能性もあるため、弁護士など専門家に仲介してもらうことをおすすめします。

法定相続人同士で話し合いをするよりも、早期に解決できる場合もあります。

遺言無効の調停を申し立てる

弁護士に仲介してもらっても上手くまとまらなかった場合は、家庭裁判所に調停の申し立てをします。
調停でお互いの言い分を聞いて、話し合いで解決する方法です。

すでに弁護士に依頼している場合は、調停も引き続き弁護士に依頼するのが一般的です。

遺言無効確認訴訟をする

調停でも話がまとまらない場合は、遺言無効確認訴訟を起こします。
他の法定人との直接交渉や、家庭裁判所での調停までは、話し合いによる解決を求めるものです。

話し合いのみで解決することはほとんどないようなので、調停の段階を踏まずに訴訟を起こすケースもあります。

重度の認知症では遺言書を残すことができない

すでに重度の認知症を患っていた場合、遺言書を残すことはできません。
しかし、遺言書が作成できなくても相続人にできることがあります。

それぞれ詳しく解説します。

遺留分侵害額の請求

法定相続人には、法律で遺留分が保障されています。
遺留分とは法定相続人に最低限、相続できる割り当てを指します。

もし遺言書があったとしても、遺留分のほうが優先されるよう定められています。
法定相続人にあたるのは、遺言者の配偶者子ども祖父母などです。

遺言者の兄弟や甥・姪は、法定相続人であっても遺留分の請求はできないため注意しましょう。

特別受益の持ち戻しを主張する

特別受益とは、法定相続人が遺言者から生前贈与されていた資産を指します。
例えば、遺言者の生前に長男にだけ自宅が贈与されていたりした場合などです。

特別受益を受けた法定相続人がいる場合、その分を遺産に持ち戻すよう主張できる可能性があります。

寄与分の主張

遺言者の生前、無償で介護にあたっていた法定相続人は、寄与分を主張できます。

https://www.eranda.jp/column/25263

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よくある質問

Q:遺言書は何歳から作成できる?

A:遺言書の作成は15歳からできます。

Q:認知症の方が書いた遺言書は無効になるの?

A:遺言書の効力は、遺言者の遺言能力の有無によります。

Q:遺言能力の有無の判断の基準は?

A:遺言能力は、遺言書の内容や効果を確認できるかを指します。

認知症の場合の遺言書のまとめ

ここまで、認知症の場合の遺言書について解説してきました。

まとめると以下の通りになります。

  • 認知症時の遺言書は直ちに無効にはならない
  • 遺言者の遺言能力の有無が有効となる重要なポイント
  • 遺言書が無効になった場合は専門家に依頼するのがおすすめ

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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監修者

評価員(たなか)

田中 大敬(たなか ひろたか)

厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター

経歴

業界経歴15年以上。葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから著名人や大規模な葬儀までを経験。お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、特に士業や介護施設関係の領域に明るい。

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