法事法要
享年と行年の違いはなに?計算方法と没年との違いも説明
更新日:2022.11.17 公開日:2022.02.23
故人の年齢に、享年(きょうねん)と行年(ぎょうねん)があることはご存じでしょうか。
どちらも故人が生きた年月を表す言葉ですが、意味や使い方に違いがあります。
そこでこの記事では、享年と行年について詳しく説明していきます。
この機会に享年と行年の使い分けについて、しっかり覚えておきましょう。
喪中はがきに書く故人の年齢についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
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享年とは
享年の享という文字には「受ける」という意味があり、天から授けられた生を全う(まっとう)した年月を指します。
位牌や墓碑に使われることの多い享年・行年ですが、どちらを使うかについては宗派ごとに異なるようです。
享年と行年の違い
享年と行年は、どちらも故人がこの世に生きた期間を表す言葉ですが、言葉の成り立ちが異なります。
享年の意味
享年は数え年で表すのが一般的です。
数え年とは生まれ落ちた瞬間に1歳とする考え方で、満年齢+1歳で表すため満78歳で亡くなった方の場合「享年79」となります。
もともとは享年に歳は付けなかったのですが、最近では「享年79歳」と表すケースもあります。
位牌や墓碑に享年を刻むようになったのは、長生きは良いことという考えに基づいているようです。
満年齢+1歳で表される享年を刻むことで、それだけ長生きしたと捉えられます。
行年の意味
行年は、この世に生を受けて娑婆で修業した年数を表す言葉です。
仏教では生まれ落ちてから亡くなるまでを修業期間と考えますので、行年は満年齢で表します。
そのため、亡くなった方の満年齢が78歳だった場合は「行年78歳」とするのが一般的です。
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享年は数え年で計算する
享年は数え年で考えるため満年齢+1歳とするのが一般的ですが、厳密には少し異なります。
数え年の正式な数え方について、以下に紹介します。
数え年の計算方法
数え年では、新年を迎えた1月1日に歳を加えるのが正式な考え方です。
例えば、6月に生まれた子供は1月を迎えた時点で2歳になります。
この子供が年齢を重ねて、満78歳の11月に亡くなった場合は、満年齢+1歳で享年79となります。
しかし、年を越した2月に亡くなった場合は、満年齢+2歳となるので享年80となります。
実は行年も、明治時代までは1月1日に歳を加えるのが一般的でした。
江戸時代までの日本で主流だった太陰暦では、約3年に一度のペースで閏月が設けられます。
そのため、閏月に生まれた方は誕生日がない年もあることから、1月1日に歳を加える数え年が用いられていました。
満年齢
満年齢は生まれた日を0歳として、毎年誕生日を迎えるたびに1歳ずつ歳を重ねる考え方です。
満年齢を算出する方法は、明治時代(1902年)に施行された「年齢計算ニ関スル法律」によって定められました。
この法律の第1条には「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」とあり、年齢の起算日は出生日とされています。
さらに1950年に「年齢のとなえ方に関する法律」が施行され、国や地方公共の機関に対しては満年齢の使用を義務付けられました。
胎児期間について
僧侶によっては、母親のお腹に命が宿った時点から、年齢に含めると考える方もいます。
出生日に妊娠期間の十月十日を加えて年齢を導き出すという考え方です。
また、母胎内で人格が形成される時期を妊娠3か月ごろと考え、亡くなった時点の年齢を導き出す僧侶もいます。
胎児期間を年齢に加えるかどうかは僧侶によって考え方が異なるため、菩提寺の住職などに確認するとよいでしょう。
享年と没年の違い
人が亡くなった際には、没年という言葉も使われるケースが少なくありません。
没年は享年や行年と何が違うのでしょう。
没年とは
享年や行年が故人の生きた期間を表すのに対し、没年は亡くなった年を指します。
没年は亡くなった年齢と、亡くなった年次という2つの意味を持つ言葉です。
一般的に、亡くなった年齢を表す場合は「没80歳」などと歳を加えて記載します。
また亡くなった年次は没年月日とよばれ「没〇〇年〇月〇日」などと命日を記載するのが一般的です。
没年を使う際の注意点
享年と没年は故人の亡くなった年齢という面では同じですが、表す意味が大きく異なります。
そのため、「2000年没享年○○歳」などと同じ文中で享年と没年を使用することは避けます。
歳と才の使い分け
かつては享年の後は数字のみで、歳や才を入れるのは二重表記となるため誤用とされていました。
しかし最近では満年齢を使用する場面が多いことから、分かりやすくするために歳を入れるケースも少なくありません。
歳という文字には、もともと年や月日という意味があり、年齢を表す際にも使用されてきました。
一方の才という文字は、生まれ持った能力を表す漢字で、年月や年齢という意味は持っていません。
もともと「際」の代用漢字であった「才」が、位牌や墓碑に使われるようになったのは画数が少ないためです。
墓石に享年などを彫る際に、画数の少ない才の方が欠けにくく彫るのも容易なため使用されています。
そのため、遺族が希望した場合は歳を使用して問題ありません。
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享年と行年の使い分け
位牌や墓碑に亡くなった年齢を記載する場合、享年でも行年でも問題ありません。
ただし一般的な慣習として、寺院では享年を、それ以外の場では行年を使用することが多くなっています。
葬儀の際に使用される白木の位牌に合わせるのが一般的ですが、すでにあるお墓に彫る場合は先祖に合わせることもあります。
享年・行年の使い分けについては、地域や僧侶の考え方によって異なります。
地域の知人や菩提寺の住職などに相談すれば安心でしょう。
喪中はがきでの年齢の書き方
2親等以内の身内が亡くなった場合、基本的に親族は1年間身を慎んで喪に服します。
お祝い事も避けるため、年賀状の代わりに喪中はがきを送るのが一般的です。
喪中はがきには、故人が亡くなった年齢を記載するケースも少なくありません。
この場合、享年という言葉を使用したほうがよいのでしょうか。
喪中はがきには享年を必ず書く?
喪中はがきは故人が亡くなった旨、および年賀欠礼に対するお詫びを伝えるものです。
正式な挨拶状ですので、句読点を使わないなど、さまざまな決まり事を守って書く必要があります。
しかし、喪中はがきに享年を記載する決まりはありませんので、書かなくても問題ありません。
かつては数え年で享年を使う方が多かったものの、現在では満年齢で書く方も多いようです。
享年で書く場合は基本的に数え年で書きますので、満年齢に+1歳するのを忘れないように注意します。
「行年〇〇歳で永眠しました」といった書き方も可能ですが、認知度が低い行年は使わない方が無難でしょう。
近年では故人のプライバシーに配慮して、亡くなった年齢を記載しない方も少なくありません。
数え年と満年齢のどちらが正しい?
享年には長いあいだ数え年を使用してきましたが、現在では享年に満年齢を用いる方も多くなっているようです。
喪中はがきに数え年と満年齢のどちらを使っても、間違いではありません。
特に若年層では、数え年よりも満年齢の方が馴染みがあるため伝わりやすいでしょう。
先方が分かりやすいように、享年と満年齢の両方を記載される方もいます。
喪中はがきの目的は、故人の死を伝え年賀欠礼を詫びることですので、年齢は重要ではありません。
伝統的な書き方にこだわるのか、分かりやすさを優先するのかによって使い分けるとよいでしょう。
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享年・行年のまとめ
ここまで享年と行年の違いや、数え年の計算などを中心にお伝えしてきました。
この記事のポイントをおさらいすると以下のとおりです。
- 享年と行年は、ともに故人が生きた期間を表す
- 享年では数え年、行年では満年齢を使用するのが一般的
- 数え年は出生日を1歳、満年齢は出生日を0歳として数える
- 胎児期間を年齢に含めるかは、僧侶ごとに考えが異なる
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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監修者
袴田 勝則(はかまだ かつのり)
厚生労働省認定 葬祭ディレクター技能審査制度 一級 葬祭ディレクター
経歴
業界経歴25年以上。当初、大学新卒での業界就職が珍しい中、葬儀の現場で数々のお葬式を担当し、身寄りのない方の弔いから皇族関係、歴代首相などの要人、数千人規模の社葬までを経験。さらに、大手霊園墓地の管理事務所にも従事し、お墓に納骨を行うご遺族を現場でサポートするなど、ご遺族に寄り添う心とお墓に関する知識をあわせ持つ。
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