お葬式
浄土宗とは?経典・葬儀・仏壇の飾り方を徹底解説
更新日:2023.07.26
浄土宗は仏教の主要な宗派の1つであり、名前を聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、その歴史や経典については詳しく知らないという方もいらっしゃるかと思います。
そこで今回は、浄土宗はどういった宗派なのかを詳しく説明していきます。
後半では浄土宗と浄土真宗の違いについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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- 浄土宗とは
- 浄土宗の戒名
- 浄土宗の本尊
- 浄土宗の有名なお寺
- 浄土宗の経典
- 浄土宗のしきみとは?
- 浄土宗の葬儀
- 浄土宗の位牌
- 浄土宗のお布施について
- 浄土宗の仏壇の飾り方
- 浄土宗と浄土真宗の違い
- 浄土宗の袈裟について
- 浄土宗の塔婆とは
- 浄土宗の大学
- 浄土宗の宗紋について
- よくある質問
- 浄土宗のまとめ
浄土宗とは
まずは浄土宗とはどういった歴史を持っていて、どのような教えを説いているのかを解説します。
浄土宗の成り立ちや思想を知ることで、この宗派をより深く理解できるでしょう。
浄土宗の歴史
浄土宗は、法然によって1175年(承安5年)に開宗されました。
法然は13歳から比叡山で修行を始め、様々な文献や経典を勉強した末に万人救済は口称念仏(くしょうねんぶつ)にあると確信を得るに至ります。
法然が浄土宗を開宗したのは彼が43歳の時でした。
開宗してからは、比叡山から東山吉水草庵へと移り、そこで仏教の教えを人々に広めました。
法然の死後は信空が後継者となりましたが、教えの解釈の違いなどから現在までに何度も分裂しています。
現在では「鎮西派」が浄土宗の主流となっており、一般に浄土宗と言った場合、この「鎮西派」を指します。
浄土宗の教え
法然は浄土宗の教えとして、「南無阿弥陀仏(念仏)を唱えることで死後に極楽浄土へ行ける」と説いています。
この教えのことを専修念仏といい、浄土宗ではひたすらに念仏を唱えることが重要とされています。
これは、浄土宗では阿弥陀如来を本尊とし、念仏を唱えることで本願力により阿弥陀如来の力によって救済されると考えられているからです。
他の多くの宗派は、自分の力で浄土へと行くための教えを説いていますが、浄土宗では阿弥陀如来の力で極楽浄土に往生できると説いています。
法然の時代には仏教は貴族階級の人々のもので、庶民の間では一般的でありませんでした。
しかし、この浄土宗の教えは敷居が低かったため、庶民の間で教えが広がることに繋がったのです。
法然は万人が、庶民でも救済される方法として、浄土宗の教えを庶民に広めました。
浄土宗の総本山について
浄土宗の総本山は、京都の「知恩院」です。
総本山である「知恩院」は、華頂山知恩教院大谷寺(かちょうざんちおんきょういんおおたにでら)が正式名称になります。
総本山の知恩院は、法然が浄土宗を開いて、建暦二年(1212年)に亡くなった場所です。
本殿は御影堂(みえいどう)と言う法然像をおまつりしている建物があり、高台には法然の御廟(ごびょう)があります。
境内の面積は7万3000坪で、重要文化財とされている三門・経蔵・大方丈・小方丈などが有名です。
現在は、周辺に浄土宗の信者のための宿泊・修練道場のための施設もあります。
浄土宗の開祖について
浄土宗を開いた人は法然です。
浄土宗の開祖である法然は、1133年に美作の国に生まれ、幼い頃に父を亡くしたのをきっかけに出家して比叡山にこもって修行しました。
比叡山から下山してからは、東山吉水草庵を住居として、念仏の教えを広め、彼が43歳の時に浄土宗の開祖となったとされています。
浄土宗は「専修念仏」という念仏を唱えることで救われるという教えであり、当時の人々に広く支持されました。
一時は、一般の庶民のみならず貴族や武士や天皇までもが浄土宗の開祖の法然の教えを信じるようになったのです。
浄土宗の開祖の法然は、幼い頃に父を殺害されたのですが、父からは仇討ちをしてはいけないという遺言が残されました。
この遺言と、父が死の間際に唱えた念仏が法然の教えの基礎となったと言われています。
浄土宗の開祖の法然は、人々を救いたいという信念のもと仏門に入り、数々の苦難を乗り越え、今日の浄土宗の教えを広めたのです。
浄土宗の戒名
浄土宗の戒名について解説します。
戒名とは
戒名とは、仏門に入って戒律を守ることを誓った証しとして授けられる名前です。
戒名は葬儀の際に白木位牌(しらきいはい)に書き込み、祭壇に安置します。
また戒名は、菩提寺に授けてもらうのがしきたりです。
浄土宗の戒名は、念仏の教えを受けた証しとして誉号として「誉」の文字がつくのが特徴です。
白木位牌の1文字目に阿弥陀如来を意味するキリーク梵字が用いられることもあります。
浄土真宗の戒名の構成は、院号・道号・誉号・戒名・位号の順となります。
一方、浄土真宗の場合、戒名の代わりに「法名」を使用します。
「法名」とは仏の弟子となったことを示す証しなのです。
浄土宗の戒名の値段
戒名は「院号」「道号」「戒名」「位号」の4つに分類され、文字数が多いほど位が高いとされています。
浄土宗の位号の違いによる戒名の値段は、信士・信女は30万円~40万円、居士・大姉は50万円~60万円、院信士・院信女は70万円以上となっています。
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浄土宗の本尊
浄土宗の信仰のよりどころとなるご本尊は西方極楽浄土の教主である阿弥陀如来です。
阿弥陀如来に向かって右側が観音菩薩で、左側が勢至菩薩となった阿弥陀三尊の形で寺院ではまつられています。
観音菩薩は阿弥陀如来の慈悲の徳を表現するもので、勢至菩薩の方は知恵の徳を表現するものとされています。
阿弥陀仏とは、永遠の命と無はかりしれない光明をもつ仏様という意味で、「阿弥陀」とは永遠の命、無限の光明の意味です。
浄土宗では立像・坐像どちらも本尊としてまつりますが、浄土真宗では、立像のみを本尊とします。
浄土宗の有名なお寺
浄土宗では、京都の「知恩院」(京都市東山区)が総本山ですが、それに続く格式の高いお寺として、7つの浄土宗七大本山と1つの本山があります。
これらのお寺が浄土宗の有名なお寺ということになります。
浄土宗の大本山および本山は、以下のお寺です。
【大本山】
増上寺(東京都港区)
光明寺(神奈川県鎌倉市)
善光寺大本願(長野県長野市)
金戒光明寺(京都市左京区)
知恩寺(京都市左京区)
浄苑華院(京都市上京区)
善導寺(福岡県久留米市)
本山
蓮華寺(れんげじ)(滋賀県米原市)
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浄土宗の経典
次は浄土宗が教えを説くために使ってきた経典についてご紹介します。
浄土宗では、『無量寿経』『観無量寿経』『阿弥陀経』の3つを合わせて浄土三部経と呼びます。
経典について知れば、浄土宗の教えをより理解できるでしょう。
無量寿経の解釈
『無量寿経(むりょうじゅきょう)』と呼ばれ、正式名称は『仏説大無量寿経』といいます。
仏教は釈迦が書いた経典で説いた教えによって成り立っています。
この経典のことを、その量の膨大さから、一切経(いっさいきょう)や七千余巻(ななせんよかん)とも呼びます。
無量寿経はその経典の中でも特に重要視されるものです。
釈迦はこのお経の中で、自分が生まれたのはこれを説くためであったといっています。
そんな釈迦の教えの核心に迫ったともいえるこのお経では、阿弥陀如来の本願について説明しています。
このお経で釈迦は阿弥陀如来の本願によって人々に真実の救済がもたらされることを説いています。
本願とは、阿弥陀如来が人々を救うために立てた約束のことです。
釈迦はお経の中で、この本願によって全ての人を救済するといっているのです。
また、釈迦は全てのお経が滅んでも、このお経だけは永遠に残り、人々を救い続けるだろうといいました。
無量寿経は阿弥陀如来の本願について人々に伝えるためのお経だといえるでしょう。
観無量寿経の解釈
『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』は、正式には『仏説観無量寿経』といいます。
このお経で釈迦は「定善(じょうぜん)」と「散善(さんぜん)」と呼ばれる二つの教えを説いています。
定善とは、心を安らかにして、阿弥陀如来や極楽浄土を想像することです。
その方法は十三通りあるとされ、このやり方を全てまとめて「定善十三観」と呼びます。
散善は定善とは反対に心が乱れた状態でも、悪行を行うのを止め善行を積むことです。
散善では三通りの方法があるため「散善三観」と呼びます。
また、「定善十三観」と「散善三観」を合わせて、「定散十六観」と呼びます。
このお経ではこの「定散十六観」を説いた後に、名号(みょうごう)の重要性を説いています。
名号とは仏の功徳が込められた念仏のことで、ここでは「南無阿弥陀仏」を指します。
釈迦は定善と散善を行って自分の悪行を認識することで、名号を唱えることの有り難さを逆説的に説明しています。
阿弥陀経の解釈
『阿弥陀経(あみだきょう)』は、阿弥陀如来が説いた名号である「南無阿弥陀仏」について説いた経典のことです。
阿弥陀如来は、人々が苦しみや不安から解放されるための方法として、名号を伝えました。
南無阿弥陀仏は、阿弥陀如来が人々を救いたいという心を記した念仏です。
浄土宗では、阿弥陀経がこの名号を一心不乱に唱え続けることが重要だという意味と解釈しています。
そうすれば、死ぬ時に阿弥陀如来が迎えに来てくれて浄土へ連れて行ってくれるとされているのです。
よく唱える言葉
浄土宗ではここまで紹介してきた経典の中にも記された登場する、「南無阿弥陀仏」という言葉が一番大切だとされています。
これは浄土宗では「南無阿弥陀仏」を唱えることが本願の力で極楽浄土へ行くための方法だとされているためです。
このお経を唱えれば万人が庶民であっても救済されるというもので考え方であり、浄土宗はこの考え方を中心に据えて教えを説いています。
浄土宗の念仏の唱え方
浄土宗では、十念と呼ばれる南無阿弥陀仏を10回繰り返す念仏の唱え方をします。
南無阿弥陀仏と4回、4回、1回、1回と4セットに区切って繰り返します。
最初の4回と次の4回、最後の1回は「なむあみだぶ」で、9回目だけ「なむあみだぶつ」です。
また10回目はゆっくり唱えます。
ただし、地域や寺院、僧侶によっても念仏の唱え方が異なっているようです。
なお、浄土真宗の場合は「なむあみだぶつ」とは唱えず、「なんまんだぶ」とか「なもあみだぶつ」という念仏の唱え方をすることがあります。
また、浄土真宗では回数はカウントしません。
浄土宗の念珠
浄土宗の念珠とは、浄土宗の信者特有の数珠のことで、男性向けのものと女性向けのものとがあり、「日課数珠」「百八数珠」「荘厳数珠」の3種類があります。
僧侶も一般の信者も、普段は「日課数珠」を使用しますが、儀式の際は、僧侶は「荘厳数珠」を使用します。
「日課数珠」は、一日に何回念仏を唱えたのかわかるような特殊なものになっています。
他の宗派の念珠のように108玉ではないのが特徴です。
よって、浄土宗では、「日課数珠」を持つべきとされており、実際、「日課数珠」を持つ人が多いようです。
浄土宗のしきみとは?
「しきみ(樒)」は鑑真和上が中国から日本にもたらしたもので、天竺にある青蓮華に似ているため、弘法大師が青蓮華の代わりにの祈祷に使用したのが始まりです。
浄土宗でも、しきみは儀式や墓石・仏壇に使用されています。
しきみは強い毒性と香りがあるため、死者の邪気を払うとされています。
そのため、今日でも枕飾りや葬儀の祭壇などにしきみがよく使用されているようです。
浄土宗でも葬儀の祭壇などにも、しきみが使用されていますし、また仏花よりしきみをお供えする地域もあります。
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浄土宗の葬儀
ここからは浄土宗の葬儀の特徴や、その流れについて紹介していきます。
葬儀の特徴
浄土宗の葬儀では「念仏一会」が行われるというのが大きな特徴として挙げられるでしょう。
念仏一会とは、僧侶と共に参列者全員で「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えます。
そしてその念仏で故人が極楽浄土に無事辿り着けるよう、阿弥陀如来の本願を得る手助けを意味します。
葬儀の流れ
浄土宗の葬儀では、「念仏一会」以外にもこの宗派ならではの儀式があります。
以下で、葬儀の儀式の流れを詳しく説明していきましょう。
①奉請
浄土宗の葬儀ではまず奉請(ぶしょう)と呼ばれる儀式を行います。
奉請ではお香を炊いて心を安らかにして、諸仏の入場を願います。
ここでいう諸仏とは、阿弥陀如来や釈迦如来といった仏様のことです。
②懺悔
奉請を終えたら、次は懺悔(ざんげ)を行います。
ここでは故人の生前の罪を懺悔することで、諸仏にその罪の許しを請います。
③剃度作法・十念
次に頭を剃る仕草をする「剃度作法(ていどさほう)」を行い、十念を唱えます。
④三帰三竟
次は「三帰三竟(さんきさんきょう)」を唱えます。
三帰とは、故人が仏・法・僧に帰依することを唱えるものです。
これを唱えることで、永遠にこれら三つに帰依することを誓います。
また、三竟では故人が帰依し終えたことを唱えます。
三帰とは違い、帰依し終えたということを表すためのものです。
⑤授与戒名
三帰三竟を終えたら、故人に戒名を授与します。
⑥開経偈
戒名を授与したら、次は開経偈(かいきょうげ)と呼ばれる偈文(げもん)を唱えます。
開経偈は経典を読む前に行われるもので、仏の教えを称え、悟りを求めることを表します。
⑦誦経
誦経(じゅきょう)とは、お経を読むことを表す言葉です。
ここでは浄土宗において重要な経典を読みます。
⑧発願文
発願文(ほつがんぶん)では浄土に辿り着いた暁には、全ての人を救済するために努めることを誓います。
⑨摂益文
摂益文(そうやくもん)では念仏を唱える人は、阿弥陀如来によって守られるということが表されます。
⑩念仏一会
念仏一会では、僧侶と共に参列者全員で「南無阿弥陀仏」を10回以上唱えます。
参列者は、故人が無事に極楽浄土へ辿り着けるように、という思いを込めて念仏を唱えます。
11回向
回向(えこう)とは唱えた念仏の功徳を自分以外の人に向けることを意味します。
回向を行うことによって、全ての人がその功徳を享受し、無事に成仏できるように願います。
回向が終わると、葬儀は終了です。
葬儀のマナー
ここまで浄土宗の葬儀の流れを紹介してきましたが、ここからは参列する際に気をつけるべきマナーを紹介します。
焼香のマナー
浄土宗では他の宗派と違って、焼香の回数は決められていません。
そのため、何回しても良いとされていますが三回程度行うのが一般的です。
焼香をする際はまず香炉の前で合掌してから一礼し、親指・人差し指・中指の三つの指で香をひとつまみします。
そして、手の甲を下にしてもう一方の手を下に添えて、額に押しいただきます。
それから香を香炉の灰に入れ、合掌し一礼して焼香は終了です。
香典のマナー
香典では表書きに注意しましょう。
浄土宗の表書きには「御霊前」か「後香典」と書くのがマナーです。
葬儀の香典は、受付で渡すのが一般的です。
数珠のマナー
浄土宗の正式数珠には「日課数珠」「百八数珠」「荘厳数珠」の3種類があります。
一般の檀家・信徒はこの中の日課数珠を使います。
これは念仏の数を数えられる形式になっており、一日に何度念仏を唱えるかという日課制約して励むためのものです。
正式数珠を持つことが檀家・信徒の心得とされています。
男性は「三万浄土」、女性は「六万浄土」と呼ばれるものを使用します。
浄土宗では、男性の場合は三万回・女性の場合は六万回念仏を唱えることで極楽浄土へ行けると言われています。
この数珠を使えば、その念仏の回数を男性用では32,400回、女性では64,800回まで数えることが可能です。
浄土宗では葬儀でも、この数珠を用いて故人に祈りを捧げます。
スポンサーリンク浄土宗の位牌
浄土宗で使用する位牌には「白木位牌」「本位牌」「寺位牌」の3つがあります。
白木位牌とは、亡くなった人が初めて使用される位牌で、「内位牌」と「野位牌」の2種類の位牌があります。
内位牌は枕飾りや葬儀の祭壇に用いられますが、四十九日の法要までの仮の位牌で、その後は本位牌に代えられます。
野位牌は、墓石に故人の名前が刻まれるまでの間お墓に設置される位牌です。
そして、本位牌は、四十九日まで白木位牌が使用された後、白木位牌に代わって仏壇に設置される位牌になります。
この時白木位牌から故人の魂を抜き、本位牌に故人の魂を入れる儀式を行います。
もう1つの寺位牌とは、菩提寺に納めて供養してもらうための位牌です。
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浄土宗のお布施について
浄土宗のお布施について解説します。
浄土宗の法事のお布施
一般的には法事のお布施の相場は5千円~5万円と言われていますが、法要の種類によってその金額は大きく異なります。
各法要の全宗派の平均相場は、以下のとおりです。
・四十九日の法要: 3万円~5万円
・納骨: 1万円~5万円
・新盆: 3万円~5万円
・新盆以外のお盆: 5,000円~2万円
・一周忌: 3万円~5万円
・一周忌以外の回忌法要: 1万円~5万円
浄土宗だけ見てみると、これらの平均相場から特に特化したものはなく、全体の相場とほぼ同等の金額となっているようです。
浄土宗のお彼岸のお布施
僧侶を自宅へ招いてお彼岸でお経を詠んでもらう場合、全宗派平均のお布施の相場は3万円~5万円程度と言われています。
お盆の法要と同じくらいですね。
その他に、交通費として5,000円~1万円を渡すことがあります。
寺院で行われる彼岸会やお施餓鬼(せがき)などの法要へ、こちらから出かけて行って参列する場合のお布施の相場は、3,000円~2万円前後です。
こちらから寺院に出向く場合は、このように幅広い金額となっています。
浄土宗のみの相場を見た場合、全宗派の平均相場に近いようです。
浄土宗のお布施の金額
全宗派の平均のお布施の金額は、通夜、葬儀、告別式、初七日のすべてを行った場合、20万円~50万円と言われています。
浄土宗では、お布施は仏への捧げもの(喜捨)であり、法要や読経のお礼として支払われるものではないと考えられているので、相場もわかりにくいようです。
一般的には、浄土宗の葬儀の場合のお布施の金額は10万円~30万円程度と言われています。
全宗派のお布施の平均金額よりも少し下回っているようです。
戒名料に関しては戒名の格式に応じて決まってくるのは他宗派と同じで、金額も差はないようです。
相場は地域や寺院によっても変わってきますので、不安な場合は、菩提寺や葬儀社に尋ねてみましょう。
浄土宗の仏壇の飾り方
次は浄土宗の仏壇の飾り方を紹介します。
ご本尊・脇侍の飾り方
浄土宗では御本尊として阿弥陀如来の仏像に、舟形の光背があるものを飾ります。
この阿弥陀如来の仏像は前に少し傾いており、これは人々をすぐに救おうという姿勢の現れです。
御本尊は、仏壇で最も重要なものであるため、仏壇中央の一番高い場所に飾ります。
また、仏壇には脇侍という宗派の開祖や宗派を広めた僧侶を御本尊の両側に飾る場合があります。
浄土宗の場合には、左側に法然(円光大師)、右側に善導大師を飾るのが一般的です。
また、これとは違い、左側に観音菩薩、右側に勢至菩薩を脇侍として飾る場合もあるようです。
脇侍はどちらを選んでも、間違いではありません。
仏具の飾り方
仏具は仏や故人を供養するために必要となる道具のことです。
浄土宗では仏具の飾り方は決められていません。
そのため、「五具足(ごぐそく)」を基本として考えるのが一般的です。
五具足とは、香炉・花立・燭台・茶湯器・火立の五つのことを指します。
浄土宗と浄土真宗の仏壇の違い
浄土宗の仏壇は、一般的な仏壇と変わりはありません。
一般の仏壇は、中央にご本尊の阿弥陀如来を向かって右に観世音菩薩、左に勢至菩薩という配置になります。
さらに観音菩薩の隣に、唐の善導大師を勢至菩薩の隣には宗祖円光大師法然を配します。
仏壇が小さい場合は、観音・勢至の両菩薩は省略されることもあるようです。
また、故人の魂が宿った位牌を本尊の下に、中央からややはずした所に供えます。
浄土真宗では、 亡くなったらすぐに成仏するという考え方があるため、位牌を飾ることがありません。
位牌の代わりに、法名軸(ほうみょうじく)や過去帳(かこちょう)に法名が書かれたものが掲げられます。
なお、法名軸とは、法名が書かれた掛け軸のことで、過去帳とは、故人の法名・俗名・享年・命日を記録する帳簿のことです。
また、浄土真宗では、線香を立てずに折って寝かせるのも特徴の1つになります。
これは、涅槃(ねはん)という阿弥陀仏が横になった姿を表しているのです。
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浄土宗と浄土真宗の違い
ここからは浄土宗と浄土真宗の違いについてご紹介します。
この二つは同じ阿弥陀如来を本尊としており、似たような教えを持つとされています。
しかし、様々な点で考え方が異なります。
他力本願の考え方
浄土真宗の開祖親鸞は法然の弟子であり、阿弥陀如来の本願力に救いを求める考え方は同じです。
よって浄土宗も浄土真宗も難しい知識や厳しい修行を不要とし、念仏を唱えれば良いとするシンプルな教えです。
法然は阿弥陀如来により教えられた「南無阿弥陀仏」の念仏を唱え続けることで救われると言いました。
これに対し、浄土真宗の親鸞は自分の力に頼らず、阿弥陀如来の力に縋ることで浄土に辿り着けると言いました。
これは念仏を唱えずとも阿弥陀如来を信じさえすれば極楽浄土に至れるという考え方で、「他力本願」といいます。
両者の違いは浄土宗では念仏を唱えることに重きを置いていますが、浄土真宗では阿弥陀如来を信じる力が大切だと考えられています。
念仏
浄土宗は念仏をできるだけ多く唱えることを重要視しています。
一方、それに対し、浄土真宗は阿弥陀如来を信じる心を重要視しているという違いがあります。
浄土真宗では念仏を多く唱えれば良いと考えておらず、一声の信心で救われると説いています。
般若心経
浄土宗も「南無阿弥陀仏」を重要視している宗派ですが、場合によっては普段のお勤めの中で「般若心経」を唱えることもあります。
一方、浄土真宗は般若心経を読まない宗派として有名です。
その理由としては、浄土真宗では般若心経で説いている内容が自力で悟りを開くことを説いている点にあります。
般若心経は自力で悟りを得ることを説くお経ですが、浄土真宗は前述したように他力本願を説く宗派です。
そのため、お経を説いたところで悟りの境地に至ることはできないと考える浄土真宗では般若心経を唱えることはありません。
御朱印の有無
お寺は参拝した証として御朱印を参拝者に対して押印する場合が多いですが、浄土真宗には御朱印がない場合が多いです。
これは浄土真宗本願寺派と真宗大谷派で、御朱印を行わないとしていることが関係しています。
御朱印は元々、参拝者が故人の供養のためにお経を納経した証明代わりに受け取るものでした。
しかし、浄土真宗はお経を読んでも他者が浄土へ辿り着くのを助けられないという考えです。
これは浄土真宗が阿弥陀如来の力を借りることでしか、浄土に行けないと考えていることと関係しています。
他人のためにお経を読むことは無意味であると考えているため、その証明証として配られる御朱印の押印も行っていないのです。
浄土宗と浄土真宗に対立はある?
浄土宗と浄土真宗とは対立しているのでしょうか。
浄土宗の開祖の法然と浄土真宗の開祖の親鸞の関係を見てみると、親鸞は終生、法然上人を師と仰ぎ「浄土七高僧」の一人と考えていました。
親鸞は法然の教えをさらに深めたわけで、特に関係が悪かったということはありません。
浄土真宗の寺院のほとんどは、七高僧の一人として法然上人の御影を飾っています。
前進座という歌舞伎劇団の公演「法然と親鸞」の後援を浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派が共同で行っている例もありました。
浄土宗と浄土真宗の学僧の方の合同研究会も行われています。
また、浄土宗系の佛教大学教授でしかも浄土宗の僧侶ですが、真宗大谷派系の大谷大学大学院を修了されている人もいるようです。
浄土真宗本願寺派系の龍谷大学の仏教学の教授で浄土宗西山派の僧侶の方もいらっしゃいました。
法然が亡くなった後、親鸞が関東で布教したため、おのずと独自の浄土宗系のグループが出来上がり、浄土真宗となったようです。
したがって浄土宗と浄土真宗は対立してはいません。
浄土宗の袈裟について
「袈裟」は、法要や祭りの時に、数珠とともに身に着けるもので仏教徒である証しとなるものです。
この袈裟は、僧侶だけでなく、一般の仏教の信者も身に着けます。
一般の仏教の信者が身に着けられる袈裟のことを「輪袈裟」と言います。
環状になっており、細長い袈裟の両端を飾り紐でつなげたものです。
寺院に参拝するとき、葬儀や法要、さらに毎日のおつとめの際に身にまといます。
浄土宗の輪袈裟の特徴として、浄土宗の宗紋である月影杏葉が首の後ろや正面についています。
身に着ける時は、紋がさかさになっていたり、飾り紐のついた部分が内側にきたりしないように注意しましょう。
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浄土宗の塔婆とは
浄土宗では、故人様やご先祖様のご供養のため、中陰忌、七七日忌(四九日忌)、年回忌、命日忌、彼岸会、施餓鬼会、十夜会などに塔婆を立てます。
塔婆は「卒塔婆(そとうば)」とも言いますが、これは、古代インドのサンスクリット語の「ストゥーパ」に漢字をあてたものです。
塔婆は仏塔と同じ意味であり、仏塔とはお釈迦様の骨が納められた塔のことで、「仏舎利塔」とも言います。
この仏舎利塔が時代を経て五重塔になりました。
塔婆の形は、宇宙の全てを構成する要素である、「空」「風」「火」「水」「地」になっています。
浄土宗の大学
「大学ランキング2017」朝日新聞社刊によると、仏教系の学生数上位27のうち、浄土宗系の大学は以下のものがあります。
・仏教大学
・対象大学
・淑徳大学
・東海学園大学
・岐阜聖徳学園大学
・埼玉工業大学
・京都文教大学
学生数上位27大学のうち、浄土真宗本願寺派が7校であり、約26パーセントを占めていることになります。
最も多いのが浄土真宗で、本願寺派が7校、大谷派が5校と浄土真宗だけでも12校あり、圧倒的なシェアを占めています。
浄土宗も浄土真宗も教育には大変熱心な宗派なのです。
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浄土宗の宗紋について
お寺の紋は「寺紋」と言い、浄土宗では「三つ葉葵」になります。
東京・芝の増上寺は、徳川家の菩提寺でしたので、徳川家の家紋である「三つ葉葵」を採用したのです。
当時は、寺院の創設時に世話になった武士の家紋を、お寺の紋として使用していました。
寺院の紋には「寺紋」の他に「宗門」というものがあります。
浄土宗は、「月影杏葉」(つきかげぎょよう)が宗紋です。
杏葉は、法然上人を生んだ漆間家の紋で、その杏葉に、宗歌「月かげ」の月を加えたものです。
よくある質問
浄土宗に関するよくある質問とその回答をご紹介します。
浄土宗の開祖はだれ?
浄土宗は法然が、1175年(承安5年)に開山しました。
浄土宗は何派ですか?
浄土宗の主流となるのは「鎮西派」です。
従って、浄土宗は「鎮西派」と言えます。
浄土宗と浄土真宗の違いは何ですか?
浄土宗は念仏を唱える行為を大事にしますが、浄土真宗は念仏を唱えようとする気持ちの方を重要視する点が大きな違いです。
さらに、浄土宗では僧侶が肉を食べたり結婚したりしてはいけないとされていますが、浄土真宗の場合、それらは許される点も異なっています。
その他にもお経の読み方や、仏壇の飾り方、法要における作法などにも違いが見られます。
知恩院は浄土宗の何派か?
知恩院は浄土宗の総本山であり、主流派の鎮西派に属しています。
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浄土宗のまとめ
ここまで浄土宗の歴史や考え方などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
- 浄土宗は法然によって1175年(承安5年)に開宗された
- 浄土宗は「南無阿弥陀仏」を唱えることで浄土に行けるという考え
- 葬儀では参列者全員でお経を唱える「念仏一会」を行う
- 浄土真宗はお経を唱えた数ではなく、阿弥陀如来を信じる力を重視する
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
山口 隆司(やまぐち たかし)
一般社団法人 日本石材産業協会認定 二級 お墓ディレクター
経歴
業界経歴20年以上。大手葬儀社で葬儀の現場担当者に接し、お葬式を終えた方々のお困りごとに数多く寄り添いサポートを行う。終活のこと全般に知見を持ち、位牌や仏壇をはじめ、霊園・納骨堂の提案や、お墓に納骨されるご遺族を現場でサポートするなど活躍の場が広い。
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